No.359369

真説・恋姫†演義 仲帝記 第十九羽「雄々しき華は、猛き虎へと咆哮する、のこと」

狭乃 狼さん

仲帝記、その第十九羽です。

似非駄文作家の狭乃狼ですww

今回は袁術らと別行動をし、洛陽へと向かった一刀達の側の様子を、

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2012-01-06 21:33:31 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:14103   閲覧ユーザー数:6639

 戦場という場において、兵を率いる立場にある者にとっては、個人の誇りなどは無用の長物である。

 

 指揮官が前線に出ることの必要性が無くなった、現代の“戦争”においては至極当然の論理であり、将官たる者は常に大局を見据え、感情や感傷に振り回されること無く、如何に味方を最小限の被害の内に勝たせるかに、注視しなければならない。

 

 しかし。

 

 三国時代という、人と人とが直接ぶつかり合い、己が命、己が誇りにその全てを賭けて戦う“戦”においては、時に大局よりも局地、すなわち目の前の出来事にその全てを賭ける事が、往々にしてあるものである。

 

 特に、己が武に絶大な誇りを持つ、武人と呼ばれる人種たちは、この傾向にある事が多く、現場の判断と称して勝手な行動に出てしまうことも、まま、起こってしまうのである。

 とはいえ、当時の人々にとっては、それは至極当然の考え方であり、そこに疑問を抱く余地は欠片も無いのが通常の思考であり。さらにいえばこの時代、たとえ軍令を無視したとしても、それに見合った以上の軍功を立てることによって、軍令違反をしても不問にされてしまうという、そういった暗黙の了解というか不文律のようなものもあった、というのも、それを大きく後押ししていただろう。

 

 結果的に勝てばよし。

 

 もちろん、それも一つの論理ではあろうし、事実、現場の将による独断が元で戦局が大きく変わり、敗色濃厚だった戦いが、一転勝利へと変わるということがあったということも、現実ではある。

 

 だが、そういった形での勝利などというものは、往々にして偶然が生み出した予想外の産物であり、またそういった事実も、十ある戦の内、一あるかないかという程度の、大穴的結果でしかないのが殆どである。

 

 「……もしもあの時、そんな風潮があるのを俺が知っていて、彼女らの傍で直接諭すことができていたら、その後の結果は大きく変わっていたかも知れない」

 

 はるか後世において、この時代に起こった三大激戦の一つとして数えられる、反董卓連合による洛陽攻略戦。

 

 その時の戦の顛末を脳裏にて反芻しつつ、北郷一刀が主君である袁公路に対してこぼした、彼の人生において長く燻り続ける、後悔の中のその一つである……。

 

 

 

 第十九羽「雄々しき華は、猛き虎へと咆哮するのこと」

 

 

 

 「腹黒大将軍、か。まさしく的確な表現だわね、張勲という人間の評としては」

 「はは。……まあ、それは本人にとっても、最上級の褒め言葉……なんだそうですけどね」

 

 その手に開いた一つの竹簡に記されたその内容を、感心すると同時に半ば呆れたようなため息を吐きつつ、その少女、賈駆が呟いたその一言に、一刀は苦笑をその顔に浮かべて言葉を返す。

  

 「それで?そっちとしてはどうなのさ?俺たちの提案……受けてくれるのか?それとも」

 「まあまあ、千ちゃん~。そんなに~、急かしては~、駄目ですよ~?詠さんたちにとっても~、事は~、一刻を争うとは言っても~、そう簡単に~、判断できることでも~、無いと思いますし~」

 「……あんたさ、せめてもうちょっと、早く話せないの?……この間もそうだったけど、聞いててちょっと苛々して来るんだけど」

 「まあ~、それは~すみません~。は~、でも~、これが私なのでして~」

 

