No.569295

【東方】従者同士の恋愛事情・第1話Side:S

酔寝狐さん

前に上げたこれ→ http://www.tinami.com/view/568970 の咲夜視点です。

思ったより時間がかかってしまったw
タイトルは色々考えたけど、結局無難のものに。
まぁいいか。

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2013-04-24 00:10:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4481   閲覧ユーザー数:4473

「今日もお疲れ様。また料理のレパートリーが増えたわ。お嬢様も喜ばれるわ。」

「いえいえ、あれくらいなら。というか私も咲夜さんに洋風のお料理教わってるんだから」

 

ここは紅魔館。

正確に言うと私の部屋。

言ってから気付く。

口調がまだ仕事から抜けてない。

というか今まで部屋に戻っても一人だったからすぐに抜けないということに気付かなかった。

最初に気付いた時は自分でも新鮮な発見に内心笑ってしまったものだった。

でも人前、というかこういう状況は妖夢しか居ない(厳密には今日に限ってちょっと違ったりするけど)のだけど、そんな事出来ないし口調も気付かないフリをしないと。

一応瀟洒で通ってるからね。

実際はそんなでもないのだけれど。

そしてこれも自分では気付かないのだけどいつの間にか普通の口調に戻ってる。

我ながら謎。

 

あ、なんで私が白玉楼に居るはずの妖夢と紅魔館の自分の部屋に居るのかというと、

以前の異変以来私と妖夢は従者同士仲良くなって、というか主同士でも仲良くなってお互いに情報・技術交換するようになった。

といっても主に料理が多いんだけど。

 

つまり私は妖夢に洋食を教えて、逆に私は和食を教わるというもの。

ちなみに私はこの案はお嬢様からだろうと思ってる。

いや、ほら珍しい物というか普段とは違った事にすぐ興味をお示しになるからね・・・。

ちなみに他にも従者としては私の方が長いので言動や知識を教えているのだけれど、お互いの主の性格が違いすぎるので参考程度ということにしてる。

 

そんな訳で妖夢は紅魔館に出入りするようになり、今は今日のお務めを終え休憩を兼ねて私の部屋に通してるいう事。

 

にしても話しを聞いた感じだと幽々子さんと妖夢って主従関係って感じがしないのよね。

親子というかかそそんな感じに近い。

まぁ、小さい頃から仕えてたらしいからその時は逆に幽々子さんが世話をしてたのかもね。

だからかな?妖夢には尚更務めを果たさなきゃというのを感じる。

今の所空回りしてる感はあるけど。

 

”シュル・・・”

そんな事考えながらメイド服から部屋着に着替える。

最近思うのだけど、公私の切り替わりって部屋に入った時なのかメイド服を脱いだ時なのかと。

あ、気持ち的な意味でね。

もしかしたらスイッチみたいに切り替わるんじゃ無くて部屋に入ってからスイッチが変わり始めて部屋着に着替え終わった時に完全に切り替わるのかしらね。

まぁどうでもいいけど。

 

ところで・・・、ああ、やっぱり妖夢は今日も目を逸らしてる。

同姓なんだから気にしなくていいのに。

というか今まで白玉楼の中しか知らなかったからこういう他人と一緒にというのが慣れてないみたいね。

 

戦ってる時は気付かなかったというかそんなことに気を回してる余裕なんか無かったから当たり前なんだけど、妖夢って可愛いよねぇ。

ちっちゃくてちょっと抜けててというかなんだか覚束ない所とかちょっぴり被虐性がそそりつつ守ってあげたい気持ちになる所とか。

でも忠誠心は立派なものがあるからそのギャップもまた。

と考えてる内に着替え終わる。

そして妖夢の向かいの椅子に座る。

 

それに合わせるかのように妖夢が顔を上げる。

私は妖夢をずっと見てた事もあって目が合ってしまう。

なにかな?

