No.486533

魔法少女リリカルなのはmemories 第五章 ベルカ時代の記憶(メモリー) 第六十六話

J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

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2012-09-20 20:34:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1560   閲覧ユーザー数:1515

「いま、戻ってきた」

 

 ディメルニアへと帰還してきたナノハは、転移魔法で一緒に連れてきたヴィヴィオとアインハルトを持ち上げて近くに居たアリシアに向かって言うのであった。

 アリシアはナノハが戻ってくるまで本当に一人で大丈夫なのかと思っていたが、ナノハの表情から見る限り何事も無かったのだと理解した。アリシアはナノハが自分の心や感情などを押し殺して居ることに気づいており、ナノハがヴィヴィオとアインハルトを連れて来るときにフェイトなどに会って、心が揺らがないかと心配していたのであった。

 否、その事で心配していたことも事実ではあったが、それとは反対にこのままナノハを今まで通りやらせておいて良いのだろうかという思いの方がかなり強かった。心や感情などを押し殺して、もしこの先目的に成功してしまったらナノハはどうなってしまうのだろうと思ってしまっていた。すべてを背負い込み、友達だったフェイトやはやてなどと敵対し、何もかも自分の事を犠牲にしてきただから。

 そして、このままいけばナノハは絶対に壊れてしまうと思ってしまった。たとえ壊れなかったとしても、何人も人を殺めている時点で平穏な日常へ戻るなんてことは出来るわけないし、自分やフィルノなどと違って聖王の末裔という名をナノハは背負っている。それはナノハ達の目的が終わっても生涯まで続くものであり、消えることはない。そのせいでナノハは世界から姿を消してしまうのではないかとアリシアは思ってしまっていたのであった。

 壊れようが壊れなかろうが、結局ナノハにこの先の未来なんて存在しない。どんな奇跡や偶然が起きなければナノハの将来は無いに等しかったのだから――

 

「そっか。お疲れ様」

 

 だから、アリシアはナノハの為に何かしてやりたいと思っていた。だがそんな暇をする時間もないし、この後だってナノハを聖王教会に向かうようにフィルノから言われている。

 さすがに聖王に会わせてくれと先ほど連絡があり、そのためフィルノは聖王教会に向かったのであった。どうやってこっちの連絡先を知ったのかは分からないが、聖王教会が黙っていないだろうという事は分かっていたし、フィルノが急遽向かう事にしていたのである。もちろん聖王の末裔であるナノハも連れてきて欲しいという願いであったので、アリシアにナノハが来たら聖王教会に来るように伝えておいてくれとフィルノに言われてあった。

 もちろんその命令を破るつもりはないし、アリシアだってナノハ同様この目的だけは成功させたい。そのせいもあってアリシアは自分の中で葛藤していたのであった。

 

「あれ? フィルノは?」

「聖王教会に向かったよ。ナノハも来るように言われてるのだけど」

 

 結局アリシアはフィルノに言われたことをついナノハに伝えてしまったが、本当にそれでよかったのかと思ってしまった。最低でもあと数日はミッドチルダに攻め込まないとしても、いつかは攻め込んで最後の戦いが始まる事となり、その前に一度ナノハとじっくり話しがしたいとアリシアは思うのだった。

 

「……まぁ、聖王教会が黙っているわけがないか。分かった、私も今すぐ行くからヴィヴィオとアインハルトを何処でもいいから部屋の中に連れて行って。もちろん誰でもいいから監視をさせて」

「その辺りは分かってるよ」

「そう。それじゃあ私は行くから」

 

 それからナノハはまたしても転移魔法を発動させ、フィルノが居る聖王教会へと向かう事にしていた。

 だがその前に、アリシアがこれだけは話しておきたいと思って、ナノハに話しかけるのであった。

 

「ねぇ、行く前に一つ聞いていいかな?」

「何です?」

「今度で良いのだけど、暇があったら私と一緒にどこか行かない? 気分転換も含めて」

 

 断られたとしても何とかティメルニアで話が出来ればいいなと思いながらも、アリシアは言う。

 ナノハは転移魔法を発動させながらも少し考えていた。ここ数日休みなどはあったりするが、のんびりとしていた事はなかったので正直していいのかと思っていた。

 結局数十秒悩み、ナノハはとりあえずアリシアに言う事にした。

 

「……別に構わない。私もたまには休みたかったから」

 

 ナノハがこのように言ったのは多分この先そんな日常を過ごせないかもしれないと思ったからであった。今の管理局を統制し直したりしても、今までやってきた人殺しが消えるわけではない。自分が選んだ道であり、人を何人も殺めた自分自身に許せていないのだから、日常なんて必要ないと思っており、全てが終わる前にせめてそれくらいはしても良いだろうとついナノハも思ってしまったのであった。

 自分の甘さから言ってしまったことであったが、言ってしまった以上は断ることをしてしまうのは後味悪くなってしまうので、先ほどの言葉は訂正しなかった。

 だが、それとは反対にアリシアはナノハに断られるかもしれないと思っていたので、嬉しそうな顔をしているのだった。

 

「ありがとう。それじゃあ暇があった時にね」

「えぇ、それで行ってきます」

 

 それからナノハは発動させておいた転移魔法で聖王教会があるミッドチルダ北部へと向かうのであった。

 それを見送ったアリシアはシルフィア姉妹を念話で部屋から呼び出して、ここに連れて来るのであった。

 呼び出された二人はすぐにアリシアが居る場所へと来るが、一体なんで呼び出されたのかを念話で言われていなかったので、アリシアに問うのであった

 

「一体どうしたのですか?」

「ちょっと、ナノハが連れてきたヴィヴィオさんとアインハルトさんをどこでもいいから部屋に連れて行ってくれる? 監視はエメリアもいるけど一応二人は女の子だし私たち三人で見た方が良いかなと」

「それじゃあ、ナノハさんは?」

「まぁ、ナノハはあまり二人に会いたくもないだろうから断ると思うよ。顔を合わせたらどうすればいいのか分からなくなると思うから」

「とりあえず、大体の理由は分かりました。それでどういう順番で?」

「今日は私が行くよ。私の顔を見て驚くかもしれないから。でも、さすがに運ぶのに疲れるから一緒に運んでくれる?」

「分かりました」

 

 それからアリシアとシルフィア姉妹はヴィヴィオとアインハルトを部屋へと運ぶのであった。


 
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