No.469590

真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第六部 『水着と水とHE∀ting Sφul』 其の六

雷起さん


第九話は魏対呉の前半戦です。
華琳がどんな策で来るのかお楽しみに♪


続きを表示

2012-08-13 17:46:51 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2746   閲覧ユーザー数:2286

 

第六部 『水着と水とHE∀ting Sφul』 其の六

 

 

第九話『戦女神の行進 二』

呉領 荊州長江中流域 赤壁

解説席

【緑一刀turn】

「みなさんおはようございます♪司会の小喬です♪

三国合同水上演習も二日目。本日は孫呉対曹魏の戦いとなります。

昨日勝った孫呉には精神的余裕も感じられます。

対する曹魏は華琳さまが観戦していた事により秘策を思いつかれたはず。

非常に気になるところです。

では解説の冥琳様、本日もよろしくお願いいたします♪」

「うむ、今日もよろしく頼む。」

 なんか二人ともすっかり慣れてるなぁ。

 解説席は今日もみんな水着姿。大変目の保養になります。

「え~、本日のお客様は昨日惜しくも敗れてしまいました蜀の王『福乳』劉備玄徳桃香様!」

「きゃあ!炙叉ちゃん!胸だけ映すのやめてー!!」

 モニターに手で隠しても隠しきれない桃香の胸のどアップが映り、観客席と出陣待ちの両軍からも歓声が上がった。

「『はわあわぺたん()軍師』諸葛亮孔明朱里!龐統士元雛里!」

「はうぅ・・・昨日負けてるから言い返せません・・・・・」

「あうぅ・・・恥ずかしいので・・・その・・・そんなに映さないでぇ・・・・・・」

 朱里と雛里の真っ赤になってモジモジした姿がモニターに映っている。

「(み、御子様・・・・・こ、この二人お持ち帰りしたい・・・・・)」

 カメラを担いだ炙叉が鼻を押さえて、鼻血を堪えていた。

「(そんな事出来るわけないだろ!!)」

「そして三皇帝のお一人!緑北郷一刀さまー♪昨日はお疲れ様でした。」

「うん、特に精神的に・・・・・あ、緑北郷一刀です。よろしく。」

 シャオに連れられて行く時の桃香たちの縋る様な視線が辛かった・・・・・。

「それでは早速ですが冥琳さま。今日の戦いの予想は?」

「その前に規範の追加があったのでその報告と説明をしよう。」

「規範の追加ですか?どのような物でしょう。」

「昨日の華雄のことがあるのでな。

北郷を攻撃し当たった場合、その攻撃した将兵の所属する軍はその時点で負けとする。

この演習の目的は北郷の救出、及び守護だ。主題を蔑ろにする行為として当然の判定だろう。

但し、北郷は特別に長江に落ちても脱落の判定は無い。

敵から逃すために敢えて船から突き落とす事も有るからな。

この場合は攻撃ではなく守護の為の行いと認められる。」

 まあ、実戦ならそういう事も有るだろう。

 放り込まれる位ならまだいいけど、武器で叩き落とされるのは勘弁して欲しいところだな。

「あれ?でもそれだと一刀さまが水中にいると手も足も出せなくなってしまうんじゃ・・・?」

「うむ、だから北郷が水中にいる場合のみ、将兵は救助行為として水に入る事が出来る様になった。

極端に言えば北郷を抱え、泳いで本陣に連れ帰る事も出来るわけだ。」

 水着の女の子に密着しながら水中移動・・・・・・・・うん、良いんじゃないか♪

