No.576154

たとえ、世界を滅ぼしても ~第4次聖杯戦争物語~ 殺戮賛華(異常存在)

壱原紅さん

※注意

こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
尚、しっかりとこの場で警告をさせていただいているので、受け付けないという方は無理に入る必要はございません、どうかブラウザバックしてくださいませ。

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2013-05-14 01:27:59 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1345   閲覧ユーザー数:1338

 

紅い、赤い、朱い、緋い―――――血が、辺りを一面に染めていく。

 

噎せ返るような匂いを自分は誰よりも知っている。

 

いつだってそうだった、忘れてしまいそうだった事に少しだけ驚いた。

 

なんてことはない、

ただ、あの白い主の【夢】に感化されていただけ、

思い出すという行為すら意味がない、だから平気だこんなのはずっとしてきた事。

 

そうその筈なのに――――――平気な筈なのに、血塗れになる事が【嫌だと】感じているのは、何でなんだろう。

<SIDE/言峰綺礼>

 

 

夜の帳が降り始め。

梟の鳴き声が響く、人気のない池の畔。

本来なら、乾いた草の香りと池からの湿気た空気しか感じられないそこを。

 

今―――――血の臭いが、満たしていた。

 

大柄の男…アサシンのサーヴァントの背から生えた一本の腕、それがその全てを生み出していた。

 

一体いつの間に現れたのか、どうやってアサシンの不意を付けたのか……?

 

しかし、言峰綺礼はその事実よりも、自らの視線が【囚われている事】に衝撃を受けていた。

 

 

 

アサシンの身体の中心から生えた、白い白い掌が、赤黒い【ソレ】を握り締めている。

まだ、潰されていないからか―――――どくり、ドクリ、と脈打つ【ソレ】。

赤い、紅い、朱い、その内臓が、その命が、抉り取られたというその行為。

その、残酷で凄惨な行いを、悍ましいというよりも酷く――――――

 

 

(ち、がう――――――違う!こんな筈が無い、アレが、あんなモノ(他者の心臓)が……■■い等と、思う筈が、ない…!)

 

 

時々、綺礼の思考の片隅に過る【影】。

アーチャーこと、英雄王ギルガメッシュに語られたことにより、感じる事が多くなった【モノ】

それが、よりにもよって今現れてしまった事で、池から離れた位置で待機していた綺礼の思考が、一瞬固まった。

 

 

だが…………少なくとも、【敵】の襲撃に、司令塔でもあるマスターが動揺するのは………致命的であった。

 

 

『綺礼様!お逃げください―――綺礼様!』

『何故―――我等はみていた筈!?』

『一体―――――――何処から!?』

 

パスでマスターに語り掛けるアサシンもいれば、動揺しているアサシンもいる。

ここで一喝してすぐにでも行動に移れば、一気に離脱し逃走する事も可能だったのだから。

その綺礼とアサシンの戸惑いと迷いを嘲笑うように、【誰か】は一気に残りのアサシンへ襲い掛かる――――――!

 

 

「貴様何処から………(ブバチャァッ)!っがぁ!?」

 

 

ズッ!ブチィッ!!と音を立てて、前方に貫かれていた腕を心臓ごと引き抜き、

【誰か】は迷う事無くソレ(心臓)を、近くのアサシンへ投げつけた。

 

崩れ落ち消えて逝く巨漢のアサシンの亡骸へ目も向けず、投げつけられた心臓は別のアサシンの顔面に大量の血を撒き散らして叩きつけられる。

仮面に付着し視界を鮮血が染める――――そのアサシンは視界を一瞬でも、【封じられた】のだ。

 

……それだけで、【彼】には、充分だった。

 

 

 

「―――――――――2人目」

 

 

ガッ!ゴキィッ!!メボギャッ!!

