No.573990

たとえ、世界を滅ぼしても ~第4次聖杯戦争物語~ 偽称宣告(黒銀相対)

壱原紅さん

※注意

こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
尚、しっかりとこの場で警告をさせていただいているので、受け付けないという方は無理に入る必要はございません、どうかブラウザバックしてくださいませ。

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2013-05-07 15:16:46 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1004   閲覧ユーザー数:999

逢いたいと願った相手がいて、その相手に問いかけたい事柄があった。

探して、探して、一人は見つけて、でも会えなかった。

 

まだ、見つけてない相手がいる。

 

何処にいる、何処にいるのだろう。

 

逸る気持ちが理解できない、何故こんなにも求めているのかが、分からない――――――――――ああ、どうして、私は顔も知らぬ相手を求めているのだろうか?

<SIDE/言峰璃正>

 

―――冬木教会に、その者達は集まっていた。

 

老成な神父は、その彫りの深い顔を歪ませる事無く、静かに思う。

 

(ふむ、まぁ予想の範囲内と言ったところか…些か集まるのに時間がかかったようだが…?)

 

冬木教会の信徒席に蟠る深い闇、そこにはそれぞれの異形の姿がある。

 

…………時臣と璃正が、キャスター討伐を企ててから、1日が明けていた。

 

その間にも凶行を繰り返すキャスターの行動を諌めるべく、昼過ぎにマスター召喚の信号を放ってから【3時間】。

堂々と冬木教会に姿を現すような無防備なマスターは1人もいなかったが、代わりに差し向けられた使い魔はきっちり5体。

全員が全員とも、教会への表敬など意中になく、ただ話だけは聞いておこうという魂胆である。

時臣や行方不明であったケイネスの使い魔もいる以上、ここにキャスターとアサシン以外の、【全て】のマスターとサーヴァントが揃ったとも取っていいだろう。

 

「些か時間に怠慢な者がいる上に、礼にかなった挨拶を交わそうという御仁はどうやら1人もいないようだ……では、単刀直入に用件に入らせていただく」

 

淡々とした口調で、璃正は【無人の信徒席】に語りかけ始める。

 

「諸君らの悲願へと至るところの聖杯戦争が、いま重大な危機に見舞われている。

本来ならば聖杯は、それを求める者に対してのみ、その力を分け与えてサーヴァントの契約を可能ならしめる。

ところがここに――――――――1人の【裏切り者】が現れた。

彼とそのサーヴァントは、聖杯戦争の大義を忘れ、貸し与えられた力を己の賎薄な欲望を満たすべくして濫用し悪徳を重ねている。」

 

無人の信徒席の闇に潜み、その話を黙って聞いている使い魔の主達は、ただその話を聞いている。

彼等が何を思い、何を考えているかは分からないが、【魔術師】である以上決して無視できない内容である筈だ。

 

「それが今回のキャスターのマスター。

この男は昨今の冬木市を騒がせている連続殺人及び連続誘拐事件の下手人であることが判明した。

彼は犯行に及んでサーヴァントを使役する事に成功、そしてその魔術の痕跡を平然と放置している……この重大な違反行為が、どのような結果を齎すか―――――――――説明しなくとも、諸君らは分かるであろう。

故に、私は彼のマスターとサーヴァントを、聖杯戦争そのものを脅かす【敵】と判断した。

非常時における監督権限をここに発動させ、聖杯戦争に暫定的ルール変更を設定させていただく。」

 

厳かに、璃正はそう宣言すると。

カソックの袖をまくりあげて、使い魔達に右腕を見せた。

その肘から手首にかけてを、びっしりと覆っている刺青、いや、それは―――――全てが、【令呪】であった。

 

「これは、過去の聖杯戦争を通じて回収され、今回の監督役たる私に託されたものだ。

決着を待たずしてサーヴァントを喪失し、脱落したマスター達の遺産――彼らが使い残した令呪。

私はこれらの予備令呪1つ1つを、私個人の判断と監督役の権限で任意の者に移譲する事が可能だ。

今現在、サーヴァントを統べる諸君らにとって、この刻印は貴重極まりない価値を持つであろう。」

 

――――これこそ、言峰璃正を初めとした、これまでの監督役の【権威】を裏打ちするものである。

 

