No.515135

ソードアート・オンライン ロスト・オブ・ライトニング 第九話 緊急事態発生

やぎすけさん

リーファの言葉に、キリトとデュオは・・・

2012-12-04 23:09:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2375   閲覧ユーザー数:2262

デュオ視点

ルグルーは城壁から続く広い目抜き通りと、その省側に高い岸壁がそびえ、武器、防具屋を中心に酒屋、万屋、アクセサリー屋等が重なるようにして密集している。

本来暗いであろう街の中も、それぞれの店から出ている明かりと街灯によって淡いオレンジ色に光る。

その雰囲気は、今は無き旧SAO五十層の主街アルケードに似ている。

BGMの代わりに、NPC演奏団の奏でる陽気な音楽と、鍛冶屋の槌の音が響き渡る。

リーファは新しく来る場所に興味深々らしく、さっそく手近な武器屋の店先を覗き込こみ、商品を手にとって見ている。

俺たちは、そんなリーファの姿を微笑みながら見ていた。

すると、キリトが何かに気付いたように訊く。

 

キリト「そう言えばさ・・・サラマンダーズに襲われる前に、なんかメッセージ来てたみたいだったけど、あれ、何だったの?」

 

デュオ「あぁ、そういや届いてたな。」

 

リーファ「あ・・・忘れてた・・・」

 

デュオ「おいおい・・・」

 

リーファは、ウィンドウを操作して返信を打とうとする。

 

リーファ「何よ、もう寝ちゃったのかな?」

 

キリト「一応、リアルで確認してみたら。」

 

リーファ「そうね。じゃあちょっと落ちて確認だけしてくるから、2人は待ってて。あたしの体よろしくね、ユイちゃん。」

 

ユイ「はい?」

 

リーファは、キリトの肩に乗ったままだったユイに笑いかけた。

 

リーファ「パパとデュオ君が、あたしに変な事しないように見張っててね?」

 

ユイ「了解です!」

 

ユイはキリトの肩から飛び上がると、宙に浮かんだままリーファに敬礼する。

 

キリト「あのな・・・」

 

デュオ「ずいぶんと信用無いんだな俺たち・・・」

 

リーファは、笑いながら近くのベンチに座ると、再びウインドウ画面を操作してログアウトした。

ここは中立都市であるため、リーファの肉体は残ったままだ。

俺とキリトも、近くにあった別のベンチに座り込む。

俺は、ハッカ味のストローを呼び出し、それを口に咥えて一服する。

その間に、キリトは近くの屋台で奇妙な食べ物(?)を買ってくる。

それは紫色をした爬虫類の串焼きだった。

俺は、苦笑しつつキリトに言う。

 

デュオ「お前は、相変わらずゲテモノが好きだな。」

 

キリト「ゲテモノほど美味いって言うからな。」

 

デュオ「アホか・・・」

 

キリト「いっただっきま~す!」

 

呆れる俺のことなど気にせず、キリトは大口を開けてそれを食べようとした。

その時、突然リーファの体が目を開き、凄まじい勢いで立ち上がった。

 

キリト「おおっ!?」

 

デュオ「うわっ!びっくりした!?」

 

キリトは、危うく串焼きを落としそうになる。

 

キリト「お、お帰り、リーファ。」

 

デュオ「おかえり。」

 

ユイ「お帰りなさい。」

 

俺達の笑顔とは裏腹に、リーファの顔はかなり険しいものだった。

 

リーファ「キリト君、デュオ君、ごめんなさい・・・」

 

キリト「はい・・・?」

 

デュオ「どういうことだ?」

 

突然の謝罪に驚く俺たちに、リーファは続ける。

 

リーファ「あたし、急いで行かなきゃいけない用事が出来ちゃって・・・説明してる時間もなさそうなの。多分、ここにも戻ってこられないわ・・・」

 

キリト「なるほど。じゃあ移動しながら聞こう。」

 

リーファ「え・・・」

 

デュオ「どっちにしろ、ここからは足を使って出ないといけないんだろ?」

 

リーファ「・・・わかった。じゃ、走りながら話すね。」

 

そう言って、三人はルグルーから駆け出した。

 

