No.434550

ダンボール戦機BASTER 第1話

スーサンさん

オリジナルLBX小説です。
短編の寄せ集めをしながら、たまにシリアスを入れる予定で連載します。

2012-06-09 06:19:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:556   閲覧ユーザー数:551

 

 暗く光る電気街の道をセンは歩いていた。

 ボサボサの前髪をかき、太陽の光をさえぎる雲仙としたビル郡を見上げた。

「……」

 ため息をはいた。

「だからね、弁償してくれるだけでいいって、言ってるでしょう?」

「……?」

 小汚い店を見て、センは首をかしげた。

「……」

 店の中を覗いた。

「君が壊したんだから、それを弁償するのは当たり前でしょう? 学校に連絡されたいの?」

「だ、だから……私は壊してないって」

「はぁ!?」

 店の店主の怒鳴り声に青い髪をしたロングヘアーの少女はビクッと涙目になった。

「商品を壊した子は、みんな、そういうの! 故意でも事故でも壊したなら、弁償するのが当たり前でしょう!? そんなのも習ってないの!?」

「ノボル、なにしてるんだ?」

「え……?」

 ノボルと呼ばれた少女は涙目で振り返った。

「セン……なんで、ここに?」

「泣いてるのか?」

「ちょっとね……」

 手を握った。

「この店は品質が悪い。もっといい店を教えてやる」

「ちょ、なんだね、君は!?」

 店主の怒鳴り声にセンは面倒臭そうに振り返った。

「なにをモメてたんだ?」

 ノボルは今に泣き出しそうな顔で答えた。

「私が取ったデクーのフレームが壊れちゃって……」

「弁償しろと?」

「これがそれ」

 「MG」と書かれたデクーの商品箱を見せた。

「確かに壊れてるな?」

 箱を手に取り、ポイッとゴミのように投げた。

「あ、君!?」

 大声を上げる店主にセンは冷たく言い放った。

「弁償する必要はない」

「なに!?」

 床に散乱したデクーのフレームに店主は目を鋭くした。

「物を壊しておいて、弁償する必要はないだと!?」

「このデクーは最初から壊れてた」

「あぁん?」

 チンピラのように店主はセンを睨んだ。

「ワザと壊れてるものを渡して、弁償代を払わせる詐欺だな……」

「ウ、ウチを詐欺店扱いする気か!?」

「詐欺店じゃないなら、商品詐称だな。このデクーはMGじゃなく、NGだ」

「NGって、これ、ちゃんとパッケージにMGって?」

 首を振った。

「中身をNGとMGに取り替えたんだろう。NGのほうがMGより、遥かに安い」

 近くの商品棚を取った。

「これも箱はMGと書かれてるが、NGだ」

 ゴミのようにまた、箱を投げ、フレームが粉々になった。

「しかも品質も最悪だ。これは商品じゃなくゴミだな」

 ため息を吐いた。

「最近、NGをMGとして売る店があると聞いたことがある」

「この小僧!」

 胸倉を掴んだ。

「NGかMGかなんて、関係ねぇだろう! 用は壊したか壊してねぇかだ! 弁償するかしねぇかハッキリしろ!」

「本性を現したか?」

「だからなんだ!?」

 迫力を増す店主にセンは冷たく言い切った。

「弁償する気はない」

「なら、学校に連絡だ!」

「それよりも、警察に連絡したらどうだ?」

「け、警察?」

 店主の顔が顔を青ざめた。

 ノボルも怯えながら言い返した。

「そこまで大事にすることは……?」

「黙ってろォ!」

「ヒィ!」

 大声で怒鳴られ、ノボルは店主に怒られた以上に涙目になった。

「警察を呼んだらどうだ?」

「こ、このガキ!?」

 胸倉を離し、CCMを取り出した。

「タイタン!」

 レジの下からカスタムタイプのタイタンが現れ、ランチャーを構えた。

「さっさと金を出せ! でないと痛い目にあうぞ!」

 ノボルの顔が真っ青になった。