 

 

「――――――!」

 

血のついた視界では、烈風の如き疾走を躱し切れなかった。

背後に回られ、両腕で首の骨を圧し折られ、全力の膝蹴りで背骨を粉砕された。

 

―――――――断末魔すら、そのアサシンは、最後まであげられなかった。

 

…しかし、おかしい。

余りにも、【今の】は威力が強すぎる。

例え不意打ちだったとしても、サーヴァントの蹴り如きで、同じサーヴァントの骨をここまでアッサリと砕けるのだろうか?

 

そんな思考を脳裏に過ぎらせた、残りの3人のアサシンが一気に警戒心を最高にまで引き上げた。

 

『アレは相当の手練れ、綺礼様には申し訳ないが、此処で仕留めるより他にはない!』

『捕縛は不可能、逃走してもいずれはぶつかり合う事になるのだからのう、致し方なかろうて』

『しかし無傷では倒せない相手と視た、いかがする?』

 

ダーク短剣を構えて、パスで会話をするアサシン達を尻目に、そのサーヴァントは睨み付ける。

そして考える暇を与えないというかのように、そのまま一気に3体のアサシン目がけて突撃する―――――!

 

「っ散れ!」

 

咄嗟に言い放った1人のアサシンの声に、残りの2人も同時にその場から飛び退く。

ザッ!と音を立てて間一髪、最初のアサシンを貫いた鋭い手刀が、その空間を薙ぐのが見えた。

 

そこにすかさず死角から痩身のアサシンがダークを叩き込むが、その行動を予測していたのだろう。

動きを止めていたにもかかわらず、背後からダークが当たる一瞬前に躱す事で難を逃れた。

斜め後ろに下がったサーヴァントの姿が、月に照らされる……

 

 

 

その姿に、一瞬でも息を呑んだのは、誰だったのだろう。

 

銀の月、それに照らされて、赤と白と、そしてソレを纏った【銀色のサーヴァント】が、そこに在った。

左手に、殺したアサシンから奪ったのだろうダークを携え。

血塗れの右手を、拳の形で握り締めている。

明らかに、殺意を込めた穹色の瞳。

冷ややかなそれが、射抜くようにアサシン達を睥睨している。

 

 

―――――――その眼は、狩人のソレに、よく似ている。

 

 

一瞬の隙、それを相手が出すのを伺いながら、頭の中では瞬時に行動を叩きだしている。

下手な動きは相手に情報を与えるだけでしかないと、分かっているのだろう。

声も先程から、仕留めている時にしか発していないのを見る限り、わざとだ。

こちらの惑いを利用して、完全に自らのペースに乗せようとしているのだ。

 

 

(長引かせては、拙い。)

 

 

そう思ったのは、3人の中でも老練なアサシンであった。

明らかに【殺りにかかってきている】、と見抜いたそのアサシンは一気にケリを付けるしかないと判断した。

しかし、相手は狩人である。

下手な手を打っても、回避されてしまうだろう。

 

『―――――いたしかたなし、更に2人減る事になろうとは。』

『いやしょうがなかろうて、ここまでせねば恐らくアレは倒れまいよ。』

『任された…』

 

思考は一瞬、そして決断も一瞬だ。

迷いはいらない、痩身のアサシンと老練のアサシンが、ダークを構えサーヴァントに向かって襲い掛かる。

投げられるダークの数は総じて30本、そのことごとくを躱し・左手のダークで弾き・サーヴァントは冷静に対処する。

しかしそれはブラフ、その間に2人のアサシンはサーヴァントとの距離を詰める事に成功した。

未だダークを捌いているサーヴァントは無防備、単純な策だが、そこを突く。

狙うはその防具に守られていない、人体の急所。

首と頭部、そして顔面だ。

胴体を狙っても、あのサーヴァントに致命傷になりえるかは分からない。

負傷させたとしても、逃亡されては後々の憂いになりかねない。

 

故に、【必殺】を。

確実な【死】を。

 

そう考えて、一気に肉薄した2人のアサシンは、サーヴァントへと飛びかかる――――――――――――――!!!!!!!!!