なんか微妙な笑みが帰ってきた。

うーん、かわいい。

つい私も私も笑ってしまった。

おそらく妖夢の笑みとは違う笑みを。

 

下心を隠す意味も含めて今の笑いを流して他愛の無い話しを始める。

魔理沙が今日は何の本を持って行ったとか。

それをパチュリー様が怒りつつちょっとニヤけてたとか。

でもってその笑みを小悪魔が苦々しく見てたとか。

 

・・・あ、口調が変わってる。

今日も自分で気付かなかったな。

自分の事ながらちょっと悔しい・・・。

 

こうして自分で言ってて改めて思ったけど紅魔館って修羅場なのね。

内心笑ってしまう。

でも”好き”ねぇ・・・。

妖夢にどうやって伝えようかなぁ?

それ以前に妖夢にそういう感情があるのかな?

あ、あるにはあるんだよね。

でもなんだかもてあましてる感じがするのよね。

先ずはそれを自覚させないと、かな?

それはそれで面白いかもね。

 

そう思って不意を突くように妖夢に問いかける。

 

「妖夢の好きな人を当ててみましょうか?」

「へ?!な!!ええ?」

 

やっぱり突然だったのだろう。

妖夢目を丸くして所謂・・・なんだっけ?こっちのことわざで言う「鳩が豆鉄砲がなんとか」っていうの?

たぶんこの表情がまさしくそれよね。

うん、やっぱり妖夢は困り顔も可愛い。

あ、どうしよう。

ちょっとにやけしてしまう。

なるべく隠さないとね。

 

ん?表情が一瞬曇ったような?

別方向に思考が行っちゃったかな?

何を考えてしまったのかわからないけど、とりあえずそのまま語りかける事にする。

 

そして私はわざとらしくそれまで頬杖をついてた右手を口にあてて考え込む。

 

「んーとねぇ・・・。同じ刀というか刃物使いでぇ、髪は白くて短め・・・。」

 

頭の中に妖夢の顔を浮かべながら喋る。

 

「でもって同じ従者という立場で・・・」

 

ん?気付いたかな?

妖夢が顔を上げる。

でもまだ半信半疑かな?

 

「背は割と高めかなぁ?でも胸は・・・グスン」

そう言いながら自分の胸に手を当てながら泣くフリをする。

・・・自分で言ってちょっと落ち込む。ふん。

 

ここで確信に至ったのだろう。妖夢は慌てたような声を出す。

「胸なんて関係ないです!咲夜さんはそのままでスラッとしてて格好いいと前から思ってそんな咲夜さんが・・・あ!」

 

あら格好いいなんて嬉しい事を言ってくれるのね。

てか、胸は否定してくれないのね。

ちょっと悲しい。

ちょっとだけね。

 

妖夢をちらりと見ると。

くす、混乱してる。

表情がめまぐるしく変わってるのが見れる。

頭の中がパニック状態ね。きっと。

前にも書いたけど困ってる妖夢も可愛いのでこれはこれで眼福。

しばし観察。

 

どれ位経ったのだろう?

実際に数10秒だろうけど、私には一瞬にも思える。

もっと見ていたかったのに。

気持ちが落ち着いたのか、というか整理がついたのか顔を手で覆ったまま目線を私に向けてくる。

うう、にやけるのを抑えるのが精一杯。

というか抑え切れてないかも?

妖夢に変に思われちゃうかしら。

 

これは何か言った方がいいよね。

 

「妖夢は隠し事が下手よねぇ。まぁそこがかわいいんだけどぉ。」

 

って、つい本音が。

特に後半部分。

もしかして無意識下で私もテンパってる?

ん?妖夢が赤くなった。

ここまで感情丸出しって従者としてちょっと疑問に思うけど、あの主従関係を見るに特に問題ないかな?

とか思ってると妖夢が反論してきた。

 

「さ・咲夜さんだってかわいいじゃないですか!!」

 

!!

一応反論?

まだまだ修行が足りないわねぇ。

それにかわいいのはあなたよ。

 

「あら?さっきは『キレイ』って言ってくれたのにこんどは『かわいい』?どっちなのかしらぁ?」

 

ちょっと意地悪気味に矛盾点をついてみる。

というかもうこれ自分でも認めてる事に気付いてるかしら?

 

「ど・どうして私が咲夜さんを好きだってわかったんですか?!」

 

あら?ついに認めた?

というか開き直った?

でもまだ素直になりきれてないみたいね。

 

「んー?それは見てれば分かるというか・・・ねぇ・・・。まぁ、何となく伝わってきたって言う方が近いかな?」

 

「へぇー、そんなに私の事見てたんですか?」

 

ん?反撃のつもり?