リーファ「実は、シルフとケットシーが同盟を結ぶことになってて、その調印式がこの先で行われるらしいの。サラマンダーはその調印式を襲う気みたい。」

 

キリト「なるほど。いくつか聞いて良いかな?」

 

リーファ「どうぞ。」

 

キリト「シルフとケットシーの領主を襲うことで、サラマンダーにはどんなメリットがあるんだ?」

 

リーファ「え~と、まず、同盟を邪魔できるよね。シルフ側から漏れた情報で領主が討たれたらケットシー側は黙ってないでしょう。ヘタしたら、シルフとケットシーで戦争になるかもしれないし・・・サラマンダーは今最大勢力だけど、シルフとケットシーが連合すれば、多分パワーバランスが逆転するだろうから、それは何としても阻止したいんだと思うよ。」

 

デュオ「それはそうだな。」

 

そこまで話し終えると、俺たちは橋を渡りきり洞窟に入った。

走りながらも、リーファが続ける。

 

リーファ「これは、シルフ族の問題だから・・・これ以上君たちが付き合ってくれる理由はないよ・・・この洞窟を出ればアルンまではもうすぐだし、会談場に行ったら多分生きて帰れないから、またスイルベーンから出直しで、何時間も無駄になるだろうしね。・・・ううん、もっと言えば・・・」

 

リーファは速度を緩めると、立ち止まって言った。

 

リーファ「君たちの目的・・・世界樹の上に行きたいっていうなら、きっとサラマンダーについて行くのが正解だと思う。もしサラマンダーの作戦が成功したら、十分以上の資金を得て世界樹攻略に挑むと思うし、スプリガンやインプなら、きっと傭兵として雇ってもらえる。そのためにもし君たちがあたしをここで斬ったとしても、文句は言わない・・・」

 

キリト「・・・」

 

デュオ「・・・」

 

リーファの言葉に、俺たちは少し黙り込んだ。

やがて、キリトがポツリと言い始めた。

 

キリト「所詮ゲームなんだから何でも有りだ。殺したければ殺すし、奪いたければ奪う・・・そう言う奴には、嫌になるほど出くわしたよ。きっとそれは有る意味正しいし、俺も昔はそうだった。でも、そうじゃないんだ仮想世界(こんなせかい)だからこそ、どんなに愚かに見えても、馬鹿みたいでも、守らなきゃいけないものが・・・そう言うものが、ちゃんとあるんだ。俺はそれを、大事な人に教わった。」

 

そこで、キリトは言葉を切ると、どこかなつかしむように微笑んでから続ける。

 

キリト「VRMMOというこのゲームは、どうしても矛盾して聞こえるけど、プレイヤーと本当の意味で分離したロールプレイなんて、俺はあり得ないと思うんだ。それが正しいと思えようが間違ってると思えようが、その人が体験した事は間違いなくそこで起こった真実だ。だから、その反動も代償も、受けるのはプレイヤー自身。自分のする事は自分で決める。自分で責任を持つ。誰かに、自分が選択する責任を肩代わりさせるような事をしちゃいけない。俺、リーファの事好きだよ。友達になりたいと思うし、そうありたいと思う。たとえどんな理由が有ったとしても、俺は自分の為にそういう人を斬る事はしたくないし、絶対にしない。」

 

リーファ「キリト君・・・」

 

キリトの言葉は、絶対に曲がる事が無いであろう真摯さを含んでいた。

 

リーファ「・・・ありがとう・・・」

 

どこか哀愁を含んだ声のリーファに、キリトは照れたように笑い返す。

 

デュオ「話は決まったな。じゃあキリト、全速力で走るぞ。」

 

キリト「ああ!ユイ、ナビよろしく。」

 

ユイ「了解です!」

 

キリトの胸ポケットから飛び出したユイが、自身の存在をアピールするかのように元気に返事をした。

 

キリト「じゃあデュオ、リーファをよろしく。」

 

デュオ「OK!」

 

俺は、リーファの手を握る。

リーファは、戸惑いつつ顔を赤くした。

 

リーファ「え、あの・・・」

 

デュオ「おしゃべりは止めないと、舌を噛むからな。」

 

