No.576409

恋姫・鬼・無双 第一幕 Ep3

白雷さん

たんぽぽファンはいないものか・・・・


"ここにいるぞーーー!”

続きを表示

2013-05-14 23:08:37 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5833   閲覧ユーザー数:4762

「かわいい御仁に手を出すとは、下がれこのげすども」

 

 

そういいながら、私の前に立ったのは露出度の高い白い服をきた青い髪をした女性だった。え・・・私はちょっと場違いのその服装に戸惑う。それでも、彼女は本物の槍をその手に構えている。そして、その表情は真剣なものである。

 

「大丈夫であったか、可憐なお嬢さん?」

「え・・・はい。大丈夫。」

 

そうきめ台詞のようなせりふをいう彼女に私はそう答える。私はそんなせりふに戸惑うもそう答える。

 

「なんだ、てめぇは。」

「わが名は!と続けたいところではあるが、貴様ら下郎に名乗る名などない!というのが定番であろう!」

「はっ?お前、ふざけてんのかよ!」

「あっ、兄貴、こいつも高くつくんじゃないすかね。」

「ああ、確かに、よくみればこいつも相当な美人だ。へへっ、これは高く値がつきそうだ。」

「なっ、貴様っ!よくみればとはなんだ、よく見ればとは!」

 

え・・・そこですか、と私は思ってしまう。でも、青髪の女性はいたって真面目といいたいような表情をしていた。

 

「うるせえな、おい、お前らやっちまいな!」

 

そういうと、二人の子分が同時に青い髪の女性に切りかかる。でも、私はなぜか、安心していた。それは、この女性が守ってくれるだろうという希望からではない。それは、槍を構えている女性がこの男たちより、はるかに強いということがわかったからだ。

 

ガキンッ

 

私の予想はあたり、子分たちの武器は一瞬のうちに空をまっていた。それを、みたリーダーらしき人物は何があったのかわからないといったような面目でしばらく呆然としていたが、子分たちが震えているのを見て、逃げ帰っていった。子分たちもその男の後をおいどこかへ走っていってしまった。覚えていろよーとそんなありきたりのせりふを残しながら。

 

「大丈夫か?」

 

そんな言葉に私は、また・・・だ、そんな風に感じる。いつも私は守られてばっかりだ・・・お兄ちゃんに守ってもらってあの時、お兄ちゃんに見たいに強くなるって決めたのに、また、私は何もできなかった。強盗の一件の後も、今度そんなことがあっても、きっと今度は体が動くであろう、そんな風に思っていた。けれど、実際は違っていた・・・私はあの時とまったく変わらない無力だった。不意に私のこぶしに力が入る。私は悔しかった。何もできないでただ見ている弱い自分が、たまらなくいやだった。

 

「お嬢さん?」

 

私が黙っていたのを心配したのか青髪の女性はそう私の顔をのぞいてくる。

 

「ごめんなさい、大丈夫です。助けてくださり、ありがとうございました。」

「星ちゃーーん、まってくださいよーー」

「星、一人でいかれては危険です。」

 

私がお礼を言うと、後ろから、そんな女の子の声がきこえてきた。振り返ると、そこには息を切らしながらこちらに走ってくる女の子が二人いた。年は、みたところ、15歳くらいであろうか・・・私は、またまた、彼女たちのその服装に疑問を浮かべることとなった。

 

「おやおや、二人とも、遅かったではないですか。」

「星ちゃんが早すぎるのですよ。風の体力のなさを少しは考えてくれてもいいんじゃないですかー。」

「はぁ、風、それは偉そうに言うことではないと思うのだが・・・」

 

そんな混乱状態の私の目の前で3人は漫才のような会話をしている。とりあえず、ここがどこなのか、きかなくちゃ・・・そう思った私は、そんな会話をとめることにとまどいを感じながらも聞くことにした。

 

