No.481336

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第六十話 管理局の技術部にはマッドな奴しかいないんかい!?

2012-09-08 16:25:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7692   閲覧ユーザー数:6898

 第六十話 管理局の技術部にはマッドな奴しかいないんかい!?

 

 

 

 「皆、集まってくれたな。実は君達にそっくりな人間があちこちに出現している」

 

 アースラに集まった俺達はクロノの説明を受けながら映し出されたモニターを見る。

 そして、そのうちの一つのモニターに映し出された映像に俺は驚いた。

 黄金のライオンの(たてがみ)を髣髴させるかのような背中を覆う装甲。その腕と同じくらいの長さに伸びた爪。

 そして何より獅子の顔を思わせるかのような兜と甲冑。

 

 黄金の獅子。カオス・レオー。

 

 「…次元震でも起きたのか?」

 

 「いや、そのような情報は取れていないが…。タカ。君はこれを見てどう思う?」

 

 「かっこいい♪」

 

 「………」

 

 クロノの冷めた視線が痛い。

 

 「はい、真面目に考えます。………訳が分からないね」

 

 「まだ三秒もたっていないぞ?!」

 

 「本当に訳が分からないんだから仕方ないだろ!なんでもスフィアリアクターが関係していると思うな!」

 

 俺とクロノの問答を見ていたリインフォースが手を上げる。

 

 「…すまない。…これは恐らく『闇の書』の欠片だ」

 

 「…欠片?どういうことや?」

 

 リインフォース曰く、完全に吹き飛ばしたかに思えた闇の書の暴走体。だが、それは欠片になって再び完全体に戻る為に力を集めている。

 そして目の前に移されたカオス・レオーはその先兵らしい。

 

 「…なるほどな。このガンレオン似の鎧も含めてだが、僕やなのは。フェイトに守護騎士の面々に似た人間を所々で見かけたという情報もある。…だが、タカ。君のガンレオンに似たこの鎧に見覚えはあるか?」

 

 クロノの言う通り、なのはやフェイトに似た人物の映像もちらほらある。

 同じスフィアリアクターであるリインフォースに似た人物も映し出されている。

 それなのに俺だけ。正確にはガンレオンに似た映像が出ていない。

 

 「…あれはカオス・レオーだな。ガンレオンと同じ近接戦闘に特化したものだと思う。背中まで覆っている鬣みたいなところからはミサイルみたいのが飛び出してくるし、あの凶悪な爪は鞭みたいに伸びて相手を切り刻む」

 

 「…随分と詳しいようだな。一度、手合せでもしたのか?」

 

 シグナムさんが俺の意見に質問してくる。

 まさか、ゲーム知識です。とは言えない。あと、なんでガンレオンじゃないのかは俺にも見当がつかない。

 

 「…ガンレオンの中にあったデータがそれを示している」

 

 「一度、ガンレオンを徹底的に調べたいとうちの技術班が言っているんだが…」

 

 「あのメガネならお断りだ。ガンレオンを調べている最中にスフィアの事を知りたいからって、アリシアも解剖したいなんて言い出したからな」

 

 しかも。その時、俺はマリーというメガネ女子に診察台(何故か手錠付き)に固定された思い出がある。もし、あの場にプレシアとフェイトがいなければアリシア共々…。

 ちなみにお約束も果たしたぞ。「ぶっ飛ばすぞー」てな。

 

 「…彼女は特殊というか、ただ技術人としての血が騒いだだけでな」

 

 「まあ、マッドな奴じゃなければいいけど…」

 

 そう考えるとプレシアもマッドだよな…。

 俺も一度じっくりとガンレオンを調べたいし…。

 

 「…話が脱線したな。この『闇の書の欠片』についてだが」

 

 「管理局の技術部にはマッドな奴しかいないんかい!?」

 

 元管理局技術者であるプレシアも何故か俺から視線をずらしたし…。

 

 「…こほん。今の所、被害者の中に重傷者が出ていない。だが、このままこれを放置するわけにもいかないのでこれを僕たちの手で解決したいと思う」

 

 無論。断ってもいい。

 と、クロノは言うけれどここに集まっている全員が断るとでも思っているのだろうか?

