No.395428

仮面ライダーディージェント

水音ラルさん

第41話:Uの正体/強さの秘密は守る心

2012-03-20 23:14:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:359   閲覧ユーザー数:359

「はあぁぁぁぁ!!」

「おらあぁぁぁぁぁ!!」

 

ディボルグと激しい攻防を繰り返しながら、ジョーカーは風都タワーの屋上まで移動していた。

流石にあそこでは狭すぎる上に、麗奈にまで危険が及んでしまう可能性が高い為のジョーカーなりの考慮だ。

ディボルグはそんな事など関係ないだろうが、とにかく自分を倒せればどうでもよさそうで、こちらの案に乗ってくれたようだ。

 

しかし問題はここからだ。

どうやら克也が変身している姿はパワー重視の様で、その力は軽く見積もってジョーカーの十倍だ。一撃でも喰らえば致命傷になりかねない。

しかし肉弾戦能力に於いてはこちらの方が上で、上手く相手の攻撃を受け流している。

だがこちらは逆にパワーが足りずに相手に決定打を与えられないでいるのだ。

 

(さて、どうしたものかねぇ……)

 

どう決定打を打つか模索していると、ディボルグが槍に備え付けられているカードホルダーから一枚のカードを引き抜き、バックルに装填した。

 

[アタックライド…ラッシュ!]

 

装填すると電子音声が鳴り響き、その途端ディボルグの攻撃速度が格段に早くなった。

 

「うおぉらあぁぁぁぁぁ!!」

「どわっ!?」

 

迫り来る突きを間一髪のところで避け、更にその柄を掴んでこれ以上の追撃を防ごうとするが、今度は力任せに槍を振り回してジョーカーを引き離して放り投げた。

 

「うおぉぉっとととと!?」

 

空中で身体を捻って態勢を立て直してから床に着地すると、仮面の奥で冷や汗を流した。

 

「あっぶねぇ~(パワーとスピードが上がりやがった!?コイツは厄介だなぁオイ!)」

 

相手がカードを使って来る仮面ライダーなのは、ドーパントとして操られていた時の記憶から推測はできていたが、流石に今までにやり合った事のないタイプなので戦い辛い事この上ない。

 

相手が武器を持ってるんだったら、せめてこちらも武器が欲しい。

そして、致命傷を防ぐのに適したメモリと言えば……

 

「だったらコレだな!」

 

[メタル!]

 

メタルメモリを取り出すとスイッチを押して起動させ、スロットルに挿入していたジョーカーメモリを引き抜き、代わりに今起動させたメタルメモリを空いたスロットルへと挿入する。

 

[メタル!]

 

再び同じ電子音声がドライバーから発せられると、ジョーカーの漆黒のボディが銀色に変化し、更に背中には一本の背丈ほどはあるスティック型専用武器・メタルシャフトがマウントされる。

 

仮面ライダーメタル。攻撃力と防御力に特化した駆が変身できる形態の一つだ。

ジョーカーよりスピードは劣るものの、パワーと防御力に関してはピカイチだ。しばらくはこれで相手の出方を見る事にする。

メタルは背中にマウントされたメタルシャフトを手に取ると軽く回して構えた。

 

「ふんっ、メタルか。その形態でどれだけ持つかな」

「まずは何事も試してみるもんだぜ、克也?」

「ほざいてろぉ!!」

 

互いに減らず口を叩き合うと、ディボルグが距離を縮めて構えた槍を振るう。

「ラッシュ」の効果で未だにパワーとスピードが上昇した状態ではあるものの、メタルは何とかメタルシャフトで受け止めてそのまま互いに持ってる武器でけたたましい金属音を響かせながらぶつかり合う。

 

「おらおらおらあぁぁぁぁ!!」

「うぉっ!くっ……!やっぱスピードじゃあ劣るか……。だったら今度は…!!」

 

劣勢になり始めたところでメタルシャフトで槍を抑えると、ディボルグの顔面に不意打ちの裏拳を入れて怯ませ、その後一気にメタルシャフトをその腹部に命中させて吹き飛ばす。

その隙に次なるメモリを取り出してスイッチを押した。

 

[トリガー!]

 

「接近戦が駄目なら遠距離戦だ!」

 

[トリガー!]