「あのーー、」

「おおっ、すまんすまん、こら、風稟、お前たちのせいでこの可憐なお方のことを忘れるところではなかったか。」

「いやー、星ちゃん、その風と稟ちゃんを続けて呼ぶのやめてくれませんかー。音のなる風鈴にしか聞こえないのでー。」

「そうですよ、星。それに、初対面の方にそんな言葉遣い。勘違いされますよ、あなた。」

「なに、まあ、それはそれで一興。」

 

そうして、また彼女たちのつまらないコントは続く。この人たちはいったい何者なんだ、そんな疑問が頭から消えることはない。

 

「あのっ!」

「おおっ、すまんすまん。それで、何用かな?」

「えーっと、ここがどこかお聞きしたいんですけれど。」

「だ、そうだ、風。」

「もー、そーゆーふーに将みたいに命令するのやめてなのですよー。風は歩く地図ではないのですよー。 質問に答えるとここは陳留の郊外ですねー。」

「陳留?えーっと、それは東京からどれくらい離れたところにあるんですか?」

 

聞いたことのあるようなないような名前だと思ったが、とりあえず、東京との位置関係を把握しておこうと思った。

 

「とうきょう? どこだ、それは、私は聞いたことがないが・・・風はあるか?」

「うーーん・・・とうきょう・・・唐橋という橋がこの近くにありましてー。」

「うそをつくなっ!」

「ぐーーー、」

「寝るなっ!」

「おおっ! 初めて聞く名前に思わず、自尊心を守るための防衛本能が働いてしまったのですよーー。 ふーーむ、とうきょう・・・ですか・・・きいたことのない名ですね・・」

 

そんな冗談も交えていた彼女であったが、彼女たちのそんなやりとりから、彼女たちが東京をしらないというのは本当なのであろう。というか、日本の首都を知らない人っていたんだなぁ・・・私はそう思いながら質問を変える。

 

「それじゃあ、ここは、日本のどこなんですか?」

「にほん・・・・?また聞いたことのない名ですねーーー。」

「え・・・・嘘でしょ・・・」

 

さすがに日本の国に住んでいて、日本という国を知らないということはない・・・何かがおかしい、そう思った。

 

「えーっと、その・・・」

 

聞くことが思いつかない・・・頭が混乱していて何を聞いていいのかさっぱりわからないのだ。

 

「本当に大丈夫か?お嬢さん?」

 

私が下を向いていると、本当に心配そうな顔でそう聞いてくる。とりあえず、自分のおかれている状況を確認しなくちゃ・・・そう思った私は質問を続ける。

 

「えーっと、先ほど陳留といっていましたけど・・・」

「はいー、正式に言えばここは陳留ではないですけど・・・近いところですねー。曹操様が治めている地域ですよー。」

「そう・・・そう・・?」

 

知りすぎている名前に疑問が出る。お兄ちゃんが三国志の世界が大好きで、漫画やゲームをたまに一緒に読んだりやったりしていたから、覚えている。陳留の曹操。確か、清平の奸賊、乱世の英雄とよばれた三国志上、もっとも有名な人物の一人だ。でも、なんで・・・私は確かにお兄ちゃんの家にいたはず・・・・これは、なにかのどっきり・・?でも・・・私は先ほどの男に切られた腕の傷をみる。その傷は紛れもなく本物だ。ということは・・・私はタイムスリップをしてきたのだろうか、三国志の世界へと。そんなまるでゲームの設定のような考えが頭にうかぶ。それはさすがに私の思いすぎだろうと思いながらも私は質問を続ける。

 

「もしかして、今は、霊帝という帝がいたりしますか?」

「もしかしたり、でもないですよー。帝様のことはみんなしっていますよー。」

 

ははは・・・そんな彼女ののほほんとした声に笑いしか出てこない。間違いない、私の疑問は確信に変わる。この世界は紛れもない三国志の世界だ。

 

「おっ、まずいまずい。」

 

そういう、青髪の女性は遠くのほうを見ながらそういう。ドドドッと何かが向かってくる音がする。

 

「お嬢さん、うわさをしていると、曹操殿が来たようです。」

 

そんな言葉にその女性が見ている方向をみると、馬にのった人たちが曹という旗を掲げながらこちらに近づいてくる。

 

