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魔法少女リリカルなのは -九番目の熾天使-

第六話 時空管理局そして交渉

2013-01-31 00:23:14 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4540   閲覧ユーザー数:4174

 

 

 

「しまったぁあああああ!! 寝過ごしたぁあああああ!!」

 

 クソッ! 俺としたことが! フェイトを嫁にするためには必ず行かなくてはならないイベントを寝過ごしてしまった!!

 

 ……まあいい。どうせフェイトやなのは達は俺のモノだからな。

 

 おっと、自己紹介が遅れたな。オレの名前は天城王騎だ。

 

 なんか事故に遭って死んだらしいが、神様が転生してくれるって聞いた時はハイテンションになった!

 

 真っ先にチート能力を寄越して貰ったぜ!

 

 俺の能力はFateのエミヤが持っている『無限の剣製』とSSSの魔力を貰った。もちろんデバイスもだ。

 

 デバイスは『セイバー』にしようかと思ったが、やっぱり『アルトリア』の方が響きが良いから名前をとった。

 

 『無限の剣製』は何故か使えなかった。多分、俺が力を使いこなせていないせいだろうか?

 

 仕方ないのでデバイスを『干将莫耶』と同じ形にした。それと砲撃魔法をいくつか覚えた。アルトリアが教えてくれたんだ。

 

 神様は俺以外にも転生した人がいるって言ってた。

 

 その時は焦ったぜ。もしかしたら先に接触されて俺のなのは達が盗られる可能性があったからだ。

 

 でも俺ともう一人の転生者、神崎は同時に転生したらしい。

 

 なんとか公園にいるなのはを見つけたは良いものの、アイツもなのはに会いに来ていた。

 

 俺と神崎は勿論言い争った。

 

 モブキャラ風情が……身の程を知ればいいものを。

 

 気がついたときにはなのはは居なくなってた。多分、怖がらせてしまったんだろうな……と思う。

 

 それからは毎日神崎との戦いだ。いい加減諦めてくれないだろうか? どう転んでもなのは達は俺のモノなのにな。

 

 ただ、この前の温泉でのイベントでは問題が起きた。

 

 フェイトが今にも襲いかかってきそうな時、突然攻撃を受けた。

 

 その時、上空から真っ黒なロボットのような物が降り立ってきたんだ。

 

 しかも話せる。

 

 そいつは自分のことを『ルシフェル』って名乗った。

 

 神崎の馬鹿は呆けていたが、俺はちゃんと警戒していたぞ?

 

 だがどうも見覚えがある機体だった。

 

 大きさや雰囲気では『インフィニット・ストラトス』のISに似ているのだが、あんな機体は原作にもISにも無かった。

 

 でも、どっかで見たことがある気がする。多分……アニメじゃ無かったと思う。

 

 まあ、二次小説によくあるイレギュラーってやつだろう。

 

 ただ……そいつは俺の嫁であるフェイトを殴りやがった!

 

 頭にキタ俺と神崎は『ルシフェル』と戦ったんだが、神崎が邪魔をしたせいで不意を突かれて気絶してしまったんだ!

 

 神崎がいなかった俺が倒して、今頃なのはは俺にメロメロだったに違いない!

 

 ともあれ、次のイベントにあるクロノとの邂逅には何としてでも行かないとな!

 

 俺はなのはやフェイトを守るんだ!

 

 

 

 

「フェイト……手、大丈夫かい?」

 

 アタシは昨日、ジュエルシードを掴んだフェイトの手を心配していた。

 

「大丈夫だよ、アルフ。掴んだのは一瞬だけだから、大した怪我は無いよ?」

 

「そうかい? ……それにしてもアイツ、一体何なんだろうね?」

 

 少し前にいきなり現れた奴。アイツは自分の事をAIって言ってたけど、アタシは少し疑問に思う。

 

 先ず一つ目、アイツからは何か人間に近い臭いがしたこと。でも、ほんの僅かだからもしかしたら誰かの臭いが付着しただけかもしれない。

 

 二つ目、アイツの行動が機械らしくないこと。ジュエルシードを破壊するならフェイトを助けずにそのまま一緒に破壊するだろう。

 でも、アイツはフェイトを助けてから破壊した。機械というものは普通、理論や理屈を最優先で行動する筈。情というのは基本的に無い。

 いや、バルディッシュの様なインテリジェントデバイスのAIならまだ分かるけど、それはこちらの世界の科学力が

 進んでいるからであってこの世界はAIを作る技術は無いと思う。……でも確証はない。

 

「……分からない。でも、彼女……確かルシフェルって言ってたね? 彼女は私達では絶対に勝てない相手」

 

「うぅ、それは……そうだけどさ……」

 

 フェイトの言っている事は事実だ。私は勝てない相手に向かって勝てると言うほど馬鹿じゃない。だけど、フェイトの為なら

 アイツとだって戦ってやる!