「まあ、抱えて泳ぐのは辛いだろうから、浮きにでも括りつけて船で引っ張るくらいまでなら救助行為と認めてもよかろう。」

 ・・・・・どう想像しても罰ゲーム的ビジュアルしか思い浮かばないんだが・・・・・。

「冥琳さま。この追加規範、名前は言えませんが某夏侯惇将軍対策と考えていいのでしょうか?」

 小喬・・・・・某を付ける意味が無い・・・・・・・まあ、お約束だよな。

「確かに某夏侯惇将軍に一番可能性が有る訳だが、他の者も振り回した槍がうっかり当たっても同じだから気を付ける様に。」

 冥琳が特設モニターを通して全軍に伝えると、魏の本陣から何やら騒ぐ声が聞こえてくる。

 間違いなく春蘭だな。遠くてよくわからんけど。

「あ~、今の説明でも良く解って無いようだが、自陣の北郷を殴ったり蹴ったりしても即負けとなるからな。春蘭。」

 冥琳も春蘭の様子に気が付いたんだな。とうとう真名で名指ししたよ。

「今日の模擬戦の予想という事だったが、今回は曹魏がどのような策を用いるのか実に興味深い。

くれぐれも先程の追加規範による判定負け等というつまらない終わりは勘弁して欲しいな。」

「全くその通りですね。では、次に昨日の負け組筆頭三人衆にお話を聞いてみましょう。

昨日負けて悲しいですか?桃香様!悔しい?朱里!雛里!」

「え?えぇ・・・そ、それは悲しい・・・・・かな?」

「悔しいかと聞かれれば・・・・・・」

「くやしい・・・ですけどぉ・・・」

 三人とも突然振られた話題にオロオロしていた。

「なら今日はその気持ちを胸に刻んで、孫呉と曹魏の戦いを研究し尽くすくらいのつもりで語ってもらいましょう♪」

 鋭いツッコミをしてくると思ったら・・・なるほど、小喬は朱里と雛里が解説で話しやすい空気にしたいんだな。

 それなら俺も協力しなくちゃ。

「なあ桃香、俺達は分からない事の方が多いじゃないか。

だからどんどん質問していけば観客の人たちへの説明にもなると思うんだ。」

「うん、そうだねご主人様♪ようし!どんどん質問してしっかりお勉強するよー!!」

 うん♪桃香が前向きになっていつもの笑顔が出てきたな。

「はい♪桃香様も笑顔になった所で、緑一刀さま。ひとつお伺いいたします。」

「うん♪何かな?」

 小喬が笑顔で聞いてきたので俺も笑顔で返す。

「この追加規範により一刀さまたちは、事前の会議で許緒将軍季衣が言ったみたいに放り投げられる可能性が出てきましたが、覚悟は出来てますか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うそぉ?」

 

 

 

 

孫呉本陣

【赤一刀turn】

 本陣に設置された簡易の玉座の前に蓮華が立ち、居並ぶ将と士官に檄を飛ばす。

 

「皆!昨日はよく働いてくれた!昨日の勝利は将兵一丸となったからこその物だと私は確信している!」

 

 全員が声を上げ応える。

 

「だがその勝利に慢心するな!本日の相手は曹孟徳率いる魏軍!必ず何か策を弄してくるに違いない!」

 

 ここで蓮華は南海覇王を抜き放ち、曹魏本陣を指す。

 

「我らの力を示せ!孫呉水軍の恐ろしさを見せつけろ!曹孟徳の策をその牙で食い破れ!!孫呉が最強である事をこの模擬戦で大陸中に知らしめるのだ!!」

 

 蓮華の横に立つ俺。更にその横には雪蓮とシャオも将兵を睨んでいた。

 

「戦え!孫呉の強者共よ!!囚われの紫一刀を救い出せ!!」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!』

 

 将兵は雄叫びを更に大きく震わせた!

 

