No.394673

仮面ライダーディージェント 第8話:現れた「歪み」

水音ラルさん

ディージェントVS王蛇の戦闘です。

2012-03-19 22:44:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:371   閲覧ユーザー数:371

「へぇ~、“自分の存在意義”ねぇ……。それにしても、今まで見た事のないライダーだね」

「ふんっ、そんな事はどうでもいい…俺を楽しませてくれるんならなぁ!!」

 

ゾルダがぼやいていると、彼の横にいた紫色のコブラを彷彿とさせるライダー…王蛇が見た事のない青黒いライダーに特攻を仕掛けた。

 

王蛇はその手に持ったドリル状の剣・ベノサーベルで攻撃を仕掛けるが、青黒いライダーはその単調な攻撃を軽く横に引いて避け、そこから続く連撃も軽々と避けて行く。

まるで予測できているかのような動きだ。いや、実際に予測できているのだろうとゾルダは推測した。

 

「ちょこまかとぉ…ぐぉ!?」

 

青黒いライダーは王蛇に蹴りを入れて距離を離すと、Vバックルとは違う形状のベルトの持ち手部分を引いてバックル部分を90度回転させると、一枚のカードを何処からともなく取り出し、バックルに装填させて持ち手部分を押し込んだ。

 

[アタックライド…スラッシュ!]

 

「はあぁぁぁ!!」

「…フンッ!」

「何!?」

 

これまた聞いた事のない電子音声が鳴り響くと、再び攻撃を仕掛けるべく突っ込んできた王蛇のベノサーベルにあろう事か手刀を叩き込んだ。

普通ならここで手刀ごとあの青黒いライダーを吹き飛ばしている筈なのだが、青黒いライダーはそのまま王蛇のベノスネーカーと鍔迫り合いを始めたのだ。

その際にキチキチッと、聞こえる筈のない金属同士がぶつかる摩擦音が聞こえてくる。

 

恐らく、先程使ったカードが関係しているのだろうとゾルダが冷静に分析していると、オーディンとナイトの戦況も変わってきている事に気がついた。

 

「らあぁぁぁ…って消えた!?」

「ここだ!」

「ぐあぁぁ!?」

 

オーディンの能力である瞬間移動によってナイトが劣勢になり始めたのだ。

それに続く様に他のライダー達も攻撃に加わって行く。

 

「フゥン…やっぱり皆そっちの方に行くんだねぇ。ま、俺もあっちに加わる気はないけど」

 

そうぼやきながらVバックルに装填したデッキから一枚のカードを取り出し、それを自身のハンドガン型召喚機…マグナバイザーに装填した。

 

[シュートベント]

 

電子音声が鳴り響き、手元に携帯式大砲・ギガランチャーを出現させ、それをレイヨウを模したライダー…インペラーの跳び蹴りによって吹き飛ばされたナイトに狙いを定め、引き金を引いた。

 

「ぐわあぁぁぁぁ!!」

 

発射された砲弾に直撃して激しく身体をスパークさせながらナイトは近くにあった割れたガラスの方向へ吹き飛び、その中に吸い込まれるように消えてしまった。

 

「た~まや~ってね。さて、じゃあアッチはどうするかな……」

 

そう言いながら再び王蛇と青黒いライダーの方を見た。

 

王蛇に変身している男…浅倉(あさくら)威(たけし)は凶悪犯だ。その為、他のライダー達よりも戦闘意欲が強く、一度喰いつけば正に蛇の様に離れない上に、戦闘(まつり)の邪魔をされればその邪魔をした者まで攻撃を仕掛けてくると言う、ある意味最悪のライダーだ。

その為、先程から他のライダー達はナイトを攻撃していたのだが、先程のゾルダの攻撃でミラーワールドから弾き出されてしまった為、全員どうするか迷っている様だ。

 

「ちょっとちょっとぉ、何してくれちゃってんスかぁ?折角の獲物が逃げちゃったじゃないッスかぁ」

「それは悪かったね。加減が分からなくってね」

「それはそうと、どうすんのよアレ……?」

 

