No.392050

十年後の世界

rahotuさん

第五話投稿

2012-03-15 20:51:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3030   閲覧ユーザー数:2972

地球連邦軍による日本占領は、大きな反動を呼び起こしたが、一番の問題は今回のテロで連邦が得たISに関連する技術の問題だ。

 

ISを研究していたのは、天災篠ノ之束がいる日本だけであった、その為同じ技術を開発しようにも、天災がいない今ではISのコアを作り出すことさえ出来なかった。

 

無論のこと、各国諜報部は篠ノ之束を確保しようと蠢くも、ほとんどが彼女の足跡を追う事が出来なかった。

 

その為、今回の「白騎士」事件で多大な被害と威信を傷つけられた、アメリカ、中国、ロシア、その他を中心とする国々が連邦のIS技術独占を国連で非難。

 

連邦軍の即時日本からの撤退とIS技術の公開を要求した。

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、全く負けたくせに騒ぎおって、そんなに欲しければ自分達で取りに来ればいいものを。」

 

ゴップは執務室に鳴り響くホットラインのコールに、ウンザリとしながら、片手まで政務を片付けつつ、相手をはぐらかしていた。

 

「いえいえ、大統領勿論お話は聞いていますよ、ですがええ、ええ、ISのことよりもまずテロの危険性を.....。」

 

「...........................?..........!!...........」

 

「大統領、私も貴方が苦しい立場であることは知っています、虎の子の第七艦隊は壊滅、事件に参加した国の中であなた方の被害がダントツだ。このままでは太平洋が合衆国の庭でなくなることの危険性、私も連邦もそれを危惧しています。だからこそ此処で安易にテロリストの技術を手にすべきでは....「.........」いえいえ、連邦は北太平洋に野心は持ってはいません、東京湾近海に展開中の艦隊は直に引き上げさせますよ、ただしこちらにも何か見返りがなければ。」

 

「.......。..,............。」

 

「ありがとうございます、大統領、これで貴方の二期目は決まりましたな。一足早いですが、祝辞を送らせていただきますよ。それでは、またアラスカで。」

 

漸く大統領を説き伏せたゴップ首相は息つく暇もなく、鳴り響くホットラインの受話器に手をかけた。

 

「これはこれは珍主席、本日は「!!..........!.......!!..........!!...」そう慌てずに、連邦は決して貴国の領海を犯そうなどとは考えていませんよ。ええ、ですが貴国も先のテロでは折角の海軍が甚大な被害が出ましたな。今後予想される同様のテロに対してどういった対応を取るおつもりですか?このままでは南海をテロリストに明け渡す事にもなりかねません。そうなれば、いったい誰が得をするのでしょう。」

 

「.......!.....?......。」

 

「誤解なきように言っておきます、連邦が求めるのは世界の平和と安定です。今回のテロは世界の秩序を揺るがす重大な事件です。だからこそ、今後ともテロの脅威に対抗するために協力関係を........。」

 

「まあ、その為には連邦は黄海に船を浮かべる用意がありますが.....ええ無論既に大統領はご存知ですよ。大統領はとても懸命な方だ、英断を下された。はてさていったい貴国は何をしてくださるのでしょうな......。」

 

こうして裏で各国首脳を丸め込みながら、世間では最早ISを巡る戦争か!!と叫ばれていた。

 

最悪の事態を回避すべく、国連が特別にアラスカで国際会議を開き、事態の解決の糸口を探るように見えた。

 

だが、実際は常任理事国を手玉に取ったゴップ首相の脚本どおりであった。

 

世界的にISに対する危機意識を持たせ、あわや戦争かと思わせて条約を結ぶ。

 

如何に世界各国が連合しようとも、ゴップ首相の政治力の前にもろくも崩れ去っていたのだ。

 

会議は、紛糾するかに見えたが、恐ろしいまでに順調に進み、今後ISに関する協定が結ばれる。

 

この、世界の軍事バランスを崩壊させた兵器の扱いについて、極めて穏やかに進んだそれは、「アラスカ条約」という名で全国家が加盟することとなった。

 