 

「取りあえず、彼女とは戦わない様にしないと……。これからはルシフェルより早く見つけてすぐに隠れないとね」

 

「うん……そうだね、フェイト」

 

 果たしてそれは可能なのだろうか?アタシは隠れてもすぐに見つけられると思ってしまう。

 

 でも、フェイトがやるって言ったんだ! アタシはフェイトの力になるだけさね!!

 

 

 

 

 

 

 

「面倒なことになった……」

 

 俺はテントの中で呟いた。

 

 あれから少し気になったのであちこち出回り、ルシフェルに頼んで映像を記録して貰った。

 

【今回記録した内、街の至る所に確認されました。しかし、私達にはまだ気づいていない様子です】

 

 当たり前だ。そう易々と正体がバレたらこの先生き残れない。

 

 因みに、映像は俺の目を媒体にして記録してある。以前も言った通り、俺とルシフェルは神経レベルで繋がっているからそれが可能になる。

 

 流石に俺自身の目が遠くの物をズームや暗視スコープのようになったりはしない。あったら便利だけど……そうなったらもう人間を辞めてしまっている。

 

 そして、ルシフェルとは一生付き合う形になるが俺はそれを望んでいるから構わない。

 

「さて、少し気分転換でもするか……」

 

 

 ―――いつもの公園

 

 

「ふぅ……やっぱりここは落ち着くな……」

 

 俺はジュエルシードを破壊した翌日の昼、いつもの公園の芝生の上で寝っ転がっていた。

 

 ここは本当に気持ちが良い。何でかは分からない。この街の自然は俺は結構気に入っているんだ。

 

 そうして俺が目を瞑っていると、誰かが通りかかった。

 

 俺はついつい耳を傾けてしまう。

 

「……ったく! なんでアイツ等は毎度毎度ああも付きまとうのよ!」

 

「ま、まあまあアリサちゃん……そんなに怒っちゃダメだよ?」 

 

 この声……女の子か? 何だかかなり苛ついているみたいだけど……ま、俺には関係無いか。

 

「怒るに決まってるでしょ!? ……はぁ」

 

「あ、あははは……あれ? あそこに誰か寝てるよ?」

 

 …………俺か?

 

「あ、ホントだ。あんな所で寝てて風邪を引かないのかしら?」

 

「う~ん……どうしよっか? やっぱり起こした方が良いよね……?」

 

 起こさなくて良いです!

 

「……あのままで風邪を引かれちゃ後味悪いしね。折角だから起こして上げましょ」

 

 ああぁ………ま、いいか。彼女達は善意でやってくれてるみたいだし……

 

「あの……? 起きて?」

 

「そんな所で寝てると風邪引くわよ?」

 

 俺は体を揺すられて起こされた。いや、起きてるけどね。

 

「ん~……誰だ? 折角気持ちよく寝ていたのに……」

 

「アンタね~……いくら春だといっても、そんな所で寝ていたら風邪引くわよ?」

 

「そうだよ?」

 

 俺を起こした女の子は二人だった。片方は金髪ストレートで、もう片方は綺麗な紫にストレートパーマの女の子だ。

 

 …………ん? この紫の子………なんか違和感がある気がするけど……気のせいか。

 

「あ、あの……私の顔に何か付いてるかな?」

 

「え? あ、ああ……なんか普通の人とは違う気がしたからつい、ね」

 

「っ!! そ、そんな事ないよ? 普通だと思うけど……?」

 

 ………なんか、あからさまに動揺していなかったか?

 

「そうよ。すずかは運動神経は結構良いけど、ただそれだけの普通の女の子よ?」

 

「そっか、ごめんな?」

 

「え? う、ううん。別に気にしてないから……」

 

 ま、気にするほどの事では無い……かな?

 

「そっか。う~ん! 折角起きたことだし、俺はもう行くわ」

 

「そっ。ああ、そう言えばまだ名乗ってなかったわね?私はアリサよ、アリサ・バニングス。聖祥の三年生よ」

 

「わ、私はすずか、月村すずか。アリサちゃんと同じクラスなの」

 

 バニングスに月村ね。

 

「月村にバニングスか――「アリサでいいわ」ん?」

 

「アリサでいいって言ってんのよ。最近あたし達のクラスにいる男子二人のせいでまともな男友達がいないのよ」

 

 ……は?

 

「う、うん。何か『俺の女に手を近づくな!』って言って皆を遠ざけてるの。おかげでクラスの男子は私達に近寄らなくなったの……」

 

 月村とバニングスは暗い表情で言った。

 

 ってかその二人、もの凄く心当たりがあるのだけど……?

