No.529971

【ロボノ】無駄な心配【カイアキ】

ともちさん

ロボノで、中学三年生くらいの進路のお話。ネタバレなし。×より+風味です。高校の情報は適当です。

2013-01-09 23:38:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2106   閲覧ユーザー数:2103

 

 ミサ姉の作ったロボ部の事や、家からの距離もあって、昔から高校は、中央の高校に通う事に決まっていた。

 高校では学科が二つに別れていた。普通科と情報処理科。あき穂がどちらの学科を選ぶかは聞いてない。けど、一号機の事がある。ロボットの事はよくわからないけど、ロボットは技術や情報の塊だ。――選ぶなら多分情報科だろう。一方俺は、情報科にまでいって勉強したい事なんてない。

 普通科も情報科も各クラスに均等に配置される。だけど授業内容は学年が上がるごとに別々になっていくらしい。逆に同じ学科ならクラスが別でも選択授業が被る事が増える。

今までは人数も少ない事もあってずっと同じ隣で勉強してこれたれけど、これからはそうもいかないだろう。

 別にあき穂と別々になるのが淋しいわけではない。俺たちは発作持ちだ。いざというときに他人に迷惑をかけない為にも、何時も一緒にいなくちゃいけない。

 なら、どうするべきか。

 俺はポケコンを投げ出して、ベッドに身を預けた。

「……情報科って、何勉強すれば入れるのかな」

「え? カイって情報科入るの?」

 あき穂が俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。独り言のつもりだったけど、隣にいたあき穂にばっちりと聞かれていた。まぁそもそもここはあき穂の部屋な訳だし、部屋も小さいんだから、独り言を聞くなっていう方が難しい。

「んー、考え、中かな?」

「って事はカイとは高校入ったら授業別々なんだね……」

「は? なんで?」

 驚いて体を持ち上げると、あき穂とおでこがぶつかった。痛い……。

 あき穂は「気をつけてよー」と、オデコを撫でながら、眉をへの字にした。

「ち、ちょっと待って……アキちゃん、情報科入らないの?」

「えー? なんで? うちは普通科希望だよ」

「でも、巨大ロボット作るななら、やっぱ情報科の方が……」

「情報科にいっても巨大ロボは作れないもん。それに、必要な知識は先輩たちから教わるし。授業中はなるべく体を休まして、放課後部活を頑張る。それでね、うちがお姉ちゃんの意思を引き継いで、ガンつく1を完成させるの!」

 あき穂は声高に宣言すると、右手を宙へと突き上げた。だけどその手は急速に力を失い、ゆらゆらと力なくベッドに落ちて行った。

「でも、カイとはバラバラになっちゃうんだね……」

「……それはもうなくなった」

「へ?」

「もぅ、この話題は終了して……」

 俺はベッドに置いたポケコンを手に取ると、直ぐにキルバラを起動させた。直ぐにオンラインには入らず、CPUで指を慣らす。早速対戦が始まるものの、なんだかあまり上手く指が動かない。

 あぁもう、余計な事考えるんじゃなかった……。

 あき穂は俺の画面をチラッと覗き込むと、俺がキルバラをやっているというのに、「ねぇねぇ」としつこく俺に話しかけてきた。まるで飼い主に散歩をねだる犬のようだ。

「カイ。情報科で何勉強するの? 数学とか大変だよ?」

「アキちゃん、キルバラの邪魔したら怒るよ……」

「もー、カイ。部屋に来たと思ったら考え事したりキルバラやってばっかりなんだもん」

「キルバラやってないのと俺は死んじゃうの……」

「マグロじゃないんだから!」

「あーそれいい例えかも」

「……ねぇカイ。ホントに情報科入るの?」

 あき穂がぐいぐいっと近づいてくる。丁度これからキスでもするんじゃないかって、距離だ。近い、近い。誰かこの幼なじみに人との適切な距離感の取り方を教えてやって欲しい。

 俺は口元にポケコンを構えると、あき穂となんとか距離を取った。これなら漫画見たいな事故チューとかいう馬鹿みたいな展開には陥らないだろう。

 あき穂の様子を窺うと、眉をへの字にしながら、俺をじっと見つめていた。

「……もしかして、アキちゃん。俺に情報科入って欲しくないの?」

「うっ……うちはカイに好きな道を選んで欲しいんだよ……け、けどね、そうなると、クラス離れ離れになっちゃうだろうし。それは、その……さみしいもん」

 ――発作の事があるからね。そう言うかと思ったら、あき穂の口から出た言葉はただの感情論だった。

「……」

 俺は少しだけいうべき言葉を見失ってしまった。

 こんなにも真っ直ぐに、本音をぶつけてくるとは思わなかった。俺だったら絶対に発作を建前に使ってしまうけど、あき穂はそうはしない。俺には絶対に真似できない。心の中ですら、そんな事は言えない。俺はあき穂と違って、素直にはできていない。

 しょぼくれるあき穂に、俺は何時も通りを装いつつ答えた。

「安心していいよ、俺も普通科入るし」

「ホント!?」

 あき穂の表情がぱぁっと明るくなった。さっきまで、しょぼくれていた耳と尻尾が元気よく動いていた(ように見えた)。

「まぁ……同じクラスになれるかは、わかならいけど……」

「それなら大丈夫。だって今までだってずっと一緒だったんだもん。同じクラスだと思うな!」

「その無駄な自信はどこからくるんだろうね……」

 ため息ついてから、俺はキルバラを再開させた。オンライン対戦にして、挨拶もなしに勝負が開始の合図がなった。あき穂に邪魔されなくなったからか、指がさっきより早く動いた。

 

 


 
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