No.460146

エクリプスのお話

橘つかささん

ゆらいこさんに素敵な絵をいただいたので、彼女にまつわるお話を少し。

2012-07-27 02:50:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1093   閲覧ユーザー数:1084

 ゆらいこさんに素敵なEclipseを描いていただいて・・・

 

★エクリプスについて(初見の方向けの彼女の生い立ち)

 

 彼女は人間と見分けが付かないほど精巧に作り込まれた「ガイノイド」です。

 Eve Biotech Laboratory という、半官半民の組織が彼女、エクリプスの生まれ故郷です。彼女の正式名称は「ER509-1 Eclipse」。彼女のデザインを担当したデザイン工房では「エクリー」と呼ばれ、彼女の筐体を担当している技術工房では「えく」と呼ばれています。中には「えくたん」と呼ぶ職員も居ます。

 基本的な構造は、伊武れいシリーズと同様、陽電子頭脳を搭載し、必要な電力はバイオセルという糖で発電するジェネレータでまかなっています。

 合成蛋白で出来ている人工筋肉は糖と酸素の力で、電気刺激を受けて収縮し、力を発揮します。人工筋肉に収縮に必要な酸素と糖を運ぶための白い「パーフルオロケミカル」が全身を流れ、必要な養分を筋肉に届け、動くことによって発生する熱と二酸化炭素を回収し、そのまま人間の肺に似たガス交換機兼ラジエータから放出します。

 彼女は設計上は10人力程度の出力がありますが、リミッターが内蔵され、人間の女の子と殆ど変わらないか、むしろ非力に調整されています。

 彼女の陽電子頭脳のコア部分のプログラムは、10年前に建造された愛玩用試作ガイノイド伊武れい50、正式名称「Eve Ray50」が、デモという名の下に一般家庭を回って得られた情報がベースになっています。

 量産化の先行試験タイプだった「れい50」を元に、量産型の「れい501」が全部で10体建造されました。れい50を通して得られた人間の好感度のデータから、それらは第二次性徴発現直前の女の子をイメージしてデザインされ、概ね10歳くらいの「男の子」のようにも見える中性的な雰囲気になりました。ちなみに、れい50は概ね12歳から14歳の女の子のデザインだったので、女性が嫌悪感を抱くことがたびたび散見しました。

 この501をベースにし、既に決まっているオーナーの嗜好が反映された筐体が509シリーズです。501が1体12億円であるのに対し、509は15億円程度になります。全部で3体が建造されました。509-1エクリプス、509-2スコル、509-3ハティです。エクリプスはIT企業の社長のオーダーで、14歳から16歳程度の女の子らしい体型のプラチナブロンドにブルーアイに設計されました。某国大使館に納品予定のスコルは16歳程度のグラマラスなブロンドのグリーンアイ、大手総合商社社長に納品予定のハティは14歳程度のすらりとしたプラチナブロンドのレッドアイでした。

 それぞれ建造された段階では陽電子頭脳に基本的な知識はインストールされているのですが、体の制御もままならない赤ちゃんのような状態です。

 「とつきとうか」と呼ばれる訓練を経て、普通の生活が送れるようになるまでまるで人間のリハビリのように訓練されていきます。

 体の制御が出来るようになると、プールや海、キャンプ、運動会や遠足など、人間の子供と同じような様々な学習を、10倍という猛烈なスピードでこなし、建造後約一年で納品の日を迎えます。

 

 この納品の日、事件が起こります。

 

 501達や、ハティやスコルが順調に納品されていくなか、エクリプスは納品拒否で返品されてしまいす。

 エクリプスも早くオーナーの役に立ちたくて、納品の日を指折り数えて楽しみにして居ましたが、理由も告げられないままの納品拒否。

 しかも、契約条項では、先払い代金の返金はないことで了承を得ていますが、オーナーに15億円の代金も全額返金されます。

 完全にラボ側の落ち度にしか見えないこの事件で、自分自身に問題があったのではないかと、エクリプスは心に失調を来してしまいます。

 そして、オーナーに裏切られたショック。

 今まで大好きだった人間に不信感が募ります。

 やがて彼女は人間不信に陥ってしまい、極度の人間嫌いにさいなまれてしまいます。

 彼女は人間を好きである心を取り戻そうと、一生懸命努力します。本からの知識などで人間を理解しようと努めますが、初顔合わせの時の優しかったオーナーを忘れることが出来ません。

 彼女達の陽電子頭脳には消去機能がありませんでした。

 つまり、陽電子頭脳の寿命と言われる2万年間、この障害が消えてなくなることはないという事を指します。

 汎用の筐体でない、カスタムメイドされた筐体。

 心の失調という故障した筐体。

 故障した商品を売り出すわけにもいかず、彼女はラボでの生活を強いられます。

 

 と、ここまでが2012年7月時点で公開されている彼女にまつわるお話です。

 この先、彼女のお話は、「Eclipse R-1」の「Rシリーズ」で展開されていく予定です。

 今年の夏コミ参加作品の「砂のライヲン」、時間軸はちょうどこの段階です。

 

 以上、ゆらいこさんの、素敵なEclipseの絵に対する、「彼女の笑顔が何よりも好きな」橘からのお礼です(^_^)V


 
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