No.479843

IS~音撃の織斑 三十二の巻 内面を引き出せ!

i-pod男さん

はい、今回ちょっと長めです。買い物+αな感じで。簪ちゃんをちょっと
ドレスアップさせちゃいました。

2012-09-04 21:43:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4296   閲覧ユーザー数:4121

二人が立ち去り、食事が始まった。味は素晴らしく、一夏も舌鼓を打った。

 

「イヤー美味かった・・・・俺も家では作ってるが、流石食材の質と料理人の腕が違うな。」

 

「凄い食べたね、一夏君・・・・」

 

「食器、どこに持ってけば良いんだ?」

 

「あ、大丈夫だよ、家の人がやってくれるから・・・」

 

「そうか。さて・・・・ここにいる間、俺は何をすれば良いんだろうか?」

 

「テレビでも見る?」

 

簪が乗り出して来た。期待たっぷりの目で見つめられた一夏も断る訳にも行かず、頷いた。

 

「一夏君、簪ちゃんてアニメとか特撮ヒーローが好きだから・・・・」

 

楯無が小声で伝える。

 

「成る程。まあ、昔も俺は見てたし、映画でそう言うCMもたまに見かけたな。最近見た奴だったらTHE N○XTとか TH○ FIRSTとかだけだし。」

 

「あ、一夏もたまにそう言うの見るんだ?」

 

「まあ、暇な時位でしか見ないな。最近じゃ映画を見る暇も無い。Yo○tubeを開けないんだよ、忙しくて。」

 

「じゃあ、三人で見ましょうか?」

 

結局三人でブルーレイ高画質の大画面テレビで最近話題になっている映画を幾つか見た。殆どが特撮の王道劇場版であり、劇場版オリジナルの登場人物も何人か出ると言うテンプレな作品だったが、簪は終始嬉しそうにしており、一夏に寄りかかっていた。一夏も簪を抱き寄せて画面に集中しようとしていた。

 

(甘い匂い・・・・シャンプー、か・・・・?いやいやいや、待て待て待て!流石にここでそーゆー事はマズいだろ、人様の家で!)

 

「い・ち・か・く〜ん?な〜にに見とれているのかな〜?」

 

隣に座っていた楯無はそわそわし始めた一夏に気付き、脇腹をツンツンと突き始める。

 

「はい?いや、別に何でも・・・最近はCGが凄いなーと・・・(やっぱりばればれか・・・)」

 

一通り見終わると、また暇になる。

 

「ずっとここでゴロゴロしてるのもあれだし、また少し出ないか?腹ごなしの運動ついでにさ。」

 

「それは良いけど、どこ行くの?」

 

「アテはあるんだ。ちょっと待っててくれよ?」

 

袖の中から携帯を取り出し、電話をかけた。コールを待っているのがしばらく。

 

「もしもし?」

 

『おう、一夏!どうした?』

 

電話の相手は弾だった。

 

「俺の記憶違いでなければ、今日だよな、アレ。」

 

『ん?ああ!そうだな、今日だぜ。来るよな、当然!?蘭も来るぞ!』

 

弾は『アレ』、と聞いて途端にはしゃぎ出した。

 

「勿論。あー、ちょっとゲストも連れて来るんだが、構わないか?」

 

『おいおい、上客の俺達に嫌とは言わせねえだろ、向こうも?ゲストの二、三人位はどうにかなる筈だぜ?』

 

「それもそうだが・・・・数馬とは連絡つけたか?アイツがいないと始まらないぞ?」

 

『残念ながらまだだ。アイツも忙しいからなあ。』

 

「分かった。出来なければ仕方無いが、俺もあたってみる。そっちで食事してから行くって言う段取りでどうだ?」

 

『おう、良いぞ?』

 

「分かった、じゃあそこで会おう。」

 

電話を切ると、再び別の番号に電話をかけ始めた。

 

『はい、みどりです。』

 