「総員!配置に付けっ!!」

 号令一下、将も士官も駆け出し乗船して行った。

 シャオも自分の船に向かったが、雪蓮だけは俺と蓮華の所に残っている。

「今日は周周と善善を連れてきてないのね。」

「あれは飽くまでも恋専用の策だと穏が言ってましたから。代りに今日は近衛百人を配置してます。」

 雪蓮は本陣の艀を見回し、ちょっと難しい顔をする。

「どうしたんだ雪蓮?何か気になる事でもあるのか?」

「そりゃあねぇ・・・あのひねくれ大覇王様が昨日の模擬戦を見てたんですから。」

 ひねくれ大覇王って・・・・・前の外史に比べるとかなりマシだと思うんだけど・・・・・。

 それを雪蓮に言ってもしょうがないか。

「姉様!穏はそれを踏まえた上で策を立てたのですよ。私も華琳の策を食い破れと言ったばかりではないですか!」

 蓮華の口調は強いけど、敬愛する姉で前王の雪蓮がああ言えば不安になった様だ。

 態度にしっかり出てる。

「う~ん・・・・・まいっか♪私が居るんだからそう簡単には華琳の思惑通りにはさせないわよ♪それじゃ、行ってくるわね。」

 そう言い残して雪蓮は自分の船に行ってしまった。

「何だったんだ、今のは?」

「姉様の事だから何か感じているみたいだけど・・・・・私にはあの才が無いみたいだから・・・・・」

「その代わり蓮華には国を治める才が在るじゃないか。雪蓮もそれを確信したから家督を任せたんだしな。」

「むしろ押し付けられた気がするけど・・・・・」

 溜息と共に呟くけど、直ぐに俺の顔を見て笑顔になる。

「ありがとう、一刀♪でも模擬戦前でそれは余り慰めにならないわよ♪」

 冗談が言えるくらいにはリラックス出来たみたいだ。

 さてさて、俺が蓮華にしてやれるのはこれくらいまでだな。

 俺にとっては攻めてくる曹魏も俺の救出って目的なんだから味方な訳だ。

 ホント、困ったルールだよ、これ。

 

 

 

 

曹魏本陣

【紫一刀turn】

本陣に置かれた仮の玉座を無視して、華琳は将を集めて円陣を組むように最後の打ち合わせをしていた。

「みんな、いよいよ私達の出番よ。覚悟はいいわね♪」

 和やかに話す華琳だがその体は黒いマントに包まれていた。

 この炎天下にすごく暑そうだけど大丈夫かな?

「秋蘭には昨日の桔梗の様に、最初に祭との弓比べをして貰う。任せたわよ♪」

「御意。祭に一泡吹かせてやりましょう♪」

 うわ、凄い自信だ。昨日の祭さんと桔梗の応酬を見て、ここまで言えるなんて。

 涼しい顔の秋蘭の水着は蛍光イエローの紐ストラップ三角ビキニ。これで弓を引くって、もし弦が胸に当たったら一発でポロリしちゃうぞ。

「桂花、風、稟!この戦は貴女たちの采配が鍵よ。曹魏に智在りという事を思い知らせてあげなさい♪」

「「「御意!」」」

 ここでもハードルを上げてくるねぇ。

 でも三人共、怖気づくどころか華琳の期待を受けてやる気満々だな。

 桂花の水着はピンクのスリングショット。

 風の水着は水色のビキニ。

 稟の水着は赤のセパレーツ。

 ロリ体型の二人がセクシー系で、スタイルのいい稟が大人しめなのが興味深い。

 稟はあのスタイルなのに何で貧乳党に入ってたんだろう?不思議だ。

 桂花のは華琳が選んだって言ってたな。そうじゃなけりゃきっとパーカーとパレオで身体を隠してたに違いない。

「特に稟。今は貴女を刺激しないためにこの外套を羽織っているけれど、今日の戦いで勝ったら・・・・・ふふ、楽しみにしていなさい♪」

 ちょ、華琳!そんな事言ったら余計に稟の妄想を掻き立てるだろ!!

 俺の妄想もだけど・・・・・。

 お、意外にも稟が耐えている・・・・・というか、既に妄想が突き抜けて戦いに勝つ作戦を練る方に頭がフル回転してるって感じか?

 目が血走ってて恐い・・・・・。

「春蘭、霞、季衣、流琉、凪、真桜、沙和。貴女達は雪蓮、思春、明命、小蓮を全力で相手してあげなさい。亞莎も引きずり出せれば尚いいわね♪」

『御意!』

 春蘭は稟に対して嫉妬していたが、雪蓮の名前が出たらそちらに意識が向いた様で急に嬉しそうになった。

 雪蓮とまともにやり逢えるのは春蘭か霞だけだろうからなぁ。

 春蘭は昨日とは違う赤い三角ビキニに変えてきた。秋蘭と色違いの同じ形の物だ。

 霞の水着は昨日と同じ、紺碧に白文字で『遼来来』と書かれたワンピース。

 後、凪も昨日と同じ水着だ。

 真桜と沙和はさっきまでぶつくさ言ってたけど、さすがに腹を据えた様だ。

 真桜の水着は黒の三角ビキニ。真桜は普段からトップが三角ビキニだけど今日のは何かシースルーっぽいような・・・・・ボトムもいつものローライズではなくハイレグにしてるし。