 

トリガーメモリをスロットルへ挿入すると、青い装甲の銃撃戦に特化した仮面ライダートリガーへとメモリチェンジを果たし、手に持っていたメタルシャフトが消えて、代わりに左胸にトリガー専用エネルギー銃・トリガーマグナムがマウントされた。

それを引き抜くと銃口をディボルグに向けると躊躇なく引き金を引いた。

 

トリガーマグナムから射出されたエネルギー弾は、見事にディボルグの堅牢な装甲に命中して火花を散らしながら後退させる事に成功した。

 

「ぐぉっ!?」

(効いた!?よし!ならこのまま一気に決める!)

 

それなりに効いたのを確認すると、更に連続でトリガーマグナムの引き金を引いて次々にエネルギー弾を当てて行く。

 

「ぐっ!ううぅぅぅ…!!」

 

そんな中、弾幕に晒されながらもディボルグはカードを取り出してバックルへ装填した。

 

[アタックライド…ブラスト!]

 

「ウザッてえぇぇぇ!!」

 

そう罵言を吐き飛ばしながら突きを放つと、槍の先端からダークブルーのエネルギー弾を射出し、その弾丸は真っ直ぐトリガーへと向かって来た。

 

「ぬぉっ!?そんな事も出来るのかよ!?」

「らあぁぁぁぁ!!」

 

予想外のエネルギー弾を身体を反らす事でギリギリでかわすが、その後も何度も突きを放ってエネルギー弾を撃ち出して来る。またも形勢を逆転されてしまった。

 

「くぅ…!またかよ…!!」

 

[ジョーカー!]

 

再び姿をジョーカーに戻すと、その俊敏さを生かしてディボルグの弾幕の中を掻い潜りながらディボルグへと迫る。

 

「当たりやがれえぇぇぇぇ!!」

「そんなデタラメな攻撃喰らうかよ!!」

 

[ジョーカー!マキシマムドライブ!]

 

遂にはディボルグの懐に潜り込んで態勢を低く構えると、そこからマキシマムドライブを発動させて右拳に紫色のエネルギーを纏わせた。

 

「ライダー…パンチ……」

 

そう技名を静かに宣言すると、渾身のボディブロー・「ライダーパンチ」を相手の鳩尾へと打ち込んだ。

 

「とらぁっ!!」

「ぐほぉっ!あっ…く……!!」

 

流石に人体の急所に命中したのは効いたのか、ディボルグは数歩後退ったあと膝を付いて蹲った。

やはり克也が変身している今の仮面ライダーの状態では、この程度のマキシマムドライブでは倒せないのか、苦悶の声を漏らすだけだ。ならばもう一度決めるしかあるまい。

 

「ぐぉぉ…おぉ……。何故…っだ……。この力さえあれば、全てを、地獄に変えられる筈なのに…!」

 

今の自分の力は絶対の筈だ。この力は、生前使っていたエターナルを遥かに凌ぐほどの力だ。

なのに何故こんな奴に負ける…?

今の俺は最強だ。もう誰にも止められるわけがないんだ!!

 

「克也、お前は今大事な事を忘れてる」

「な…にぃ……?」

 

すると唐突に元相棒であるジョーカーがポツリと語り出した。

忘れてる?一体何を忘れてると言うのだ?

そう思っているとジョーカーは被ってもいない帽子を被り直す仕草をしたのち、静かに答えた。

 

「“何かを守る思い”だ。昔はそれを胸に秘めて、一緒に戦ってたじゃないか。

それなのに今はどうだ?俺への復讐の為に、ただ憎しみだけでお前は戦ってる。

そんな戦い方じゃあ、いくら世界をブチ壊せるくらいの力を手にしたって、俺には勝てねぇよ」

「だ、黙れ!一度俺に負けた分際で、よくもそんなぬけぬけと……!!」

 

コイツは十年振りの再会を果たした時、自分に手も足も出なかった。

しかも今の姿より弱いエターナルでだ。そんなヤツに、今更負けるわけがない!

