No.524825

~貴方の笑顔のために~ Episode 17 進む道

白雷さん

蜀の危機もさり、一刀は蜀に数日間滞在し、建物などの修理にあたっていた。気持ちも落ち着いたとき一刀は呉へ行くことを決意する。その一刀の思いの先にあるものは?

2012-12-29 20:21:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:11293   閲覧ユーザー数:9030

関羽と一刀の仕合は、観客の予想を覆し、一刀の圧倒的ともいえる力で幕をとじる。

そして、三国に一刀は呂白として名を広めるのであった。

一刀はその後、蜀に数日間のこり、修復の作業を手伝っていた。

最初は蜀に対して疑問をいだいていた一刀だったが、劉備をはじめ、

それぞれの人々の笑顔を見、安心したのであった。

 

そして関羽との戦いの3日後、一刀は桃香から案内された部屋で体を休めていた。

 

 

 

 

 

~一刀視点~

 

最近は忙しく、あまり考える時間もなかったが、

この手で、あの関羽に勝てたのか・・・やっぱり貂蝉との30年は無駄ではなかったということか。 貂蝉、今頃何をしているのであろうか?元気に、しているだろうか?

あの30年を思うとふっと笑みがこぼれる。

俺が変われた30年。それをくれて、支えてくれた貂蝉。

感謝してもしきれない・・

 

そう思いながら俺は愛紗との戦いを思い出す。

それにしても、愛紗はあのままではいずれ・・・俺は愛紗の戦いに対する

あの思いに疑問を抱いていた。

でも、あの愛紗だ。

俺なんかに言われなくとも自分で自分なりの答えを見つけてゆくだろう。

それにしても、戦いの後、みんな魂が抜けたような顔をしていたな。

流石にあんなことをしてしまって、なんだか恋と星を除くみんなとは距離ができてしまって、気まずいな

・・・・それに、修復も大体は片付いた。

明日にはここをでるか・・

 

そう思いながら俺は天井に向かって、短剣を投げつける。

 

「そこにいるのはわかっている!でてこい」

 

何者だ?俺は天井裏にわずかな気配を感じた。

今更、間諜とかは変だ。三国は平定され、大きな反乱分子もその姿をけした。つまり、内部のものか。探り?・・しかし、あの桃香がこんなことをするとは思えない。

となると、外部の者。そして、この成都の警備をくぐり抜けたのだから、確かな力はあるのだろう。

 

もうそこに相手の存在は感じられなかったが、かすかに残った氣の流れを追って俺は相手を見極めるために追跡した。

 

 

 

 

 

~明命視点~

 

どうしましょう・・・

 

私は今、天井裏に身を潜めていた。

とんでもないことになってしまいました!

ほんとうであるならば正式に面会をすればよいものを、様子を伺って後をつけてたら・・

いや、でも確かに気を消したはずなのに・・私の存在に気づくなどやはり只者ではないのかもしれません。今は、とりあえず、離れなければ。また後程正式な場で話してみます。

 

「こんばんは」

 

そんなことを考えている私に後ろから声がかかる。嘘・・ですよね。油断はしてなかったはず。

・・・っ、本当に何者なんですか?私はそう思いながらも後ろをむいた。

そしてそこには、声の通り呂白様がいた。

 

「なぜ、ここに?」

 

私の額に冷たい汗が流れる。

 

「いや、どうやら、俺を監視していた隠密をおっていたら逃がしてしまったらしい。

 何か知ってるかな?呉の周泰さん」

 

「はぅあ!?なぜ私の名を?」

 

「いや、有名だからね、あなたは・・・・・隠密としてね」

 

「はぅあ!?(ばっ、ばれてます)」

 

「すっ、すいません。貴方の武勇伝を呉で聞き、

 すこしばかり見て来いって言われて

 でも、あのその・・・

 恥ずかしくてつい・・・」

 

「つい部屋に勝手に入って、

 隠密まがいのことをした・・・と」

 

「あぅあぅ、ごめんなさいです」

 

(なるほど、確かに隠密の基本として正体がばれないようにその顔を隠す。

 しかし、周泰は何もしていない。つまりこの行動に裏があることはないようだ)

 

「しかし貴方のやりかたは、三国同盟をくずしかねない。

 私的な感情でこのような行為に

 及んだのは将としてどうかと思うぞ、

 俺はその同盟のなかにはいっていないのかもしれないが、

 今は蜀の客人でな」

 