 沙和の水着は蛍光ピンクのハイレグワンピース。ハイネックだけど胸とお腹の二箇所がハート型に空いている。

「それから、美羽と七乃の動向にも注意しておきなさい。以前の演習の二の舞にならない様にね。」

 七乃の奇襲は侮れないと、華琳も感じてる様だ。

 まぁ、あんな経験すれば誰もが思うか。

 季衣と流琉が真剣に頷いていた。

 二人はお揃いのビキニで赤と青と白のストライプを着ていた。

 

「それでは皆、配置に付け!孫呉を翻弄するわよ!!」

 

『応っ!!』

 

華琳と俺を残して船に向かって走っていく。

「・・・・・あの子達の走る姿を前から観たいって顔してるわよ。」

「うお!ヤバイ!!」

 慌てて顔を手で隠すと、華琳がクスクス笑い出した。

「今更隠したって遅いわよ♪むしろ一刀がそういう反応をしなくなったら、そっちの方が心配だわ♪」

「返答に困るお言葉ありがとう・・・・・・・・だけど華琳、模擬戦直前だってのにご機嫌だよな?」

 そう、俺の目には華琳がはしゃいでいる様に見えた。心の底から楽しんでいる様に。

「模擬戦と言っても遊びの様なモノでしょ。極力怪我人が出ないよう配慮してるのだから。」

「遊び・・・かなぁ?」

「戦乱の頃に比べれば充分遊びでしょう。」

「そりゃ、実戦と比べたらそうだろうけど・・・」

 スポーツと見るには過激すぎるだろ。

「事故が起こらないように気は引き締めるけど、折角だから楽しみたいでしょ♪一刀は楽しくない?」

 そんなの決まってる。

「楽しいさ!すっごくな♪」

「ならしっかりみんなを見てあげなさい!あなたに良い処を見せたくて張り切っているのだから。」

「ああ、じっくり拝ませてもらうよ。」

 そう言って頷くと華琳の目がジト目になっていた。

「一刀が言うと、何かイヤラシイわね・・・・・」

「結局それかよ!!」

 

「(模擬戦は遊びでも女の戦いは真剣勝負よ!一刀♪)」

 

 

 

 

特設モニター

【エクストラturn】

 昨日と同じ時刻に戦闘開始を告げる銅鑼が鳴り響いた。

『さあ!遂に戦闘開始の銅鑼が鳴り!

数え役満★しすたーずの舞台の音楽と共に両軍の船が出航して行きます!』

 モニターの分割画面に、進む両軍の船が映し出される。

 救護班である蜀の船にいるカメラマンからの映像だ。

『本日も弓による一騎討ち、黄蓋将軍祭さまと夏侯淵将軍秋蘭様の戦いから幕を開ける模様です。え~両将軍の映像は出せそうですか?

あ、祭さまが映りました♪艨衝(もうしょう)の衝角に立ち曹魏の船団を睨んでいます

祭さま格好いい~♪

対する秋蘭様は・・・・・えっと・・・あ、楼船の第一甲板に居ました!』

 

『あーーーーーーーっ!!』

 

 突然桃香が叫んで立ち上がった。

『お、おい桃香!どうしたんだ!?』

 解説席の全員が驚いている中、隣の緑一刀が声を掛けた。

 

『華琳さんが紫のご主人様を連れて船に乗っちゃったよ!』

 

『ええ!?曹魏本陣の映像出ますか!?

はい、ありがとうございます!

こ、これは、確かに曹魏本陣に紫一刀さまと華琳さまの姿がありません。

というか、曹魏本陣には仮の玉座二脚以外何もありません!完全にもぬけの殻です!!』

 この映像を見て冥琳、朱里、雛里も立ち上がった。

『華琳はその策で来たか!』

『はわわ!』

『あわわ!』

『あの・・・冥琳さま、朱里、雛里、これって規範上問題ないの?』

『無い!王と北郷の所在地に関する規範は『常に牙門旗と共にあり所在を明確にする事』としか無い。』

『牙門旗?

