No.517768

SAO~菖蒲の瞳~ 第十七話

bambambooさん

十七話目更新です。

最近、SAOを読み返したんですけど、あらためて見るとキリト君かなり女顔ですよね~

三巻のスグと一緒に寝てるカラーなんて特にですよ。本当に姉妹に見えたww

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2012-12-12 19:56:48 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:1173   閲覧ユーザー数:1102

第十七話 ~ 砕ける刃 ~

 

 

【シリカside】

 

アスナさんとの三日間の特訓の成果をアヤメさんに褒めてもらって、その上、「レベルを上げるか装備を整えるかすれば、ボス戦に出られる」と言ってくれた。

 

アルゴさんの件でアヤメさんと別々に行動するコトになったとき、アヤメさんと出来る限り一緒にいるために強くなろう、と思い、願った。

 

そしてそれが、あとちょっと、というところまで叶ったのだから、私は凄く嬉しかった。

 

でも、アヤメさんの言う《彼女》というのは気になります。

 

アヤメさんが頼ってる感じがして、ちょっと羨ましいです……。

 

でも、今一番近くにいるのは私ですから。今のうちに、出来るだけ距離を縮めちゃいます!

 

私はそう決意して、少しウキウキしながら、アヤメさんの私を引っ張る手をそっと握り返した。

 

でもそのウキウキは、強化素材集めが始まるまでの話でした。

 

 

宙に舞う今回の標的、黒地に緑色の縞々持つ全長50cmはありそうな蜂型モンスター、《ウインドワスプ》に視線を注ぐ。

 

私がその動きを見逃さないように集中して観察していると、動きを見せた。

 

湾曲した複眼で私を捉えたワスプは、高度五メートルまで高々と舞い上がり、そこで一度ホバリングをしたあと、ブウゥーン、という羽音を響かせ私目掛けて急降下してきた。

 

ワスプの姿勢はお腹を突き出したくの字。つまり、毒針攻撃だ。

 

この攻撃は、プレイヤーの目の前まで突進してくると、そこでもう一度短いホバリングをする。

 

そのあと、お尻から伸びる毒針が淡い黄色の光を纏ったのを確認してから回避すると、攻撃を外したワスプはちょっとの間硬直(ディレイ)して攻撃し放題になる、とアヤメさんに教えてもらった。

 

私はアヤメさんに言われたように、突進してくるワスプの動きをよく見てタイミングを計る。

 

まだまだ……。まだだよ……。まだ…まだ……っ!

 

「きゃああああっ!?」

 

ワスプとの距離がニメートルくらいになったとき、私は心の奥底から湧き上がる原始的な恐怖に耐えきれなくなり、悲鳴を上げて逃げた。

 

すると、ワスプは私を追い掛けるように進行方向を変えた。

 

「いやっ!? 来ないでよおおおっ!!」

 

それを見た私は、右手に持った短剣を闇雲に振り回した。

 

しかし、ワスプはそれに臆することなく一直線に突進してくる。

 

「ひっ!?」

 

「落ち着け」

 

私が恐怖から、腰が抜けたように地面にぺたんと座り込んだとき、安心感を与える優しい声と、それとは真逆の命を刈り取る風切り音が聞こえた。

 

風切り音の正体である二本の投げナイフは、ワスプの弱点であるお腹の付け根に寸分違わず突き刺さった。

 

それによって、ワスプのHPが一割減るが、それでもなお、ワスプは気にせず突進を続けてくる。

 

そんなワスプに向かって、投げナイフを投げた張本人であるアヤメさんは勢い良くジャンプした。

 

アヤメさんが空中で前傾姿勢を取り居合い斬りのように構えると、その体が再加速し、中空に赤色の軌跡を描いて、投げナイフが刺さるお腹付け根を通り過ぎ様に深々と切り裂いた。

 

HPがガクッと削られ、危険域(レッド)にまで至る。

 

それだけに留まらず、アヤメさんは手に持っていた短剣を手品のように消すと、体を右に捻り、紫の光を纏う左回し蹴りを放つ。

 

回し蹴りをその顔に受けたワプスは、ギギィ、という鳴き声を上げて砕け散った。

 

私は経験値やコルの加算を知らせるログに目もくれず、空中二連撃を決めて悠々と地面に着地するアヤメさんを呆然と見つめた。

 

