No.479765

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第五十九話 超リスク。ゼロリターン

2012-09-04 18:04:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10000   閲覧ユーザー数:9002

 第五十九話 超リスク。ゼロリターン

 

 

 

 …orz。

 

 ……あ、すいません。…沢高志です。

 何故か『揺れる天秤』がガンレオンの中にあったのにショックが隠せないです。…はい。

 だってそうでしょう!クロウは生きているのにスフィアが俺に移って来るなんて思いもしませんでしたよ!これでアサキムが俺をつけ狙う可能性。というか、確実にターゲット率が増大したのは確定だ!

 

 「タカシ。そのまま動かないでね」

 

 そして、orz状態の俺の背中にフェイトの脚が乗っかてる状態です。

 別にMに目覚めたわけじゃないよ。本当だよ。

 

 本日、十二月三十日。

 年末という事もあり、大掃除をしています。フェイトやリンディさんの住んでいるところは駐屯基地だったという事もあってかとても綺麗でした。

 かくいう家主がプレシアの部屋はというとガンレオンやスフィアに関する書類が散乱していた。俺やアリシアの部屋にも多少なりにもその書類がある。

 スフィアは俺とアリシアに関することだから仕方ないとしてもこの書類の多さはどうよ。

 翌日の大晦日は聖翔美少女カルテット(なのは・すずか・アリサ・フェイト)の関係者の皆さんで初詣に行かれるそうです。

 …正直羨ましい。

 だってさ、俺は北海君に沖縄君と出かける予定何て約束していないんだもの!

 友情が…。友情が欲しいよ。

 …もしかして、俺ってば友人がいない?

 

 「…俺、高校生になったら隣人部を作るんだ」

 

 「うん?何か言ったかな、タカシ?」

 

 うん。なんでもないよ。泣いてないよ。

 さて、目の前にあるとは言ってもフェイトが背中に乗っている状態だからあんまり動けないからなんとなく目の前にある書類に目を通す。ちなみに最新版。

 

 

 『揺れる天秤』の所有者の変更があり、クロウから高志に移る。

 だが、このスフィアは未だに休眠状態。ライアットジャレンチに埋め込まれる形であり、物理的には分離は可能。ただ、スフィアには未だに不確定な情報が多いため現状を維持することに決まった。

 スフィアが移った理由として、クロウは仮死とはいえ一度死んだのでスフィアが次の適格者を求めてガンレオンに移った。というのが見解である。

 

 P・B(ピリオド・ブレイカ―)について…。

 元スフィアリアクターであるクロウに使用したところスフィアに何らかの影響があったというのは薄いとみられる。

 ただ、強大な治癒の力は魔導師の命ともいえるリンカーコアを破壊してしまう。

 リインフォースに使った場合、恐らくだが彼女の体を構成している魔力は散り、魔力以外の何か。人間の体になるのではないだろうか?

 ただし、現マスターはやてからの魔力供給無しになる。それを考える彼女の次世代機を検討する必要がある。

 

 クロウの処遇についてだが、彼のご両親に上手く説明しておいた。と、リンディさんとプレシアがそう言っていたが、クロウの性格はあくまで記憶が無くなった。という事だけだったが、なのはやフェイト。あと、俺の事を見るとフラッシュバックが起こり、体が震え動けなくなる。という事が発覚した。

 魔法関係の事や事後処理の事は気にしなくてもいいと言っていたが、クロウは新学期を迎える頃には転校していた。

 「保険金を渡していたし、大丈夫でしょう」と、プレシアも言っていたが、脅迫とかじゃないよね。

 

 

 あ、これはクロウの持っていたブラスタに関するものだな…。

 『揺れる天秤』がガンレオンに移った瞬間にブラスタ(待機状態)がガンレオンの中にあった。

 『揺れる天秤』が一応俺の手元にあるんだから俺にも使えるんじゃないかという意見もあった。試しに使ってみた。

 この時のことは誰よりも俺が知っている。ブラスタを展開することに成功した俺は空に飛んで行くイメージをブラスタに伝えると、俺の体は宙に浮き、次の瞬間!

