No.589357

中性子線被曝

健忘真実さん

穂高岳登山中に、なぞの状況に遭遇して被曝した。

『終末戦争』~改題*きらめき~ (http://www.tinami.com/view/628664 )に続く。

2013-06-20 12:18:56 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:441   閲覧ユーザー数:438

広野雪奈の記録メモより

2013年8月7日(水) 快晴

5:30 上高地に到着  5:50 出発

7:20 徳沢

   蒸し暑い大阪とは比較できないほどさわやかな朝、幾組ものパーティーを追い越

  して快調快調

 

9:00~10:00 横尾

10:45 屏風岩一ルンゼ取り付き

11:05 登攀開始 橋口、広野、西村のオーダーで開始、以降つるべ(ピッチごと

      にトップを交代すること)で

           

 横尾にテントを張った後、岳遊会の夏合宿の先陣を切って前穂高岳をアタックするべく、

橋口久雄、西村裕二とアタックザックに登攀具と3日分の食料等を詰め直して、10日

にやって来る本隊を待ちうけるテントを残し出発したのは、10時過ぎとなった。

 屏風岩一ルンゼ登攀、3人が交替しながらトップに立ち、屏風の頭から前穂高岳北尾

根四峰の取り付きに到着した頃には、すっかり暗くなっていた。ヘッドランの明かりで

歩くのに、少し時間がかかり過ぎ

7時着

 

 ゼル(ゼルプスト・安全ベルトのこと)をはずしてザイルを直接腰に巻き付け、岩陰

を求めて下っていくと、怪しく光る物体が、かなり離れてはいるがちょうど目の高さの

位置から落ちて行くのが見えた。

8時ごろ

 花摘みを終えてから、ふたりにそのことを話しその方角に目をやると、今まさに光る

物体が空中から現れて落ちて行った。その場所は奥又白池の辺りと推定し、登攀はあき

らめて、明朝明るくなってからそれが何であるかを確認しに降りて行くことを相談して

決めた。

残念だが、ただならぬ気配を感じる

8:30ねる  星がきれい

 

2013年8月8日(木) はれ時々くもり

3:30起床 岩の上で寝たので、背中が少し痛かった。ザイルで体を固定していたが、

     寝ている間に滑り落ちないか不安で、何度も目を覚まし体の位置を確認した。

 

 奥又白池がある台地にお花畑があったかいな、と話しながら下っていたのだが、近付

くにつれそれらは花ではなく、衣服であることに気付いた。いたる所に人が倒れている。

生きてる?

衣類の乱れは見られないが、露出部は皮膚がなくなるほどの火傷をしている。  

変わった服

映画の撮影に使ったのかと思ったが、近くで覗きこむとやはり人間、よく出来た作りも

のだろうか、ざっと見て20体。

うめき声がした方に行くと、ノートのようなものを握りしめて、その手が少し動いた、

人間だと分かってあわてた。その人はもう動かない

西村君が携帯を取り出したが、ここからは電波が送れない。急いで徳沢の小屋まで下る

ことにする。

ノートは、何か分からない液体で濡れているようなので、ポリ袋で挟んで抜き取り、袋

に入れたままザックの上フタに入れた。

 

 

 石がゴロゴロしているガレ場、急けいしャ面を木につかまりながら下り、一パン登山

道に出るとホッとしてペースダウンした。とくさわエン着9時

   けいさつと消ボウにれんらくがとられた 

       くわしくききたいからここでまつ ように

 ふと手をみると、皮がめくれ、まるでヤケドしたみたい 石や木をつかんでいただけ 

       ああ  のどがひりつく   たっぷりのんだノニ

        つかれがキュうに     ねぶそく ?

   キブン ワル っ

   

 

 広野雪奈のノートには、これ以上書かれることはなかった。

 奥又白周辺の上空を飛んでいた遭難救助ヘリの隊員が、たまたま積んでいた線量計の

針が大きく振れているのに気づいた。測定不能なまでに針が振り切れていた。

 本部と交信中、徳澤園に連絡を入れた登山者の状態がおかしいという情報が入り、彼

らを病院に搬送する指示が出されたのである。

 おう吐、皮膚の炎症、そして倦怠感等を訴えている状態を観察していた隊員のひとりが、

放射線障害かもしれないと判断した。強い放射線を感知した奥又にいたのだからきっと

そうだ、ということで、放射線被曝者の治療に当たった経験のある、東大付属病院に搬

送された。

広野雪奈の治療に当たった山下教授の備忘録より

8月8日 木曜日

搬送されてきた3人の症状は、明らかに中性子線を浴びていると思われるが、原因は不明。

無菌室へ

 

1999年9月30日に発生したJCO臨界事故では、核燃料加工施設で核燃料を加工

中にウラン溶液が臨界状態に達し、核分裂連鎖反応が発生、約20時間持続した。

作業員2名が死亡、1名重症、周辺住民を含めて667名が被曝している。

登山中だったというが、いったいどこで核分裂があったのだろうか。

死亡した作業員と同じ症状を呈している。治療チームの一員だった当時の辛い思いがよ

みがえる。

 

夜半から親族の方が集まり始めたが、ガラス越しに覗いてもらうだけ。

 