 

 「そうはいかない。元はと言えばこれは私達のまいた種なんだからな」

 

 「おう。それをぶっ潰すのは私達のけじめだ」

 

 「もう、これ以上。はやてちゃんに迷惑をかけきれないしね」

 

 「それにこのままでは我々。主はやてにも被害が出るだろう。そうなる前に叩く」

 

 「家主である私ももちろん参加させてもう。私は張本人みたいなもんやしな」

 

 守護騎士の面々は各々に自分の意見を言って席から立ち上がる。

 はやても夜天の書を取り出して準備万端だと言ってみせる。

 クロノもそれを見て頷いた。

 

 「私にも手伝わせてほしい。この事件でまた誰かが傷つく前にこの事件を終わらせたい」

 

 「フェイトが行くなら私も行くよ」

 

 「私達も行くよ。ね、お兄ちゃん」

 

 「…まあ、俺の場合は陸戦だけだろうけどな」

 

 テスタロッサ家と俺も今回の事件解決には力を貸すつもりだ。

 闇の書事件後のダメージも抜けきったところだし、活動を再開するには丁度いいだろう。

 

 「「私も…」」

 

 「いや、君達二人は残れ。なのは。リインフォース」

 

 「クロノ君。どうして…」

 

 「君はまだクロウの事を引きずっている。情緒不安定な状態の君を連れていくことは今回は認められない」

 

 「そんなこと…」

 

 「駄目だよなのは。君はここ最近は魔法の特訓をしてないじゃないか」

 

 「…ユーノ君」

 

 クロノの意見とユーノの証言を受けてなのはは立ち上がりかけた席に座りなおす。

 対して八神家ではというと…。

 

 「リインフォース。お前はここで大人しくしていろ」

 

 「…将。だが、主はやてまで出撃しているのに私だけが何もしないままでいるわけには」

 

 「グダグダ言うな!病人は病人らしく大人しくしていろ!」

 

 シグナムとリインフォースの間に割って入ってきたヴィータは声を荒げて彼女を突き放す。

 

 「…そうね。リインフォース。貴女は休んでいて。私達とは違い貴女ははやてちゃんから殆ど独立しているような物なのよ」

 

 「それにスフィアの事もある。お前に何かあって今度はスフィアに取り込まれるという事も考えられる」

 

 シャマルとザフィーラもリインフォースを出撃させることに反対のようだ。

 

 「しかし…」

 

 「主の命令や。リインフォース。今回は出撃してはいかん」

 

 「…主はやて」

 

 はやてが『命令』を使ってでも彼女の出撃を拒んだ。それはそれほどまでにリインフォースを大事にしてるという事に誰もが気づいていた。

 

 「…それじゃあ。作戦を立てる」

 

 クロノは手元のキーボードらしき物に手を伸ばして空中にモニターを浮かび上がらせると同時に今回の事件に着手していくことになった。

 

 

 海鳴市周辺を八神はやてと守護騎士が担当。

 管理外世界をフェイト・アルフ・クロノ。そして、グレアムとはやてが面会するまではこちらの世界に留まっているつもりのアリアさんが担当。

 俺は遊撃手。というか、あのカオス・レオーを担当することになった。

 だって仕方ないでしょ!

 それ以外は空中か海上なんだもの!

 マグナモードを使ってまで空中戦闘なんかしたくないし!

 

 一応念のため。俺はカオス・レオーを倒した後はアースラで待機することになっている。

 だが、これは建前で本当の目的はなのはとリインフォースのお目付け役だ。

 ユーノはバックアップ要員。なのはの押しには弱いので、彼女のお願いというごり押しで負けてしまうかもしれない。

 そこで俺が戻ってきたらリインフォースも一緒に戦闘に出撃しないように押しとどめる。

 なのはは以前、フェイトを助けたいがために命令無視という前科があるので要注意だな。

 そう思いながら俺は転送装置のある部屋に向かって行った。

 

 

 

 

 

 偽物で復活しようとしている闇の書の欠片。

 

 …『偽物』。

 

 つまり、『偽りの物』。

 

 

 予言の力を持つ騎士。そして、クロウの持っていた『原作』からこの事件をあらかた予見していた青年は、ただ静かに自分の眼下にある海鳴市を眺めていた。

 

 「…『偽りの黒羊』。君も魅かれてきたのか。この世界に」

 

 アサキムは微笑む。

 自分が欲している力が自分から進んでこの世界に向かってくることを…。

 ただただ嬉しかった。

 

 「タカシ。君は『偽りの黒羊』と対面した時にどんな『選択』を下すんだろうね」

 

 そして、その欲している力を持った存在がこの世界で起こる出来事で更に成長することを、アサキムは望んでいる。

 それは自分の友を応援しているかのようにさわやかな笑顔だった。

 

 


 
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