「蜀の方ではなかったのですか?」

 

「違う」

 

「あの、その本当にごめんなさいです」

 

涙目になりながら言う明命。

もう少し注意しようと思ったが、その姿に、一刀はこれ以上明命にいえなかった。

 

「・・・いや、まぁいいだろう。これからはきをつけるんだぞ。

 ・・それとひとつ聞きたいことがあるんだが」

 

 

 

 

~一刀視点~

 

呉の周泰さんか。ちょうどいいきっかけなのかもしれない。明日にはここを出ようと思っていたところだし、呉は落ち着いたらいかなければならない場所だったから。

そう思いながら戦場で潔く散った女武将を俺は思い出す。

俺はそう思いながら手をぎゅっと握りしめる。

 

「周泰さん、呉への道教えてくれるかな?呉もあなたほどの探りを入れてきたのだから、

 俺が行っても、大丈夫だとは思うのだが。」

 

「そう、ですね。確かに雪蓮様はいいとおっしゃっていました。」

 

「孫策さんのことかな?孫策さんはというと?ほかの人が反対しているとか?」

 

「はい、あのですね、冥琳様がその・・」

 

「なるほど。周瑜さんか」

 

「はい」

 

「・・・、わかった。周泰さんが怪しげと思われるものを

 すべて預かってもらっても構わない。だから、案内を頼めないだろうか?」

 

「なぜ、呉に?」

 

「呉王、孫策さんに話がある。」

 

「私を介してではだめなのですか?」

 

「いや、こればかりは呉の王でなければならない」

 

「・・・」

 

「どうしても、だめなのか?なぜそこまで?」

 

「いえ、ふつうであるならすぐにでもと思います。雪蓮様はいいとおっしゃっていますし。

 あなたは蜀を救ってくれた英雄であるので。

 しかし、今、冥琳様の状態を考えますと・・」

 

「周瑜さん?」

 

周瑜・・・状態?三国がまだ完全にまとまっていないことを心配しているのだろうか・・だから奥手になっているのだろうか?

 

「周瑜さんは、魏、蜀との今の状態に疑問を持っているの?」

 

「あっ、いえそういうわけではなく・・」

 

?じゃあ、なんなんだ。いや、まて。確か呉では孫策さんが絶大な決定力を持っていると聞いている。それが今回の場合はどうだ、孫策さんの考えが通っていない、いや孫策さんは自分の考えを通していない。それは・・・・・まさか

 

「周泰さん、正直に答えてほしい。周瑜さんはもう危ないんじゃないか?」

 

「・・・」

 

俺の質問が確信をついたのか、すこし周泰さんは動揺している。

 

「もしそうであるのなら、一刻を争う。俺を呉に連れて行ってくれ。

 俺には医療の知識もある。」

 

周瑜公瑾、死因は不明だが、戦場で血を吐きながら倒れたから結核じゃないかと言われている。もしそれが当たっているのなら、そして今の周泰の状況からするに、周瑜さんは末期だ。時間がない・・・

 

「それでも・・」

 

ここまでいってもか。忠実な部下だ。だけど、俺にはすべきことがある。だからっ!

 

 

 

 

 

~明命視点~

 

どうしましょうか、呂白さんは会う前に観察していても悪い気配を全く感じませんでした。それでも、冥琳さまのお言葉があります。雪蓮様も今回は冥琳様に従えとおっしゃっていましたし。慎重にならなければ・・・

もう少し時間を見てからがいいでしょうか・・医術をたしなんでいるといいますけど・・

 

そう私が考えると、グサッという音がし、私の前に驚きの光景が広がる。

 

「りょ、呂白様、なにをしていらしゃるのですか!」

 

目のまえにいる呂白様が自らの短刀で自分の腕を突き刺したのだ。

私の目の前に飛ぶ血は確かにそれが本物であると告げている。

 

「頼む。信用がないというのはわかる。けれど、信用というものはこんなすぐに

 手に入れられるものじゃない。時間がかかる。だからせめてもの俺の誠意だ。

 俺は裏心があって、呉に行こうなどとはおもっていない。」

 

「・・・」

 

「いったでしょ、もう時間がないんだ。俺があなたに今できることなら何でもする。 

 それに呉にいってなにがあっても構わない。俺が周泰さんに無理を通してもらったとち

 ゃんというから、俺をいま、連れて行ってくれ。」

 

 

なんででしょうか、なんでここまでするのでしょうか?