 

「ああそうだな……。あの時は、本当は嬉しかったんだ……」

「あぁん……?」

 

仮面の奥で訝しげに眉を顰めながら次の言葉を待つと、コイツの口から放たれた言葉は言い訳にも聞こえそうだが、何処か妙に納得する理由だった。

 

「お前からの手紙が来た時、お前が生きてるって思って喜んだ自分がいた。本当だったらもう一度この手で殺さなきゃならないのにな……。

でもお前と会うとその考えは甘かったんだって事に気付いたさ。俺の中にあった迷いが、お前と戦う事を鈍らせたんだ……」

 

「でも今度は違う」と言って言葉を区切ると、左手をスナップさせたのち、ディボルグに向かって指差して宣言した。

 

「俺はもう絶対に迷わない。だから今一度言わせてもらう…小野塚克也!お前の犯した罪に、俺が気付かせてやる!」

 

今のジョーカー…西方駆に迷いはない。今度こそ終わらせてみせる…自分の手で!

 

 

 

 

 

ジョーカーの宣言を聞いて、ディボルグは仮面の奥で口元を憤怒とも歓喜とも取れる形に歪めた。

罪を気付かせる。そんな事せずともこちらはもう既に気付いてる。

だが自分はもう償いきれない領域まで来てしまっているのだ。

だからこそ、もう自分には二つの道しか残されていない。

一つはここでヤツを倒して本能の赴くままにこの世を地獄に変えるか。それとも奴に倒されて二度目の死を受け入れるか。

それを決めるのは、元相棒であるコイツ次第だ。

 

「ハ…ハッハッハッハ!そうだ!それでいい!!俺を止めてみろよ駆ぅぅぅ!!」

 

そう叫びながら立ち上がると、一枚のカードを取り出した。そのカードに書かれた表記は…ファイナルアタックだ。

これで決める事を向こうも悟ったのか、ジョーカーも同じく止めを刺すためにジョーカーメモリを挿入したままのマキシマムスロットをもう一度叩いた。

 

[ジョーカー!マキシマムドライブ!]

 

「ああ、言われなくてもここで止めてやるよ…相棒」

 

紫色のエネルギーがジョーカーの右足に充填されるとあちらの準備は完了し、こちらもカードをバックルに装填して十枚のビジョンを自分とジョーカーの間に展開させる。

 

[ファイナルアタックライド…ディディディディボルグ!]

 

「さあ来やがれえぇぇぇぇぇ!!」

 

ディボルグが叫びながら跳躍すると、それに合わせてビジョンもディボルグとジョーカーの間に立ち並ぶように動き、その光の壁目掛けて手に持った槍をジョーカー目掛けて投げ飛ばした。

 

「ライダー…キック……」

 

ビジョンを通過するごとに威力と速度を上げながら迫るディボルグの必殺技「ディメンションジャべリン」に、ジョーカーはそう呟いて渾身の飛び蹴りを放った。

 

ジョーカーの蹴りと槍の矛先がぶつかり合った瞬間、周囲を爆炎が包み込んだ。

 

 

 

 

 

風都タワーの屋外では、ディージェントとグラスホッパーワームが目に見えない程のスピードで激しい攻防を繰り広げていた。

 

ディージェントの現在発動させている「ダッシュ」の効果は、以前の700倍から900倍のスピードに上昇している。

やはりファイズ・アクセルフォームよりは劣るも、亜由美と出会った世界でのワーム戦よりかは普段ならば戦い易くなっている筈なのだ。

 

しかしそれと同時にグラスホッパーワームも、以前戦ったワーム達よりも手強い。

ナスカの時よりは遅くなってはいるのだが、このワームからは空間把握能力を阻害するジャミングが放たれている上に、剣技もナスカの時と同様にまったく衰えていない。

グラスホッパーワームが剣で攻撃してくる隙を付いたカウンターパンチを与えようとすれば、そこでフェイントを掛けてバックステップでかわされてしまう。

逆にこちらから攻めようとすれば、自前の剣のリーチを生かして牽制して来るために中々踏み込めないでいるのだ。

 

だがこちらとて負ける気など毛頭ない。

 

ディージェントは「ダッシュ」の効果を解除すると、また新たに別のカードを取り出した。

 

『ここで高速化を解くとは愚考ですねぇ!』

 

解除されると同時にグラスホッパーワームが何度も連続でディージェントを斬り付け、装甲から激しく火花を散らさせる。

だがディージェントはそれでも気にした様子もなく黙々とカードをバックルに装填して効果を発動させた。

 

[アタックライド…ミラーダイバー!]