 雷薄のそのふわふわとした間延び口調。普段から聞き慣れている一刀たちはともかく、そうでない賈駆にとっては若干癇に障るものがあるらしく、眉をわずかにひそめつつその事を指摘するのだが、当人は大して気にしている風も見せずに、飄々と答えるのであった。

 

 「……まあ、いいわ。それより返事だけど、ボクとしてはアンタたちの…張勲の策に乗っていいと思ってる。月や他のみんなも、多分賛成してくれるでしょ」

 「それは良かった。……なら、その竹簡にあるとおり、俺たち五人はしばらくの間、董卓軍に厄介にならせてもらうよ。短い間だけど、宜しく、詠」

 「ええ、こちらこそ」

 

 しっかりと。互いに差し出した手を握り合い、笑顔を交わす一刀と賈駆。そして、二人と同じく笑顔をその顔に浮かべている、陳蘭に雷薄と、楽就そして周倉の四人。

 尚、今現在彼らが居る場所だが、洛陽の城内…ではなく、街の中にあるとある一軒の宿の一室である。

 先日、袁術や諸侯の下に送られてきた袁紹名義の檄文に対し、張勲は諸事情を鑑みたその結果、連合軍側と董卓軍側のその双方に着くという、大胆な戦略を一同に示した。

 では、ここからその時のやり取りの様子へと、時を遡らせて頂く。

 

 「まず、連合に参画する諸侯の所へは、お嬢様と私、秋水さんと巴さんで合流します。そこでお嬢様には、無能なお子ちゃまでずっと居てもらいます」

 「なんと?!妾にまた、昔の妾を演じよと言うのかや?」

 「はい~。……おそらく、ですけど。文台さま以外の諸侯は、お嬢様の今のお姿というものを、半信半疑程度のものでしかご存じないと思います。南陽やこの汝南が繁栄していること位、周知されてはいるでしょうけど、お嬢様ご自身の人となりまでは、多分、深くはご存じないと思います」

 「七乃ちゃんは、何でそう思うんです?」

 「……人というのは一朝一夕に変われるものじゃあない。ましてや、自堕落で怠惰な半生を送っていた人間ほど、そう容易くは己を変えられないもの……。と、いう風に思い込んじゃうのが、一般的な人間というものですよ」

 「周りの噂や情報がどうであれ、直接見聞きしないことには、そうそう認識は改められない……てことか」

 

 陳蘭の言うように、人の本質というものを見定めるためには、直接顔と言葉を交わさなければ中々出来ないのが、三国時代(いま)という時代の実情である。ましてや、過去に愚行ばかりが目立って居た人間の話ともなれば、それはさらに顕著となる。

 無論、そういった偏見に囚われない思考を持った人間とて、この世には少なからず居るであろうが、袁紹のあの檄文に乗るような、目先の事に囚われている程度の者たちであれば、その可能性は限りなく低いだろうと、張勲はそう読んでいた。

 

 「……たとえ今の美羽嬢の姿を、草の報せや風の噂で聞いていたとしても、確たる事実かどうかは、直接見るまでわからない。もしかしたら、美羽嬢自身は愚者のままだが、配下の人間が上手く切り盛りしているだけかもしれない……そう判断する者の方が大半の可能性が高い……ということですか」

 「そういうことです。で、そんな人たちの前で、実際にお子ちゃまのまんまなお嬢さまが、麗羽さまとまるで競うかのようにお馬鹿を演じて見せれば」

 「……まあ、殆どはソッチを信じる……だろうね」

 

 そうして愚か者の態度を連合内で貫き続け、袁紹をさらに煽るようにして更なるその増長を促し、無駄な時間だけを費やさせるようにするのが、袁術達連合参加側のやるべきこと。

 そして連れて行く兵も少々少なめにし、戦力的にも下手に出て袁紹を持ち上げることで、その機嫌をさらに良くして頭に乗せてやれば、他の諸侯もその彼女の傲岸不遜な態度に意識を取られ、自分たちの演技を見破られないようにも出来るはずだ、と。

