No.531736

Just Walk In The ----- ep.1『Mist ~五里霧中~』・3

ども、峠崎ジョージです。
投稿99作品目になりました。あと一息で大台です。
能力者SF第1章、その3をお届けします。
俺の遅筆及び何足もの草鞋のせいで前の話が思い出せない人が多いと思いまして、今回から今北産業的なあらすじを加えることにしました。

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2013-01-14 17:36:25 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4219   閲覧ユーザー数:3683

 

あの後、乾さんに別れを告げてやってきたのは、昨日も訪れたアーケード商店街。マリアさんが言うには、ここには自分もよく利用するお勧めの店があるのだとか。時刻は午後に差し掛かり、頭上で燦々と山吹色を降り注がせていた太陽も徐々に西へ傾き始め、昼食時の賑わいはすっかりと形を潜めてはいるものの、行き交う人の波は変わらず衰えていない。とはいっても、その平均年齢は幾分か増しているようだが。

 

「ここですよ」

 

そんな中、マリアさんはとある店舗の前で立ち止まる。決して広いとは言えない店内に所狭しと詰め込まれた本、本、本。昨今、広いリノリウムと高い天井の清潔感あふれる大型書店が普及する中で、未だ何処か昭和の名残を匂わせる古きよき様式美。漫画や絵本などの子供向けもある程度抑えつつも、”地域密着(ローカル)”とでも言えばいいのだろうか。きっとこの店は新規の客を呼び込む事よりも、馴染みの客を大切にするタイプなのだろう。そんな気がする。

 

「丸岡、書店」

「こんにちは~」

「え、ちょっ、マリアさん?」

 

それなりに年季の入った看板の文字を読み上げる僕を余所に、マリアさんは随分と慣れた所作で店内へと入っていく。僕が驚いているのは、見間違いでなければ開け放たれたその入り口、吊された看板には確かに”休業中”と記されていたからである。

躊躇いつつも後に続くと、案の定開店はしていないようで、レジはおろか店内に店員らしき人影は見あたらず、何やら奥の方から、忙しいとはいかないまでも何やら絶え間なく物音が続いている。

 

「すみませ~ん、鞠原です~」

「えっと、お邪魔しま~す……」

 

そう言いながら、勝手知ったると言わんばかりにマリアさんはどんどん奥へと向かっていく。心持ち身を屈め、きょろきょろと意味もなく当たりを見回しつつ、僕も後に続く。昼間とは言え、電灯も点けられていない店内は当然ながら奥に進むにつれて暗さを増していき、見知らぬ閉鎖的で物静かな空間ともなれば少なからずの気味の悪さを感じてしまうのは否めないだろう。何が起こるわけもなし、と解っていたとしても、そこに有りもしない幻想を創り出してしまうのが人間というものである。”幽霊の正体見たり枯れ尾花”が全人類の共通認識であるなら宗教という文化が生まれる事はなかっただろうし、そもそも娯楽というジャンルから”ホラー”の三文字がとっくの昔に抹消されているはずである。

ともあれ、そのまま石橋を叩いて渡るような足取りで暫く奥へと進むと、

 

「あれ、何しに来てんの、二人とも?」

「……え?」

 

予想に反して、そこには見知った顔がいた。上下揃った地味なジャージ姿は今朝までの印象とは正反対で、そう言えば”今日は本屋で棚卸しのバイト”なんて言っていた事を今になって思い出す。

 

「光さん?」

「おっす。で、どしたんすか? 店は見ての通り絶賛閉店中っすよ?」

「戦国くんにこのお店、紹介しておこうと思ったんですよ。ここなら彼好みの文献も多そうですし」

「あ~、納得っす」

 

晶の説明に得心がいったのか、小さい首肯を繰り返す光。すぐ傍ら、陳列された書籍から適当に一冊を持ち上げる。釣られて視線を向けると、

 

「……わっ」

「やっぱりな。目の色変わったぞ、お前」

 

光は苦笑しながらそれを手渡してくれた。海外暮らしの長かった国士が知らないのも無理はないが、一時期ちょっとしたブームまで巻き起こした、いわゆる”面白い日本語”の本である。まぁ、知らなかろうとそのタイトルだけで彼の興味を引くには十分であったようだが。

 

「ここのラインナップ、ちょっと偏ってっからなぁ。店主(おやっさん)がこういうの好きだし、あの大学って外人結構多いからな、こういう軽いのから本格的なのまで、語学系の本が気持ち多めなんだわ」

「光くん?」

「はい?」

「もう、聞いてないみたいですよ?」

「……あ~、っすね」

 