こういう所まで可愛いのね。

思わずくすくすと心の中で笑う。

だんだんといじめてみたい気持ちが沸いてくる。

私ってS気質があるのかしら?

 

「だってぇ、好きな子の事はずっと見ていたいと思うじゃ無い。」

 

あっさり言ってみる。

そしてさりげなく私の気持ちを乗せてみる。

どう出るかな?

 

驚いた様に私をじっと見つめてくる。

ん?どうしたのかしら?

自分で好きなんでしょって言わせておいて肯定されたらまた驚くなんてまだまだねぇ。

その辺も含めて教育してあげましょう。

色んな意味で楽しみだわ。

 

「ふふ、そんなに情熱的に見つめないでよ。さすがに照れてしまうじゃない。」

 

私が声を掛けた事で正気に戻ったみたい。

 

「てことは・・・あの・・・咲夜さんも私の事・・・を・・・・?」

 

「うん、私も妖夢の事好きよ。で、妖夢は?」

 

再び肯定し、そして返す刀で再び問い返す。

 

「で?って言われてもさっき言ったじゃないですか?!」

 

「そうだけど、さっきのは話の流れでって感じだったから。

私はちゃんと聞きたいなぁ。」

 

ふふ。

やっぱり告白はちゃんと聞かなくちゃね。

にしても妖夢が私に好きって言ってくれる。

そう考えたら、だめだ、にやけるのが抑えきれない。

 

「咲夜さんは意地悪です。」

 

「えー?ひどい。そんなことないと思うけどなぁ。」

 

「そして策士です。卑怯です。」

 

「だからそんな事ないってば。てか私の悪口ばかり?」

 

「私をからかって喜んでる咲夜さんは腹黒です。きっとSです。」

 

「うう、実は私嫌われてるのかしらぁ・・・、グスン」

 

なにげに酷いのね。

でも腹黒はともかくSは多少当たってるかも?

泣くフリをしながら上目遣いで妖夢を見る。

相変わらずニヤけるの抑えきれないので泣くフリついでに口元を手で隠す。

でもたぶんバレてるだろうなぁ。

 

「でも咲夜さんの事好きです!」

 

言ったぁ!

というか言わせたぁ!

私大勝利!!

や、勝利とかどうでもいいや。

確信はあったけど、こうしてはっきり言われるとやっぱり嬉しい。

とか思ってたら妖夢が抱きついてきた。

といってもテーブル越しだったので頭を抱えるような感じなんだけど。

なんだろう?

照れ隠しかな?

でも抱きつかれること自体は悪い気がしな・・・、むしろ嬉しいのでもっとしていいのよ?

 

「ふふ、妖夢って意外に激しいのねぇ」

 

と言いながら妖夢の頭へと手を回し、そして頭をポンポンと撫でた。

 

そして、こんどは背中をポンポンとしてみる。

なんか小さい子をあやしてる気分。

だんだんと母性愛的な気持ちが沸いてくるような。

 

でもそれが良かったのか気持ちが落ち着いたようで妖夢の手が離れ、そのまま椅子に座った。

 

しかし、まだ顔を上げてくれない。

もしかしてまだ恥ずかしがってる?

妖夢ならきっとそうよね。

もぉ純情なんだからぁ。

 

ということで今日はここまでいいよね。

 

「さて、公言したところで・・・。」

 

と言いながら私はナイフを天井に放った。

そこには小さな紙きれがある。

お嬢様がパチュリー様に言って作らせたここでの会話を別の場所にも送る事の出来る呪符だ。

つまり盗聴してたのだ。

そんな私の突然の行動にきょとんとした目を向ける妖夢。

 

「実はね。私たちの関係を気にしてる人達が紅魔館には居てね。それで盗み聞きしてたのよね。」

 

「え?盗み聞き。てか気にして・・・?てことはバレ・・・え?!」

 

あ、またパニック状態に陥ったみたい?

確かに告白を盗聴されてたらねぇ。

というか回りにバレてたのを気にしてる?