 

 

 キラ☆

 高志、逝きまーす。

 

 

 俺は☆になった♪

 

 

 いや、死んじゃいないよ。一緒に様子を見ていたリインフォースさんが慌てて俺を助けてくれたから大丈夫だったよ。

 しかし、考えてみればそうだ。

 普通免許しか持っていない人間がいきなりジェット機を操縦したらどうなるか…。

 リインフォースさんに助けてもらわなかったら俺は何処までも飛んで行き、本当に星になっていただろう。

 ようは暴走した。

 『揺れる天秤』やブラスタがあっても俺には扱うことが出来ない。まさに宝の持ち腐れ。

 それなのにアサキムに狙われる可能性は倍になった。

 

 なに?この超リスク(ゼロ)リターン。

 

 まあ、『傷だらけの獅子』もまともに扱うことが出来ないんだけどな…。

 元である俺の魔力が低いせいか、成長したスフィアでマグナモードを使うと魔力が一気に枯渇する。スフィアの恩恵もあってかしばらくすれば魔力は回復するが、1日に一回から二回が限界である。

 その上、体に帰って来る反動もでかい。全身筋肉痛て…。そして決まってプレシア様のお叱りを受ける。アリシアの悪戯も受ける。

 …これが『傷だらけの獅子』の因果か。…違うと思いたい。

 マグナモードを使った後は肉体疲労だけでなく精神疲労もあるんだぜ…。

 たまにはどこかのイケメン主人公みたいに綺麗にしめてみたいものだ。

 魔導師とは名ばかりに俺は体というか体力・スタミナが資本。日々筋トレをしないとマグナモードをいざ使った後、動けません。じゃ、困ることが多発するだろう。

 目指すはマグナモード連続2回使用だ。

 

 あと、もう一つ。

 P・Bを使った後の激痛は前回プレシアに使った時よりもきつかった。

 『傷だらけの獅子』が成長してくれたおかげか精度が上がったような気がする。両断したクロウの体を繋ぎ直した後、神経や筋肉までも完璧につなげた。

 まあ、その分、副作用が痛かったけどね…。

 泡を吹いて倒れた俺を見て、痛みが無かったアリシアを含めてその場にいた全員が「こいつはマズイ」と思ったらしい。

 リインフォースさんはそれを見て俺に無理はさせられないと言ってきたが、ちょっとの無理で彼女が助かるなら安いものだ。

 …だから、アサキムが来たときは援護射撃をお願いします!

 

 「タカシ。作業終わったよ」

 

 「…ん。じゃあ、昼飯にしようか」

 

 フェイトが俺の背中から降りてくるのを確認した俺はプレシアの部屋を一度出てアリシアとアルフ。そしてプレシアが昼食の準備をしているだろうリビングに向かった。

 

 

 

 「…ごちそうさまでした。フェイト、アルフ、早速お兄ちゃんで遊ぼう!」

 

 朝から続いた大掃除で折角遊びに来てくれた(と、アリシアは思っている)二人と遊べなかったアリシアは食事が追終わった後、洗面所で姉妹ならんで歯を磨いて遊びに誘う。

 …というか、俺で遊ぶってどういうことだ?

 

 「だ、駄目だよアリシア。まだ、お掃除するところはたくさんあるし…」

 

 「私は構わないけど、まだかなりの書類の山が残っているよ」

 

 しまった。つっこみどころを逃した。

 

 「…うー。お兄ちゃん」

 

 涙目で俺を見てくるアリシア。…仕方ないな。

 

 「手伝いに来てくれて悪いんだけど。フェイトとアルフはアリシアと遊んでいてくれないか?残りは俺とプレシアでやっておくから…」

 

 「やったー♪」

 

 「え、悪いよっ。だって手伝いに来たのに遊ぶなんて…」

 

 「いいからいいから」

 

 俺は少し慌てているフェイトとアルフの背中を押しながら家の外に向かわせる。

 アリシアも二人の手を取って外へと向かう。

 

 「…なんか、悪いね。ちょっとしか掃除が済んでいないのに」

 

 「構わないさ。どうせ、スフィアのことに関しての資料だし…。正直、あまり進んでいないから悔しいものもあるけどそれは仕方ない」

 