 

 

しかし、ダークをそのサーヴァントが捌ききる方が先に終わった。

 

 

 

「―――――――――3人目と4人目、惜しかった。」

 

 

ズゾブッ!ザブァッ!!ズブシャァッ!!

 

サーヴァントの静かな声と同時に、両側に腕を伸ばした状態で、手刀とダークが突き刺さった。

そして、2人のアサシンの腹が貫かれ、引き裂かれ臓物をぶちまけられる。

 

終わった、そう思った―――――――――次の瞬間

 

 

 

 

 

ヒュヒュンッ!!!

 

(――――――――殺った!)

 

 

 

 

―――――完璧だった。

2人のアサシンが、腹を同時に貫かれた事により発生させた【隙】。

腕を伸ばし切った確実な無防備な状態に対する、アサシンの奇襲だ。

【最後の1人】によってその放たれたダークは、確実に【敵】の額と喉を直撃する。

 

躱しようがない。

最初から、2人のアサシンを囮にしての至近距離からの投擲だ。

 

 

今の今まで、2人のアサシンの背後に隠れて接近したのだ。

ダークと【敵】の距離は放たれた時点で既に100メートル程しかない。

ランサーのクラスでもない限り、腕に【重石】を付けた状態で、この距離では回避しようがない―――――!!

 

 

 

               ―――――――カァンッ!

 

 

               「な――――――――」

 

 

 

 

 

だから

 

アサシンには最期まで理解出来なかった。

 

 

確実に殺したと思い、【敵】に2本のダークが直撃したと同時に響き渡った、その【音】を。

目の前で消えて逝く2人の自分(アサシン)から腕を引き抜き、奪ったダークをもって駆けてくる死神の姿を。

見てしまった【信じられない光景】に、固まってしまった自分の頭を鷲掴み、躊躇う事無くこの首を搔き切った|英雄《怪物》を。

 

 

「――――――――5人目、お前で、お終い。」

 

 

青白い月の光の下。

冷たい瞳でこちらを見下ろす。

赤い血に塗れた銀色の男の冷ややかな声。

温もりなんて感じられない空気が流れていく。

 

 

「…ば…け……もの…」

 

最後に、5人目のアサシンは必死にパスで本体でもある女アサシンにマスターの危機を伝えながら……その一言を遺言にして、消滅した。

 

長い間と思う者もいるかもしれないが、この攻防は約5分程度で集結した。

臓物がぶちまけられ、辺りには血の海が数か所広がっている、周囲には血の香りが漂っている。

消えていく肉塊、黒い装束すら形も失くして溶けるように消えて逝ったアサシン達、残されるのはその血液と血臭のみ。

そこまでの過程を全て途中から見届ける側に回っていたが、余りにも早く、そして凄惨な終わり方をしたと、言峰綺礼はふと思った。

だが、そんな事を気にしている余裕は、すでに残されてはいなかった。

 

「…………」

「…………」

 

その場に、一瞬だけ静寂が訪れる。

綺礼と【彼】の距離は、500メートル程離れているが、サーヴァントの脚力ならばそれこそ一息で詰めてしまえるだろう。

こつり、と歩み寄ろうとするサーヴァントに、綺礼は緊張を高まらせると構えを取って声をかける。

少しでも、すぐに駆けつけるだろうアサシンが合流するまで生き延びなければならない。

しかし、それ以上に――――――――やはり、聞きたい事があったのだ。

 

「……やはり、いたのだな…8番目のサーヴァント。」

「時間稼ぎは止めろ、どうせ他にもアサシンがいるんだろう?…………………わざわざ他のマスターを教会に誘き寄せてまで、【私】を探すとはな。

どういうつもりだ?今の今まで教会に潜んでいただろうに、何を狙って【私】にちょっかいを出してきた。」

「違う、私はお前に教えてもらいたい事があるのだ!それさえしてくれればお前の存在を父にばらすつもりも無い!」

「言い訳は結構だ、少なくとも此方には暗殺者の主人(アサシンのマスター)と仲良しなんてする気はない。

お前がアーチャーのマスターと組んでいたのは、お前が此処に来たことで証明された。

アーチャーのマスターはともかく、やはりお前は危険だ…いずれ私のマスターを脅かす――――――――だから。」

「…っ!」

 