「シリカ、大丈夫か?」

 

ワプスが消滅したことにより、地面に落ちた二本の投げナイフを回収し終えたアヤメさんが、顔を上げてこっちを見て言った。

 

「ほぁ……」

 

しかし、私は今行われたスゴ技とそれを実行したアヤメさんの姿に心を奪われて、まともな反応を示すことが出来なかった。

 

「……シリカ?」

 

「……へ? あ、はい! 大丈夫です!」

 

再度アヤメさんに呼び掛けられて、私は見つめていたのを誤魔化すようにパタパタと手を振って返事をした。

 

……て言うか、今私すっごく間抜けな声出してなかった? 「ほぁ……」とか言ってたよね!?

 

「落ち着け」

 

「あうっ!?」

 

あまりの恥ずかしさに、頭が混乱しておたおたと取り乱していると、アヤメさんの手刀が私の頭に降ってきた。

 

「落ち着いたか?」

 

「はい。ありがとうございます」

 

痛くないけど、それなりの衝撃を持った絶妙な力加減の手刀は、私の頭を落ち着かせるのに十分な役割を果たした。

 

アヤメさんは「やれやれ」と肩を竦めて言いながら、私に手を差し伸べてきた。

 

「重ね重ね、ありがとうございます」

 

その手を握って起き上がり、私はスカートに付いた汚れを払う。

 

私はこのとき、純粋な称賛と一緒に、ショックを受けていた。

 

あの三日間で少しはアヤメさんに追い付けたかと思ったら、アヤメさんはさらに強くなって、全然距離が縮まっていなかったからだ。

 

「……そんなコトより、恐怖心を克服したとかいう話は嘘だったのか?」

 

「う……」

 

そんなことを思っていると、アヤメさんの少し厳しい視線を当てられて私は思わず口を噤んだ。

 

意図してそうしているわけじゃないのだろうけど、私には、私の驕りが見透かされたように感じられた。

 

「シリカ……?」

 

そんな私を見て、アヤメさんの目が疑わしげなモノに変わる。

 

「う、うそじゃないですよ!」

 

そうなったとき、私はようやく口を開くコトができた。

 

「あ、あんなモノが急接近してきたら耐えられるはず無いですよ! 生理的にムリですっ!」

 

思いの外強く出てしまった言葉に、ハッとしてアヤメさんを見ると、アヤメさんは視線を緩めて「まあ、仕方ないか」と言いながら肩をすくめた。

 

「確かに、全長50cmの蜂が飛んできたら恐いよな。俺だって最初は少し恐かったし、虫が苦手なヤツならなおさらか」

 

そう言いながら、アヤメさんは私の頭を軽く二回撫でた。

 

アヤメさんの場合は本当にちょっと何だろうなあ……恐がってるアヤメさんの姿とか想像出来ません……。それに比べて、私と来たら……。

 

「……シリカ、もっと自分に自信を持て」

 

私が八つ当たりのような返答をしてしまったことにちょっとした自己嫌悪に陥っていると、アヤメさんが私の目を真っ直ぐ見て言った。

 

「シリカは初めて会ったときと比べて物凄く強くなってる。何がそうさせたのかは分からないが、あの短期間でこれだけ強くなれたのはそれ相応の努力と向上心があったから。だから、自信を持って。その努力と向上心は絶対に君を裏切らない」

 

まるで私の心を見透かしているような言葉に、目頭が熱くなった。

 

「はい……っ!」

 

私は涙が流れるのを押さえるように目を瞑り、最大限の笑顔で答えた。

 

悔しくて立ち止まるのはやめよう。悔しいなら、もっと前に進むように努力しよう。

 

「まあ、この先もっとアレな姿のモンスターとか出て来るかもしれないから、慣れておいた方がいいぞ」

 

満足したような目をしたアヤメさんは、私から離れるとすこし茶化すような口調で言った。

 

「そ、そうですよね。RPGですから、ゾンビとか出て来てもおかしくないですよね」

 

ボロ布をまとった動く死体や、包帯グルグル巻きのミイラ男がこれから出て来るのかと思うと寒気がした。

 

「引っ掻かれると、麻痺や毒どころか未知の病気に感染しそうだな」

 

「恐いこと言わないでくださいよっ!?」

 

「悪い悪い」

 

