No.558870

~貴方の笑顔のために~ Episode31 別れ

白雷さん

人には必ず死が訪れる。 それは、呉の王孫策も例外ではなかった。 変えられることのできなかった運命、そして迫り行く運命、
一刀は、どう立ち向かっていくのだろうか・・・

2013-03-25 01:05:20 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9819   閲覧ユーザー数:8002

「華陀・・・雪蓮は・・」

 

 

俺は、雪蓮のことを亞莎から聞いた後、すぐに雪蓮たちがいる城へと

馬を走らせた。

 

雪蓮がいる部屋の前には、華陀と冥琳がたっていた。

ほかのものは今、反乱軍と戦っているのであろう。

 

 

俺が華陀に雪蓮の様子を聞くとただ、彼は首を横にふった。

それは、きっと、彼女はもう時間が残されていないということなのであろう。

 

 

俺は自分の手を固く握り締めた。

 

なんでだよ・・・そう、何度もいいきかせる自分がそこにはいた。

何度も思ってきたこと。

けれど、そう思わずにはいられない。

 

数日前まで、一緒に笑っていた彼女が、

そう思うと、俺にはなんとも言えない気持ちが押し寄せてくる。

 

 

「一刀、自分を責めないでやってくれ。」

 

俺が、下を向いていると、そう冥琳が口にした。

 

正直言って、意外だった。それは、俺は冥琳が俺のことを

責めるとそう思ったからだ。

 

 

「・・・冥琳は俺を責めないのか?」

 

 

逆に、俺は責められたほうがよかったと感じていたのかもしれない。

なぜならそれは、雪蓮のことを自分が何とかすれば助かったのかもしれない

と思えるから・・・

でも・・・・

 

 

「何に対してだ、一刀?」

 

「俺は、天の御使いだ。このことを知っていたとは思わなかったのか?」

 

「では、逆に聞くが、一刀は知っていたのか?」

 

「・・・」

 

本当に、俺はそう思う。 冥琳は強いと。

友の死を正面から堂々と受け止めることができる彼女は本当に

強いとそう思う。

 

 

 

俺はその質問に首を振る。

 

「・・・でも、俺がもっと、周りを見ていれば、もっと、何かをしていれば、

 雪蓮のことに気づけたのかもしれない」

 

「でも、そうじゃなかった、そうであろう?」

 

「けれど!」

 

「一刀! お前のことを何で私が、いや雪蓮が天の御使いと呼んだかわかるか?」

 

俺が・・天の御使い・・

そんなわけがない。

雪蓮のことも気づけなくて何が天の御使いだよ。

 

「それは、俺が、知識を知っているから」

 

「それは、違うよ。一刀、」

 

「俺が違う世界からきたからか?」

 

「それも、違う。  確かにそれらは、一刀が天の御使いと名乗る一部の理由かもしれない。

 けれど、私たちはそんなことを気にしていない。

 一刀、私たちがお前を光と思う理由、それはお前がお前だからだ。」

 

「俺が、俺・・・だから」

 

「ああ、その考え、行動、それらすべてだ。

 だから、私は知っているよ。

 一刀が今どんな思いで、ここにきたのか。

 どんな思いで、私に話しかけているのか。

 だから、一刀。自分のことを責めないでくれ」

 

俺は正直、泣きたくなった。

自分の無力さに。

自分の弱さに。

 

 

 

 

 

 

 

「・・、ありがとう。冥琳、、雪蓮と、少しはなしをさせてくれないか?」

 

「ああ、彼女も喜ぶだろう。その前に、ひとつ渡したいものがある。」

 

「なんだ?」

 

そういって、冥琳は書を一枚俺に渡した。

 

「これは?」

 

「何もいわず、よんでくれ。」

 

冥琳は震えながらその手紙を俺に渡した。

 

「ああ」

 

そういって、俺は、冥琳から渡された手紙を読みはじめた。

 

 

「・・・」

 

 

正直、何もいえなかった。

ただ俺は、その紙を力強くみぎりつぶした。

 

 

「一刀?」

 

「大丈夫だ。」

 

「すまんな。援軍を出したいところだが、それにはまだ少し時間がかかる」

 

「わかっている。 呉がここで、援軍を出してしまえば、反乱軍の思い通りだ。」

 

「・・・ああ」

 

「だから、冥琳。 心配するな。これは俺に任せてくれ」

 

「ああ、頼むぞ一刀。」

 

「じゃあ、少し、雪蓮と話してくる」

 

「その前に一刀、ひとつ質問してもいいか?」

 

「ああ」

 

「もし、だ。運命、そんなものが存在し、私たちのとる道や死が

 もう決まっているものだとしたら、一刀はそれを信じるか?」

 

「運命、か・・・俺はそんなもの信じない、そういいたいけれど」

 

「そういいたいけど、なんだ?」

 

「運命というものは存在するのかもしれない」

 

「そう、か」

 

「けれど、冥琳。俺はこうとも思う。」

 

「・・?」

 

「俺たちには、それを壊す、力があるって。」

 

「運命を、こわす?」

 

「ああ、きっと。それは信じれば、自分が持っている力を

 信じれば、きっと、運命というものを変えられると、

 そう俺は思う、いや、確信している」

 