 

「そ、そうか。ならアリサにすずか、俺は帰r――「待ちなさい! アンタの名前を聞いてないわよ!」……ああ、忘れてた」

 

「俺は篠崎煉。学校は家の都合で行っていない」

 

「……悪い事を聞いたかしら?」

 

 学校に行けないほどの都合があると聞かされたアリサは少し申し訳なさそうに聞いてきた。

 

「いや、大したことじゃ無いから気にしなくてもいいよ」

 

「そう、ならそうするわ。アンタはいつもここにいるの?」

 

 何故そんな事を聞くんだ?

 

「いつもじゃ無いけど……暇な時は此処で寝ているよ」

 

「そっか。それじゃあ私達も時々来るから、その時には話し相手になってくれるかしら? すずかもいいわよね?」

 

「うん、いいよ」

 

 ああそっか……男友達がいないから俺と話したい訳ね。それにしても馬鹿二人は傍迷惑な奴等だな……

 

「俺も別にいいよ」

 

「そっ、よかったわ。それじゃ、私達も帰るわ。行くわよ、すずか」

 

「あ!待ってよ、アリサちゃん」

 

 そう言って二人は俺に別れを告げて去って行った。

 

 ………それにしても、随分と俺も警戒心が薄れたな。疑似体験時の時にはこんなこと予想もしてなかった。

 

 ま、こんなのも時には良いよな?

 

「それじゃ、俺も帰るk―――【マスター、魔力反応を感知しました】って、早速かよ?」

 

 あの二人に付き合うのはしんどいが、そうも言ってられないからな。

 

 それに、カメラのような物で監視をしているということは何れ接触する可能性もある。奴等の目的を知るにはこちらから出向く必要がありそうだ。

 

「ナインボール・セラフ、起動」

 

【了解】

 

 さて、場所はそう遠くなし、既に結界も張られて周囲には人っ子一人もいない。

 

 俺は上昇し、目的の場所に移動する……が。

 

「……今度はトレントか? 熟々魔法というのは何でもありだな」

 

 俺の目の前にはピンク色の魔法を撃っている高町+フェレット+馬鹿二人、そして問題の敵であるだろうモンスターは巨大な木だ。

 

 しかも根っこが動き手も生えている上に顔が付いている。以前の木の方がまだ見た目はマシだ。

 

「こ、の! 木の分際で動くな!!」

 

「邪魔くせぇ! アルトリア!」

 

【了解しました。ストライク・エア】

 

 馬鹿二人も苦戦しているようだ。

 

「ディバイン……バスター!!」

 

 高町も隙を突いて砲撃を行っているが、障壁のようなものに阻まれる。

 

 あの木、障壁を張れるのか? しかも、破壊された根っこはすぐに再生している……すごいな。

 

「折角アイツ等が戦っているんだ。此処で観戦して、後でジュエルシードを頂こう」

 

 ん? なんか俺……悪党っぽいな?

 

「……来たか」

 

 そして三人が一生懸命戦っている時、金色の刃が回転しながら高町達を襲おうとした根っこを斬り裂いた。

 

「あ! あの子!」

 

「やっと来てくれたか、俺の嫁!」

「ナイスだフェイト! 愛してるぜ!」

 

 現れたのはフェイトとアルフだ。しかし、フェイトは三人と一匹の言葉を無視して敵を見据える。馬鹿二人の声を聞いた瞬間、身震いしたように見えたのは気のせいだろう。

 

「フェイト……あの木、生意気にもバリアを張ってるよ? どうするのさ?」

 

「……一人じゃ難しい。でも、あの子となら……」

 

 だが、それは杞憂に終わるらしい。

 

「よっしゃ! フェイトが来たところで俺様の格好いいところを見せてやるぜ! アイリス!」

 

【ゲート・オブ・バビロン】

 

 天城が武器を天に掲げた。すると幾つもの光の剣や槍が現れ、

 

「沈めぇええ!!」

 

 一斉に射出した。

 

「グォオオオオ!?」

 

 トレントはバリアで防ぐも、無数の降り注ぐ武器により突破されて甚大なダメージを受ける。

 

「今だなのは!」

 

「……へ? あ、うん。ジュエルシードシリアルⅦ」

 

「っ! 封印!!」

 

 フェイトはなのはが封印しようとして咄嗟に自分も封印処理した。

 

 封印が施された後、ジュエルシードは空中に停滞している。

 

「うし! 決まったぜ!」

 

「ちっ! 先を越されたか……」

 

 ……決まっていない。っていうか、何故最初っからその魔法を使わなかった?