「ご無沙汰してます、イバラキです。」

 

『あら、めずらしい。音撃武器の調子はどう?』

 

「はい。何度も救われましたよ、流石は関東支部のブレーンです。所で、数馬は今そっちにいますか?」

 

『店番やってるけど、すぐ呼んで来るからちょっと待ってね。』

 

五分程してから一夏の耳に長らく聞かなかった声が飛び込んで来た。

 

『はい、もしもし?』

 

「よう、数馬。久し振り。俺だ。」

 

『おー!一夏!いや、今はイバラキか。で、どうしたんだ?』

 

「今日が重要な日付だって事、忘れてないか?」

 

『今日は・・・・あ。』

 

「そう。今日はアレがある日だ。来れるか?」

 

『当然。久々のトリオ復活だ。弾は当然来るんだよな?」

 

「勿論。先に電話しておいた。弾の店で集合する事になってる。準備してろよ?」

 

『ああ。じゃあな、一夏。』

 

そして電話を切ると一息ついた。

 

「俺は良いとして・・・・なあ、二人共パンツルックでカジュアルな服装って持ってるか?」

 

「うん、まあ・・・」

 

「私は、ちょっと・・・・」

 

楯無は何を着ても似合うと名実共に事実であると言う事を一夏は黛から聞かされている為ある程度予想はしていたが、簪は明らかにそう言うファッションを着るタイプには見えない。

 

「よし、まずやる事は決まった。簪の服、新調しに行くぞ。」

 

一夏はポンと手を叩いた。

 

「一夏。さっきの電話・・・・滝沢みどりさんて、だれ?」

 

いやーな汗が一夏の首筋を伝う。鳥肌も少し立ち始めた。

 

「猛士関東支部で音撃の研究と開発をしてる人。だから心配しなくても良いわよ。そもそも、一夏君が浮気をする様な人に見える?」

 

「あうう、それは、その・・・・・」

 

楯無が代わりに答えて簪の負のオーラも引っ込んだ。

 

「俺もちょっと着替えなきゃ行けないから、一旦戻るぞ。」

 

「そのまま行かないの?」

 

「このままじゃ目立ち過ぎるし、ポケットが殆ど無いから。俺のファッションの選択基準は一に機能性、二には見た目だ。それに、今夜行く所には似つかわしくはないからな。」

 

「私ここ片付けとくから、先に行ってて?」

 

そして楯無はさり気なくウィンクした。意味を察知したのか、一夏は簪の手を握って客室に戻って行った。

 

「でも、何で下はパンツ系じゃなきゃいけないの?」

 

「念の為って奴。そこに着いたら分かるから。後、簪の眼鏡って・・・・」

 

「あ、これ、只の簡易ディスプレイ、だから。」

 

「向こうにいる間は、外しておいた方が良い。割れたら大変だからな。」

 

そして客室にあるバッグの中から持って来た服を取り出し始めた。

 

「一夏、一つ聞いても良いかな?」

 

「ん?」

 

作業の手を止めずに一夏は受け答えした。

 

「何で、私とお姉ちゃんと付き合う気になったの?二人一緒には無理って最初は言ってたけど。」

 

「人を好きになるのに理由なんていらないだろうが。交流を重ねる内にって奴だ・・・・まあ、強いて言うならば一番の理由はお前ら二人がどこか俺と似ていたからだ。すれ違って、心の流れが塞き止められて思う様に動けない、そんな感じがした。俺みたいになって欲しくないから・・・・それに俺も誰かを守りたいって言う我がままがあった。俺は、自分の無力さを何度呪った事か、両手両足じゃ数え切れない。だから、俺は思ったんだ。強くなって、どうするか?考えあぐねた結果、誰かを守りたいと言う結論に行き着いた。」

 

そして振り向くと、簪を優しく抱き寄せてキスを贈った。ゆっくりと丁寧に、だがとろける様な甘い味を一夏は感じた。楯無とした時とはまた別の感触に恍惚としてしまう。離れた頃には簪の顔は真っ赤になっていたが、満面の笑顔だった。