 連合側にて展開すべき自分たちの策を、そう笑顔で語ったのだった。 

 

 

 

 ただ、袁術の今の本当の姿を知っている、唯一の諸侯…孫堅にだけは、前もって事実を告げておき、こちらへの協力を取り付けておく必要があった。そこで白羽の矢が立ったのが諸葛瑾だったのだが、その彼女から一つだけ、不安な点がその場で示唆された。

 つまり、孫堅がもし、話を聞いた上でこちらのへの協力を拒んだら、どうするのか、という点である。

 

 「可能性は限りなく低いですけど、その場合は両方に着くという大戦略そのものを破棄して、全面的に董卓軍につくことにします。……もっとも、その心配はまったくしていないですけどね」

 「蓮樹おばさま……妾に力を貸してくれるかの?」

 「だーいじょうぶですよー。なんて言っても文台さま、お嬢様のことを私並に溺愛されてるみたいですし」

 「……それについては、僕も同意見ですねえ。なにせ蓮樹ちゃんてば、一時期は本気で、美羽嬢を自分の子にしたいと、詩羽さまに言っていたこともある位ですからねえ」

 「えっ!?……ほ、ホントなんですか、それ?!」

 「ええ、本当よ七乃。私もその場に立ち合わせていたから、よく覚えているわ。……その時はもう、城が壊れるんじゃあないかってくらい、詩羽さまと文台さまが、本気の取っ組み合いの大喧嘩をされていましたから』

 「……江東の虎とマジで取っ組み合いができる、美羽のお母さんって……うーむ」

 

 色んな意味で余りに衝撃的なその事実に、思わず敬語を使うことすら忘れて唖然とする一刀と、その彼同様に言葉を失う、諸葛玄と紀霊以外の、その場の面々だった。

 

 話が少々逸れたが、孫堅に対する対応がそうして決まったあと、今度は董卓の下へと赴いて助力を担う、その面々の役割の話へと移った。

 

 「ところで七乃?董卓軍(向こう)には誰が行くんだ?」

 「そうですねえ。この間あちらさん達と誼を直接通じてくれた、一刀さんと千州さん、美紗さんの三人はもちろんとして。あとはそうですね、南陽に居る(いつき)さんと(もみじ)さんにも、同行してもらいましょう」

 

 樹と椛、というのは、現在南陽の地にて、かの地の太守である徐庶の補佐役を務めている、元黄巾党幹部であった楽就と周倉の事である。ちなみに、樹が楽就の、椛が周倉の真名である。

 

 「一刀さんたちは、あちらでお二人と合流し、長安方面から洛陽に向かってください。それから棗さん」

 「はいな」

 「貴女の部下の中から、選りすぐりの草さんたちを十人ばかり選別して、連合軍組と董卓軍組の繋ぎ役を担わせてください。今回のこの作戦、互いの連携が何より大事になりますから」

 「承知や。うちの部下たちの中でも、飛びきりの連中を選んでおきますよって。あ、その分みんなへの報酬の方、しっかり積んだっておくれやすな?張大将軍はん?」

 「……ええ、もちろんですよ(ひくひく)」

 (……流石は荊州一の大商人。金勘定がしっかりしておる……)

 

 諜報組を束ねる魯粛に対し、連絡役の間諜を準備してくれるよう頼む張勲。その彼女の申し出に快く応じはしつつも、魯粛はしっかり、間諜達への報酬はちゃんと国庫から出すよう、にっこり微笑んで念を押すのであった。 

 

 その後、一刀たち洛陽組が董卓軍の下で行うその策が、張勲の口から二つ三人に示された。内一つは、もちろん軍そのものに協力しての汜水関、及び、虎牢関の防衛。そしてもう一つの方だが、こちらはこの場ではあえて語ることはせず、後述させていただくことをご了承願うとして。

 

 時間と場所を再び、洛陽にいる一刀達の所へと、ここから戻す。

 

 