インペラーがゾルダに文句を言っていると、女性的なフォルムをした白鳥を模したライダー…ファムが王蛇と見た事のない青黒いライダーを指差しながらぼやいた。

確かにあのままでは王蛇の方が負けるだろう。かと言って助太刀しようものなら後が怖い……。

 

「暫くは様子見としようか。あのライダーは我々とは違う様だからな」

 

オーディンがそう高らかに宣言すると全員が納得したように頷き、あの謎のライダーの事が解るまで観戦する事となった。

 

 

 

 

 

「ハッ!」

「うお!?…中々やるなぁ……」

「それはどうも、浅倉威さん」

「ッ!?貴様、何故俺の名を……」

 

ディージェントは手刀を大振りして王蛇を弾き飛ばすと、王蛇は即座に態勢を立て直し首をグルリと回しながらドスの効いた声で呟いた。

それを褒め言葉と受け取ったディージェントは返事を返すと、王蛇は自分の名を知っている事に軽く驚いていた。

 

ディージェントはこのライダーについて情報を持っていなかったが、しばらく戦闘を続けて行く内に、ディージェントドライバーがこのライダーの情報と世界の情報を照らし合わせ、このライダーに関する情報を手に入れていたのだ。

 

「それは企業秘密です」

「ふん…そうかよぉ!」

 

ディージェントが軽くあしらうと、王蛇はそれほど深く考えずに再びディージェントに斬りかかった。

それを再び右手の手刀で受け止め、拮抗状態となる。

互いに睨み合いながら鍔迫り合いをしてると、そこでディージェントが仮面の奥で「……フッ」と小さく笑った。

 

「……何が可笑しい?」

「誰が右手だけと言いましたか?」

「何っ…!?うぐぉ!!」

 

王蛇は勘付くが対応に遅れてしまった。

ディージェントは左手の手刀で王蛇の胴体を斬り付けたのだ。

 

ディージェントの「スラッシュ」のカードはあくまでディージェントの攻撃に斬撃を付加させる(・・・・・・・・)為のカード。

つまり、斬撃を放とうと思えばどの部位を使っても構わないのだ。

 

王蛇との距離が離れると、今度は回し蹴りに斬撃の属性を付加させて更に斬り付ける。

それによって攻撃の射程範囲外に出てしまうが……

 

「ハアァァァ!」

「ぐぉあぁぁぁぁ!!」

 

蹴りによる斬撃を飛ばしての中距離攻撃を仕掛けた。

 

王蛇は攻撃特攻型のライダーではあるが、その攻撃の殆どが近距離戦だ。

王蛇の装着者である浅倉威なら例え距離を取られてもゴリ押しで相手との距離を取る事も出来るだろうが流石にこうも連続攻撃を浴び続けられては一溜まりもないだろう。

 

「ぐうぅぅ…ハァ……」

 

そして、王蛇はとうとう膝を突いて倒れてしまった…だが、ここで終わる程このライダーは弱くはない。

軽く息を整え、首を回してゴキゴキと鳴らしながら王蛇は立ちあがった。

その顔は仮面で見えないが、凶悪な笑みを浮かべている事が雰囲気で伝わってくる。

 

「面白い事をやってくれるじゃねぇか……。いいぜぇ、もっと俺を楽しませてくれよぉ…なぁ、青黒ぉ……」

「青黒じゃなくてディージェントです。でも、僕の用も済んだのでそろそろ退かせてもらいます」

 

挑発してくる王蛇に対し、ディージェントは感情の籠っていない声色で退却宣言を言い放つと、一枚のカードを脳内にあるクラインの壺から取り出した。

続いて器用にそのカードを持った右手でディージェントドライバーの持ち手部分を引いてカード挿入口を展開させる。

 

今は既にメカニカルな風貌のライダーの砲撃によってナイトがミラーワールドから弾き出されてしまっている。

それに暫く他のライダー達もこちらを観戦しているだけで、ナイトを追う素振りもない。これ以上時間を稼ぐ必要はないだろう。

 

「ハッ!そう簡単に逃がすと思うかぁ?らあぁぁぁ!!」

 

王蛇は鼻で笑って、カードを使わせる前にケリを着けようと突っ込んでくるが、やはりディージェントがカードを装填する方が早かった。

 

[アタックライド…インビジブル!]