 

「そう。それだ。俺は笑顔(ソレ)を守る為に戦っている。お前だけじゃなく、楯無のもだが。」

 

「ありがとう、一夏。」

 

「感謝するのは俺の方だ。俺みたいな扱い辛い馬鹿の長話に付き合ってくれて、尚且つ俺と付き合ってくれたんだ。筆舌し難い程、俺は幸せだ。」

 

「私の服、選んでくれる?」

 

「勿論。つっても、さっきも言ったみたいに機能性重視になっちまうがな。」

 

着流しを脱ぐと、一夏は直ぐに着替えた。プリントの入った少し厚めの白いシャツに七分袖まで切った薄いオレンジのフード付きパーカー、そしてその上に袖が脱着可能なモスグリーンのジャケット、下はスキニーカーゴを履いた。

 

「この様に、薄めで通気性抜群の物が好きだ。このベストもポケットが覆いから重宝する。こんな感じの格好で仕上げようかと思ってるが、どうだ?」

 

「う、ん・・・・良いかも・・・・私も、着替えて来た方が良い・・・・?」

 

(簪今はあまり柄が入ってないワンピースを着てるからな・・・私服姿見た事無いけど、やっぱシンプルな物が良いのか?それともその裏をかいてちょっと派手な感じで?)

 

「いや、どうせ服を買いに行く時着替えるからそのままで良い。楯無にもアドバイスを貰いたいしな。レディースの服を買うなんて正直初めてだから。(実際は日菜佳さんやみどりさんの買い物に付き合わされた事があったがあれはノーカンと言う事で・・・・)」

 

「お待たせー!」

 

楯無は青と白の縞模様のニーハイソックス、デニムのショートパンツ、そしてソックスよりも深みのある青いシャツの上に白いベストを着ていた。

 

「おお・・・・楯無もそう言う服着るんだな。」

 

「どーゆー意味よ、それ。ぶーぶー!」

 

「いや、少し意外だっただけだ。」

 

「いっちー、外行くの?」

 

突然あろう事か天井裏から本音が顔を覗かせて来た。

 

「あ、ああ・・・・・お前はそんなとこで何をしてるんだ?」

 

「屋根裏のお掃除だよー。」

 

「監督は私がしていますので、綺麗になっております。お嬢様、行ってらっしゃいませ。」

 

虚もいつの間にか三人の後ろに現れていた。

 

「どうせなら皆で行かない?その方が盛り上がるんじゃない?」

 

「いえ、奥様からお嬢様がご不在の時は私が管理を任されていますので・・・・」

 

「えー。」

 

楯無が如何にも残念そうな顔をした。

 

「しょうがないよ、お姉ちゃん。行こ、一夏?」

 

簪は緩み切った笑みで一夏の腕に抱き付いたままだった。着いた先は水着も購入した、ショッピングモール、レゾナンス。レディース専用のフロアに着くと、夏服フェアが開催されていた。

 

「おお、丁度良い時期に来たな。えーっと・・・・行くとするなら・・・・」

 

「あ、あれなんかどうかしら?」

 

楯無が指差したのは開店記念で若い女性向けに服を販売しているReversed Viewと言う店だった。

 

「ここ・・・?似合う服あるかな・・・?」

 

簪は不安そうだった。一夏の腕に相変わらず掴まったままだが。

 

「無い筈無いだろう?簪は可愛いんだからさ。楯無も俺も色々探し回って手伝うから。な?」

 

(コクン)

 

早速中に入ると、女性店員の一人が笑顔で迎えてくれた。

 

「すいません、彼女に会う服を探しているんですが。出来れば下は長パンで。」

 

「はい!喜んで!なんたってお客様第一号ですから!今日開店したばかりで。」

 

「そうなんですか。男の俺が言うのもアレですけど、いい店ですね。色々あって。」

 