そうは言っているが、アヤメさんの表情は相変わらず変化が無いので本当に謝っているのか分からなかった。

 

「む……アヤメさん、酷いです!」

 

「悪かったって」

 

今度は本当に謝っているようで、声に申し訳なさが感じられた。

 

「お詫びに、さっきドロップした《ウインドワスプの針》やる」

 

そう言って、ウィンドウからオブジェクト化させアヤメさんが差し出したのは、それだけで武器に使えそうなほど太くて大きい針だった。

 

先端から、毒々しい緑色の液体が垂れている。

 

「は、はい。ありがとう、ございます」

 

何となく私はそれを触るのをためらった。

 

いやいや。さっき努力するって言ったんだから、これくらいは……。

 

「シリカ、ウィンドウを開いてくれ」

 

「え? あ、そういうことですね」

 

アヤメさんがしようとしているコトが分かった私は、言われた通りにウィンドウを開き、私から出来るだけ遠い位置にウィンドウをズラした。

 

アヤメさんがそのウィンドウに針を落とすと、針はウィンドウに触れた途端、光の粒となってストレージに収納された。

 

「これで六本目か。+3なら四本で十分なんだけどな……」

 

「私、一回でどどーんと強化してみたいんです!」

 

そう呟くアヤメさんに、私は《どどーん》を強調するため大きな円を描くように両腕を動かしながら言った。

 

本当は、アヤメさんと二人っきりの時間を作りたいからですけどね。

 

「どどーんって……まあ、そう言うならそれに従う」

 

少し訝しげに言いながら、アヤメさんはコクリと頷いた。

 

「でも、そう言うんだったら、少なくとも逃げ出さないようにしないとな」

 

「うっ……がんばります……」

 

痛いところを突かれて、私は苦し紛れに答えた。

 

「期待してる」

 

口角を僅かに上げて、ニヤリと笑ったアヤメさんは、いつの間にか出現していた新たなウインドワスプに向かって行った。

 

「がんばります!」

 

私はアヤメさんの背中に向けて、今度ははっきりとした声で告げ、次のワプスを探しだした。

 

丁度そのときだった。

 

「アヤメにシリカか。二人もワプス狩り?」

 

黒ずくめの剣士キリトさんと、申し訳無さそうな顔をする私の師匠アスナさんが現れたのは。

 

 

【アヤメside】

 

日が沈み、薄暗闇が辺りを包み込んでいる。

 

俺とシリカ、そして途中から合流したキリトとアスナの四人は、思いのほか長引いてしまったフィールド探索を終え、ウルバスへと戻ってきていた。

 

少女二人はガールズトークに花を咲かせながら俺の前を歩き、キリトは俺の少し後ろを歩いている。

 

すると、キリトが声を上げた。

 

「強化は今日中にするのか?」

 

「うん。私はそのつもりだよ」

 

キリトの質問に答えたのはアスナだ。

 

シリカはまだ溜めるのだろうか。

 

「確か、ワプスの針十二本で+5の成功率は95%くらいだったな」

 

キリトは手を顎に当てて、記憶の奥から引っ張り上げてきた情報を披露した。

 

100%は出ないようなものだから、事実上の最高の確率である。

 

「キリト君。どこかに鍛冶屋ないかな?」

 

「あ~……あそこくらいしか無かったかな」

 

「さっきのあそこか?」

 

「そう。……まあ、NPCに任せるよりはマシだな」

 

「じゃあ、そこに案内してくれる?」

 

「了解」

 

「折角だし、俺たちも見に行く。いいよな、シリカ?」

 

「はい」

 

 

数分歩くと、昼間に一悶着あった鍛冶屋に到着した。

 

あのときは確認しなかったが、どうやら《Nezha's Smith Shop》という店名らしい。

 

おそらく《Nezha》は革エプロンの男のアバター名なのだろうが、なんて読むんだ? どこかで見た気がするんだよな……。

 

「こ、こんばんは。いらっしゃいませ。お買い物ですか? それともメンテですか?」

 

俺たちが近付いてきたのに気付いたネズハ(仮読み)が頭を下げてから言った。

 

それに対して、アスナは腰から細剣(レイピア)の《ウインドフルーレ》を外し、両手で持ち上げて答えた。

 

「強化をお願いします。ウインドフルーレ+4を+5に、種類は正確さ、強化素材は持ち込みで上限までです」

 