だが、やはり警戒されているのはこちらも同じであり、問い掛けは策と一蹴されてしまった。

更に語尾を荒くし、視線を鋭くするサーヴァントに、綺礼は咄嗟に黒鍵を取り出し、投げつけた。

その一瞬の投擲は、代行者でもある綺礼が放ったこともあり、寸分違わず動き出したサーヴァントに突き刺さる。

 

 

 

 

――――ガァンッ!

 

 

(……っ馬鹿な!)

 

 

しかしそれでも、サーヴァントに直撃すると同時にその【身体に弾かれる】。

まるでこちらが木の枝でも投げつけたのでもかと、錯覚するほどにアッサリと。

綺礼が放った3本の黒鍵はサーヴァントの足元に、無残に落ちて転がってしまっていた。

 

(アサシンの残りが集結するまで後僅かだというのに…ここは一度退くしかあるまい…っ!?)

「――逃がさない。」

 

ドッ!ズサァァッ!

 

「っ、ぐうっ!?」

 

【魔力を込めている攻撃が、サーヴァントに通じない。】

その事実に綺礼が戸惑い、離脱しようとしたのが分かったのか。

サーヴァントは黒鍵に当たりながらも、一気に跳躍し綺礼に肉薄する。

そのままカソックの襟元を攫むと、右足を軸にしてその体躯を横に流す様にして組み伏せ、馬乗りになる。

綺礼とて八極拳の使い手でもあり、体術で後れを取る事はなかったが、やはりサーヴァント相手は分が悪かった。

ましてや相手はどういう身体をしているのか、こちらの攻撃が効かないのだ…殴りつけたとしても、綺礼にその分のダメージがくるだろう。

万事休す、その状態で…………言峰綺礼は、そのサーヴァントを初めて、見上げる形で真正面から見つめた。

両手に構えられた血塗れのダーク(短剣)が鈍く輝く。

数秒もせず振り下ろされるだろう、その凶器を構えながら。

目の前のサーヴァントは、その死刑宣告を告げた―――――

 

 

 

 

 「――――――――さらばだアサシンのマスター、私の願いの為に、【死ね】。」

 

 

 

……………普通の人間なら、ここで命乞いや悲鳴でも上げたのだろう。

しかし、言峰綺礼はそのどちらもしなかった。

 

むしろ、そんなどうでもいいことよりも、その網膜に目の前のサーヴァントの姿が焼き付いてしまった。

 

 

その水と血で濡れた銀の髪も。

首を切り裂こうとする血塗れの腕も。

凍てついた冬の氷のようなその眼差しも。

自分のアサシンの心臓を抉り出したその行為も。

余りにも冷酷な判断を容赦なく下したその声も。

 

ただただ、ひたすらに誰かの命を奪い、今まさに奪おうとしながら。

―――――――自分の殺戮を正当化(綺麗事)しない、その【異常なまでの純粋さ】が。

 

 

 

 

 

 

        (ああ、なんて――――――――このイキモノは、【美しい】。)

 

 

 

 

 

 

振り下ろされようとしているダークの刃すら躱そうと思わない程に

今まさに殺されようとしているにも関わらず

 

 

 

 

 

――――――言峰綺礼という人間は、生まれて初めて、他者(ナニカ)を【美しい】と感じれたのだから。

 

 

 

 

だから、思わず、その気持ちが【表】に出てしまったのだろう。

 

 

「…っ?お前、どうして…」

 