令呪とは聖痕(スティグマ)であり、聖杯によって戦いの運命を背負わされた証。

 

その【令呪を宿す】という現象そのものは奇跡であっても、

ひとたびマスターの体に顕現した後の刻印、それ自体はあくまで消費型(フィジカル・エンチャント)の一種でしかないのだ。

 

 

いかに強力無比な力を持っていようとも、その機能は、呪的手段によって移植や譲渡が可能となるのだ。

そして監督役の持つ令呪だけは、璃正にのみ移譲権限が与えられている。

 

たとえこの腕を切り落とされようとも、他者が奪い取ることはできないのだ。

 

 

だが――令呪には、それ以上の意味がある。

戦いの運命を象徴すると共に、【サーヴァントの制御装置】としての意味が。

 

「全てのマスターは直ちに互いの戦闘行動を中断し、各々、キャスター殲滅に尽力せよ。

見事キャスターとそのマスターを討ち取った者には、特別措置として追加の令呪を寄贈する。

もし単独で成し遂げたのであれば達成者に1つ、また他者と共闘しての成果であれば全員に1つずつ、我が上の令呪が贈られよう。

そしてキャスターの討滅が確認された時点で、検めて従来通りの聖杯戦争を再開するものとする。」

 

カソックの袖を戻すと、璃正はフッ、と皮肉気な笑みを浮かべるとこう締めくくった。

 

「さて、質問がある者は今この場で申し出るがいい――――もっとも、【人語】を発せられる者に限らせてもらうがね。」

 

その言葉を最後に、一斉に音を立てて使い魔達が去っていく。

誰一人として残らず、今度こそ無人の静けさを取り戻した礼拝堂で璃正神父はほくそ笑む。

 

(キャスター陣営がどれだけ持ちこたえられるかは分からないが、そう易々とはいかないだろう。

自らの敵にまで令呪が配布されるのだと分かっている以上、同盟を組むのを選ぶ者はそうはいるまい。

下手をすれば出し抜こうとする輩も出てこないとは限らない…せいぜい惑い互いに足を引っ張り合って消耗してくれたまえ。

綺礼もアサシンで他のマスターの情報を随時告げてくれている―――――――任せたぞ綺礼、お前の働きが時臣君の勝利に繋がるのだからな。)

 

本当に、自分の息子はよくやってくれていると璃正は思っている。

俄仕込みの魔術師でしかない綺礼が、ここまで敏腕のマスターとしてサーヴァントを御するとは予想外であった。

 

信仰・教会・そして今は亡き友との約束の為に、自らの一人息子が成果を上げている。

これほどまでに父親として幸せな事があるだろうかと、言峰璃正は感じていた。

 

 

………………………その息子が、今まさに、【何処】にいるのかを知る由もなく。

 

 

<SIDE/言峰綺礼>

 

教会で集会が行われているのを知りながら――――――円蔵山・柳桐寺裏の池に、綺礼は辿り着いていた。

…今の時間帯をいうのならば、それは【夜の訪れを告げる夕方】である。

 

アサシンの案内をもって辿り着いた池の畔は、寺に龍が住んでいると言わせるぐらいの広さはあった。

しかし、魔力の痕跡はあるものの、肝心のサーヴァントの姿はやはり無い。

一体今は何処にいるのか…?そう思いながらも、アサシンの情報を信じるのならばそのサーヴァントの訪れを待つしかないのだと内心溜息を吐いた。

 

(――――面倒な、下手に時間をかけると父や師に気付かれてしまう。

しかし【答】を持つ者に逢えるかもしれない可能性が潰えるよりは、やはりマシか……)

 

既に手を打ってはいる。

どのようなサーヴァントかは結局まだ分かっていない為、まともに会話が成り立つのかも怪しい。

万が一にでも、キャスターやバーサーカーのような狂気に囚われたサーヴァントだった場合は令呪をもって全てのアサシンに、そのサーヴァントを殺害させるつもりだ。

 

『綺礼様、周辺に異常はありません…このまま監視を続けます。』

『分かった、何者の接近も許すな。』

『はっ!』

 

また、寺の人間は起きてこないようにしている。

結界も張ってあり、まず一般人は侵入してこない。

そして綺礼は、此処まで【10人】連れてきたアサシンの【その半分】を、

他のマスターとサーヴァント、そして使役される使い魔が乱入してこないように監視させていた。

 