「我々は、ここにいるわけにはいかないので、この辺で、失礼しようかと。お嬢さんは曹操殿にいろいろ聞いてみるのがいいかと思いますぞ。」

「あ・・・はい。わかりました。いろいろと、ありがとうございます。あの・・」

 

私は、その女性の提案に素直に乗ることにした。とりあえずは、自分の置かれている状況を確認して、これからどうするのか確認しなくてはいけない。それであるなら、道をさまようより、曹操に会うのが一番だと思ったからだ。

 

「私の名は趙子龍。では、またいずれ、お会いすることを願って。」

 

そういった彼女はそんなきめ台詞を残しながら足早に去っていった。連れの二人も待ってくださいーといいながら走っていってしまった。 って・・・ちょっと、まった・・・今、あの人、趙子龍っていった・・・?この時代で、その名は一人しか知らない。劉備に仕えていた五虎将の一人、ゲームで私がずっと使っていた人物、趙雲だ。・・・・でも、まあ、おんなじ名前なのかな・・・あの人、女性だし、私はそうぼけーっと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、貴方みたいなかわいい子がこんなところにいてはだめじゃない。」

 

そうぼんやりとしている私にそう声がかかり、周りをみると、私は先ほどの曹の旗を掲げた兵に囲まれていた。そんな彼らの姿に再び私は、本当に三国志の世界に来てしまったのだなと思う。

 

「あの、曹操さんを探しているのですが・・・知りませんか?」

 

私は、目の前のツインテールをしたかわいらしい女の子にそう聞く。その女の子は見た目は小さいが、彼女からあふれるオーラは普通の人のそれとはまったく異なっていた。

 

「あら、それだったら、私が曹操よ。」

 

そんな私の質問に彼女はそう、堂々と答える。え・・・、ちょっとまって。曹操って確か男じゃ、ないの?でもでも、さっき趙雲って名乗った人も女性だったし、あの人本当にあの、趙雲だったのかも・・・よく考えれば、なんで日本語が通じてるのか不思議だし・・・ここは、私の知っている三国志の世界とは少し違っているのかもしれない・・・私はそう考えていた。

 

「それで、貴方は?」

 

黙り込んでいる私に曹操となのった女の子はそう尋ねてくる。

 

「あっ、すみません。私の名前は夕霧愛里といいます。」

「夕が性、霧が名、愛里が字かしら・・・・?」

 

そうなのった私に曹操はそう聞いてくる。そういえば、確か中国ではそういうのがあったんだっけ・・

 

「そういうわけじゃないんですが。性が夕霧で名が愛里って言います。字はありません。」

「ふむ、字がないのか。変な奴だな。」

「おいおい、姉者。そういう言い方は失礼であろう。」

「おお、そうか、すまなかった。愛里というもの。」

「いえ、気にしていませんから大丈夫ですけど。あの・・・あなたたちは・・・」

「おおっ、名乗りが遅れた。私は夏侯惇。」

「私は、夏侯淵。再び、姉者の失礼をわびたい。」

 

夏侯惇に夏侯淵。確か、歴史上では曹操の従兄弟にあたる、曹操に仕えた武将。私はその名を聞き、私の目の前に堂々と立つ、女の子は本当にあの曹操なんだと思う。

 

「それで、あなたはこんなところで何をしているの?」

「よく覚えていないんですが・・」

「そう・・・何か、大変なことでもあったのね。」

 

私がそういうと、曹操は私の眼帯が隠しきれていない傷と手の傷をみながら、その表情を暗くして、そういう。私が、何かに襲われて記憶をなくしてしまったとでも考えているのだろうか。別にそういうわけではないのだが、でも、そんな彼女の優しさにちょっと心が温まる。

 

「それならば、私たちと一緒にきなさい。」

「え、ちょっ、華琳様?」

「なに、春蘭はこんなかわいい女の子をここに一人置いていこうとでもいうのかしら?」

「いえ・・そういうわけではないのですが・・」

 