ポタリ、と銀髪から零れた血が、綺礼の頬に落ちる。

ピタリ、と振り下ろそうとした腕が止まり、困惑した声が響いた。

冷酷な仮面のような、冷ややかな表情をしていたにも関わらず、そのサーヴァントは綺礼を殺さなかった。

むしろ、初めて迷いを見せたそのサーヴァントに、逆に綺礼が戸惑った。

 

「…何故、殺さない?」

「その前に聞きたい、どうしてお前、殺されかけているのに……【笑って】るんだ?」

「な…?」

 

その言葉に、言峰綺礼は、今度こそ完全に固まった。

今、目の前のサーヴァントは、何と言ったのか。

笑っている…と、言った。

 

 

 

 

                 誰が?

 

 

 

 

                何を見て?

                 何を思った?

               何を喜ばしい?

              何を…何が、嬉しい?

 

 

 

時間にすればほんの一瞬だが、綺礼にはまるで途方もない時間の流れの様な気がした。

そう、自分が殺されかけているのもどうでもいい……ただ……認めたくなかったモノを、突き付けられただけで。

しかし、もはや言い訳は出来ない。

認めるしかないのだろう。

目の前で無残に殺されていったアサシン達の姿に、確かに【愉悦を感じていた】のだと。

この目の前で殺戮を行ったサーヴァントに対して、確かにその姿に【美しさを見出した】のだと。

そう、認めてしまえば、いいのだ。

あの英雄王の言っていたように、己は愉悦を知るべきなのだろう。

なら、この感情は決して間違っているのではなく、むしろこれこそが私の【答】――――――――――

 

 

 

 

 

  『いいえ、貴方は私を愛しています……だって、ほら…貴方、泣いているもの』

 

 

 

 

 

 

…………………………………………どこかで、失ってしまった誰かの事が、頭をよぎった気がした。

 

 

 

「――――――ああ、そうか。

お前………【俺】と同じとはいかないけど、【似てる】のか………聞きたい事って、もしかしてソレだな?」

 

 

―――――――困惑する思考の中、ふと、身体にかかる圧力が消えるのを感じた。

 

いつの間にか、いや、実際は数秒の事だったのだろう。

目の前でダークを構えていたサーヴァントは、馬乗りの状態は変わらないにも関わらず、

すでに振り下ろそうとしていた腕を止めて、どこか困ったような微笑を浮かべてこちらを見ていた。

 

「…1つだけ聞きたい、お前、本当に【俺】に会いに来ただけか?殺されるかもしれないのに、自分の安全地帯から出てきてまで、聞きたい事があるから来たのか?」

「――――ああ、そうだ。」

「…なら、この惨状は【俺】の思い込みの結果か、結局話し合いで解決できる事だったか……はぁ、アサシンには悪い事をした。」

 

嘘を吐いても意味が無い。

だから、聞かれるままにそう返事をした。

その答えに、今度こそ、サーヴァントは脱力したように肩を落とす。

ついで、溜息交じりに小さく呟かれた内容に、一瞬虚を突かれた気がした。

 

 

「お前は、後悔しているのか、サーヴァント」

「…それは、どういう意味合いでだ?」

「文字通りだ、お前はアサシンを葬った事に憂いを抱いているのか?」

これだけの血の海を作りながら、それを悼んでいるとでも言うつもりなのか。

しかし、その問い掛けにサーヴァントは、浮かべていた微笑を掻き消し、ムッとしたような表情をした。

 

 

「…寝ぼけた事を言うな、俺は――――――「綺礼様から離れろ!」っと。」

 

 

ガガガッ!!