「エ、LBXを出すなんて!?」

「うるさい!」

「ヒッ……」

 店主の勢いに負け、ノボルは黙り込んでしまった。

「さぁ! 金を出すか、それとも痛い目にあうか選べ!」

「お前のこと、好きだ」

「え……?」

 店主の顔がキョトンとなった。

「純粋な小悪党は叩き潰しても良心が痛まない」

 タイタンの身体が真っ二つに裂けた。

「え……?」

 タイタンの身体が爆散した。

「お、俺のタイタンが……!?」

 爆風の中から黒いLBXが現れ、センの肩に止まった。

「それは!?」

「俺のLBXスサノオだ」

 肩に乗った、スサノオを見て、店主にいった。

「スサノオが今までの事を記録したぞ。「脅迫罪」か「傷害罪」は免れないだろうな」

「ま、待て!」

 店主の威勢が嘘のように弱まった。

「べ、弁償はいい! 見逃してやるから、早く帰れ!」

「悪いな」

 スサノオの武器が剣から銃に持ち換わった。

「ノボルを泣かせる奴は俺は許さない!」

 大声を上げ怒鳴った。

「必殺ファンクショォォォォォォォンッ!」

≪ATTACK FUNCTION! ハイパーエネルギー弾!≫

「ヒッ!?」

 店主の身体が青いエネルギー弾に飲み込まれた。

 

 

 数分後。

「ひぃぃ! もう詐欺はしません! だ、だから、裁判だけは!?」

「さよなら」

 警察に連れて行かれた店主を見た。

「……」

「あ、ありがとう……セン」

 ようやく安心したのかノボルは泣き出してしまった。

「……」

 一瞬、涙をぬぐおうと手を伸ばすが、慌てて、ポケットに手を突っ込んだ。

 ポケットから白いハンカチを取り出し、ぬぐった。

「あ、ありがとう……」

 ハンカチで涙を拭ってもらうとノボルはホッとした顔をした。

「ところでなんで、センはここに?」

「LBX製作のための素材を探してたんだ」

「そうえいば、アナタ、趣味でLBXの製作代行をしてたわね?」

「そう」

 店の商品の一つに手を伸ばした。

「こんなところに探してた素材があったとはな?」

 ポケットから小銭を取り出し、レジに置いた。

「買ってくぞ」

「勝手に持っていっていいの?」

「金は払った」

「いいのかな?」

 センの後を追って、ノボルも店を出た。

 

 

 ノボルを家まで送るとセンは面倒臭そうに頭をかいた。

「街に行くときは俺に声をかけろ」

「え……なんで?」

「毎回、お前を助けられない」

「もしかして、心配してる?」

「そうだが?」

「ありがとう!」

 クスクス笑った。

「次は絶対に誘うね!」

「そうしてくれ」

 背中を向けようとするとセンの両頬が掴まれた。

「……?」

 いきなり顔を固定され、センはキョトンとした。

「今日のお礼」

 チュッと唇を重ねられた。

「……」

 さすがにビックリしたのか、センは目を大きく開いて身体を固めた。

 唇を割るようにノボルの舌がセンの口に入り、嬲るように舐めた。

「むちゅ……むちゃくちゃ」

 いやらしい音が一軒家の家の前で響き、ようやく唇を離した。

「ぷはぁ……」

 糸を引くようにお互いの唾が服にかかり、ちょっと汚れた。

「……?」

 不思議そうな顔をした。

「ありがとうね、セン♪」

「それはどうも」

 顔色を変えず、センは踵を返した。

「また、明日な?」

「うん、また明日!」

 足を止めた。

「セン?」

 急に足を止めたセンにノボルは顔を覗き込もうとした。

「今度の休日、暇か?」

「うん? 暇だけど?」

「遊びに行くか?」

「いいの?」

「キスのお礼だ」

「お礼返しだね? じゃあ、海に行きましょうよ! 新しい、水着買ったんだ!」

「わかった。また、明日な」

 帰っていくセンにノボルはふふっと笑った。

「楽しみ♪」


 
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