No.479447

ViVidに転生した。うん、そのはず………。 その5

真尋さん

ああ…………、面倒だ。

2012-09-03 21:34:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4644   閲覧ユーザー数:4441

 数日後、ザンクト・ヒルデ魔法学院。放課後に帰る時のことだ。

 

「レーヴェさん」

 

 アインハルトがとことこと俺の席にやってきた。恐らくいつもの用件だろう。原作ではお目にかかれていない初等部の制服姿が可愛らしい。

 

「帰りに試合を……」

 

 そう彼女が言いかけるのに対し俺はすぐに謝った。

 

「悪い、今日はちょっと行かなきゃならないところがあるんだ」

 

「行かなければならないところ……ですか?」

 

 碧銀の髪を揺らして首を傾げるアインハルトに俺は説明する。

 

「ああ、この前知り合った奴が少し事情があってな、歳の近い友達が俺しかいなくて、しかも当面の間俺以外の友達が出来なさそうなんだ。俺しか会えないことになってるみたいだし」

 

「……そう、ですか」

 

「うん、それで今日はそいつに会いに行く日ってわけ。あいつ友達が俺しかいないからさ、寂しがってるかもー……ってな」

 

「……なら、仕方ありませんね」

 

 頷くアインハルトに俺はもう一度謝る。いつもあまり表情を変えないので普通の人には分かりづらいだろうが、俺は二年以上友達付き合いをしているので本当に残念に思っているのが何となく分かるのだ。この前の練習でもミット打ちを「古流の型打ちとは違うけどいい練習になる」って言ってたし。

 

「悪い、今度の休日とかは空けておくからさ」

 

「分かりました。早く行ってあげてください」

 

「ん、ありがとな!」

 

 手を振って、校門の前で別れる。

 

 

 

 

 

 

 

 ………別れたあとに彼女が寂しげに呟いた言葉など、当然俺の耳に入るはずもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「………でも、あなたしか友達がいないのは、私も…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 六課に寄ってみたら、なのはさんとフェイトさんをママと慕うヴィヴィオの姿があった。

 うんうん、よかったよかった。

 

 

「あ、レーヴェ!」

 

「よお、ヴィヴィオ。遊びにきた」

 

 俺を見て顔を輝かせるヴィヴィオに軽く手を挙げて挨拶。

 

「またアニメみたい!」

 

「そう言うと思って持ってきたぞ」

 

「わーい!」

 

 手を挙げて喜んでいるの見るとやっぱ和むわぁ。

 

 と、ぽわぽわ俺が癒されていると、やや遠くから声が聞こえた。

 

「それじゃあ今日の訓練は終わり!」

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

「…ふむ、エリオとキャロを少し待つか」

 

「えー。いまみたいー!」

 

 駄々をこねるヴィヴィオをなんとか説得しようとする。

 

「皆で見る方が楽しいんだから今は我慢。な?」

 

「……うー」

 

 頬を膨らませているが、どうにか折れてくれた。

 

 

 

「あ、レーヴェ! 来てたんだ」

 

「ついさっきな。訓練お疲れさん」

 

 エリオの声に返事を返す。

 

「それよりさっさとシャワーを浴びてきたらどうだ?」

 

「え、そりゃ浴びるけど………なんで?」

 

 急かす俺に首を傾げるエリオ。

 

「アニメ、続き見たくないのか? ヴィヴィオに待ってもらってるんだけど……」

 

「すぐ行く!」

 

 反応早っ!

 

「おう、キャロにも伝えとけよー」

 

「分かってる!」

 

 すっごいスピードで走って行った。訓練で疲れてる奴の走りじゃねえぞあれは。

 

 

 

 

「やっほー」

 

「こんばんは」

 

「……あれ? お二人さん何故こちらに?」

 

 ヴィヴィオと一緒に待ってると、スバルさんとティアナさんがエリオとキャロに続けて現れた。四人ともシャワーを浴びてすぐに来たのか、少し頬が上気している。スバルさんとティアナさんが妙に色っぽく見えた。

 

「二人が面白いって言うからさー」

 

「どんなものか興味があって」

 

 そうですか。

 

 

 

 話が終わると、スバルさんは目をキラキラさせる組に入った。一方ティアナさんは

 

「ふーん、なるほどね……」

 

 と、興味を持った様子ではあるが他の人達ほどではなかった。むしろ世界観や設定を見ていろいろ考えているのかもしれない。

 

 

「じゃあヴィヴィオ、また来るからなー」

 

「うん!」

 

 笑顔での見送りを受けて、部屋を出る。なぜかエリオがついてきた。

 

「あのさ、レーヴェ」

 

「ん? なんだ?」

 

「ヴィヴィオのことなんだけど……」

 

 真剣な表情でエリオが言うので、取り敢えず向き直った。

 

「出来ればどんなことがあっても、彼女が何者でも、友達として側にいてあげてほしい。僕やキャロよりも君の方が歳が近いからね」

 

「彼女が何者……って、ただの迷子で記憶喪失なガキじゃないってのか?」

 

 正体とかを分かっていながらも問う。ここで即答してもいいんだけど、そうなると少し答えとして軽くなりそうな気がした。

 

「……詳しいことはまだ掴めていないんだ」

 

 エリオは首を振って少しうなだれる。俺はため息をついた。

 

「まあ、いいさ。別に俺もそんなに友達多いわけじゃないし、あいつ割と可愛いしな」

 

 ぱっと顔を上げたエリオに対し俺はそっぽを向きながら呟く。

 

「友達でいるに決まってるだろ。あいつがたとえ生体兵器か人造生命体かクローンか何かだとしても……な」

 

「……どうして、それをたとえに出したんだい?」

 

 少し躊躇いがちな声。こっちも後ろめたくなる。事情を知っていながらもこんなことを言う俺って最悪なのかもな……

 

「いや、なんとなく。基本的にそういうのって社会で忌避されがちだから……かな。まあ俺はそんなに忌避感ないけど。こっちに悪影響が出るわけでもあるまいし。最初にあった時少しサーチしたけど、生体兵器とかみたいな危険な何かを秘めているわけでもなかったしな」

 

「……そっか」

 

 

 少し、エリオの声が明るくなったような気がした。少し罪悪感がこみ上げるがそれを押さえ込む。俺が事情を知っていると知られたら間違いなく不審な目かなにかで見られるだろう。そうなるのは避けたい。

 

 

 

 

 やれやれ……面倒くさいことだ。


 
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