アスナが持ち上げたフルーレをちらりと見たネズハは、何故か困った顔をした。

 

「わ、分かりました。お預かりいたします」

 

再度頭を下げてから、アスナからフルーレと強化素材、最後に料金を受け取った。

 

それをしっかりと確認したネズハは、後ろに振り向いて携帯型の炉に素材をざらざらと流し込んだ。

 

すると、炉の中を正確さを表す青い光が染め上げた。

 

隣でシリカが「きれい…」と呟いた。

 

準備完了したところで、フルーレを鞘から抜き炉に横たえる。

 

青い光はその細い刀身を包み込み、やがて剣全体が薄青く輝き始めた。

 

ネズハはすかさずレイピアを鉄床に移動させ、右手に握った鍛冶ハンマー高々と振りかぶった。

 

その瞬間、止めなくてはいけないような、嫌な予感がした。

 

しかし、俺は強化素材はフル投入で鍛冶屋もNPCより腕はいいはず、そもそも俺が無理やり止めるのもどうかと思い、その予感を振り払った。

 

カァン! カァン! とリズミカルな金属音が大通りに響き渡る。

 

その数が六回、七回、と堅実なペースで増えていく。

 

そして、最後の十回目。

 

―――カァァン!

 

今までで最も高い音を立てて全工程が完了し、鉄床のレイピアは眩く光り輝き―――

 

―――パキンッ

 

そして、いっそ美しさを感じさせる儚く澄んだ金属音を響かせ、アスナのウインドフルーレ+4は、切っ先から柄に至るまでがポリゴンとなり粉々に砕け散った(・・・・・)

 

 

まだ第一層が攻略されていない頃、俺は今では常連となっている、《ハームダガー》を+0から+8まで叩き上げた少女に尋ねたことがある。

 

「なあ、強化失敗って何がどうなるんだ?」

 

すると、少女は研磨作業を一時中断して、その幼さの残る顔を呆れたように歪ませた。

 

「あんた、そんなことも知らないの?」

 

「お前のお陰で失敗数0だからな」

 

「うっ……うっさいわね!」

 

「何故怒られた」

 

褒めたのに。

 

「何でもないわよっ!」

 

少し顔が赤くなった少女は、焦げ茶色の髪で顔を隠すように研磨台に視線を戻し、作業を再開した。

 

「……で、質問の答えは?」

 

急かす俺に対して、少女は「分かったわよ」と少しぶっきらぼうに言うと、作業を続けながら答えた。

 

「《+数値はそのままで強化素材のみ消費される》《+数値の内容(プロパティ)が入れ替わる》《+数値が1下がる》の三つだけよ……っと、メンテ完了」

 

それを聞いて、俺は研磨台から短剣の刃を離して満足げに頷く少女に料金を手渡し、短剣を受け取る。

 

鋭さが元に戻り元気になった短剣を鞘に仕舞いながら、俺はもう一つ生まれた疑問を尋ねた。

 

「じゃあ、《武器自体が壊れる》ってのは無いのか?」

 

「ああ、私もそう思って前に《鍛冶》スキルの説明を読み返したけどね」

 

そのとき、鍛冶師の少女リズベットが何と答えたかはしっかりと覚えている。

 

―――そんなの無かったわよ。

 

 

【あとがき】

 

十七話、如何でしたでしょうか?

 

スンマセンしたッ!m(_ _)m

 

思いのほかシリカちゃんの絡みが長くなってしまい、リズベットの登場が回想だけになってしまいました!

 

期待された方々申し訳在りませんでした!

 

誰か! 誰か俺に《ジ・イクリプス》を放って下さい!

 

さて、リズベットの髪の毛ですけど、原作から《アスナに髪の毛を弄られて、最終的にピンク色のショートボブに落ち着いた(要約)》といった描写がされていました、そして、《真面目な生徒だった》という描写から、髪の毛の色が焦げ茶色になりました。

 

 

 

次回こそはリズベットが登場します! ええ、絶対にです!

 

それでは皆さんまた次回!

 

 

オリジナルスキル

《トラバース》

・アヤメがウインドワプスに使った剣技

・短剣下級技

・猛ダッシュをして、通り過ぎ様に居合い斬りのように切り裂く

・規定モーションさえ取れれば空中でも発動可能

 


 
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