華琳様??私は、夏侯惇がいった名前にほへっと首をかしげる。それに曹操も、春蘭とよんでいる・・うーん、ニックネームか何かなのかな・・・でも、私の知る曹操とは違うんだな。ちいさいけど、ものすごい偉そうだし。いろいろがんばってるんだなー、なんかかわいい。私は自分が知る曹操との違和感を感じながらもそんな風に思う。それにしても、あの曹操が華琳って。なんかやっぱかわいい、私は彼女たちのニックネームのセンスに驚いていた。

 

 

 

 

「では、愛里。私と一緒にきなさい。」

「うん!ありがとう。華琳ちゃん!」

 

 

 

「「「・・・・・」」」

 

私がそう元気に返事をすると、目の前の三人は呆然としている。あれ・・・私、何かへんなこと言った?知り合ったばかりなのに、ニックネームでよんだらまずかったのかな?ただ、親しくなれればいいと思ったのだけれど・・・

 

 

「きっ、貴様ーーーー!!」

 

そう考えている私に、夏侯惇がぷるぷる震えながら剣を突き出してくる。その殺気は本物だ。

 

「貴様っ、いきなり華琳様の真名を呼ぶとは何様のつもりだ。そっ、それに、ちゃん・・などと!わ、私でもよんだことがないのにーーーー!」

「春蘭、それは関係ないでしょう。とはいったものの、愛里。いきなりこの曹孟徳を真名で呼ぶとは、覚悟はできているのかしら・・・」

 

そう突っ込みをいれる華琳ちゃんだったが、彼女から出る、殺気は本物だ。後ろの夏侯淵も、その眼は殺気にみち、こちらをにらんでいた。私は、そんなにまずいことをしてしまったのだろうか・・・

 

「あのっ、その、失礼をしてしまったのであれば、謝ります。本当にごめんなさい。」

「あら、あなたは真名を許していない相手に真名を呼ばれることを、失礼とは思わないのかしら。」

 

そういって華琳ちゃんはこちらをその殺気を強めながらにらんでくる。

 

「言い訳みたいに聞こえたらごめんなさい。でも、私、その真名というものを知らなくて・・・」

 

そういう私に今度は華琳ちゃん自身がその鎌を私の首に突きつける。ひっと思わず声が出てしまった。

 

「あなた、それは本気で言っているのかしら?嘘だとしたら、貴方の首、ないわよ。」

「嘘じゃありません。本当に私、知らないんです。」

 

そう、殺気をこめてこちらをまっすぐに見てくる彼女の目を私は受け止め、しっかりと見つめ返す。嘘は言っていないのだ。どこも悪いところはない。

 

「そう・・・。確かに、嘘は言っていないようね。」

 

彼女はじっと私の目をみてからそういい、その鎌を私の首から離す。はぁ、っと安心のため息が漏れる。

 

「愛里。一応いっておくけど。真名というものは神聖な名で、心を許した相手だけが呼ぶことを許されるもの。つまり、その真名を勝手に呼ぶことは、その人を汚すものと同じことよ。死んでもおかしくはない。」

 

そう彼女は私に告げる。その言葉に、私はこの世界の文化を知ることとなった。

 

「ごめんなさい。」

 

私は、そう素直に頭を下げて謝る。その態度に夏侯惇も夏侯淵も手に構えていた武器を下げる。

 

「もう、いいわ。それにしても真名を知らないということはどういうことなのかしら?」

「はい・・・実は愛里はこの世界の人間ではないんです。」

「この世界の人間ではない・・・それはどういうことかしら?」

 

私のいったことに曹操はよくわからないといった風に首をかしげる。それは、そうだ。私だって突然目の前に現れた人が私はこの世界の人間ではないといっても、よく理解はできない。しまったな・・そう思う。未来からきた、なんていったらそれこそ怪しまれるし、確かに、この人たちの字をここで言い当てればそれを信じてもらえるかも知れないけど、でも、それはこの人たちの未来を変えてしまうかも知れない。だから・・・

 

「あ、いえ。 愛里はこの大陸の人間ではないということです。この大陸のずっと東にある、小さい島に住んでいました。」

 