 アルフも俺に謝りながらも人型で隠していた尻尾を振って外に赴く。

 外に出る前には消して行けよ。

 

 「いってきまーす」

 

 アリシアが元気よく外に出かけたのを見送り、俺は洗い物をしているプレシアに声をかける。

 

 「んじゃ、俺は片づけをしているから…」

 

 「…タカ。少し、話があるわ。ちょっと待っていなさい」

 

 プレシアは食器を洗いながら俺にテーブルに着くように言ってきた。

 

 「スフィアの事よ。貴方はリインフォースを直すつもりね」

 

 「そのつもりだけど?」

 

 治す。じゃなくて直すか。言いえて妙だな。

 プレシアは俺の答えを聞いて表情を硬くする。

 

 「この際だから言っておくわ。P・Bを使うのはもうやめてほしいの」

 

 「………」

 

 「アレを使えばあなたは『悲しみの乙女』まで取り込んでしまうかもしれないわ」

 

 プレシアの声からは俺を心配する声色も感じ取れた。

 俺がP・Bを使った直後『揺れる天秤』が俺。正確にはガンレオンの中に転生してきた。もし、リインフォースも直してしまえば、三つのスフィアが俺の所に集まることになるかもしれないからだ。

 それはアサキムにとっては最高の獲物だろう。一度狩れば三つもゲットとなるのだから。

 

 「はっきり言ってあなたは感情が豊かすぎるの。それはスフィアにとって最高の環境なのよ」

 

 確かに『痛み』と『悲しみ』はある意味接点が多すぎる。

 心の痛みというか。良心の呵責というか…。

 

 「その上、あなたは『揺れる天秤』。選択も迫られることも多くなると思う。いえ、アサキムの事だから必ずそのような事態に陥るわ。彼はあなたを…」

 

 まだ、持っているだけで。あくまで候補としてだろうけど…。

 ブラスタを調べた所、スフィアリアクターのマスター枠は登録されていなかったし…。

 

 「それは百も承知している。だから八神家に約束を結ばせたんじゃないか。そっちを守る代わりにこっちも守ってくれ。て、」

 

 「…タカ。貴方は私達に。いいえ、アリシアにとってかけがえのない存在なの」

 

 「それは俺がスフィアリアクターだからなぁ」

 

 俺の答えを聞いてか、それとも聞いていないのかプレシアは俺を真っ直ぐに見て言う。

 

 「…『太極』。…それを手に入れるつもりなの?」

 

 「まさか。そんなものは」

 

 「嘘ね。貴方は未だに悩んでいるわ。この世界に残るか。それともこちらの世界に残るか。を。貴方は『選択』しかねている」

 

 間髪入れずにプレシアが言ってくる。

 …見事なまでに俺の心情を理解しているみたいだ。

 そうだ。俺は迷っている。この世界と元いた世界。どちらを取るかを…。

 

 「『揺れる天秤』は『選択』の意志を糧にする。あの時。クロウが斬られたあの場所で一番悩みを抱えていたのはあなたじゃないかしら。だから、あなたの元にスフィアが転生してきた。『傷だらけの獅子』の『選択』しようとしている意志の強さに」

 

 なるほど。

 それなら俺の所に来てもおかしくはないだろうな。

 闇の書の暴走体が吹き飛んだ後。正確にはクロウが乱痴気騒ぎを起こした後、『太極』の話をした。

 その時から俺は元の世界に帰れるかもしれないという想いと、ここに残るべきかという想いがあった。

 そして、腐っても俺は『傷だらけの獅子』のリアクターだ。同じスフィア同志干渉しやすかったのかもしれない。

 

 「このままだと貴方はいずれ『揺れる天秤』に目覚めるかもしれない。…だから、お願いがあるの。…元の世界に戻るのは諦めて。私達はあなたを必要としている。スフィアリアクターとしてではなく沢高志という一人の人間を…」

 

 『太極』を諦めれば、少なくてもそれに関する『選択』はしなくてもいい事になる。

 でも、俺は…。

 