「恐縮です。ではこちらに。」

 

一夏と楯無は試着質の前で待たされ、簪は寸法を測られた後店員に色々な服を当てがわれて吟味されていた。試着質に入ってから約十五分弱、簪が現れて・・・・

 

「すごーい!良いじゃない、これ!簪ちゃん可愛いわよ!」

 

「うん。これは凄い。また簪の別の面が引き立ってる。」

 

簪が着用しているのは少しダボついたダメージジーンズ、そしてそれに付属している肩から外されて太腿辺りでぶら下がっている脱着可能なサスペンダーストラップ、クリーム色のへそ出しシャツ、そして髪の毛はバンダナで纏められていた。眼鏡も外されている。

 

「ちょっと恥ずかしい・・・」

 

簪はモジモジしていたがそれがシスコンである楯無のドストライクゾーンをストレートに貫いたらしく、楯無は頬擦りを始めた。そんな二人を尻目に一夏は店員と話していた。

 

「流石ですね、いつもとは対極の服装だ。」

 

一夏はここ数年鬼の仕事とたちばなのバイト、そして更に暇があれば弾の食堂でも手伝っているので、高校生の割にはかなり溜め込んでいた。

 

「店の名前の由来、分かります?」

 

「リバース・ビューって言う位だから・・・・いつもとは真逆の服装を見立てるって訳ですか?」

 

「そうです。その通り!」

 

とりあえず服の代金を払うと、一年有効の割引券を貰った。

 

「サービスです♪」

 

「ありがとうございます。」

 

簪はその選んでもらった服を着たままで外に出た。

 

「やっぱり落ち着かない・・・・」

 

「着こなしだ、着こなし。しばらくここら辺を練り歩いていりゃ馴れる。心配しなくても似合ってるんだから、自信を持て。こういうワイルドな感じも、時には大事だぞ?」

 

「その通りよ、簪ちゃん。たまにはカジュアル過ぎる服を着るのも勉強の一環なのよ。学園にいる間なんて私服着る機会が少ないんだから、何事も試行錯誤が大事!」

 

二人に励まされて簪も顔がぱあっと明るくなった。

 

「さてと、次はどこに行こうか、一夏君?」

 

「昼は結構食べたしなー・・・・夜は少し軽めに・・・・お。オーイ、弾、数馬!」

 

大声で叫ぶと、二人が手を振り返し、自分達の方に向かって来た。弾はつばの広いキャップにTシャツを長袖の上に着て、下はダメージジーンズと見たまんまラッパーの服装をしており、数馬は上のボタンを三つ開けた白のワイシャツに革ジャン、そしてソフト帽とハードボイルドな(オトコ)らしさを醸し出していた。

 

「一夏。久し振りだな。」

 

数馬の伸ばした拳に自分の拳を打ち付けて挨拶を交わした。

 

「そうだな。みどりさんの助手になったって聞いたけど、お前も随分出世したな。このエリートマン。」

 

「うるさい。俺は裏方に徹してる方が性に合ってるんだよ。」

 

「まあ、お前昔から喧嘩は俺達三人の中じゃ下だからな。」

 

「それは認めざるを得ないが、俺は知能(コッチ)でそれを補うから良いの。」

 

「あの、一夏・・・」

 

「ああ、悪い悪い。紹介がまだだったな。IS学園に入る前の級友だ。赤髪でドレッドヘアーのコイツが五反田弾。俺と同じ猛士のメンバーだ。妹の蘭は来年学園に来ると言ってたな。で、このインテリジェントな優男風に見える彼は御手洗数馬。同じく猛士所属。関東支部の開発室長であるみどりさんの現助手だ。」

 

「優男言うな!」

 

「冗談だよ。今から行く所か?」

 

「ああ、俺ん家にな。」

 

「俺達も行って良いか?売り上げ貢献の為にも。」

 

「おう。」


 
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