いつの間にやら、国士の両の瞳は爛々と輝き、まるで欲しかった玩具を与えられた子供のように、ともすれば獲物を射程に置いた肉食獣のようにすら思えるような喜びようであった。上下左右と目まぐるしく視線を巡らせ、その度に手にとっては開き、食い入るように目を通している。

 

「マジで好きなんだな、こういうの」

「放っておいたら、何時間とこうしていそうですね」

 

光は半ば感服、半ば呆然、晶は半ば安心、半ば誠意といったところか。どちらにせよ、概ね予想通りの反応に満足しているようである。

と、

 

「稲村くん、お客さんかね?」

「っと、おやっさん」

 

光の背後、ゆっくりと現れたのは腰の曲がった、セーターにアームカバーといういかにもな壮年の男性であった。年の頃は50前後だろうか。ゆったりとした口調が穏和な雰囲気に相まって見る者を皆、脱力させるような感覚を覚える。どれほどの緊張をもってしても、彼の前では拍子抜けしてしまいそうなほどだ。

 

「おや、鞠原くんじゃあないか。久しぶりだねぇ。今日はどうしたんだい? 今ちょうど、棚卸し中でね、お店はお休みなんだけど」

「お久しぶりです、丸岡さん。今度、私の後輩になる子にこのお店を紹介しておきたかったので」

「ほぅ。わざわざウチに、ということは留学生かい? それとも言語学専攻かね?」

「両方、ですかね、この場合」

「ほぅ……」

 

と、次の瞬間、店長の双眸が微かに細められ、ゆっくりと国士へ近づいていき、

 

「―――っと、はい?」

 

ぽんと一回、軽く肩を叩き、それでやっと我に返った国士がこちらを振り向いた所で、

 

作麼生(そもさん)

「っ? えっと、説破?」

「ほぅ、通じるのかい。嬉しいねぇ」

 

首を傾げつつ答える国士に店長は更に嬉しそうに瞼を細めた。ともすれば丁度アラビア数字の『3』を右に直角に回転させたような、デフォルトされた猫の口のように、唇の端を持ち上げているようにも見える。

 

「そもさん、って誰っすか?」

「人名じゃありませんよ。確か『質問をしますよ』って意味です。で、戦国くんは『答えて見せましょう』と答えた、で合ってますよね?」

「あぁ、そうだよ。もうちょっと、試してみてもいいかい?」

「え、えぇ。僕は構いませんけど」

 

若干、身構える国士。店長はそのまま、こう続けた。

 

「『石部金吉(いしべきんきち)』とは、どのような人物かな?」

「……誰? おやっさんの知り合いっすか?」

 

真っ先に口を開いたのは光であった。眉間に皺を寄せながら首を傾げ、あからさまに首を傾げて不明の意をありありと示している。隣の晶もまた、光ほどでないにしろ、ぴんと来ていないようだった。が、

 

「確か、融通の利かない人のことですよね。凄い頑固な人の例え、だったような。四角四面と同じ意味の」

「正解。若いのによく知っているじゃないか」

 

事も無げに答える国士に店長は満足そうに笑みを深め、光と晶は少なからずの驚きと共に国士を見つめる。

 

「では、『ふふき』とはどういった状態を指しているか、解るかい?」

「ふ()き? ふ()きじゃなくて、ですか?」

 

またもや耳に覚えのない単語に眉を顰める二人。しかし、それを余所に国士は脳内から該当すると思われる知識を手繰り寄せ、

 

「白髪混じりの頭のこと、ですよね。『斑』に『雑』な『毛』って書いて『斑雑毛(ふふき)』」

「おやおや、これも解るのかい。それじゃあ、これはどうかな?」

 

そう言って、店長はますます嬉しそうに言う。言葉尻が若干、弾んでいるように聞こえるのは、恐らく気のせいではないだろう。

 

「部首『さかなへん』の漢字が入った四字熟語を一つ、挙げてみてくれるかい?」

 

これには、流石に即答は返って来なかった。思いつく限り『魚』が含まれた漢字が脳内に羅列されていく。同様に、光と晶も考えては見るが、

 

「あ~っと、鮪、鮭、鮃、鯖……鮨? 回転鮨?」

「光くん、それだと四文字じゃありませんし、なにより熟語じゃないですよ」

 

まぁ、普通はパッと思いつくような問題ではないだろう。事実この問題、正答となる四字熟語はさして多くない。黙り込んでしまった国士に流石に意地悪だったかな、と思い始めた、その時だった。

 

「じゅんこう、ろかい」

「「……え?」」

「確か、そんなのありませんでしたっけ?」

 