あ、今本陣から出航した楼船の上に二(りゅう)の牙門旗が上げられました。

紫紺の曹旗と十文字旗!華琳様と紫一刀さまの牙門旗!そしてそこにはお二人の姿もっ!!』

 

 

曹魏軍船団旗艦

【紫一刀turn】

「ふふ♪驚いてるわね♪」

 華琳は特設モニターを見上げてご満悦だ。

「さあ!これからもっと解説席も、孫呉も、蜀も、そして観客も度肝を抜いてやるわよ!」

 そう言って華琳は今まで羽織っていた黒マントを開いた。

 そして最初に度肝を抜かれたのは俺だった!

「華琳!その水着って・・・・・」

「これの意匠ってあなたたちでしょう、一刀♪」

 華琳が身に付けていたのは昨日とは違う水着。

 色は昨日と同じ黒だが今日のは黒エナメルのマイクロビキニ。

 そこにロングブーツとロンググローブ、腰にムチを吊るしている。

 

『あぁ!あれはあたしと春蘭が選んだ水着!!』

 

 モニターから聞こえてきた小喬の言葉で合点がいった。

「あの二人よく見つけ出したな。」

「私の寸法にピッタリだったって事は元々私用に意匠したものでしょう?何でお店に並んでたの?」

「華琳に似合う物をって三人で造ったんだけど、出来上がったらあんまり過激だったからさ・・・俺たちが持って行ったら春蘭にまたぶっ飛ばされると思って。あの店にはバラバラに配置して貰ったんだ。秋蘭あたりが組み合わせて華琳に持って行ってくれるかもって一か八かの賭けだったけど・・・・・」

 惜しいことに後一つ足りない!と、思ったら。

「最後はこの帽子で揃ったかしら♪」

 アメリカンポリス風の帽子を斜めに被って、片目で見上げてくる。

「う、うん・・・・・・想像以上に似合ってる・・・・・だけどよく俺たちの意匠だって気が付いたな。」

「名前をしっかり刺繍しといてよく言うわね。」

 普通じゃ気が付かないような場所にしてあったんだけど・・・・・。

「驚かせるのはこの水着では無いわよ。」

 いや、みんなも充分驚いたと思うぞ。

 

「将は皆、己の旗を掲げよ!!」

 

 華琳の声に曹魏の将が旗を挙げた。

 

 

 

 

解説席

【緑一刀turn】

 華琳と紫の牙門旗に続き曹魏の将の旗が挙がっていく。

「な、何でしょう!この配置はっ!?

先頭を行く楼船の秋蘭様の旗は判ります!

それに随伴する露橈(ろとう)に軍師荀文若の旗!

右翼の露橈に軍師程仲徳の旗!

左翼の露橈に軍師郭奉孝の旗が有ります!

しかし!残りの武将の旗は全て艦隊旗艦!華琳様と紫一刀さまの乗る楼船に上がっていますっ!!」

 

「ここまでするのか!?華琳!」

「「・・・・・・・・・」」

 