 

王蛇の攻撃が当たる寸前、ディージェントの姿がアナログテレビの電源を切った時の様な残光を残して消え、王蛇の攻撃は空を切った。

 

 

 

 

 

「どうやら今使ったカードは『クリアーベント』だった様ですね」

 

白虎を模したライダー…タイガが先程、青黒いライダーが使ったと思われるカードを推測し、誰にでも無く呟いた。

 

「いやぁ~惜しかったッスね~、センパイ」

「………」

「アレ?あの、センパイ…?」

 

インペラーが暢気に王蛇に声を掛けるが王蛇は無反応で、ベノサーベルを振り下ろしたままの状態でワナワナと震えていた。

それに疑問を持ったインペラーがもう一度声を掛けるが……

 

「うらああぁぁぁぁ!!」

「うわぁっ!ちょ、落ち着いてセンパイ!」

 

攻撃対象をインペラーに変えた王蛇が激昂して襲い掛かった。

 

「あぁ~あ、あんな事があった後に声なんて掛けるから……」

「……馬鹿が」

「アレは止めた方がよろしいんでしょうか?」

「放っておけ」

 

ゾルダと龍騎を真っ黒に染めた様なライダー…リュウガがインペラーの安直な行動に呆れていると、タイガがオーディンに止めるべきか聞くがそれを却下し、更に続けた。

 

「この『ライダーバトル』はあくまで最後の一人になるまで戦う事を目的としている。ここで一人減った所で、『ライダーバトル』を止めようとするあの愚か者を消すのに何の問題もない」

「そうですか、分かりました」

 

オーディンの命令にタイガは簡単に引き下がると、王蛇とインペラーを見た。

その時には丁度王蛇の攻撃がインペラーの腹部にあるデッキに直撃している所だった。そしてその衝撃でインペラーのデッキが粉々に砕かれる。

 

「うわっ!え、ウソ!?俺のデッキが…!」

 

デッキが壊れた瞬間、インペラーに変化が起きた。

インペラーの身体から粒子が噴き出し、その装甲が消えて行くのだ。

そして完全に装甲が消えても尚粒子は噴き出し続け、インペラーの装着者であった佐野満までもが徐々に透明になって行く。

 

人間はミラーワールドの中では活動できない。それは人間が海底や宇宙などで活動できない事と同じであり、云わばライダーの力はその活動できない領域で活動する為の特殊スーツと言っていいだろう。

そしてミラーワールドはその世界の存在ではない者に対し拒絶反応を起こし、その存在を排除しようとする。

その現象が今目の前で起きている佐野満の消滅だ。

 

「イ、イヤだ…オレは、まだ、死にたく……」

「さっさと消えろ。お前を見てると、イライラするんだよ…うらあぁぁ!!」

 

王蛇がそう吐き捨てると、ベノサーベルを思いっきり佐野満に振り下ろして一刀両断にした。

 

「ギャアァァァァァ!!」

 

佐野満の身体は斬られた箇所から更に粒子を噴き出し、断末魔と共に消滅した。

 

「これで残ったライダーはあと八人(・・)。まずは愚か者のナイトを消す」

 

オーディンの号令を聞き、ライダー達はそれぞれ現実世界に戻る為、各々にミラーワールドを後にした。

そしてその場にはオーディンとリュウガだけが残り、リュウガがオーディンに問い掛けた。

 

「あの青黒いライダーが神童とか言う奴が言っていた“悪魔”か?確かに他のライダー達とは違うな」

「ふむ。だが神童がお前に与えた力があれば奴を倒す事など造作もないだろう。だから頼むぞ……」

 

そこで言ったん言葉を区切ると、その目の前にいるライダーの二つの名を紡いだ。

 

「仮面ライダーリュウガ、城戸真司」


 
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