 「さて、張勲からの書簡によると、あんた達のうち、楽元紹と周倉の二人は、汜水において守りを固める事に尽力をさせて欲しいとあるけど、それで問題は無いのかしら?」

 「ああ、問題は無い」

 「俺の方もだ。自慢じゃねえが俺達ぁ守ることにかけてなら、誰にも負けない自信がある」

 「荊州の戦いで負けたのは、守りもへったくれも無い状態に追い込まれて、巴様や孫叔朗に一騎打ちを挑まれたからだ」

 「城や関に篭っての守りに徹する戦いなら、直接戦場で暴れなきゃあならない…てなことも避けられるしよ」

 

 要するに、俺達は臆病者なんで、必要に迫られでもしない限り、斬った張ったの現場には極力出ないんだよ、と。楽就と周倉のその台詞は、かなり自虐的な台詞ではあるものの、彼ら自身、それが己の器量の限界だと悟っているからこそ、清清しいまでの笑顔でそう言ってのけたのである。

 

 「あんた達って、元々はこいつらの敵……だったの?」

 「まあ、な。……俺もコイツも、元、黄巾だ」

 「……本当なの、北郷?」

 「ああ。けど、それはもう過去の事さ。今はもう二人とも、俺たちにとって大事な仲間さ。な、千州、美紗さん?」

 「ま、そう言うこったな」

 「そういう~、ことです~」

 

 昨日の敵は今日の友ってやつさ。と、一刀は楽就と周倉の事をそう語り、賈駆にも二人の事を是非信じてあげて欲しいと、その頭を深々と下げる。そんな一刀の台詞に続き、楽就と周倉はその信頼の証として自分の真名を賈駆に預けたいと申し出、それに対し彼女の方も「……そこまでされたらもう何も言えないわよ」、と。賈駆もまた二人にその場で真名を預け、互いの信頼の証としたのであった。

 

 「それじゃあ元紹と周倉…樹と椛には汜水関に行ってもらって、先行してる文遠将軍と華雄将軍の、その補佐に就いて頂戴。先触れは出しておくから、後はこの割符を持って行けば大丈夫よ」

 『了解!』

 

 賈駆からその欠けた板切れ、割符を受け取り、少々高揚した面持ちで、揃って拱手を行なう楽就と周倉。

 

 「で、あんた達三人については何にも書かれて居ないんだけど、北郷に千州、美紗?あんた達はどうする気なの?」

 「それについてはさ、直接月や詠に言うようにって、七乃さんはあえて書面には書かなかったんだ。ということで、俺達の役回りなんだけど……」

 

 一つ一つ、自分自身でも再確認をするかのように、張勲が一刀達にあてがった洛陽での任務を、賈駆に説明してみせる一刀。

 そしてそれを頷きながら聞いていた賈駆は、その時漸く、一刀達が会見の場に、洛陽の城中ではなく、この街中の宿を指定した理由を納得した。確かにそれは、城中にて出来る類の話では決して無い代物であり、今回の戦のみならず、今後の董卓軍(自分達)の運命を大きく左右するものでもあった。

 

 

 

 所変わって、それから数日後の汜水関。その城壁の上に立てられた二本の牙門旗の下で、遥か東の大地を睨みつけている人影が四つあった。

 

 「……来たで、華雄。それに、樹、椛」

 「ああ、見えている」

 「俺にも見えてますよ、霞どの」

 「俺もだ。……ざっと見、二十万、ってところかね」

 

 懐からおもむろに取り出した、なにやら棒状をしたものの片側を自身の片目にあて、東の方にあがる土煙の方へとソレを向ける周倉。

 

 「……椛、ソレ、なんやの?」

 「ん?ああ、一刀殿が千州殿と一緒に作ったものでな、『遠眼鏡』とかいうものだ。こうやって見ると、遠くにあるものがまるで近くにあるように見えるという、そんな道具さね」