まぁ、こういうのは案外本人より回りの方が分かりやすいものだから。

ましてや妖夢じゃ尚更だしね。

 

「でも、大丈夫よ。呪符は破ったからもう大丈夫。」

 

「あ、はぁ・・・。」

 

とりあえずその辺にはわざと触れないで盗聴の心配が無いことだけを告げた。

 

「ということは咲夜さんの今までの言動は盗み聞きしてる人にたいして・・・?てことは本当は私の事を・・・?」

 

あ、逆効果だったかな?

また変な方向に思考が行ってるみたい。

確かにわざと盗聴させてたなんて分かったら変な疑惑も浮かぶ物よね。

ここはもっとしっかり気持ちを伝えた方がいいかな?

そう思って手を伸ばし妖夢の両頬を包む。

 

自然、お互い真正面に向き合う形になる。

もう笑いは無し。

真剣な面持ちで言う。

 

「さっき私は『公言』って言ったでしょ?つまり紅魔館全体に宣言したようなもの。それだけ本気だって事よ。それだけは分かって。ね?」

 

「あ、はい・・・。」

 

分かってくれたかな?

幾分落ち着いた表情になってきた。

でもまだ色々考えているみたい。

ここは落ち着くまで待ちましょう。

じっと妖夢の目を見る。

 

たぶん時間にしたら数瞬なんだろうけど目が合う。

そして恥ずかしそうに目を逸らす。

目を逸らしつつ・・・ん?私の顔を見てる?

目線が私の顔のあちこち移動してるみたい。

 

えと、なんか段々と私も恥ずかしくなってきた。

ここまでお姉さんぶってみたけど、私だって恋愛経験なんてそんなにある方じゃ無い。

そう思ってたらますます・・・

それが顔にも表れたらしい。

正確には耳に。

 

「みみ・・・あか・・・い・・・?」

 

妖夢にそう言われて思わず耳を隠しつつちょっと後ずさってしまった。

私とした事が取り乱してしまった。

瀟洒瀟洒・・・。

 

でもダメだった。

自覚したとたん顔まで赤くなってるのが自分でも分かる。

バレないで!

 

「顔真っ赤ですよ?もしかして咲夜さんも・・・」

 

それを知ってか知らずか妖夢は容赦なく私の状況を告げる。

うう、一気に形勢逆転。

そして恥ずかしさもあって自然返す言葉小声に

 

「そりゃぁ、私だって確信があっての告白じゃなかったし、それにその・・・恋愛なんてそんなに・・・。

もう、これ以上いわせないでよ!」

 

ここまで虚勢を張って、いえ、虚勢を張ったつもりは無かったけど、やっぱり少なからずそういう所はあったので正直に自分の気持ちを告げる。

それを聞いて妖夢は笑う。

って、ここで笑わないでよ!

意外にこの子意地悪?

天然な意地悪?

どうしてやろうかと思ってる私に妖夢は聞いてくる。

 

「咲夜さんさっき私に『キレイなのかカワイイなのかどっちなの?』って聞きましたよね?」

 

「う・うん・・・?」

 

「やっぱり咲夜さんは『カワイイ』だと思います!」

 

「あ、えと、ありがと・・・?」

 

「正確には照れた咲夜さんはカワイイです!!」

 

「妖夢の意地悪!」

 

一瞬の間の後、二人で笑いあった。

おかしいとか嬉しいとか照れとか色々混じった笑いだった。

 

ひとしきり笑いあった後、目があった瞬間、妖夢に顔が近づける。

妖夢は私が何をしようとしてるのか見届けるかのように私の顔を見つめたまま動かない。そして・・・

 

そして妖夢の唇に私の唇を重ねた・・・。

今日は告白だけのつもりだったけど、つい・・・。

なんかもう抑えられものがね。

 

数瞬して顔をはなす。

何が起こったのかイマイチわかってないのか妖夢があわあわしてる。

ふふ。

 

「妖夢もカワイイよ。そのきょどきょどした感じ。」

 

「咲夜さんの意地悪!からかわないでください!!」

 

「あら?私はからかうつもりは無いのよ。そんな顔を見たらついね。」

 

そう言いながらもう一度顔が近づける。

ふふ、もうキスを覚えたのね。

今度は妖夢は目を閉じた。


 
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