 

「もう!天城君!なんで最初っからその魔法を使わなかったの!? 酷いよ!」

 

「え? あ、なのは? ええと……これはだな?」

 

 ふっ、高町に怒られてやがる。当然と言えば当然か。

 

「いい気味だ」

 

 神崎も鼻で笑ってやがる。

 

 高町は言い訳をしている天城を無視してフェイトに向き直る。

 

「ジュエルシードは……衝撃を与えたらダメみたいだ」

 

「昨夜のようなことになったら……レイジングハートも、貴女のデバイスも可哀想だよね?」

 

「だけど、譲れないから」

 

【デバイスモード】

 

 フェイトは武器の形状を杖型に変えて言う。そして高町も同じようにする。

 

「私は……あなたとお話したいだけなんだけど」

 

【デバイスモード】

 

「戦う前に、あなたのお名前……教えてくれるかな?」

 

「名前……?」

 

 ……こんな時に相手の名前を聞くのか?

 

「そう、名前。いつまでも『あなた』って言うのはちょっと不便だから……。私は高町なのは。あなたのお名前は?」

 

「……フェイト。フェイト・テスタロッサ。それが私の名前」

 

「うん、わかった。それじゃ、私が勝ったら……甘ったれた子じゃないって分かったら……私の話を聞いて!」

 

「……」 

 

 フェイトは口にはしなかったものの、頷いて答えた。

 

 これは……邪魔しない方がいいだろう。成り行きとは言え、決闘の形になってしまった。

 

 いくら俺でもそんな無粋な真似はしない。取りあえず俺は待機している二人と二匹の側へ降り立った。

 

「うおっ!?」

 

「な!? 貴女は!?」

 

「て、テメェいつの間に!?」

 

「……」

 

 ユーノと馬鹿二人は驚いている。そしてアルフはこちらを睨み付けていた。高町とフェイト改めテスタロッサはこちらを一瞥し、手を出さないと分かるとお互いを見据えた。

 

【今回は手を出しません】

 

 その言葉を聞いてアルフとユーノはホッとしているみたいだ。

 

 それにしても、あの馬鹿二人……やけに静かだな?なにか辺りを気にしてそわそわしているみたいだが……

 

 そして、テスタロッサと高町は同時に動いた。

 

 互いのデバイスを構えて振り下ろすその瞬間

 

【マスター、空間異常を感知。何かが転移してきます】

 

 ルシフェルが報告する。俺は驚いて高町達の方を見ると青っぽい色の魔法陣の様な物が現れ、一人の少年が杖と素手で高町達の杖を受け止めていた。

 

「ストップだ!」

 

「「っ!?」」

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ!此処での戦闘は危険すぎる! 詳しい事情をを聞かせてもらおうか?」

 

 ……また面倒な事になったな。それと馬鹿二人、何故お前等はにやけている?

 

 ここは素直に逃げた方が………待てよ? もしかしてコイツ、監視していた奴らかもしれない。だとしたら話を聞くのもアリだな。

 

「先ずは2人共武器を降ろすんだ! 話はそれからだ」

 

 しかしまあ、こんなガキが随分と偉そうだな。だけど俺には分かる。コイツ、高町やテスタロッサより強い。

 

 ちょっと試してみたくなった……ん?

 

「っ!」

 

 俺が少しウズウズしていると突然上空からオレンジ色の弾、魔力弾とでも言おうか?それが3発ほどハラオウンに向かって来た。

 

 しかし、簡単に防がれる。

 

「フェイト! 撤退するよ!」

 

「……っ!」

 

 テスタロッサは一瞬躊躇ったようだが、すぐに行動した。だが、向かった先はジュエルシードがある所。

 

 ……馬鹿が、素直に逃げればいいものを。

 

 テスタロッサがジュエルシードを掴もうとしたとき、地上から攻撃を受けて墜落した。

 

「フェイト!?」

 

 それをアルフがキャッチする。どうやらフェイトは気絶しているようだ。

 

 そしてアルフ達に向かってハラオウンは武器を構えて……って! 戦闘意志のない奴に追い打ちを掛けるのか!? 

 

「だ、ダメー!」

 

 高町が待ったを掛けるが遅い。あの場か二人もようやく動き出したが、それでもタイミングを外して間に合わない。

 

 アルフは自分に迫り来る魔力弾に目を瞑って耐えようとするが、その必要は無いよ。

 

「なっ!?」

 

「……っ! アンタ、どういうつもりだい!?」

 

 俺は魔力弾とアルフの間に入り、シールドを張って防ぐ。

 

【……行きなさい。今回は貴女達に味方しましょう】

 

「……礼は言わないよ!」

 

 俺はアルフを逃がし、ハラオウンを見据える。

 

 ハラオウンは俺が飛び出して防いだことに驚いているようだが、姿に驚いている節はない。やはりコイツが監視者なのか?

 

「っく! お前、どういうつもりだ! 何故邪魔をする!」

 

 どういうつもり? 見れば分かるだろう?