 

発動させると同時にグラスホッパーワームのクロックアップ状態での活動時間に限界が来たのか、その姿をディージェントの前に現した。

 

『ふぅ…流石の私でもこれ以上のクロックアップは……』

『隙アリです/この時を待ってたぜ!』

『な、何をするんですか!?放しなさい!!』

 

グラスホッパーワームが現れると、ディージェントはすぐさま一瞬だけ油断していた隙を付いて右手を掴み上げて剣を取り零させると、風都タワーのフロントが写っている窓に全力で投げ飛ばした。

 

『ハァッ!/タァッ!!』

『ぬあぁぁぁぁぁ!!』

 

投げ飛ばされたグラスホッパーワームはその窓ガラスに直撃するも決して割る事はなく、その鏡面化した背景の中へと飲み込まれて行った。

 

『くぅ…ここは……。成程、鏡の中ですか。私を閉じ込めたつもりなのでしょうが、そう簡単には行きませんよ!』

 

本来ならば龍騎の世界のライダーやミラーモンスターでなければミラーワールドから出られないのだが、神童による細工のためか粒子化もする事なく再び現実世界へとミラーワールドを抜けて戻って来た。

しかし、そんな事などディージェントにとっては予想の範囲内だ。

 

[アタックライド…ブラスト!]

[ファイナルアタックライド…ディディディディージェント!]

 

『ぬぁっ!何です…これは…!?』

『貴方に教える義理はありません/お前に教えてやる道理はない』

 

グラスホッパーワームがミラーワールドから出て来ると同時に「ブラスト」と「ファイナルアタック」の二枚のカードを発動させてグラスホッパーワームを正面からビジョンで拘束すると、またもディージェントの冷淡な言葉に別の声が重なって聞こえて来た。

 

『くぅ…さっきから何ですかその喋り方は…!?』

『それも教える義理はありません/一々説明するのも面倒だから聞くな』

 

グラスホッパーワームにはこの声の正体は分からないだろうが、ディージェントには分かっている。

自分の潜在意識の中に潜んでいる門矢士の人格を模したディージェントの人格プログラムの声だ。

 

Dシリーズは装着者の感情に合わせて、稀に何らかの作用を及ぼす事がある。

二年前のライダー大戦時に於いて門矢士がディケイド激情態になったのもその一例だ。

 

今回の場合は歩の潜在意識に隠れていた門矢士が、歩の感情に感化されて僅かに人格が浮き上がってきているのだ。

 

そのため戦い方も何時もと違って若干粗暴な戦法になってはいるものの、伊達に門矢士がDプロジェクトの完遂の為に戦ってきたわけではない強さを誇っていた。

 

ディージェントは両手を重ねて前に突き出すと、何時ものインディゴカラーのエネルギーではなく、ディケイドの物と同様のマゼンタカラーのシックスエレメントを両腕に充填させた。

 

『それではトドメの一発、行きますよ/さぁ、これで終わりだ』

 

そう言って「ディメンジョンバスター」を放つが、ワームがクスリと軽く笑ってビジョンを力尽くで破壊し、即座にクロックアップを発動させてその場から離れて難を逃れた。

 

『……避けましたか/チッ、避けたか』

 

外したのを確認すると、砲撃を中断してグラスホッパーワームに向き直る。

砲撃が通過したフロントガラスから先は完全に抉(えぐ)られており、風都タワーの反対側まで貫通してしまっている。

流石にこれはやり過ぎだろうが、今のディージェントはそんな配慮など出来ないほどに感情が昂ぶってしまっている。

 

その様子を見てグラスホッパーワームはまたも軽く笑いながら人間態である井上運河に擬態すると、ある物を取り出した。

 

ロストドライバーと「永遠の記憶」を内包したガイアメモリ・エターナルメモリだ。

 

「そう簡単に私がやられると思いますか…?甘いですよ!」

 

[エターナル!]

 

エターナルメモリのスイッチを押してガイアウィスパーと共に起動させると、ロストドライバーを腰に巻きつけ、スロットルに挿入した。

 

「変身」

 

[エターナル!]