 冥琳がここまで驚くとは・・・・・朱里と雛里もいつもの「はわわ」と「あわわ」が出ないほど驚いてるし。

「あの~・・・・・冥琳さん、朱里ちゃん、雛里ちゃん・・・・・誰か解説してくれないかな~・・・・・」

 桃香が困りながらも笑顔で促した。

「あ、ああ、スマン。つい取り乱した。先ずは両軍の陣形から説明しよう。

注目すべきは両軍の楼船の数だ。お互い二隻の楼船を配備している。

楼船の特徴は多くの人員物資を運ぶのに適し、矢からの防御力も高い。

当然、火矢に対してもだ。

更に楼船はその大きさから揺れも小さい。

朱里と雛里が昨日は七隻の楼船を用いたのはこの為だろう?」

「は、はい!蜀の兵はまだ船に慣れきっていなかったので」

「だがその段階で船戦としては奇策だ。

ついでに船戦の本道についても簡単に説明しておこう。

一に斥候による敵艦隊の把握。

二に艨衝の衝角による突撃での楼船撃破。

三に先登(せんとう)による突撃で兵を乗り移らせ白兵戦。

四に露橈の到着で大勢の兵の乗り移りによる敵船の制圧。

五に赤馬での敗走船の討伐となる。

今回の模擬戦では五は考えなくていいから赤馬も全て突入に使える。

基本戦術は相手の小型船を近付けず、自軍の船を相手の大型船に突入させる事だ。

両軍は相手の艨衝、先登、露橈の足を止めるため、結局は中型船と小型船同士の戦いとなるわけだ。

曹魏軍は現在蜂矢陣、孫呉軍が偃月陣。

今の段階では本道に沿った行軍だが、やはり紫北郷が楼船に乗り込んだ事で事態が大きく変わった。

先程の追加規範で北郷に対し攻撃が出来なくなっっている。

つまり、北郷の乗る船には矢を放つ事が出来無くなったのだ。」

「ええっと・・・・・つまりそれって・・・人質ですかぁ!?」

 驚く桃香に朱里は説明を引き継ぐ。

「一概にそうとも言えないんです。もし、私達が華琳さんと同じ策を取った場合、愛紗さんを始めみなさんの士気が格段に上がるのはお分かりだと思います。」

 桃香が少し考えている。多分俺が乗船した時の事を想像しているんだろう。

「・・・・・・うん。すごい張り切っちゃうね♪」

「これでまず士気高揚のためという言い訳ができます。更に、楼船は冥琳さんの説明にも在った様に弓への防御力が高いため然したる優位条件になりません。」

 続いて雛里も説明する。

「むしろご主人さまが敵陣に近づく事になるので不利な条件の方が大きくなります。孫呉には思春さんと明命さんという隠密行動に特化した方がいらっしゃいます。混戦状態になって連れ去られたら取り返す余裕がまるで有りません。」

 それはつまり曹魏にそのまま当てはまる。

「今の状況は華琳が雪蓮達に挑戦状を叩きつけたのと同じだ。

来るなら全力で来いとな。

本道でありながら最大の奇道だよ。」

 

 華琳のヤツ、盛り上げてくれるなぁ・・・・・。

 

 

 

 

孫呉軍船団艨衝

【エクストラturn】

 祭は特設モニターを横目に射程距離へと進んでいく。

「冥琳の奴め、自分は中立だ等と吐かしておきながらしっかり孫呉の心配をしておるわ♪」

 微笑みながら祭の眼は秋蘭の乗る楼船を捉える。

「早いところこいつを片付けて策殿と合流するか。問題はその後じゃな・・・・・果して曹魏は亀のように守りを固めるか、それとも誘い込む口を開けるか?」

 考えている事を口にすることで己の思考をはっきりさせる。

「守るならわざわざ前に出んか・・・・・ん?秋蘭の姿が見えんな?」

 もう少しで射程距離だというのに甲板に秋蘭の姿が見えない。

 訝しみながらも己の弓『多幻双弓』に矢をつがえる。

 そして視線を上げると飛来する矢があった!

 

「なんじゃとぉ!?」

 

 矢は見事に祭の足元、硬い衝角に突き立った!

 昨日の桔梗の様にただ届いたというのとは違う。威力は充分だ。

「一体何処から・・・・・そこか!」

 秋蘭は帆柱の上にある物見にいた。

 高さを使い距離を稼いだのだ。

「ふふ、今日のところは儂の負けじゃな。しかし、返礼はしておかんとな。」

 祭は狙いをつけて矢を放つ。

「よし!船を策殿の船に向けろ!儂はあちらに移乗する!」

 放った矢の行方を気にも止めず指示を出した。

 

 

曹魏軍楼船

 

「官渡で袁紹軍の使った櫓の真似のようで多少気分は悪いが、致し方あるまい・・・・・おっ!」

 帆柱の物見にいる秋蘭に向かって祭の放った矢が飛来する。

 その矢は物見台のすぐ下に突き立った。

「・・・流石は祭・・・・・ん?祭の艨衝が進路を変えたか。素早い決断だ。

だがこれでこちらもやり易くなったな。

速度落とせ!我が艦はこれより荀彧船団の支援に入る!」

 楼船の速度が落ちると桂花の船団がその前に展開する形で陣形を整えた。

「さて、穏は華琳様の策をどこまで読めるかな♪」

 

 

孫呉軍船団旗艦

 