 

【戦闘意志の無い者に攻撃を加えようとしたので防がせて貰いました】

 

「それは向こうが最初に攻撃をしてきたからだろう!?」

 

【だとしてもです。それに、私はどちらが正しいのか判断ができません】

 

 尚も言い返そうとするハラオウンに待ったを掛ける如くモニターの様なものが現れた。

 

 そこに映し出されたのはかなりの美人さんだった。

 

『待ちなさいクロノ』

 

「か、艦長!? ですがっ!」

 

 艦長? 隊長でも司令官でも無く、艦長? だとすると艦があるのか?

 

『無駄に事を荒立ててはいけません』

 

 どうやら話は出来そうだな。

 

【何者ですか?】

 

『申し遅れました。私は時空管理局に所属している次元航行艦『アースラ』の艦長、リンディ・ハラオウン提督です。貴女のお名前をお聞きしてもよろしいですか?』

 

 ほう……随分と地位が高いな。これは……話すべきか?

 

【ルシフェル……そう呼ばれています】

 

『分かりました、ルシフェルさん。申し訳ありませんが、事情をお聞きしたいのでこちらの艦に来て貰っても構いませんか?』

 

 多分、移動手段があるんだろうな。

 

【……了承します】

 

『ありがとうございます。クロノ、向こうにいる子達も連れてきてね』

 

「……はい、艦長」

 

 ハラオウンは渋々ながら頷いた。

 

 それにしても馬鹿二人は何故動かない? アイツ等のことだから、この状況を良しとしないと思ったんだが……?

 

 そして俺達が一か所に集まると、足元に魔法陣の様な者が現れ、俺の視界が一変する。 

 

 

 

 

「状況は?」

 

「現地では既に二者による戦闘が開始されています」

 

 私の名前はリンディ・ハラオウン。時空管理局次元航行艦『アースラ』の艦長であり、執務官であるクロノ・ハラオウンの母親でもあります。

 

 私は今、次元震のあった地球を監視しています。そこでは既に戦闘が始まっていたわ。

 

「中心となっているロストロギアのクラスはA+。動作は不安定ですが、無差別攻撃の特性を見せています」

 

 無差別攻撃とは穏やかじゃ無いわね……

 

「次元干渉型のロストロギア……危険ね」

 

 モニターに映っているのは4人の子供達が戦っている。何れも内に大きな魔力を秘めているわ。

 

 そしてロストロギアが封印された後、二人の女の子が向き合って構えている。

 

「来ました! アンノウンです!」

 

 それと同時に一体のロボットのようなものが傍観している子供達の側に降り立った。

 

 以前、次元震が会った時に姿を見せた真っ黒なロボット。こっそりと忍ばせたサーチャーの映像を解析したら、

 どうやら次元震の元であるロストロギアを破壊したのはこのロボットだということが分かった。

 

 その時に放った集束型高エネルギー……。その威力は一瞬でロストロギアを蒸発させた。恐ろしいほどの威力だわ。

 

 それに、ステルスを最大にしたサーチャーを見破って逃走もした。しかも追跡不可能。絶対に敵に回してはいけないわ。

 

「クロノ、すぐに現地に向かって彼女達を止めてちょうだい。それとロストロギアの回収も」

 

「はい艦長!」

 

 クロノが転送ポートに入り転移した。

 

 ……大丈夫かしら?あの子、ちょっと融通が利かないところがあるのよね……。

 

「エイミィ、あの機械から魔力反応は?」

 

「……前と同じように殆どありません。一応保有魔力はDランク程度ですが」

 

 Dランク……。明らかに低いわね。でも、魔力が内包されていると言うことは少なくとも動力の一部に魔力が使われているって事かしら?

 

 でも、攻撃には一切の魔力反応が無かった。だとすると……質量兵器?

 

 この管理外世界にそれほどまでの技術力があるというの?

 

 ……いいえ、まだあのロボットがこの世界の産物とは決まっていないわ。もしかしたら次元漂流したのかもしれないし……

 

 

 そうこうしている内にクロノが二人の攻撃を止めて、いきなり上空から攻撃を受けた。

 

 ま、この程度ならクロノにとっては何ともないのだけれど……

 

 そしてクロノはロストロギアを奪おうとした少女に攻撃を加え、墜落する。それをあの子の使い魔と思われる狼がキャッチした。

 

 うん、流石はクロノね! 私の自慢の息子だわ!

 

 あのロボットさんも動かないみたいだし、事は無事に済みそうね……って、クロノ? 追撃はちょっとやり過ぎよ!

 

 私が慌てて止めようとしてももう間に合わない。せめてバインド系の魔法なら問題ないけど、射撃系の魔法はやり過ぎ。

 

 待機していた少年達も掛けだそうとするけど間に合わない。

 

 ロボットさんも……って、あれ? いない? 何処に……っ!?