 「へえ~。そらほんまかいな?ちょっとうちにも貸したってや」

 

 もちろん構わない、と。周倉が遠眼鏡をその人物、さらしにはかま姿という出で立ちをした、董卓軍の将のひとりである張遼、字を文遠へと手渡す。

 

 「……ちょお、待ちや。これ、ちっともそんな風に見えへんで?」

 「……いや、霞殿?それ、向きが逆ですから」

 「……べたすぎる」

 「おお!ほんまや!はっはっは!……とまあ冗談はさておいて。おっ?!これは確かに、めっちゃ近う見えるで!ははっ、先鋒軍の兵の顔が、一人一人まではっきり分かるわ」

 「ほほお、それほどにか。どれ霞、私にも貸してくれ……おお、これは確かに!……っ?!あ、アイツは……っ!!」

 「華雄?どないしたん?」

 

 張遼の手からから遠眼鏡をひったくり、東の方から迫り来る連合軍のその先鋒を務める部隊を、遠眼鏡越しに華雄が見たその瞬間、彼女はその目を大きく見開いて、激しい歯軋りをし始めた。

 そしてその次の瞬間、華雄は遠眼鏡を無造作に張遼に押し付け、早くもその場から駆け出そうとしていた。そう、まるで野獣の如き光を宿した、武人の眼になって。

  

 「って、待て華雄!!いきなり何処に行く気やねん!?」

 「決まっている!!関から討って出て、連中の出鼻を挫いてやるのだ!!」

 「ちょっ!?い、いきなり何言ってんです、華雄将軍!!遠眼鏡で一体何を見たと……っ?!」

 「……連中の先鋒にはアイツが……孫文台が居るのだ!奴をこの目に捉えた以上、じっと関に篭っているなど、私には出来んのだ!!」

 

 その華雄の肩をがっしりと掴み、暴走しかけた彼女を制する張遼だったが、華雄はそれを即座に振り払い、なおも出陣することを強く訴える。

 楽就も周倉も、張遼と供にそんな華雄を必死になって諌めはするのだが、一度火のついた武人の心と言うのは、どうにも制し難いもので、華雄は彼女らの説得にも一切耳を貸す事無く、さらに語気を強めて己がその想いを猛らせる。

 

 「奴には……孫文台には大きな借りがあるのだ!私が私であるために、武人としての道を走り続けるために、必ず返さねばならん借りが、だ!」

 「華雄……お前……」

 「奴が、敵として私の前に現れた今こそが、その絶好の好機なのだ!……かといって、お前たちまで私の我がままに巻き込む気は無い。私が討って出たらこれまで通り、何もせずにじっと見ていてくれればそれで良い。さあ、三人ともそこを退いてくれ!もしどうあっても邪魔をすると言うのであれば……!!」

 

 自身の獲物である金剛爆斧を、張遼たちに向けて構え、力尽くでも通ると睨む華雄。そして。 

 

 

 「文台様!!」

 「……分かってるよ、冥琳。紫に赤字の華の牙門旗……葉雄(しょうゆう)の奴、か。さて、どうしたもんだか」

 

 反董卓連合軍の先鋒を務める、劉備、公孫賛、そして孫堅の部隊のその正面に見える汜水関。その距離は未だ半里(約1.5km)ほどあるが、そこからでも、孫堅のその両の眼には、はっきりとソレが映りこんでいた。

 紫の地に赤い刺繍の華の文字が、まるで鮮血の様にくっきりと見て取れるその旗は、汜水関の守将である華雄その人の旗である。

 

 「伯母上さま、連中……篭城して出てこない手筈になっていたのでは?」

 「……多分葉雄の……いや、今は華雄、だったね。奴の単独での暴走だろうよ。……あたしがここに居る事を知って、武人の血が騒いじまったんだろうさ」

 「……それを抑えられる者が、汜水の守将には居なかった……と?」

 「さあて、ね。ともあれ、出てきた以上は相手をしなきゃあなるまい。冥琳、玄徳と伯珪に伝令。葉雄…いや、華雄の相手はあたしらがするから、そっちは予定通り、関を攻めるようにと伝えな」