1、連邦及び日本が独占するISの情報の公開

2、軍事利用の及び戦闘への参加の禁止。

3、軍事利用目的での研究の禁止、今後ISの研究は新設した超国家機関通称「IS委員会」に一任。

4、今後予想されるISによるテロに対して各国共同で殲滅に当たること。また情報の開示と共有を認めること。

5、如何なる理由があろうとも、ISの稼動は特別に認められた場所以外では禁止。宇宙空間への移動展開も禁止。

6、年に一度、ISに関する国際会議を開くこと

7、どのような国家、組織、機関、企業、を問わずどのような状況であれISの取引、譲渡、あらゆる移動行為を禁ずる。

             ・

             ・

             ・

             ・

             ・

             ・

 

天災が行動を起こす前に手を打ったゴップ首相はこの結果に一応の満足を示した。

 

まあ、天災の事だから色々と悪あがきしそうだが.....。

 

ゴップは一人会議場に設けられたVIPルームで各国の調印式の様子を見ながら、一人呟いた。

 

「これで一応IS開発の枷はつけた.....後は天を支える柱を作るのみ.....か。」

 

ゴップ首相は立ち上がり、そのまま会議場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アラスカ条約」締結より二年、IS委員会の内常任メンバーの凡そ半分を連邦が占めることで決定した。

 

連邦により接収された大量のコアは、「IS委員会」の手によって各国に平等に分配され、なおその際コアには所属を示すナンバリングコードが打ち込まれ、これは絶えず人工衛星によって監視され、ISの不許可の起動や移動を見張っていた。

 

もし、仮に自国のISが他国に侵入したさい、その国はISを用いたテロ国家として国際社会からあらゆる制裁を受ける事となる。

 

その為、各国は必死で自国のISの囲い込みに走った。

 

次にISの本格的な国際研究が行われるが、そこで当初思いもしなかった問題が発生する。

 

ISは確かに素晴しい性能を示した。また「白騎士」が実際に見せた戦闘能力はありとあらゆる従来兵器を陳腐化させたが.......しかし。

 

ISには「致命的」な欠点を抱えていた。

 

ISは”女性以外に起動できない”、故に軍部は混乱する。

 

女性の社会進出が果たされたからといって、軍部において同義というわけではない。

 

未だに多くの軍が男性優位主義というよりも、男性の数が圧倒的に多く女性軍人は極めて珍しいのだ。

 

また、女性ならば誰でも良いという訳ではなく、ISにも適正というものがあり、これはISコアと搭乗者たる女性との相性の問題であった。

 

この相性が良いほどISが高性能を発揮し、逆に悪ければ本来の出力の三分の一も出ない。

 

適正の問題は、年若い女性の程高く、逆に年配の軍に長年いるような女性軍人は稼動するのにも一苦労する有様であった。

 

この結果に各国首脳は頭を抱えたが、それにさえ目を瞑れば、容易に大陸間弾道弾を無力化する戦力が手に入るのだ。

 

しかし、もう一つ問題があった、それはISコアに関わる問題だ。

 

条約でISコアは世界共通の財産と定められ、国家が独占することは禁止され、二年単位でのレンタルとされ、その度に莫大なレンタル料を「IS委員会」に支払わなければならない。

 

この契約は、半年後とに更新期間があり実質資金が用意できなければ折角開発したISも委員会に没収されてしまうのだ。

 

しかし、ISコア一つにつき、中小国のGDP二パーセント分のレンタル料は余りに高すぎた。

 

結局ISをレンタルしつづける為に各国は軍の縮小を決定、多くの優秀な軍人が解雇され世界中でその再就職を巡る問題が起こることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球連邦首都ダーウィン

 

執務室でゴップ首相は各国の研究機関や軍部が蒼い顔をしているのを想像しながら、手に持つ書類を読み進めていった。

 

「....漸く月にマスドライバーを建設する目途が立ったな。」

 