例え、教会に招集を掛けられていたとしても、それに【本人】が出る必要はないのだ。

むしろ、こういう時を狙って行動する陣営も存在するのだと、綺礼は知っている。

 

 

「衛宮切嗣…」

 

 

ふと【奴】ならば、この状況をどう思うだろうか、と考えた。

自らの『正体』を知る為だけに、安全地帯からノコノコと出て来た綺礼の事を。

…いうまでもない、紙の上でしか知らない男は、きっと【愚か】だと蔑み侮蔑するだろう。

戦争で自ら拠点を大した目的も無く出ていくのは、自殺行為でしかないのだから。

 

そうこう考えている内に、夕日が地平線の向こうへ、徐々に消え去っていく。

太陽が沈めば、【夜】………聖杯戦争の、行われる時間帯に、なる。

 

そんな中、山から見ているその景色は、一般的にはとても美しいモノだった。

だが、言峰綺礼には頭では理解できていたが、やはり―――――

 

 

(なんて―――――【醜い】のだろう。)

 

 

心底どうでもよくて、下らなくて、どうでもいいものにしか―――――――見えなかった。

 

 

 

 

 

 

―――――――夕日が消えると同時に、『ホォウ』と梟の鳴き声がした―――――――

 

 

 

 

 

……………………ここで、少しだけ言い訳をしておこう。

別に、この時に綺礼は決して気を抜いていた訳ではない。

また、アサシン達もしっかりと周囲を警戒していた。

池を囲むように、アサシンが5人。

そこから500メートル離れた位置に、綺礼。

何かあっても、サーヴァントならすぐにでも対処できる距離だ。

別に慢心していた訳でもない、正体不明の相手がいるという事で、むしろ警戒していた。

 

この包囲網に対抗できるのは、それこそ同じアサシンのサーヴァントか、遠距離攻撃を得意とするアーチャーかキャスターだっただろう。

だからこそ、彼等はそのサーヴァントが現れるまで、接近してくるまで待ち構えていようと考えていたのだ。

アサシンが実体化していたのも、その気配を感じなかったからだ。

 

故に、その計画は成功するモノで間違いなかった――――――――――――そう、その相手が、例え弱体化していようと【彼】でさえ、無ければ。

 

 

 

 

 

 

                 「――――――――1人目」

 

 

 

 

 

 

 

――――ブズシャァッ!!

 

 

 

(…………な、に?)

 

 

綺礼が予想もしていなかった事態が、起こった。

 

 

 

血が、舞った。

 

一体のアサシンが、仮面の下から、黒い衣服から、血を流し硬直していた。

 

 

池を警戒していたアサシンの1人、大柄な男の体躯をしている暗殺者の背後。

言峰綺礼が見つめる視線の先―――――――【誰か】の白い手が、その背中を貫き心臓を掴み、無理矢理抉りだしていた。

 

 

 

                銀の髪が、血に塗れ、濡れる。

 

 

               ―――――――その時、言峰綺礼は

 

 

              赤い紅い、鮮血の色に、酔いしれて。

 

 

               ―――――――その、青い蒼い瞳と

 

 

            血塗れの外套が、昇り始めた月で、照らされる。

 

 

             ―――――――目が合ったような、気がした。

 

 

 

 

             銀色の【咆哮の主(第八のサーヴァント)】が、其処にいた。

 

 

 

 

 

 

赤い紅い血を浴びて

 

この気持ちは今は昂ぶる

 

 

けれど心は冷めたまま

 

 

殺すべき相手を見据えるだけ

 

 

 

――――――――――【敵】は、殺そう、今までずっとそうしてきたから。

 

NEXT

【後書き】

 

とうとうドラグーンは(マスター関係で)恐れていた相手と、そして言峰綺礼はどこかで(答え関係で)焦がれていた相手と遭遇してしまいました。

そして次回はドラグーンVSアサシン5名(1名脱落)+言峰綺礼!!

不意打ちで一人マミられてしまったアサシン陣営の命運はいかに!?

期待せず次回をお待ちくださいませm(__)m

ここまでの閲覧、ありがとうございました!

 

今回は、【洗礼(Fate-stay night A.OST)】をBGMにしました。

※感想・批評お待ちしております。


 
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