嘘はいっていない。曹操もそれに気がついたのか嘘だと言及することはない。

 

「それで、お兄ちゃんを探すために迷ってしまい、それからよく覚えていないんです。」

「へー、あなた、お兄さんがいるの?」

「はいっ!本当のお兄ちゃんではないですけど、お兄ちゃんです! 北郷一刀っていう名前なんですけど・・知りませんか?」

「いっていることが、よくわからないのだけれど。ふーーん、北郷・・・一刀・・ねぇ。」

 

私がここにきたのだ・・・もしかしたらお兄ちゃんもここに来て、すでに曹操と会っているのかもしれない。しかし曹操はその首を横に振る。

 

「ごめんなさいね。」

「いやっ、いいんです。」

 

私の表情が暗くなったのか、曹操がそういう。本当にやさしい子なんだなとそう思う。お兄ちゃんはよく、曹操は非道だ、と書かれている本などをみてよく怒っていた。曹操は、民を心から考えている、現実を見ている。だからこそ、彼は厳しいそして、優しい。彼は立派な王だ。そうお兄ちゃんはよく言っていた。確かに・・お兄ちゃんのいっていたことは正しいのかもと、私は思っていた。

 

「愛里、私たちときなさい。そうすればあなたのお兄さんも、見つかるかもしれないし。」

「はいっ!」

 

私は、そのやさしさに、元気に答える。

 

「えーっと、私は真名というものがないですけど・・・あえて言えば、愛里がそれにあたるのかな。これから、よろしくお願いします。」

 

そう、改めて自己紹介をした私にまたまた三人は呆然としていた。

 

「へっ、へぇー、私たちは貴方の真名を勝手に呼んでいたのね・・・」

「えっ、あっ、いや。文化が違うので気にしないでください。」

「ふっ、あはは。 気にいったわ。貴方。先ほどの私の覇気にもおじけることなく堂々と自分の考えを貫いたその根性。それに、その器の大きさ。これからは私のことを華琳とよびなさい。」

「華琳様っ!」

「あら、春蘭。 あなたは主の判断が間違っているとでも言うのかしら?」

「うっ・・・。わかりました。  愛里、私のことは春蘭とよんでくれ。」

「愛里、先ほどはすまなかったな。私は秋蘭だ。よろしく頼む。」

 

そう、真名を預けてくれた彼女たちに、真名はどんな風に書くのかときいたあと、私は、元気に答えた。

 

「うんっ!よろしくねっ!はるちゃん、あきちゃん!」

 

そういわれた春蘭ははるちゃんーーー?と目をまんまるにしながら驚いていたが、秋蘭のほうは、あきちゃんか、それもまた・・・と、なにげうれしそうな顔をしていた。

 

そんな私たちの様子をみながら華琳ちゃんはよこでくすくす笑っていた。

 

 

 

「愛里、ところであなた、”天の御使い”について、知っているかしら?」

 

そう華琳ちゃんがそのときふいに聞いてきたのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

~翠視点~

 

 

私は今、騎兵100を連れ、蒲公英たちが住む村へと全速力で向かっている。その私の額には緊張の汗が伝わる。蒲公英、みんなどうか無事でいてくれ、私はそう強く思いながら走らせる馬の速度をさらに上げる。

 

 

 

 

 

#####

 

「翠!翠はいる!」

 

私が庭で稽古をしていると、そう母様があわてながら、私の声を呼んでいるのに気づく。私は、母様がこんなにあわてるのは珍しいなと思いながらも、鍛錬用の槍をそこに置き、母様のもとへと向かった。

 

「母様、いったいどうしたんです、そんなにあわてて。」

 

私は、そう廊下で出くわす母様にそう聞く。彼女、私の母様の名前は馬騰。ここ、西涼地方で、連合の代表をやっている。いつもは、その代表として、威厳があり、娘の私ですら近づきがたい雰囲気をかもちだしていた。しかし、今はどうだ。その威厳はまったくないとはいわないまでも、いつもの様子とはずいぶんと異なっていた。その母様の額からは汗が流れ出ている。そして、その目は私を見つけると、大きく見開かれる。