 「……御意」

 

 孫堅のその命を受けた周瑜はすぐさま、伝令兵を劉備と公孫賛の陣へと、それぞれに走らせる。それと同時に、自部隊にも直ちに戦列を整えるよう指示を飛ばし、怒涛の勢いで迫り来る華雄隊との戦いの準備に入って行く。

 

 「……蕈華。アンタは手を出すんじゃないよ?……あたしの代わりに、隊の指揮を取るんだ。いいね?」

 「……止めても、お聞き入れにならないのでしょう?」

 「ふ。……それじゃあ、頼んだよ。さて」

 

 きっ、と。姪に僅かな微笑みと供に、その一言だけを送った後、その鋭い眼光を華雄の方に向け、右手に持つ南海覇王を高々と掲げる。

 そして、天をも貫かんとするほどの、その轟なる声を響かせた。

 

 「……孫家の精兵達よ!これより、董卓軍随一の猛将たる、華雄将軍の部隊と我らは剣を交わす!されど何も臆するな!お前達にはこのあたし、江東の虎と呼ばれし孫文台が着いている!勇を振るえ!声を挙げろ!天に地に我らの武名、今こそ轟かせる時ぞ!全軍抜刀!かかれーっ!!」

 『うおおおおおおおっっっっ!!』

 

 反董卓連合戦。

 

 史書には『陽人(ようじん)の戦い』と記されている、この戦の最初の戦闘は、汜水関のその正面にて、華雄率いる三千の部隊と、孫堅率いる二万の部隊との激突により、その日の正午、ついにその火蓋が切って落とされたのであった……。

 

 ~つづく~

 

 

 狼「さて、反董卓連合戦、その戦いがついに始まりました、今回の仲帝記でございます」

 輝「三千対二万って・・・いくらなんでもあれは」

 命「霞たちは華雄を見殺しにする気・・・ではあるまいの?」

 狼「んなわきゃあ無いでしょ。関内部であの後どういう会話が為され、華雄が出陣する事になったのかは、また次回にてお知らせ・・・だけどね♪」

 輝「なんでそこのところ書かなかったの?」

 狼「盛り上がり重視」

 命「さよか」

 

 輝「ところでさ。話の中で孫堅さんが華雄さんのこと、葉雄って呼んでいたけど」

 狼「葉雄ってのは、華雄の正史における本当の名前だそうで。いつかそのネタ使いたいなーって、ずっと思っていたので、今回のお話に盛り込みました」

 命「何かの伏線なのか?」

 狼「そこらも次回、華雄と孫堅さんの戦いの中で明らかになります」

 

 輝「んで?一つ聞きたいんだけど・・・なんでわたしお留守番?」

 狼「特に意味は無い」

 輝「・・・ほほう」

 命「よさんか、輝里。親父殿がそうやってボケかますときは、大抵何か考えのあるときじゃろが。後書きでも言えない様な、な?」

 狼「・・・さ~て、何のことやら♪」

 輝「・・・ホントに何にも意味が無かったら・・・ワカッテルワヨネ?」

 

 狼「といった所で、今回はココまで!」

 輝「次回は汜水関前面における戦闘と、洛陽に残っている一刀さんたちの動きを、そのメインにする予定だそうです」

 命「そういえばこの世界の劉協・・・夢(命の実の双子妹)なのか?」

 狼「・・・それも近いうちに明かします。だから君の出番ももうちょい待つように」

 命「ふむ。ならば仕方あるまい。では皆のもの?また次回、この場にてお目にかかろうな?」

 輝「今回もいつも通り、沢山のコメント、お待ちしてますね?」

 狼「マナーは守って、ですよ?それでは皆さん」

 

 『再見~!!』

 

 


 
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