 「貴方がいた世界の話を前に聞いたわ。こことはあまり変わらない世界。ただ、このような世界規模の危機に瀕してはいない平和な世界。そこに戻りたいのはわかる。…でも、それでも、私達。いいえ、少なくてもアリシアはあなたから離れたら悲しむわ」

 

 「…勝手なことを言うな。確かにここは魅力的な世界だ。ここには魔法なんて言う面白い力と未知の技術。馬鹿な俺にはまったくもって理解は出来ないけどわくわくする。でもな。…俺の家族は、ただの公務員と専業主婦。普通の大学生と高校生の弟がいる。…だけどな。それでも、どの世界にもたった一人しかいない俺の大事な家族なんだよ!」

 

 …帰りたい。

 帰りたいに決まっていている!

 でも!それには『太極』の力が必要だ!

 それは世界を巻き込む!

 スフィアの力は強大で凶悪だ!

 自分だけじゃなく他の人まで巻き込む!

 …それを俺の家族が望むか?

 分からない。

 

 『人にやられて嫌な事はするな』

 

 俺にはそこまでする覚悟があるのか分からない。

 多くの世界の人達を危険な目に合わせてでも俺は帰れるというのなら俺は…。

 

 「…私も人のことを言えた義理でもないわね。貴方のような次元を超えた存在と力。スフィアが無ければこんなことを思うことはなかった」

 

 アリシアを生き返らせるために世界すらも敵に回したプレシア。

 元の世界に帰る為に世界を敵に回す俺。

 

 「貴方のいた世界はこの世界より魅力的だった?」

 

 俺と彼女は何も変わらない。

 ただ、俺には迷いがある。

 

 「貴方は充実していた?」

 

 ただ、覚悟があるかどうかだ。

 俺は世界を…。自分以外の人達を巻き込んででも帰るという覚悟…。

 

 「…やめてくれ」

 

 俺はただそれを言うのがやっとでテーブルから離れる。

 そして、プレシアの顔を見たくない気持ちでいっぱいになった俺はそのままマンションの外に出る。

 肌に感じる十二月の終わりかけた風は冷たい。

 マンションから見下ろした街並みの中に、家族連れだろうか楽しそうに歩いている人達がいた。

 

 「…帰り、たいな」

 

 俺は、この世界でやっぱり一人ぼっちだ。

 アリシアを、なのはやフェイト。クロノといった仲良くなった人達を助けるため。一緒に生きていくために『傷だらけの獅子』を受け入れたはずなのに…。

 一番傍にいて欲しい存在は一番遠くにある。

 会えないのが当たり前。

 一度死んでいるのでそれは仕方が無い事。だけど、『太極』があれば帰れるんじゃないだろうか。そう思うと、気持ちが揺れる。

 新しい命を貰ってそれを謳歌している時点で贅沢すぎだというのはわかる。だけど…。俺の心の天秤はぐらぐらと揺れている。

 ああ、だから『揺れる天秤』が俺の所に来たわけだ。

 

 「…会いたい、な」

 

 俺は待機状態のガンレオンを手に取る。

 その手に光るキーホルダーの形をしたガンレオンは何も答えてはくれない。

 それをズボンのポケットに戻して、しばらくマンションの近くにあった公園のベンチでボーっとする。

 三十分くらい経っただろうか。大した上着も着ていないからすぐに体が冷えてきた。

 もうそろそろマンションに戻って掃除でもするか。と、思っていたらガンレオン(待機状態)から通信が入った。

 

 『高志!今どこにいる!』

 

 「おおう、クロノ。今、近くの公園にいるけど。どったの?そんなに慌てて?」

 

 事務処理がそんなに大変か?俺は手伝えないぞ?そういうのはユーノに頼め。

 

 『今、管理外世界で君によく似た鎧を着た人間に襲われたという情報が入ったんだ!』

 

 「…はぁ!?」

 

 『とにかく、近くにいるならマンションに戻ってアースラに来てくれ!大至急だ!フェイトとアリシア。アルフにも来てもらっている!』

 

 クロノの慌てようだとかなり大事そうだ。

 まったく、正義の管理局に年末休みは無いのかね。

 それはともかく俺は急いでアースラに向かうことにした。

 


 
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