 最上甲板に机を置き、そこに象棋盤と駒で模擬戦の状況を再現しながら穏が考え込んでいた。

「穏様!ど、どうしましょう?私も雪蓮様と共に突撃した方が・・・でも、そうなると艦隊の指揮が・・・・・」

 亞莎がオロオロと迫り来る曹魏軍と象棋盤を交互に見ている。

「ふう・・・・・亞莎ちゃんは雪蓮様と合流してくださ~い。」

 穏の考えがまとまった。

「敵旗艦に乗り込んで紫一刀さんの救出をおねがいしま~す。」

「しかしそれでは・・・・・」

「向こうは武将が七人、こちらは亞莎ちゃんが入って六人。

戦力はこれで拮抗すします。

艦隊戦は、船の練度はこちらの方が上ですし、七乃さんも上手くやってくれますよ~♪

ちょっと私が忙しくなるけど大丈夫ですから~。」

「は、はあ・・・・・」

 穏はいつもの様にのんびりと言うが、ちょっとどころの忙しさでは無いのは亞莎にも充分解っていた。

 だがここでグズグズしていては勝機が無くなるのも事実。

「分かりました!行ってきますっ!!」

「あ!亞莎ちゃ~ん、伝言もお願いします~。」

「は、はい!何でしょう?」

 走りかけた足を止め、振り返る。

「春蘭さんと霞さんの足だけは確実に止めてくださいと雪蓮様にお願いして下さいね~♪」

「はい!了解しました!!」

 返事をした亞莎は階段を使う間も惜しんで、下の甲板に飛び降りた。

「これで勝負は五分といったところですかねぇ?後は運を味方に付けるしかないですね・・・」

 

 

 

 

曹魏軍船団旗艦

【紫一刀turn】

 船団による戦闘が始まった。

 船同士をぶつけ、乗り込んでの白兵戦。

「なあ華琳。」

「なに?一刀。」

 俺と華琳は楼船の最上甲板で、武将たちと一緒に周りを見ていた。

「官渡の時に使ったあの弩砲。あれを積み込んだ船も開発してたんだろう?」

「ええ、でもあれは威力が有り過ぎて模擬戦では使えないわね。

それにあれは三国内の秘密兵器よ。

こんな観客の前ではそれこそ使えないわ。」

「・・・俺たちの居た世界じゃさ、艦同士の戦いをあの弩砲より強力なやつで撃ち合うんだ・・・・・相手の姿も見えない距離から・・・・・」

「ふぅん・・・・・それで?」

「撃たれれば死ぬっていう恐怖は有っても、人を殺しているっていう感覚がみんなや兵達より希薄なんじゃないかって思えてさ・・・・・ただ物を壊しているって」

「そうかしら?」

 俺の言葉を遮って華琳が言う。

「この大陸にも人の命を何とも思わない連中は居たでしょう?盗賊とか洛陽の官僚共とか。

なら、一刀たちの世界にも人を殺す事の重さを分かって、それを背負って生きる覚悟で戦う将兵はたくさん居るわよ。」

「そう・・・・だよな。」

 華琳の言葉だからかな?説得力があるな。

「それよりも気になったんだけど、沙和の訓練でやっている海兵隊というのは船に乗り込む兵よね?撃ち合いで戦うのに白兵戦を行う兵が必要なの?」

「上陸部隊だよ。船だけじゃ敵地の制圧は出来ないだろ?」

「成程ね、それじゃあ・・・」

 

「敵艨衝が一隻!こちらに突っ込んで来ます!!」

 

 見張りの兵の声に俺と華琳、そして武将達もそちらに向う。

「予想通り亞莎も・・・あら、祭まで釣れたわね♪・・・さすがに蓮華と赤一刀は居ないか。」

 華琳は楽しそうに向かってくる艨衝を眺めてから、みんなを振り返った。

 

「さあ、雪蓮達を迎えてあげましょう!

天下一品武道会とはまた違う武将同士の戦いを観客に見せてあげなさい!!

そして曹魏こそが最強であることを見せつけなさい!!」

 

『御意!!』

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

ひねくれ覇王様がかなり楽しんでいらっしゃいます。

姿は女王様ですがw

 

華琳と冥琳が語りまくってくれたおかげで

バトルシーンまでたどり着けませんでした。

次回はひたすら戦う事になりそうです。

 

尻好きと追っかけの戦いも次回になってしまいました。

他の変態達の動向と合わせて書きたいと思いますw

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
17
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択