目の前の光景に、私の理解力がついていっていません。

それでも、私は呂白様がとった今この行動を無駄になんてできるわけがありません。

それは確かなことです。

冥琳様、ごめんなさい。私は慎重になることができないみたいです。

でも、これが自分の判断ですから。

 

「わかりました、呂白様。」

 

「・・・ありがとう、周泰さん」

 

「では、準備もあるので一刻後、ここで待ち合わせるということでよろしいでしょうか?」

 

「わかった。じゃあ、一刻後」

 

そういうと、呂白様はすばやく来た道を帰って行った。私も準備のため、違う道を走って行った。

 

 

 

 

 

~一刀視点~

 

荷物をまとめるため俺は部屋に戻ってきていた。

 

蜀、ここ数日で何人もの心優しい人に出会ったな。別れを言わずに離れるのはつらいが、

でも今は。

この件がおわったら、また戻ってこよう。

 

そう思いながら、俺は一通の手紙を残しその部屋を後にした。

 

 

 

 

 

~愛紗視点~

 

もうどうなっているのかわからない。あのあと、刃殿と戦った後、刃殿に言われたことをずっと考えていたが、あまり思い当たらない。

だから、わたしは今日という今日は勇気を出して聞きに行こうと思っていた。

いや、話に行こうと思っていた。

そしたらなんだ、彼は、刃殿はもういない・・・

部屋はきれいに片づけられ机には一通の手紙がおいてあった。

 

~蜀の皆様へ  挨拶もなく大変失礼だとは思いますが、どうしてもすぐにいかなくては

 いけない急用ができたため一時蜀を離れます。ひと段落したらまた、会えることを

 楽しみに思っています。 呂白~

 

なんだ・・これは?

ちょっと、こころにある空白感。

これはなんだろう?私は手紙をぎゅっと胸にあてた。

 

「愛紗よ、こんなところでなにおしておる?よばいか?」

 

「なっ!」

 

そんな声が聞こえ振り返ったらそこには星がたっていた。

 

「星っ!、そんなわけなかろう」

 

「では、ここでなにを?」

 

「いや、刃殿に話があった故、しかし刃殿は成都をでていってしまわれたようだが」

 

「なにっ?」

 

「これを」

 

驚く星に私は刃殿の置手紙を渡す。

 

「・・そうか、いってしまわれたのか。しかしこの内容だと

 何かが終わったら戻ってくるともとれる。また再び、戻ってくるであろう」

 

「そう、だな。」

 

私はその夜、久しぶりに星と二人で酒を飲み交わした。

 

 

 

 

 

~一刀視点~

 

周瑜さん、間にあってくれ!いや、絶対に間に合わせる!

その思いでいっぱいだった。俺に治せるのかどうかは

わからない、けど間に合わないで何もしなかったら絶対に後悔する。

もう、この世界で後悔なんてしたくない・・

俺は準備がおわった周泰さんとともに夜の道を呉へとかけていた。

 

周瑜公瑾、歴史上ではもう死んでいるはずの人間。俺が介入していたことで歴史の歯車がずれ、まだ生きているのだろうか?

それでも・・・

歴史の修正力、そんな言葉が頭に浮かぶ。

結局は俺が何をしたってただその時間を遅らせることしかできないのではないのだろうか?結局俺は何もできないのではないのだろうか?

何度も何度も今まで頭に浮かんできた迷い・・

 

それでも俺は、今確かに目の前で助けられる人がいるのなら俺は助けたい。

そして、俺はもう前へ進むのを止められない。

とめちゃいけないんだ。俺のせいで生まれなかった魂もきっとたくさんある。

だからこそ今ここで足を止めるわけにはいかないんだ。

 

俺がいつも不安をもっているとそっと一人の女の子が俺を後押ししてくれる。

一刀、男ならとことんやってみなさい!

そんなまぶしすぎてみれないほどの彼女の姿が。

 

華琳、俺はもう君を泣かせない男になる。絶対だ。

だから、まっててくれ、その時まで。

そして、きっと君の隣に堂々と胸をはって立てる男になるから。

 

俺は暗い空にぼんやりと光を放つ月に手を伸ばす。

確かな道しるべを求めて。

 

 

 

 


 
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