 

「翠!」

 

母様は私の肩をつかむと再びそう私の名を呼ぶ。その手には、わたしですら痛みを感じる力がこもっていた。

 

「いたいです。母様」

「ああ、ごめん。でも、蒲公英がっ!」

 

そう謝りはするがその力は緩むことはなかった。

 

「母様、落ち着いてください。蒲公英がどうかされたのですか?」

 

蒲公英、名を馬岱。私の従妹である。昔はよく、一緒に遊ぶことが多かった。しかし、蒲公英の両親の、小さい子供にはいろんなものを見せ、大自然の中でのびのびと育ってほしいという強い意向があり、数年前、蒲公英と私は別れることとなった。それ以来、私は将になるために、忙しく、蒲公英に会うことはかなわないでいた。それでも、私は、あんなむじゃきで、元気いっぱいの蒲公英が大好きであった。私は、いつか彼女とともに鍛錬をしながら、道を一緒に歩む日々を楽しみにしていた。

 

「翠・・・今、伝令が入ったわ。蒲公英の村が賊に襲われたと。」

 

だから、その報告が入ったとき、私は、冗談だと思った。そんなわけ、あるはずがない・・そう思った。

 

「母様・・?それは、なんですか?なにかの冗談か、なにか・・なのですか?」

 

私は、それが冗談であってほしいと強く思った。けれど、私は知っていた。母様がこんな冗談をつく人ではないということを。私はぎゅっと、そのこぶしを握る。私が・・行かなくては。そんな思いがこみ上げてくる。彼女は、私たった一人の妹みたいな存在なんだ。私が行かなくては・・・私が助けなくては、そう強く思った私は、駆け出していた。

 

「ちょっ!翠、待ちなさい。」

「すみません母様!私が行かなければ行けないのです!」

「待ちなさい!」

 

母様が言いたいことはわかっている。賊の数もわからない、そして、今急いで集められる騎兵の数はせめて100。もし、賊の数がはるかにそれをうわまっていたら、それは助けるどころの話ではない。しかし・・その報告はいつ届く、部隊を形成するのにどれくらいの時間がかかる・・・その間に、蒲公英は、みんなはどうなるのだ。私は、母様のそんな呼びかけを無視し、騎馬隊をすぐに構成し、すぐに蒲公英のいる村に向かった。

 

 

#####

 

 

 

 

「なんだ・・・よ、これ・・・」

 

私は、村についたとき、そんなことしかいえなかった。ただ、呆然と立っている私の前には焼け果てた村。見るからに生存者はいない・・うそ、だよな・・・私はそう絶望に包まれながら、馬からおり、一歩一歩蒲公英がすむ家へと歩いていった。

 

「たん・・・ぽ、ぽ」

 

私は彼女が、彼女の家族と一緒に住んでいた家の前に立つ。その光景を前に自然と涙があふれてくる。なぜならそこには、何もなかったから。ただ、焼け落ちた後がそこにはあった。なんだよ・・・なんだよ・・これはっ!私はその焼け落ちた家に一歩一歩向かう。

 

「あ・・あっ・・・」

 

そう私は言葉にできない感情を漏らしながらただその前に膝をつく。普段であれば、兵たちの前では堂々としていなくてはいけない。しかし、そんなことはいま私にはどうだってよかった。いや、そんなことは考えることができなかった。ただ、押し寄せる絶望感・・・

 

「たんぽぽ、蒲公英っ!」

 

私はその焼け落ちた家の瓦礫などを手で掘り返し始めた。そこには鋭いものも混じっていたのか、私の手の平は血で赤く染まっている。でも、私はそんなことどうだってよかった。嘘だ、嘘だ・・蒲公英が死ぬわけがない、彼女が死ぬわけがないんだ、私はそんな考えにとらわれながら、ただ無我夢中でその瓦礫をどけていた。

 

「馬超様、もうやめてくださいませ。お手を怪我されています。」

 