8月12日 月曜日

被曝線量10~17シーベルト。特に広野雪奈の被曝線量が大きい。

予想通り、DNA二重らせんがズタズタに切断されている。

細胞の再生機能喪失。

白血球数ゼロ。

日を追うごとに熱傷は進行し、生肉がむき出し状態となりつつある。

意識や感覚はそのまま残っているので、この生き地獄から早く救ってあげたいのだが。

「水が飲みたい」と言い続けている。飲ませてあげたいが、内臓器官の粘膜も失われて

いるはずで、下痢がひどい。

医療の限界を感じる。14年前から全く進歩していないのが、現実。

放射線事故は再度起こりうるはずはないと、大量被曝者に対する研究は継続しなかった、

実際できなかった。

ご家族に現実を説明するのが、つらい

 

妹から骨髄移植

白血球数少し持ち直す

 

8月15日  木曜日

毎日10リットルの輸血輸液を投与しているが、熱傷跡から毎日1リットルの体液が流出。

白血球数ゼロ

皮膚移植を試みるが、無為 

この生き地獄から解放させてあげるには、安楽死もありうるが、今は鎮静剤を打つこと

だけ。意識を低下させることで、極度の苦痛でも、少しでも和らげることが出来るだろう

 

20日  火曜

全身の皮膚がなくなる

おびただしい下血

無尿

家族と対面。「いままでありがとう、かあさん、ごめんね」のことば

 

JCO事故にあった作業員大内氏は結局、奇跡的に83日生きることが出来たが、無理

に生かされたのだ。「死なせてくれ」という希望も無視されたのは、原子力関連の2法

を成立させたいばかりに、それまでに死者を出してはいけなかったからである。

それは12月13日に成立、小渕恵三内閣の時である。

心臓停止の時には電気ショックを与えて蘇生した。2度も

もうそんなことはごめんだ

心臓が停止したら、そのままお送りすることにしよう。

広野雪奈さんの意思でもある。

広野雪奈が拾ったノートより抜粋(判読不明が多い)

      ノートには放射性物質が付着していたため除染

 

戦局に望みなし 利害関係が複雑に絡み合っていた国々がいよいよ大きく二分され、

殺し合いが

 

レーダーで捕らえることも出来ない無人の殺人飛行機が飛び交う都会を離れ、親族全員

山中に逃れる

高い山に囲まれ、簡単には登れない穂高山中

この美しくも険しい北尾根を見ていると、おろかな人間の存在がバカらしくなる。

なぜに人は憎しみを募らせ、殺し合うのだろうか

己の遺伝子を残そうとするがための いかんともしがたい習性

この地球上に100億もの人々が生きようとするのは、無理なのだ。

食糧問題、飲み水の確保、限られた土地とエネルギー資源の奪い合い

 

2042年夏  7月か8月と思う

今日得た情報

最も老朽化が進んでいる浜岡原発に核弾頭ミサイルが撃ち込まれ、爆発し、核物質が多

量空中飛散

穂高山中まで達するだろうか

 

想定外の事態が発生しているらしい

ミサイルで破壊されたのは浜岡原発だが、敦賀、美浜、大飯原発が次々に爆発している

とのこと

中性子線による強大なエネルギーが誘発しているものと推測

 

日本にある原発だけでなく、中国やロシア、韓国、それがヨーロッパの原発へと爆発が

連動していった

 

シミュレーションによると太平洋側からの中性子線と日本海側からの中性子線が、もの

すごいエネルギーを内在させて衝突、

時空が歪み

 

 

2013年安部内閣

 広野雪奈が拾ったノートは極秘文書とされ、公開されることはなかった。

 地下深くに都市シェルターを密かに建設する計画が、わずかの閣僚の話し合いで決定

された。表向きは、核廃棄物の最終処分地として、強引に決定したのである。

 又、JAXAによる火星輸送ロケット開発の強力な推進と同時に、コロニー建設チーム

が発足した。

 国民の目は、経済浮揚策及び政治家の失言に注がれるように画策されていた。

 1999年の東海村臨界事故から目をそらせ、反原発運動が高じないように、そのま

やかしの安全性を信じ込ませるために、殊更に2000年問題を大きく取り上げ、国民

の意識をそらせたように。

 

 穂高岳周辺の入山は「地震崩落」という理由で禁止され、広野雪奈たち3人の被曝の

ことはいつしか忘れ去られていき、この恐るべき出来事は、ごく一部の、直接関与した

人のみの記憶にとどまるだけのものとなっていった。

 ゆえに、この出来事が報道されることはなかった。

 

おわりに

 これは、広野雪奈の岳友である海老出鯛子からの情報をもとに、書きました。

 海老出さんがネット上にこの恐るべき事実を公表しても、すぐに削除されてしまうそ

うです。

「薔薇乃かおりさん、ボーイズラブばかり書いてないでこれを小説にしてくれへん?」

と頼まれたのです。

 私の力不足のために、うまく小説に仕上げることが出来ませんでした。

この真偽は、各自で調べてみてください。

 最後になりましたが、広野雪奈様、橋口久雄様、西村裕二様のご冥福をお祈り申し上

げます。

2013年 初冬

                                薔薇乃かおり


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