No.452164

魔法少女リリカルなのはmemories 第一章 消された記憶(メモリー) 第四話

J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

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2012-07-13 18:59:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2451   閲覧ユーザー数:2362

 なのははシャマルに言われて一日病院の病室内で安静にしており、翌日の昼頃には退院する事が出来たのだった。

 しかしそれは別になのはの寝不足が治った訳ではなかった。あの夢を見続ける限りなのはに安息に眠れる事が出来ず、それはシャマルやフェイトにもどうする事もできるわけではなかった。

 睡眠剤を出しておくというのもあったが、それは逆になのはに何度も同じ夢を見続けさせるという事であったので、怖がらせてしまうかもしれないという可能性があった。寝たくなんて無いとまで思ってしまったら最悪であったので、睡眠剤をなのはに出さない事にしたのである。

 これまでの内容を見て分かるとおりこれと言った対策が無い。しかしなのはは昨日フェイトに「私は大丈夫だから」と告げていた。なのはが言ったその言葉は別に無理をすると言う意味ではなく、あの夢を見ようが自分で何とかしてみせるという意味である。どの道これはフェイト達に何とか出来る様なものではないと分かっているので、なのはは自分で何とかしてみせると思ったのである。

 そして今日、なのははどうしてあの夢を毎日のように見るのかという原因を知る為に、フェイトと一緒にユーノが居る無限書庫に行こうとしていた。

 

「なのは、一応聞くけど大丈夫?」

 

 病院の外でフェイトがなのはを待っていると、なのははやって来てすぐに様態を確認していた。

 しかしフェイトはなのはを見かけてすぐ顔を見たときに、元気がないのかを知っている。それを知っているからなのはがまた無理をして大丈夫かというのではないかと思ってかくにんしていたのだった。

 

「本当は大丈夫だと言いたいのだけど、今日も余り眠れてないの」

「そう……」

 

 だがその心配は全く必要なく、なのははフェイトに原因を明かしていたので本当の事を言うのだった。もうフェイトに隠す意味も全く無くなってしまったし、真実を言った方が逆に心配をかけてくる事は無いとなのはは思ったのだ。

 嘘をつかなかったことを確認したフェイトはそれを聞いてほっとしていた。だが半面、自分は何もできないのかと思ってしまう。どう足掻いたとしてもあの夢は見てしまうし、それはどうしようにも無い事であったので、何もできないことに悔やみきれなかった。

 そしてまたフェイトはなのはを少し心配にしていたのになのはは気づき、フェイトに心配を余りかけないようにする事に心掛けるのだった。

 

「大丈夫だよ。着くまでの間はフェイトちゃんの車の中で少し寝かせてもらうことにするから。またあの夢を見てしまう事になるけど、寝ないよりはましだと思うから」

「そ、それなら良いのだけど……大丈夫なの?」

「大丈夫も何も寝ないとまた昨日みたいに寝不足で倒れちゃうから仕方ないよ。それじゃあそろそろ行こう。ユーノ君を待たせているから」

 

 フェイトはなのはにそう言われてフェイトとなのははフェイトの車に乗り、それから車を発進させて無限書庫がある方に向かった。

 それから少し運転すると、やはりあまり眠っていなかったようで、いつの間にかなのはは隣で眠いっていた。そしてさらに運転すると、なのははうなされ始めていた。別に嫌な夢でも悪い夢でもないが、何度も同じ夢を見ると怖くて恐ろしく思ってしまうだろうとフェイトは思っていた。

 そんななのはを見ていて、フェイトはなのはに何かしてやってあげたかったがさすがに運転中という事なので、たまになのはの方に顔を向ける事しか出来なかった。

 

「なのは、もうちょっとだからね。ユーノに会えば原因が分かると思うから」

 

 なのでフェイトは寝ているなのはにこういう事しか言えなかった。運転しているから仕方ないとは思ってしまうが、うなされているのを見ると自分に対する苛立ちが募っていくだけだったのである。

 それからさらに時間が少し経つと、なのはは目を覚ました。それを確認したフェイトがチラッとなのはの様子を見ると、先ほどより顔色が悪くなっており、そしてなのはが何かを呟いていることに気づいた。

 

「……もう、嫌だ。眠りたくない。誰か助けて」

 

 何を言っているのかとフェイトは耳を澄ませると、そんな言葉が聞こえてきたのだった。なのはは眠りたくは無いというほどに追い詰められていたのである。

 フェイトはこんなになのはが助けを求めているのに、何も出来ない自分が悔しかった。また毎日こんな夢を見ていたのに気づかなかった自分がさらに悔しくしていて、ハンドルを握っている両手をさっきより握り締めていた。

 数分してなのははいつも通りの表情に戻っていたが、それは自分が周りに迷惑をかけないで我慢しているだけだった。たとえフェイトにばれたとしても、余り心配をかけたくなかったのである。

 それにすぐに気づいていたフェイトはなのはに話しかけるのだった。

 

「なのは、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

 

 もちろん嘘だとフェイトはすぐに思った。さっきの顔を見てしまったら、嘘だって誰でも分かってしまうだろう。フェイトはもう自分に隠す必要は無いはずなのにどうして隠してしまうのかと思ってしまった。

 

「なのは、私には我慢をしなくて良いんじゃないの。私にはもう嘘だって分かっているから」

「……やっぱりばれちゃってたか。私ってほんと駄目だよね。フェイトちゃんに私が見ている夢の事を知っていても隠そうとしちゃう癖が出てしまうの。今ではこんな私が許せないでいる。打ち明ければ気が楽になるのにそれを隠そうとする私が!」

 

 たとえフェイトが理由を知っていても、それでも隠してしまう自分をなのはは許せないでいた。それはなのはが言った最後の言葉にこもっていた。

 

「なのは……」

 

 それを聞いたフェイトはさらに悔しくなっていた。なのはが苦しんでいるのに何も出来ない自分は本当に何も出来ないのかと思うほどに。

 なのでフェイトは何も出来ないのなら、早く原因を知るべきだと思うのだった。早く知って、それで何かができる可能性があるかも知れないと思っていた。

 

「なのは、少しスピードをあげるから気をつけて」

「あ、うん。分かったなの」

 

 フェイトは少し車のスピードをあげて急いでユーノが居る無限書庫に向かう事にした。なのはを早く助けたい。その事がフェイトを一番に動かしていた。

 そして数十分後、なのはを乗せたフェイトの車は無限書庫の入り口に着き、二人はすぐに降りて無限書庫の中に入っていくのだった。


 
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