「はい、ゴップ首相。しかしお見事です、まさか連邦が極秘裏に月で基地を建造中というのを悟らせない為にアラスカ条約を利用するなど....。」

 

傍に立つアンリー大統領補佐官は、ゴップの手腕に驚嘆の声を上げた。

 

書類から目を離したゴップは、なんでもない風に装い

 

「な~に、彼等にアメをくれてやったようなものさ。それよりも軍部の問題はどうなった?」

 

「はい、軍部では早くから対ISを想定した兵器の開発を進めています。また委員会よりレンタルしたISコアは仰せの通り首都圏から隔離、一切の外界との情報を遮断した極秘研究所で事に当たっています。」

 

「うむ、大いに結構!!まあ、ちとレンタル料はやり過ぎだったかな?」

 

「閣下それよりも、今後太平洋、大西洋における各国のシーレーンの弱体化が予想されますが.....。」

 

「それについては既に手を打っている。な~に、解雇されてあぶれた軍人の囲い込みは済んでいるのだろう?....流石に研究者までは手放さないが。彼等には存分に世界でその腕を振るってもらことにしよう。」

 

ゴップは椅子を動かして窓の外に目をやり、南海の強い日差しを全身に浴びながら、一人ほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アラスカ条約」締結から四年

 

ISのスポーツ利用を目的とした世界大会通称「モンド・グロッソ」が開催される。

 

このオリンピック、ワールドカップ、の並ぶ第三の世界競技大会として期待されたこの大会は、実際は研究で得た技術を用いて他国との技術競争による国際社会での発言権増大を狙った、一種の戦争ゲームであった。

 

ISの移動は条約で制限されていた為、この計画は頓挫するかに思えたが、公海上にメガフロートを建設し、そこのドームで行うこと、大会に参加する以外にISの起動を禁止、公平をきする為に性能の制限を前提に初の大会が開催された。

 

この大会で総合優勝を勝ち取った日本の織斑千冬は世界チャンピオンとして「ブリュンヒルデ」の称号を与えられ、名実共に世界の頂点を極めた。

 

その様子をまたまたテレビで見ていたゴップは、大変つまらなそうな顔をしていた。

 

自国の安全を蔑ろにして、あんなオモチャにうつつを抜かす、各国政府官僚の姿に、ゴップはため息さえ覚えた。

 

今回、連邦は自国のISを参加させてはいない、いや出来なかった。

 

表向きは公平をきする為にメガフロートを所有する連邦が本大会に参加する事はあらぬ疑いを持たれる可能性が合った。

 

本当はISのコアは全て解体され、出たくても出れない状態であったのだが.....ゴップ首相の工作により世界中にその秘密は漏れることはなかった。

 

「ゴップ首相、そろそろ授賞式です。会場の方へどうぞ。」

 

接待係が、そういってゴップに会場に移るように慇懃な態度で言って、ゴップは

 

「ああ、もうそんな時間か。わかった直に準備するから待っててくれ。」

 

とだけ言い、退屈な授賞式の為に会場に向かっていった。

 

「はあ、天災が消えから四年....。早く出て来い、お前のおもちゃは惨めな見世物になっているぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

大会が終わり、世界に粗方ISがスポーツとして表向きには浸透した。

 

しかし、連邦以外の国々は軍事費の大半をISの研究につぎ込み、弱体化著しい。

 

その為、アフリカや中東地域では目に見える軍事力の低下を狙ってテロや紛争が勃発、そこにゴップ首相が極秘裏に進めた解雇された軍人を使った治安警備企業を設立、紛争地帯や情勢が不穏な国に対して軍に変わり治安維持と警備を行うこの企業は徐々にだが、確実に各国に根を張り始めていた。

 

逆に連邦は警備企業に軍事費の変わりをさせつつカーペンタリア湾にマスドライバーの建設を開始。

 

既に月の基地と連動して、採掘した資源で新たな基地建設や技術開発などを行い順調に発展しつつ、宇宙進出を進めていった。

 

 

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
2
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択