 

サーヴァントが何か言おうとしたその時、鋭い声が辺りに響き渡った。

そして声を逃れるように綺礼の上から離れたサーヴァントがいた場所を、無数のダークが通り抜け地面に突き刺さる。

 

「綺礼様、ご無事ですか。」

「―――アサシン。」

 

身体を起こした綺礼の傍に、女のアサシンが現れる。

そしてその前に立ちはだかるように、4体のアサシンが次いで出現した。

最後のアサシンが倒されてから2分弱、常の綺礼なら問題なく稼げていた時間だ。

しかし目の前のサーヴァントとの会話だけで、既に30分も経っていたような気が綺礼はした。

その間、戦闘はしたものの殺される事無く、ただ【敵】と称される相手と【会話】したことなど、なかった。

 

「…なんだ、こちらが喧嘩を売ったと思っているようだなアサシン。

言っておくが、先に手を出して人のねぐらにちょっかいかけていたのはお前達だろう?

攻撃された事に文句があるとかは、ちゃんとそれなりの【挨拶】を返されたんだと分かってもらおうか。」

「戯言を…!」

 

何故だろう、皮肉気に笑いながらアサシンの殺気を受け流しているだけなのに。

あの銀のサーヴァントが、少し【残念そう】に見えるのは、自分だけなのだろうか。

 

「迎えが来たんだ、帰ってもいいぞ。

こっちも少し気が立ってたし、正直ちゃんと話を聞かなくて悪かったな。」

『綺礼様、この場を離脱してください…我々が足止めしますのでどうか…』

 

このまま、本当に戻っても良いのだろうか。

何か、何か、聞きたい事はないか…もっと。

 

 

 

「………………あのさ、話ぐらいまた聞くから、今は帰っとけよ【キレイ】とやら。

お前だって、いきなり攻撃してきた相手の言葉なんて、受け入れられないだろう。

ちゃんと順序立てて会いに来い…要件が真っ当なら、そこまで拒否はしないぞ?」

 

 

 

 

今まで、自分に対して幼子に対するような扱いをしてきた相手は、父以外にいないというのに。

今の今まで、殺し合いをしていたのにも関わらず、こちらへ小さく笑みを零しながら。

血塗れにも関わらず、【当たり前】のように、【またおいで】と己の名前を呼んで言ってきた、サーヴァントの姿に目が眩んだ気がした。

 

 

 

 

――――――――この銀の異端者の事を、【知らないといけないような気がする】のは、何故なのだろうか?

 

 

 

 

 

そして、よく考えもせずに、思わず。

 

 

 

 

「アサシン――――――――1人を残し周囲の警戒に戻れ、誰一人として此処に近付けるな。」

 

 

 

「……は?」

「っ綺礼様!?」

 

ぽかん、と呆気にとられたような表情でこちらを見るサーヴァントと、驚愕を隠そうとしないアサシンの姿に一瞬、自らの内側がざわめいた気がした。

 

 

(この場の主導権ぐらい――――――私が握っても構わないだろう?)

鮮血の時は一時止み、銀と黒は相対する。

血に塗れながらも笑う銀に、黒は己の内に懐疑を抱く。

 

自らと世界の違いに惑い。

使える主の導きにすら背くこの魂。

されど、堕ちるには心が堪えれず。

今尚、この身は彷徨い続けている。

 

まだ、【答】は、決まっていない。

 

だからこそ、狂おしき迄の求道の先、今こそ出逢えし【同類】よ。

金色の王と相反する【銀の異端者】よ……我が魂の問いへ、答えてほしい。

 

 

お前は―――――――――【何】を、見てきたのかを。

 

NEXT

【後書き】

 

ここにきて、とうとうドラグーンの宝具の片鱗が垣間見えました。

まさか攻撃が通じない、という事態の発生。

しかし、やはりこの攻撃もサーヴァントでもアサシンの物であり、

他のサーヴァントではどうなるのかは不明・・・謎は深まるばかりです。

そして、まさかの言峰綺礼の積極的な「O★HA★NA★SHI」しようよ宣言に、置いてきぼりにされかけるドラグーンとアサシンの運命はいかに!?果たしてまともな会話が出来るのか・・・?

 

ここまでの閲覧、ありがとうございました!

今回は、【洗礼(Fate-stay night A.OST)】をBGMにしました。

 

※感想・批評お待ちしております。

 

 
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