そういいながら一人の兵士が私の手を止める。しかし、私はそれを振り払う。

 

「うるさい、うるさいっ!蒲公英はここにいるんだ。まだ、私の助けを待ってるんだ。だからっ!私は!」

 

その言葉を続けることはできなかった。だって、それをいってしまえば、彼女を助けられなかった弱い自分からの逃げになってしまうから。助けられなかった・・・守れなかった。手を止める私にそんな感情がどっと押し寄せる。それとともに、お姉さまと呼びながら、無邪気に笑う彼女の笑顔も思い出す。私は・・・私は・・・どうしようもないそんな思いを私は言葉にできない。

 

「たんぽぽーーーー」

 

私のそんな悲痛な叫び声は、焼けはて、生存者がいない静かな村にただ、響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

~一刀視点~

 

 

「さて、蒲公英。どこにいこうか?」

 

俺たちはあれから、ただ山から抜け、街道にそって歩いていた。

 

「え・・お兄様、知らないで歩いていたの?堂々と、前を歩いていくから知っているのかと思ってたよ!」

「いやいや、たんぽぽが”お兄様もつれてってあげるね”なんていったから俺はてっきり知っているのかと思っていたぞ?」

「えっ、あれはそのっ、その場の勢いというか、なんというか・・」

「冗談だ」

 

そんな風にあわてながら手を顔の前で振っている蒲公英を俺は見ながら、そういって彼女の頭に手をのせる。

 

「んもうっ!お兄様はいじわるなの!さすがの蒲公英でもプンプンになっちゃうんだからね!」

「はいはいー。」

「また、そうやって軽く流して!いじわる!」

 

そういいながらも蒲公英は笑っていた。

 

「それで、お兄様、今はどこに向かっているの?」

「そーだな。さっき、休んだときに道行く人にきいたんだが、ここを南に歩いていくと、街があるらしいんだが・・」

「うんっ!しってるよ!たんぽぽ、たまにお使いでいってたもん!」

「なんだ、知ってるのかよ・・でも、そこで、馬を二頭手にいれて、そのまま南下する。」

「えー、でも、たんぽぽお金持ってないよ・・・」

「それは、多分、何とかなる。」

 

そういいながら、俺はポケットに入っていた携帯とボールペンを取り出し、蒲公英に見せる。こんな時代だ。携帯はこの時代の人には使えないだろうが、珍しい材料でできた鏡として売ればそれなりの価値はつくであろう。そして、何よりボールペンは、この時代でも使えるし、珍しいというか、商人は見たことないであろう。これも、間違いなく高く売れそうだ。

 

「それは何?」

「えーっと、不思議な鏡と不思議な筆だ。」

 

そういって、蒲公英に説明しながら手渡すと、鏡はよく見えなーいといっていたが、ボールペンには驚いていた。

 

「お兄様、こんな珍しいもの売っちゃっていいの?蒲公英、働けるよ?」

 

蒲公英が心配そうにそう聞いてくる。確かに、働いてお金をここで稼ぐという方法はあった。しかし、それは、今すべきことではない。今すべきことは、なるべくここから遠く離れたところに行くことだ。あの時、あの場に居合わせた賊は俺が全滅させた。しかし、中には逃げた賊もいる。その賊にはもっと、仲間がいるのかもしれない。俺が、ここで働いていれば、いずれ顔が知れ渡りその賊たちが報復に来るかもしれない。そうしたら街の人に迷惑をかけることになる。それに、また、蒲公英にあの、残酷な光景を見せることになってしまう。それは、あの、馬岱であるなば、いつかは見ることになるかもしれない。けれど、今じゃない・・・

 

 

最初、あの村を出ようとしたとき、馬超のところに行こうと言おうとした。馬超はお姉さまといっていたし、そこにいけば、賊についても安心できるであろう、そう考えた。しかし、蒲公英が馬超のところへといきたいなら最初から俺に言っているはずだ、そう思う。それを言わなかったということは、何か話したくない事でもある、そう思ったのだ。そのうち、彼女が向き合っていかなければいけない問題かもしれないが、俺はそれを知らない。それに、今、彼女に必要なことはゆっくり、少しずつでもいいから前に歩いていくことだ、俺はそう思う。