 

 ロボットさんは確かにいた。でも、居たのはクロノと女の子の間だったわ。

 

「……マズイわ!」

 

 あのロボットさんが割って入ったということは、必然的に魔力弾が当たってしまう。

 

 そして魔力弾が直撃したと思ったけどそれは杞憂に終わった。いえ、杞憂と言っていいのかしら?

 

 ロボットさんの手前で魔力弾が弾かれてしまったのだから。しかもバリアが見えない。

 

「エイミィ、今のは?」 

 

「わ、分かりません! ですがアンノウンの周囲に一瞬、空間異常が発生してました!」

 

 空間異常? もしかして空間を歪めたというの!?

 

 ますます敵に回してはいけなくなったわね……。

 

 私は通信を開き、あのクロノを止めた。

 

 向こうはそこまでこちらを敵視してないようね。対話も成功している。あとはこっちに招いて味方になるようにすれば……

 

 

 

 

「ここが艦長の部屋だ」

 

 俺は艦長室の前に来ている。

 

 ここに来るまで若干のハプニングがあった。

 

 実はユーノがフェレットではなくて人間だったのだ!

 

 これには俺も驚いた。魔法というのは姿形まで自在なのか……。ちょっと欲しいかも……。

 

 そしてここに来て問題が浮上する。

 

「えっと……どうやら入りきれないみたいだね?」

 

 そう、ハラオウンの言う通り……身体が入らないのだ!!

 

 クソッ!この機体、大きさが2.5mもあるから入らないのだ!しかも屈んで入ろうとしたら背中のバーニアがつっかえるという情けない事になった。

 

 ……どうしよう? いくら何でもバーニアだけをベクタートラップで収納は出来ないし、デフォがこの大きさだから一部の武装を外しても意味はない。

 となると…………あ、そうだ!俺自身をベクタートラップで縮めればいいんだ!たしか、アヌビスもそうやってステルスの代わりにしてたから理論上はできるはずだ!

 

【はい、問題ありません】

 

 なら早速やってみよう!

 

「なっ!?」

 

「き、消えたの!?」

 

 そして俺は中に入って元の大きさに戻す。

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 全員が驚いた。

 

 リンディ・ハラオウンは声も出ないようだ。一応数秒したら復活した。

 

 っていうかちょっと待て!今気づいたのだが、何なんだこの部屋は!?畳に盆栽、さらには鹿威しまである!?どんだけ日本文化が好きなんだよ!

 

「そ、それじゃあ事情をお聞きしましょうか?先ずはルシフェルさんから」

 

 そして俺の方へ全員が注目する。

 

「ルシフェルさん、貴女は何者なんですか?」

 

【私はAIです】

 

「なっ、AI……だと!?」

 

「あり得ないわ……。AIはプログラム。自らの意志で独立して行動するなんて……」

 

 確かにそうだ。実際に動かしているのは俺だしな。

 

【否定しようがしまいが私がAIであることには変わりません】

 

「……そうね、少し信じがたいけど……。それでルシフェルさん?貴女が先日ジュエルシードを破壊した攻撃……あれは一体何ですか?」

 

 うわぁ……期待していなかったとは言え、やっぱり見てたのか……。

 

 ま、別に『Ω』は切り札じゃないから言っても構わないが、進んで自分の手の内を明かす必要はないだろう。

 

【黙秘します】

 

「……何故ですか?」

 

【貴女方は素性の知れない未知の組織に対し、自ら進んで情報を与えるのですか?】

 

「なっ!素性の知れないとはどういう意味だ!僕達は時空管理局なんだぞ!」

 

 アホか。全部の世界が『時空管理局』という組織を知っている訳じゃないだろ?実際に地球ではそんな名前は一切出てこなかったぞ?

 

「止めなさいクロノ。世界は広いわ。管理局の名前を知らない人達が居てもおかしくは無いわ。ましてや此処は管理外世界。知らないのも当然よ」

 

 ふむ、子供と違って大人は理知的で助かる。だけど、それ故に警戒する必要もあるけどね。

 

【今度は私からの質問です。時空管理局とは一体何ですか?】

 

「そうね、高町さん達も聞いておいてね?」

 

 そして時空管理局とは何かの説明が始まった。

 

 彼女の言葉を要約すると、時空管理局とは司法と行政の両方の権力を持った組織であり、多数存在する次元世界を管理しているそうだ。

 

 ……はっ!馬鹿馬鹿しい。世界の管理?そんな事をしようとした組織がどうなったか俺は沢山見てきた。疑似体験だけど。

 

【やはり人間は愚かですね……】

 

「なに?」

 

「どういうことですか?」

 

【言葉の通りです。世界を管理しようなどというのは愚か以外何がありますか?】

 

「だけど、それで救われた人達がいる」

 