国士の呟きに、先ほどまで迷走を続けていた二人もまた視線を店長に向ける。予想外の事に呆然としていたのか、店長は暫くしてから我に返ったように懐からメモ帳と鉛筆を取り出して、

 

「書けるかい?」

 

手渡されたメモ帳に、国士はさして迷うことなく書き記していく。白紙の上、さらさらと黒鉛が擦れていく音が数秒続いた後、

 

「……なんて読むんだ、こりゃ?」

 

蓴羹鱸膾。そこには教科書や辞書から切り取ってそのまま貼り付けたのでは、とでも思うほどに綺麗な字で、そう書かれていた。

 

蓴羹鱸膾(じゅんこうろかい)。確か、故郷を懐かしむ事、所謂ホームシックです。で、合ってます、よね?」

 

自信がない、という事だろう。覗き込むように店長の表情を窺う国士。釣られて二人もやはり、視線を店長へと向ける。すると、

 

「これは、驚いたな。正解だよ。字まで完璧だ」

「よしっ!!」

「……マジっすか?」

「凄いね、戦国くん」

 

これには流石に、手放しで誉め言葉が出てくるのも無理はない。二人にとっては日常生活ではまず目にすることのない、読み方すら想像もつかない文字もある。小さくガッツポーズをとりながら勝利(と呼んでいいものだろうか)を噛み締めている後輩を見て、今の二人はどこか尊敬どころか、一種の憧憬さえ覚えていた。

が、

 

「君、蓴羹鱸膾なんてよく知っていたね」

「あはは、有難うございます……これ、故事成語じゃないですか。僕、結構前に故事成語が沢山纏められた本、読んだことがあったので」

「大したもんだねぇ。『鯨飲馬食』でもよかったのに、まさかそっちが先に出てくるとは」

「―――あ」

 

どうやら、割と有名なそちらの方は完全に失念していたようである。たった今思い出しましたと言わんばかりにぽかんと口を開ける国士を見て、

 

「ふふふふふっ、ははははははははっ」

 

突如、呵々とまではいかないものの、それなりの声量で笑い出した後、

 

「いやぁ、気に入ったよ君。名前は何と言うのかな?」

「えっと、国士と言います。戦部国士」

「おぉ、いい名前じゃないか。しかし、見た所日本人のようだし、和名という事は留学生じゃないのかい?」

「えっと、実はつい先日まで海外で暮らしてまして……」

 

そのまま事情を伝えること数分。やがて店長は皺の寄り始めている暖かな手を差し出し、力強い握手を交わしながら言う。

 

「そうかそうか。頑張りたまえよ、戦国くん。私も、こう呼ばせてもらっても、構わんかね?」

「えぇ。こちらこそ、宜しくお願いします」

「何かあったら、私も力になろう。小遣いが欲しければ、ウチでバイトするといい。君なら、大歓迎だ」

「あ、有難うございます。恐縮です」

「お、こっちでも後輩か、戦国」

「あはは……機会があったら、お願いします」

 

にっ、と歯を剥き出しにして笑う光に苦笑しつつ返す国士。と、その時だった。

 

 

 

 

―――それじゃあお父さん、ちょっと出かけてくるから。

 

 

 

 

店の奥から新たに現れた人影は、瓶底のような大き目の丸眼鏡に髪を両方で三つ編みに束ねた、ステレオタイプな文系の女の子だった。ベージュのセーターと紺のデニムは目立ち過ぎず大人しめ。女性的な小さい撫で肩に提げられたトートバッグには大福のように丸々とした虎模様の猫らしきキャラクターがプリントされている。そんな彼女、年頃は自分より少し下だろうか、と国士は推測する。日本でどうなのかは解らないが、同年代でも平均であろう自分より身長は低く、顔つきも童顔寄り。有りえないとは言い切れないが、これで年上だと言われたならそれは大層驚いてしまいそうだ。

 

「あぁ、いつものボランティアだったね。気を付けて行ってきなさい」

「ごめんね、棚卸し手伝えなくて」

「いいさ。稲村くんもいることだし、大体半分くらいは片付いたからね、夕方には目途がつくだろう」

「そんなに時間はかからないと思うから。稲村さん、お願いします。鞠原さんも来てたんですね」

「お久しぶりです。お元気でしたか?」

 

当然ながら、バイトである光、常連であろう晶とも顔見知りなようで、血の繋がりを実感できるような、何処か店長と似通った穏やかな笑顔で挨拶を交わす。そして、

 

「……あれ、そちらの方は、初めまして、ですよね?」

 