 

「うーん、俺は、蒲公英がしっかり働けるかが心配でしょうがないんだ。」

 

俺はそう心配しながら、俺の顔をのぞく彼女にそう答える。

 

「んもー、お兄様はいじわるすぎ!ならいいもん!それを売って早く、馬を手にいれよ!」

 

そう彼女は、うがーっと手をあげながら、すこしいじけつつもそういった。

 

 

 

そうして数刻後、携帯とボールペンは思った以上の値段で売りさばくことができ、二頭の馬を手に入れるどころか、俺たちはこれからの旅に少し余裕ができた。

 

馬を手に入れた俺たちは、そのまま南下し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ1

 

 

「おーい、一刀、帰ったぞーーー!」

 

わしは一刀の祖父だ。6週間前、大変なことがあり、一時は一刀もその心を失ってしまったが、再び一刀は取り戻すことができた。さすが、わしの孫じゃい、そう思う。

 

「おーい、一刀!暇なら倉庫の整理を手伝ってくれんか!」

 

わしはそういうが返事は返ってこない。また、愛里のところか・・わしはそう思う。

さてさて、わしは蔵の整理でもするかの・・そう思いながらわしは蔵に歩いていく。なんじゃ・・・蔵が開きっぱなしではないか・・一刀の奴、蔵を開けたら必ずしめろといつも言っておるのに、そう思いながらわしは蔵に入る。その途端わしは、まぶしい光に包まれた。

 

 

「なんじゃ!なんじゃ!これはーーー!」

 

わしはそのまぶしい光に包まれながらもその目を開ける。そこにはひとつの銅鏡が落ちていた。そして、その銅鏡に見えるのはその光のもと。

 

「ああ、そろそろわしも、ハーゲ21に入るべきかの・・・」

 

そうわしは悲しく一人でつぶやきながらも、その銅鏡を手に取り、それを倉庫の奥へとしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ2

 

 

「なあ、たんぽぽ・・・・」

「はぁ、お兄様・・・」

「これは、問題だよな・・・」

「うん、問題だよー。」

 

あれから、街をかっこよく出た俺は、時もたつことなく、その身を森で休めていた。

 

「うん、でもお兄様、あんな強かったんだから、蒲公英は問題ないと思ってたのに。」

 

ちょっと、がっかりしたような目で俺のことを見てくる蒲公英。あれから、街をでて、買った馬にかっこよくのった俺は、馬が駆け出したとたんに落馬した。ゲームなどでは簡単そうに見えたのが以外に難しかったのだ。その後もなかなかうまくいかず、結局は馬に華麗にのって走る蒲公英を、俺は馬の手綱をひきながら走って追いかけていた。そして、さすがに疲れて、蒲公英に休憩させてくださいと、お願いしたのだ。

 

「まあ、でも。人にはいろいろ得意不得意があるよ!大丈夫っ!」

「はぁ・・・」

 

そういって俺を励ましてくれる蒲公英。そしてほんとに情けない俺。

 

「蒲公英先生、馬の乗り方を教えてください。」

「先生っ!? わわっ、たんぽぽ、先生になっちゃたの?」

「お願いします、先生。」

「うんっ!うんっ!いいよー。そんなにいうのならたんぽぽが教えてあげるね!」

 

かっこよく、馬を手に入れたつもりであったが、逆に情けなくなってしまったと思いながらも、それから蒲公英に乗馬コース1”初心者でも上手にのれちゃうもん”を開いてもらう俺であった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

愛里ちゃんは魏ルート。思わず、華琳様を華琳ちゃんとよんでしまうところがかわいい。

はるちゃん、あきちゃんも新鮮じゃないかな?

 

翠は少しかわいそうだが・・・たえてくれ。

 

たんぽぽ。君はかわいいので何でも許す。乗馬コースとりたいな・・

 

 

ではでは

 

またーーーー。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
23
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択