「そうか」

 

「ああ、この道を今確かに進んでいるのは俺たちなのだし。

 だったら俺はみせてやろうってそう思う」

 

「見せてやる? 誰にだ?」

 

「天に、だ。 運命とやらを決めた天に、俺は、俺が、いや

 俺たちが持っている力を見せてやろうってそう思う。」

 

 

「・・・・一刀、お前は やっぱり・・」

 

「?、なんかいったか?」

 

「いや、 最後に雪蓮にあってやってくれ。 きっと彼女も喜ぶ」

 

「ああ」

 

 

そういって、俺は雪蓮の部屋に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に入ると、そこには寝台に横たわっている雪蓮がいた。

 

 

 

 

「一刀、きて、くれたのね」

 

俺が寝台に近づくと雪蓮が弱弱しく目を開けた。

 

「ああ、雪蓮」

 

「ありがとう。」

 

「ははっ、ちょっと、やらかしちゃったじゃない。」

 

そういって、雪蓮はかすかに笑った。その目には涙が浮かんでいた。

 

「そうだぞ、雪蓮らしくもない」

 

俺はそういって、笑って見せた。

 

きっと、笑えていたと、俺はそう思う。

 

「・・・、一刀は、なかないのね」

 

「まあ、な」

 

「ほかの子は大変だったわよ、」

 

「そうだろうな」

 

「もう、雪蓮様!って、いってやまないんだから」

 

「よかったじゃないか人気で。」

 

「あたりまえじゃない」

 

「はは、雪蓮らしいな。」

 

「らしいって、なによ。わたしはわたしよ」

 

「そうだな。」

 

「一刀が、なかない理由を聞いても?」

 

なきたいに決まってるじゃないか。

でもそれじゃ・・・

 

「雪蓮、一番悲しみを感じているのは雪蓮じゃないか」

 

「・・・」

 

 

「だから、俺は泣けないよ。」

 

俺は、そういって笑って見せた。

 

 

「あーあ、最後の最後まで一刀にはやられっぱなしだったなあ」

 

「俺も、いろいろと修行したからね」

 

えらそうなこといってるけど、俺は目が涙でかすかにぬれているのを感じている。

 

「そうね。  一刀・・・」

 

「なんだ、雪蓮?」

 

「私だって、もうなかないって、そう決めたのに・・・ずるいじゃない」

 

そういった雪蓮の目かららは涙があふれ出ていた。

 

でも、彼女は笑っていた。

その笑顔はまぶしかった。

 

「一刀、・・・」

 

「なんだ?」

 

「しにたく、ないよ・・・」

 

「ああ」

 

「せっかく、これが最後だって、最後の戦いだっておもったのに・・」

 

「そう、だな」

 

「なんで、ここで、しななくちゃいけないの?」

 

「雪蓮・・・」

 

「せっかく、冥琳もなおって、これからだったのに・・・」

 

「・・・」

 

「ごめん、一刀。  ちょっと、いいたくなっちゃっただけ」

 

そうなふうに言った後にいたずらそうに雪蓮は笑って見せた。

 

俺は雪蓮の手をぎゅっと握った。

 

「一刀、ありがとう。 最後に光を見つけられて、私は幸せだった。」

 

「俺は・・・」

 

「自分を信じなさい、一刀。」

 

「ああ、わかっている」

 

「そう、じゃあ、私からもういうことはないわ。」

 

「ありがとう、雪蓮。 いや、呉の王。」

 

「三国を、任せたわよ・・」

 

「ああ、その任、引き受けた」

 

「じゃあ、もういきなさい。  自分の道を。」

 

「ありがとう、雪蓮」

 

そう俺が握り締める彼女の手からはもう力を感じられなかった。

 

 

 

「ありがとう、一刀。」

 

 

「そしてさようなら、雪蓮」

 

 

 

そういった俺に、彼女からの返事はなかった。

 

 

ごめん、雪蓮・・・・

でも、これが俺の道だから・・・

最後まで見ていてくれ。

 

 

 

 

 

 

扉をでると、冥琳は横で、涙していた。

 

「冥琳・・・」

 

「大丈夫だ、私は。  これでも、呉の軍師だ、この戦、絶対に勝ってみせる

 だから、一刀も・・」

 

「ああ、わかっている」

 

そう冥琳はいいながら、その涙を拭き、歩いていった。

 

 

 

 

 

 

そして、部屋の前には、俺と、華陀だけが残っていた。

 

「一刀、魏に、いくのか・・・」

 

 

「ああ・・・」

 

 

 

「------?」

 

華陀は、そうこちらをまっすぐ見つめそうきいてきた。

 

 

「-------」

 

 

俺はそうきく彼の瞳をまっすぐ見つめ返しそう答えた。

 

 

「そうか・・・」

 

「じゃあ、いってくる。華陀」

 

 

「ああ、いってこい。 天の御使い。  いや、北郷一刀。」

 

 

そして、俺は魏へと馬を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー伝令ーーー

 

 

 

天の御使い、北郷一刀を名乗る軍、総数40万

寝返り、そして伏兵の計にあたり、魏軍、敗走。

自軍総数、不明。

至急、援軍を求む。

 

魏王、曹孟徳

 

 

 


 
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