”そちらの方”が指すのが国士である事は言うまでもないだろう。すると、店長は国士を叩いて、何故か彼が自慢げにこう返した。

 

「戦部国士くんだ。この春から上智並大学に入学するそうだ。お前の二つ年上だな、『かほ』」

「へぇ、先輩なんですね……あれ、ひょっとして?」

 

と、何かに気付いたのか、『かほ』と呼ばれた彼女は晶へと視線で疑問を投げかける。それに晶もまた笑みを携えた首肯で返し、納得がいったのか、彼女は再び国士へと視線を向けて、

 

「中々見どころがあるぞ、彼は。私の問題にも難なく答えてみせたしなぁ」

「へぇ、そうなんですか……」

 

その『へぇ』は果たして、何故か誇らしげに語る父親への返答なのか、それとは別の何かに得心がいったからなのか。レンズ越しの彼女の瞳は絵に描いたように”興味があります”とこちらに訴えかけてきているようでもあった。

 

「あの、僕に何か?」

「いいえ、何でも。進学、おめでとうございます。丸岡書店を、どうかご贔屓に」

「えっと、こちらこそ」

「それじゃお父さん、今度こそ行ってくるから。晩御飯までには戻るからね」

「あぁ、行ってらっしゃい」

 

さしたる風もないように自分の傍らをすれ違い、店を出ていく彼女の後姿を見送りながら、国士は一言も発さず茫然としていた。何と形容すればいいのだろうか。兎角、不思議な空気の持ち主である、というのが今の国士の印象だった。第一印象は何処にでもいるような普通の女の子のようだったのだが、先刻のあの眼差し。自分の頭の中、胸の内、奥や底の方まで覗き込もうとするような、猛禽染みた視線は、それまでの印象をひっくり返すには充分過ぎるものであった。

 

「おやっさん、ボランティアってのは?」

「文字通りだよ。娘は不定期だが地域貢献団体に協力しているようでね」

「ふ~ん、そういう事にしてんのね……」

「ん? 何か言ったかね?」

「いや、何でも。ささ、さっさと終わらせちゃいましょうや」

「む、そうだな。それじゃあ鞠原くん、戦国くん、今後ともウチを贔屓にしてくれると嬉しいよ」

「はい、これからもお世話になります」

「よっ、宜しくお願いします」

 

何やら小声で意味深な言葉だけを残して、店長の背中を押すように再び裏方へと戻っていく光。にこやかな笑顔でそう言ってくれる店長にそう返しながら、二人は店から出て、

 

「どうでした? 案内した甲斐はありましたか?」

「え、えぇ、それはもう。叶うならずっと入り浸りたいくらいで……ただ、なんというか」

「気になりますか、『かほ』ちゃんが」

「……まぁ、はい。俺、なんかしましたっけ?」

「何もしてませんよ? ただ、彼女は”違う君”を前から知っていた、というだけで」

「……はい?」

 

意味が解らなかった。自分と彼女は間違いなく初対面であるはずだ。実際、彼女の顔に見覚えはなかった。あの眼鏡と三つ編みは海外暮らしの長い自分からすればかなり印象的だ、そうそう忘れることはないだろう。一体いつ、何処で、どのように、と頭の中で該当する記憶を探ろうとして、

 

「―――あれ?」

 

ふと頭を過ぎる閃き。九割九部九厘直感と言えるそれに確信めいた何かを感じられるのは偏に、実に濃密だった昨日の体験が故。そして、国士はそれを確かめるために晶に向き直って、

 

「気づきました?」

「えっと、多分、なんですけど」

 

『かほ』という人名を脳内でひたすら多様に変換する。それらしい候補はそれこそ山のように存在するが、もし自分の推測が正しいとするならば、

 

「名前に『歌』って字が入ってたりしませんか?」

「はい、正解です。『歌』に稲穂の『穂』と書いて『歌穂』。可愛らしい名前ですよね」

 

やはりか、とこれで推測が確信に変わる。あの規模の店舗で丸岡書店と銘打っている以上、店主の名字も丸岡で十中八九間違いないだろう。という事は、彼女のフルネームは『丸岡歌穂』という事になる。

そこから思い当たる”呼称”が一つだけ、ある。

 

「ってことは、やっぱり、彼女が?」

「はい、そうですよ。あの子が―――」

 

 

 

 

…………

 

 

 

……………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

待ち合わせである智並駅へと、歌穂は向かっていた。

午後間もない駅前としては、人通りの込み具合は相応以上だった。とはいっても、どうやら駅の利用者が殺到しているというわけではなく、どうやら近場で人だかりができるような何かが起こったからだろう。これほどの集客力を誇るイベントが催されるような報せを聞いたことはないし、となれば思い当たるのは一つである。