 

そしてエターナルメモリの刺さったスロットルを合い言葉と共に斜めに傾けると、もう一度ガイアウィスパーが鳴り響いて周囲に発生した青白い稲妻が運河の身体を包み込むと、その姿を白い超人へと変えた。

 

∞マークの黄色い複眼にイニシャルのEを横倒しにしたかのような角飾り。

全身を包み込む白い装甲の両腕には蒼い炎のマークが刻まれ、更にそれを覆い隠すかのように漆黒のマントを身に纏っていた。

 

仮面ライダーエターナル・ブルーフレア。

健が変身していた物とは違い、こちらはメモリとの適合率が更に高い場合に変身する事が出来る形態である。

 

運河はエターナルへ変身が完了すると同時に、クロックアップを発動させてその姿を消すと、ディージェントの装甲から何度も火花が散り、やがて大きく弾き飛ばされてしまった。

 

『クッ…ヌァッ!/グゥ!グァッ!!』

「アッハッハッハッハ!どうしましたか仮面ライダー殿!?」

 

エターナルはクロックアップを解除してディージェントの眼前に立ち塞がると、卑下するかのような高笑いを上げながらディージェントを見下した。

 

どうやらメモリとの相乗効果でクロックアップが更に高速化してしまってる様だ。

流石にオリジナルがする“あのクロックアップ”程ではないにせよ、このままでは拙い。

 

(どうする?また「スタン」で動きを止めるか?)

(アレはもう見切られてるだろうから使えないよ)

 

頭の中から士の意見が聞こえてくるが、流石に相手も何度も喰らうほど馬鹿じゃない。

その事を答えると士は溜め息を吐いて、ある妥協案を提示して来た。

 

(ハァ…わかった、じゃあ俺が“とっておき”のカードを作成してやるからそれまでしばらくもっておけ。ただし!これは即席だから一回しか使えないし、反動もかなりデカいから覚悟しとけよ)

(それじゃあ頼むよ)

 

[アタックライド…ダッシュ!]

 

士にそう簡潔に相槌を打つと、「ダッシュ」を発動させてエターナルへと肉迫し始めた。

 

「貴方も意外と懲りないですねぇ!」

 

向こうもこちらに合わせてクロックアップを発動させると、ディージェントの右ストレートを難無く受け流し、腹部へ膝蹴りを入れる。

 

「グゥッ…!」

「まだまだ行きますよ!!」

 

それには堪らず踏鞴を踏んで怯んでいると、更にダメ押しとばかりにコンバットナイフ型武器・エターナルエッジが襲い掛かる。

 

「ッ!クッ…!」

 

しかしそれを寸での所で白羽取りをして何とか受け止めると、エターナルは感心したように「ホゥ」と感嘆の声を漏らした。

 

「やはり貴方は私が今まで会ってきた中で、最高の好敵手と言えますねぇ……」

「そんな風に思われても、嬉しくも何ともありません」

 

士がカード作成に専念している為に、ディージェントの声に士の声が重なる事がなく、若干怒気の籠った冷淡な口調を発した。

 

人をあんな風に簡単に殺すような輩とは、絶対に親しくなんてなりたくもない。

だからこそ、目の前の世界の脅威は絶対に倒してみせる。

 

「何とも連れないです…ねぇ!」

 

ディージェントの返答をを聞いたエターナルは何とも残念そうに溜め息を吐くと、瞬時にエターナルエッジを引いて手から引き離すと、ディージェントを蹴り飛ばした。

 

「ヌゥ……チッ!」

 

ディージェントはすぐさま受け身を取って地面を滑ると、一瞬だけ毒吐いて再び高速移動を開始した。

早く士の…ディージェントの人格プログラムが言うとっておきのカードが作成されるのを待つしかなかった。

 

 

 

 

 

「ホント、アレってもう何もかも反則じゃん……」

 

楓は風都タワーの真下で繰り広げられている戦闘を見て一人ごちた。

あの超スピードでの戦いはいくらスピード特化した自分でも次元が違い過ぎる。

別の世界とやらにはガイアメモリ犯罪さえも霞んでしまいそうな異常な力もあった物だ。

 

――――ドゴオォォォォン……!!――――

 

「ッ!?何今の音!?」

 

下の方に集中していると、楓の油断している隙を狙ったかのように真上から爆音が響いた。

上には駆が今回の事件の黒幕と戦っている筈だ。今の爆音だと駆は大丈夫だろうが、人質が大丈夫か少し不安だ。

 

(ここは人質の安全の確保を優先した方がよさそうね……悪いけど駆、行かせてもらうわよ)

 

駆からの所長命令に反する事にはなるが、麗奈の安全の確保のために行った方が良さそうだと自己判断すると、心の中で駆けるに軽く謝りながら上への階段を駆け上って行った。

 

その間に地上ではヴァンが意識を取り戻すという新たな進展があった事に気付かずに……。


 
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