No.449350

魔法幽霊ソウルフル田中 ~魔法少年? 初めから死んでます。~ シードベルト(幽霊)な3話

ちょっと早めに3話投下、序盤はグダグダ進みます。
にじファンではもうすでに投稿しておりますが、感想とかコメントとか来てくれると、狂喜乱舞します。

2012-07-08 21:06:42 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1367   閲覧ユーザー数:1327

あの後俺は、どうすることもできずにそのままなのはちゃんに『憑いて』いくことにしたのだった。

 何もできないにせよ、放っておけなかったからである。

 

 こんな状態が5年も続いて、今ではすっかり守護霊みたいな存在だと思う。

 

 おはようからおやすみまで、あなたの日常を(霊的に)守ります。

……このリリカルな世界じゃ霊的な脅威なんてないんだけどさ。

 

 あ、一応言っておくけど幽霊になったからってすり抜けるのをいいことに性犯罪に走ってなんかないよ?

 いや確かになのはちゃんはともかく美由希さんや桃子さんは美人だけどさ……。

 

 美少女達のお風呂を覗こうとするロマン溢れる紳士諸君! 非常に残念なお知らせがある!

 実を言うとこの体、生きている限り人間が縛られる3大欲求。

 

 食欲、睡眠欲、性欲が無くなっていることが判明したのだ!!!

 

 つまり今の俺はお腹空かない、眠くない、ムラムラこない常に賢者モード状態なのだ、……ふぅ。

 死んでるから仕方ないよね! ちくしょうエロい興味が湧きもしねぇ!

 

「いってきま~す!」

 

「いってらっしゃい、なのは!」

 

 と、ここでなのはちゃんと桃子さんの声が聞こえた。

 いかん、昔を思い出してるうちにもう学校に行くバスの時間になったのか、急ごう。

 

 

 聖祥大付属小学校の通学バスに乗り込むなのはちゃん、運転手さんにしっかりと挨拶をしている所を見るたびに「良い子だなぁ……」と思ってしまう。

 やっぱ挨拶って大事だよね、俺は人にされたことないけど、しても意味ないけど。

 

「なのはちゃ~ん!」

 

「なのは!」

 

 とここでバスの一番後ろの席から、おとなしそうな紫色の髪をした女の子と気の強そうな金髪の女の子がなのはちゃんを呼んだ。

 この二人はなのはちゃんの友達、前者が月村 すずかちゃんで後者がアリサ・バニングスちゃんである。

 ちなみにこの二人も俺には気づいていない、アリサちゃんはともかくすずかちゃんなら……と最初は思っていたものである。

 

 なのはちゃんは二人に挨拶を返してその間に腰をおろす、そして俺はというと……。

 

「ごめんなのはちゃん、マジでごめん」

 

 なのはちゃんの座っている席に体をめり込ませて、両腕でなのはちゃんの肩をがっちりホールドする。

 触れることはできないのだが、なのはちゃんは背中をビクッと震わせた。

 

「うっ……、なんだか寒気がするの……」

 

「だいじょうぶ?」

 

「またなの? まさか無理してるんじゃないわよね?」

 

 確かに触ってないんだけど、なんかこう、幽霊独特の寒気みたいなのが走るみたいなんだよな俺……。

 しかし、これはどうしても必要なことなのだ、なぜなら――

 

 ガーッと、バスの扉が閉まる音。

 バスが発進した。

 

「くっ……! うおおおおおおっ!」

 

 今の俺はバスから引きはがされないように、必死になのはちゃんの周りにある『なにか』につかまっている状態だった。

 

――そう、幽霊になった俺は物理現象に左右されない。

 つまりバスに乗っても、バスが動いてしまえばすり抜けて置いてけぼりにされてしまう。

 だからこうして、『なにか』につかまらないといけないのだ。

 

 ちなみにこの『なにか』は魔力などではなく、長年なのはちゃんのそばにいた俺となのはちゃんの間にできたつながりみたいなものらしい。

 見えたりはしないが、オーラのようなそれは近づくと俺に対してのみ吸引力を働かせている。

 

 近づけば近づくほど吸引力を強くするので、ちゃっかり利用させてもらっているのだが……。

 

「うえぇ……、こんどは胸が苦しくなってきたような……」

 

「本当に大丈夫!? バスとめてもらおっか?」

 

「絶対車酔いなんかじゃないわよそれ!? 病院に行きなさいって言ってるでしょ!?」

 

「だ……大丈夫だって! ……うえっぷ」

 

 なのはちゃんから出てる『なにか』をちぎれんばかりに引っ張っているので弊害が生じているらしい。

 後ろからじゃ顔が見えないが、きっと真っ青なんだろう。

 

「ふぅおおおおおおおおっ! なのはちゃ、まじ、ごめ……!」

 

 申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが俺も全力でつかまっているので顔は真っ赤である。

 謝るぐらいなら幽霊なんだし飛んでいけよ、とつっこまれるだろうがそうもいかない訳がある。

 

 俺の飛べる速度って、頑張ってもせいぜい5、6キロくらいなんだよね。

 

 いやあ最初はびっくりしたね、いざ聖祥へ! って意気込んでたらガーって行っちゃったんだもん。

「ちくしょう……! 置いて行かれたあぁぁぁ!」ってどっかの錬金術師みたいなこと口走っちゃったし。

 道を知らなくて、ふよふよ迷って、なんとか学校に着いたら入学式終わってて、もう皆帰ってることも知らなかったから学校を浮幽霊してたんだよね……。

 

「ていうか、俺、迷惑しかかけてなくね!?」

 

「うっぷ、こ、これくらいっ! 絶対挫けないの!」

 

 ホントマジごめんなさいなのはちゃん、おはようからおやすみまで、あなたの日常を(霊的に)守りますなんて言ったけど一番の霊的脅威は俺かもしれない……。

 


 
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