 

(また、事故があったのかな)

 

同一の宅配便業者のトラックが原因不明の衝突事故を連続して起こしている。第4課が動き出したことから、能力者による意図的な犯行なのでは。ここ最近、ここ智並市を騒がせているゴシップである。

 

(嫌だなぁ)

 

それはある意味で当然の嫌悪だが、彼女は特に争いを好まない傾向にあった。それは彼女の思考もさることながら、彼女が持つ『とある秘密』もまた関係してた。それを共有する者は数えるほどしかおらず、これから会おうとしている人物はその一人である。

やがて『智並駅』の大きな三文字が視界に入り、そこまで来ると人混みは若干緩和されているように感じた。どうやら駅周辺ではあったものの、近辺での事件ではなかったようだ(歌穂は知らないが前回、乾たち第4課が調査していた事件現場である)。

 

「さて、と」

 

首はさして回さず、視線だけを巡らせて待ち人を探す。”彼”を探すのはさして困難ではない。あらゆる面で極めて特徴的であるからだ。彼は体格のみならず、その服装まで極めて常軌を逸しており、それがいい意味でも悪い意味でもこの町で彼を有名にしている。関わった者は皆、口を揃えて言うだろう。『彼は外見と中身がギャップだらけだ』と。

 

「……いた」

 

駅の出入り口、そのすぐそば。丸太のように逞しい両腕を組んで柱に凭れかかるようにそこにいる彼は周囲の雑踏と比べても頭一つ飛びぬけており、ただの趣味だと本人は主張しているサングラスとアロハシャツが少なからずの威圧感を与えているのだろう、彼から見て半径は肩幅二人分くらいだろうか、ぽっかりと空間が空けられている。まぁ身長190センチ前後、筋骨隆々、強面と見るからに堅気っぽくない人物を見かけたなら、顔見知りでない限りまず近寄ろうとは思わないだろう。が、なぜか彼は子供や動物には好かれる体質らしく、今も足元で野良猫が一匹、日向ぼっこに耽っていた。

 

(なんか、ちょっと優越感だよね)

 

これは、ちょっとしたアドバンテージだと、歌穂は思っていた。中身まで本当に”そう”であったなら忌避するべきだが、彼は全く正反対の人物である。ある程度関わってみることで初めて解ることだが、彼が自分で思っている以上に義理堅く、人情に厚く、何より心優しいと、彼女は思っていた。

兎角、いつまでもこうしていては何が始まる訳もなし。いつまでも待ち人を待たせるわけにもいかない。そう、彼のような人物が自分を『頼ってくれる』。夏帆が優越感を感じているのは、その部分にあった。

 

「お待たせしました、丈二さん」

「……おぅ。待ち時間5分前。流石だな」

「それを言ったら、丈二さんはいつからここに?」

「さぁな。別にいいだろう、いつからいようと」

 

周囲から幾つか、微かに息を呑むような声が聞こえた気がする。それが少しおかしくて、くすりとほんの少し笑いを漏らしてしまう。

 

「どうした?」

「いいえ、何も。それじゃ、行きましょうか。駅の向こうの病院、でしたよね?」

「あぁ。お前の”力”を貸してくれ、『うたまる』」

「はい、『ジョージ』さんっ」

 

踵を返して駅の構内を通り抜けようと歩き出す彼の横に、ほんの少し言葉尻を弾ませながら早歩きで後に続く。傍から見ると某フォークデュオを彷彿させるような身長差であり、その珍妙な組み合わせに周囲の皆は少なからず目を見張っているようであった。

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

久方ぶりの『Just Walk』更新です。今回はあまり進展はしていませんが、新キャラ登場ということで勘弁してつかぁさい。

第1章の流れはほぼ完ぺきに出来上がっているので、後は執筆時間の問題です。何とか合間を縫って書いてはいますが……あ、これと並行してちまちま『蒼穹』は書いていたので、次の更新は多分それです。

 

で、

 

登場したよ。設定貰ってから偉い時間経っちゃってスマヌ。

たいしていじってはいないので、後は君の好みに沿えるか否かなんだが……はてさて、どうなるかなぁ(汗

ちなみに設定の公開は次回更新の後書きで。彼女の『秘密』もそこで一応明らかになりますので、それに合わせてという事にします。

 

ほいでは、次回の更新でお会いしましょう。

でわでわノシ

 

 

 

 

…………最近、TRPGがマイブーム。仲間内で『DX』ばっかやってますww


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