俺とキリトは、同時に足を曲げて走る用意をする。

 

キリト&デュオ『Ready・・・GO!!』

 

息の合った掛け声とともに、曲げていた足が空気が爆発するような音を立てて地面を蹴った。

目的地まで一直線。途中モンスターのカーソルが見えたが全て無視して俺たちは走り続ける。

洞窟を抜けるまでの間、俺たちが疾走する音とリーファの悲鳴が響いていた。

 

リーファ「ぶはっ!!」

 

洞窟を抜け、翅を広げ滑空体制にはいるとリーファは息を吐き出した

 

リーファ「寿命が縮んだわよ!」

 

デュオ「お蔭で、移動時間も縮んだ。」

 

憤慨するリーファに、俺は笑いながらそう言い返した。

その後、落ち着いてから辺りを見渡すと、向こうの方に巨大な樹が鎮座していた

 

デュオ「あれが・・・世界樹・・・」

 

キリト「あそこに・・・」

 

デュオ「ああ、さっさと済ませて、あそこに向かうとしよう。リーファ、領主会談の場所ってのはどの辺りなんだ?」

 

リーファ「あっ、そうね。ええと、今抜けてきた山脈は、輪っかになって世界中央を囲んでるんだけど、そのうち三ヶ所に大きな切れ目があるの。その中にあるケットシー領につながる【蝶の谷】の、内陸側の出口で行われるらしいから・・・」

 

リーファは山脈の様子を見渡すとやがて北西の方角を指した

 

リーファ「あっちにしばらく飛んだとこだと思う。」

 

キリト「了解。残り時間は?」

 

リーファ「二十分。」

 

デュオ「ギリギリだな。」

 

キリト「言っても仕方が無い。行くぞ。ユイ、サーチよろしくな。」

 

ユイ「はい!」

 

ユイが頷くと、俺たち三人はさらに翅を鳴らして加速に入った。

ユイ「あっ!プレイヤー反応です!」

 

キリト「どっちだ!ユイ!」

 

ユイ「前方に大集団──数、六十六。これがサラマンダーの強襲部隊だと思われます。その向こうに十四人。シルフ及びケットシーの会談出席者と予想されます。接触まで後五十秒です!」

 

ユイがそう言うと同時に、雲海が解け、視界がクリアになる。

緑色の巨大な平原の中に二つの集団が見える。

手前にいるのは、五人一組の楔形フォーメーションを組んでの十三編隊で、先頭の一人を追って飛ぶその姿は戦闘機の大部隊のようだ。

そしてその向こう側で、白い長テーブルをはさんだ七人が会談をしている。

どうやら話し合いに夢中らしく、迫りくる脅威にまだ気づいていない。

 

リーファ「・・・間に合わなかったね・・・ありがとう。キリト君、デュオ君。ここまででいいから、二人は世界樹に行って。ほんと、短い間だったけど・・・楽しかった。」

 

キリトの右手と俺の左手を握ってそう言ったリーファは、決死の会談場へと特攻すべく翅を折りたたもうとする。

しかし、俺もキリトも手を離さなかった。

リーファが慌てたように振り向くと、俺たちはニヤリと不敵に笑ってみせる。

 

キリト「ここで逃げ出すのは、性分じゃないんだよな。」

 

デュオ「俺は“悪い奴”だけど、仲間を捨てるような“悪人”じゃない。」

 

俺たちは、3種族の間に向かって飛び出して行った。

 

リーファ「ちょ・・・ちょっとぉ!!なによそれ!!」

 

後ろから聞こえてくるリーファの文句を無視して、ほとんど落ちるような降下を行う。

目指す先の台地では既に、反包囲された領主たちが直前で気付いての抜刀していたが、焼け石に水なのは明らかだった。

そうしている内に、サラマンダーの一人が右手を高く掲げ、振り下ろそうとしている。

その手が振り下ろされようとしたその時、ギリギリで俺たちが両者の間に突っ込んだ。

そして砂埃が晴れると、キリトが大きく息を吸い込んで叫んだ。

 

キリト「双方、剣を引け!!」

 

キリトの叫び声は、その場の大気を振るわせた。


 
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