 クロノ・ハラオウンの言う通り、救われた人がいるかもしれない。だけど―――

 

【それと同時に死んだ人、不幸になった人もいるでしょう】

 

「そんなこと……」

 

【あります。私はそう言う人を見てきました。そして、世界を管理しようとした組織の末路も】 

 

 結局は夢物語で終わってしまうんだよ、そんなモノは。

 

「……貴女はこの世界とは違う所から来たのですか?」

 

 嘘を吐いてもすぐバレる。ここは正直に言おうか。

 

【はい、その通りです。私はこの世界の産物ではありません】

 

「「「っ!?」」」

 

「やっぱり……。それで、貴女の世界は……」

 

 さあな?もしかしたらコジマ汚染で人類が死滅しているかもしれんが。

 

【汚染物質によって人類は死滅しました】

 

 っておいぃぃぃ!? そのまま言う奴があるかぁー!!

 

【違いましたか?】

 

 大間違いです!!

 

「そう……ですか。……それじゃあ、今度は高町さん達ね」

 

 そして高町の話に移る。

 

 提督は今まで奮闘してきた高町達を褒め称えた。だが、ジュエルシードについて全権を預かるから元の生活に戻れと言った。

 

 まあ当然な話だ。高町は一般人だ。元より魔法なんかとは無縁な生活を送るはずだったんだからな。

 

 だが、次の一言は理解出来なかった。

 

「まぁ、急に言われても気持ちの整理が付かないでしょう?今晩ゆっくり考えて、それから改めて話をしましょう」

 

 何故?

 

 俺が一番に思いついた言葉がこれだった。何故話し合う必要があるのだろうか? この件に関しては管理局が全権を預かるのだろう?

 

 話し合う要素が全く無いと思う。

 

 俺はルシフェルに頼んでそこのところを聞こうとしたら……

 

「「はっ! アンタの考えは見え見えなんだよリンディ提督!」」

 

「は?」

 

 馬鹿二人がハモった。

 

「おい神崎!俺のセリフを盗ってんじゃねぇよ!」

 

「黙れ!盗ったのはお前だろうが!」

 

 誰かコイツらを止めてくれ。いや、消してくれ。

 

「あ、あの……天城君? 神崎君?」

 

 高町もいきなりで混乱しているようだ。

 

「ちっ!まあいい。それでリンディ提督、アンタはなのはを利用する気だろ!」

 

「話し合う必要なんざ何処にもねぇだろうが! 俺達は協力しないぜ!」

 

 ふむ、おかしいな……。あれだけアホな二人が何故この言葉の矛盾を気付き、理解したのだろうか?

 

 しかもハモっている。……まるでこう言う事を知っていたかのように……

 

 ……ああ、そっか! コイツら、原作を知っているんだな? だから『俺の嫁!』とか『モブキャラは引っ込め!』とか言ってたのか。納得した。しかも、自分がオリジナルの主人公とか思っているんだな……ははっ、馬鹿らしい。

 

 その後、リンディ提督は言い訳をせずに素直に謝った。さすがにクロノ・ハラオウンは提督の意図に気づかなかったようだ。そりゃそうだよな。まさか自分の親がそんな事をするとは思わないだろう。

 

 それに、10歳の少女に組織が正式に協力要請することはできないだろう。

 

 だが、組織はともかく俺はこの人達が嫌いでは無い。確かにやり方はどうかと思うが、素直に謝ったからだ。

 

 そして、尚も言い続ける馬鹿2人に高町が怒り、2人は黙る。ありゃ本気で怒ってたな。

 

 だが、高町はそれでも回収を手伝うと言った。2人が止めたが全く聞く耳持たなかった。だが、親にはちゃんと話し合ってから決めるようにとは言った。

 

 高町の人生に大きく影響するからだ。

 

 

 さて、そこで話は終わりだと思ったのだが……

 

「それでは最後に、ルシフェルさん。貴女にもジュエルシードの回収を手伝って欲しいのです」

 

 と来たもんだ。勿論、その要望は……

 

【お断りします】

 

 即答で断る。

 

「え!? なんで!?」

 

「なっ!? 何故だ!」

 

 クロノ・ハラオウン、一々うるさい。

 

「理由をお聞きしても?」

 

【私の目的は危険物質であるジュエルシードを破壊、もしくは安全な場所への投棄です。貴女方が回収し、しかるべき場所で保管するのなら私が出る必要はありません】

 

「ですが、今の段階ではまだジュエルシードが散らばっているのですよ? それに、あの黒衣の魔導師が悪用して次元世界が滅びる可能性も否定できません」

 

 ……随分と引っ張るな?

 

 ………そっか……そういう事か。

 

【それをさせないために貴女方がいるのでしょう?】

 

 要は俺を監視するためなんだな?

 

 ハッキリ言えばいいものを……

 

「で、ですが……」

 

【ハッキリ言ったらどうです? 私を監視するためなんでしょう?】

 

「っ!」

 

 隠そうとしても無駄だ。今一瞬、表情が強張ったからな。

 

「当たり前だ! あんな危険な質量兵器を放っておける訳ないだろう!」

 

 クロノ・ハラオウン、お前は素直というか、正直者というか……

 

【それでは、私が手伝わなければ……時空管理局(・・・・・)はどういった行動を取りますか?】

 

 俺はリンディハラオウン個人では無く、組織としての問い掛けをした。 

 

 提督である彼女もこの意味が分からない訳ではないだろう。

 

「…………あれほどの威力を持った質量兵器を上層部は見逃さないでしょう。これはあくまで私の推測に過ぎませんが、質量兵器の押収という形で貴女を捕獲して……分解、研究材料として扱われると思います。最悪、自分たちの物にするか……」

 

 正直で何よりだ。

 

 そしてクロノ・ハラオウンは提督が言ったことに驚愕していた。

 

 彼もまだまだ子供だ。社会や組織の闇にはまだ疎い。

 

 そもそも簡単に捕まるつもりも殺されるつもりも無い。少し牽制してみるか……

 

【そうですか。厄介なのには変わりありませんが、そこまで問題ではありませんね】

 

「……え?」

 

【例え、時空管理局が私を捕獲または破壊を試みても、私を捕獲することは不可能に近いですから。例え艦隊を持ってきても不可能です】

 

「っ!」

 

「どういうことだ?」

 

 リンディ提督は意味を理解したようだがクロノ・ハラオウンはまだ理解してないようだ。

 

【分かりませんか?私は艦隊を持ってきても問題無いほどの戦闘力を保有しているということです】

 

「なっ!? そ、そんな事信じられる訳ないだろう!」

 

【信じるも信じないも貴方の勝手です、クロノ・ハラオウン。私は人間と違って事実しか言いません】

 

 あまり手の内を明かしたくは無いけど、序でにもう少し脅しておこう。

 

【私は一個艦隊を簡単に壊滅さることが出来ます。今此処で証明して見せましょうか?】

 

「なっ!そんなk―――「い、いえ! 結構です! 申し訳ありません!」艦長!?」

 

 ふむ、理解が早くて助かる。

 

「クロノ、彼女が言っている事は本当よ。AIは嘘を吐かないわ」

 

「で、ですが……」

 

 ま、普通は信じられんわな。さて、俺としては組織は信用できないが、リンディ提督個人なら信用できると思う。

 

 断っておいて言うのもなんだが、手伝ってやっても良いかもしれない。色々条件は付けるがね?

 

【どうなさいますか、マスター?】

 

 そうだな……このまま放置して、もし彼女達が回収に失敗したら面倒な事になりそうだ。今回は協力要請(・・)に応じても良い。

 

【わかりました。そのように致します】

 

 あわよくば楽しめる状況が来るかもしれないからな。

 

【リンディ・ハラオウン提督】

 

「な、何かしら?」

 

 提督もそんなに身構えなくてもいいのにな、ははっ。

 

【先ほどの協力要請、条件付きなら応じても構いません】

 

「ほ、本当ですか!?」

 

【はい。ただし、条件を呑めば、ですが】

 

「その条件とは?」

 

 そうだな、当然一つは俺達の事を隠蔽することだ。口が堅い奴なら構わんが……

 

 次に、協力に応じるのは今回だけだということ。

 

 どうしても隠しきれず、上に知られたら必ず俺に報告すること。

 

 これぐらいだろうか? ああそれと、あくまでも協力するだけだから、そっちの指揮下には入らないことぐらいだな。

 

【条件は4つです。

 一つ、私の存在を上層部、もしくは信頼の出来る人物以外話さないこと。

 二つ、協力要請に従うのは今回だけだということ。

 三つ、何らかの理由で私の存在が知られてしまったら必ず報告すること。

 四つ、あくまで協力なので、そちらの指揮下には入らないこと。

 以上、この四点です】

 

「冗談じゃ無い! 二つ目ならともかく、残りを全部聞き入れるわけ出来ないだろ!!」

 

 それでも呑んで貰わなければ困る。まあ実際は呑まざるを得ないのだけどね。

 

「クロノ、決定権は私にあります。黙っていなさい」

 

「……はい……艦長」

 

 まだ納得出来ないようだな、クロノ・ハラオウンは。

 

【して、返答は?】

 

「いいでしょう。その条件、呑ませて頂きます」

 

【それでは交渉成立ですね。短い期間ですが、よろしくお願いします】

 

 さて……交渉も成功し、情報も手に入れた。文句は無い。

 

 これから状況がどう転ぶか楽しみだ。

 

 

 

 


 
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