No.355153

真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 34話

lovegtrさん

今年最後の投稿。
赤壁の戦いの幕開け!
ではどうぞ!

2011-12-30 19:49:41 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:8740   閲覧ユーザー数:3203

「それにしても、やっぱり河の近くは寒いわね」

魏の大軍からこちらに振り向くと、雪蓮は自分の二の腕をさすり言った。

「もう11月だからな…しかし、この寒さはこちらにとっても有利となる。

 曹操軍はこの土地の風土に慣れていないから今頃、風土病になる者が多数出ているだろう。

 そこにこの寒さだ、体力が奪われ治りにくくもなり、軍の士気も落ちてくれるだろう」

冷静な解説を終えた冥琳に雪蓮は「さすが」と言いながら、抱きつき暖まろうとする。

「じゃが寒さでこちらの士気も落ちてはかなわん。こんな時は酒で仰いで体の中から温まりたいのう」

「全く同感ですな、黄蓋殿。そうと決まればこの趙子龍、秘蔵のメンマを持って来ますぞ」

「2人とも酒は程々にしろよ。しかし、暖をとらないと寒さにやられてしまうな。例えば火を熾すとか、そ

うしなくてはな……」

酒飲み2人をたしなめつつ、冥琳は蜀の軍師諸葛亮に目を向けそう口にした。

 

魏軍の様子、その存在を確かめた俺達は一度本陣に戻り、呉蜀両軍の主だった将を交えて軍議に入ることにした。

あの大軍を前に、先ほどまで軽口を叩いていたが、いざどう攻めるか話し合いになると皆口を閉じてしまった。

「あの大軍と正面から当たるのは、なかなか難しいですよね…」

「そうだね、桃香。だったら何か策を持って当たらないといけないな…

 冥琳、さっき策だどうとか言ってい

たけど、それは何なの?」

「ああ、しかしこれだけではどうも決め手にならない。

 あと、もう一押し何かが必要なのだが……」

その後、再び皆口を閉ざしウンウンと唸るだけとなってしまった。

「はんっ!策がなければ一か八か、決死の覚悟で噛み付いてやらば良いことよっ!」

「しかし祭様、いくら何でもそれは無謀では…」

「黙れ、亞莎。戦いとは結局、最後は気力じゃっ。

 数で勝てないのであれば、気概を持って臨むだけじゃ」

怒鳴られた亞莎は一瞬にして縮こまってしまい、他の者達は祭の言葉にぽかんと口を開けて聞いている。

「そんなもんもわからんとは、やはり大提督となってもいつまでも小娘のままじゃな、冥琳よ」

「……何だと」

「ちょっと冥琳、落ち着きなさいよ。祭もよ」

「嫌、いい機会だから言わせてもらいますぞ、策殿。

 だいたいいつも冥琳は策だどうだと言って姑息にしおって、そのおそまつな策を行うのは儂ら武官じゃ。

 それを、成功したら自分の手柄の様に、失敗したら儂らのせいにしおってからに、やってられんわ」

「黙れ黄蓋!これ以上言うのであればお前を処断する!」

「ああ、やれるものならやってみるが良いさ!」

「分かった……その首、刎ねてくれる!」

祭の挑発に、冥琳は我慢ならないと剣を取り出し、その先を首先に向ける。

「待て、冥琳!祭の首を刎ねるのは許さない!」

「なら一刀!どうしろと言うのだ!」

そこで少し考える。祭をここで殺してはいけない。

「……首を刎ねるのは、俺が許さない。

 しかし、大提督である周瑜を愚弄した罪に目を瞑ることはできない。

 …………黄蓋を鞭打ちの刑に処す!」

俺の言い渡しにより、外に出された祭は背中を出されその身に鞭を受けることとなった。

はじめのうちは冥琳を罵り叫んでいたが、祭といえどもやはりその痛みに顔を歪め、最後には意識朦朧としていた。

刑を終え倒れた祭は兵によって天幕に放り込まれた。

その後、軍議はもう続けられないということで解散となり、桃香たち蜀の面々は祭の事を心配しながら渋々

自陣に戻っていった。

呉の中からも、祭に対する処遇について不満を漏らす声が聞こえてきた。

夜、昼間に起きたことを考えている恋と音々音が近くにやって来た。

「一刀…祭、大丈夫?」

「恋…大丈夫だよ。今は罰のせいで動けないが、死ぬ程のものではない」

恋は、人の心が読めるのでは無いかというぐらい察しが良い。

だから無駄かもしれないが、出来るだけ冷静にそう答えた。

「あまり恋殿を心配させるななのです!」

音々音は俺の態度に少し不満があるのか両手を力いっぱい上に伸ばし吠えるように叫んだ。

もしかしたら音々音も心配なのかもしれない。

今思えば二人は家族と言うものをとても大切にする。

たくさんの動物と家族として一緒に暮らし、戦となればその天下無双の力を仲間を守るために使う。

だから二人は心配するのだ、祭と俺達が壊れてしまうのが怖いから。

「………恋、それに音々。これから何が起きても絶対に俺達を信じてくれ。

 俺達と祭の事を信じてくれ」

「どういうことなのですか?」

「…それは話せない。

 でも、1つだけ言えることは俺達と祭の絆はこれくらいで離れないと言うことだ。だから、な」

不安そうな顔をする音々音と恋の目を見て真剣に、そう答えると、

「……分かった、信じる。

 …恋、一刀も祭も皆好き。だから、信じる」

「ありがとう、恋」

「ふ、ふんっ。ねねもちょっとはお前の事は認めてやっているのです。

 …だから、失望させないで欲しいのです」

「音々もありがとう」

二人の頭を撫でてあげると、恋はくすぐったそうに目を細め、音々音は口ではブツブツ言いながらもうれし

そうに受け入れてくれた。

恋達と話終えると、慌てた様子で兵が走ってこちらにやって来た

「申し上げます!黄蓋将軍が兵を連れ陣から抜けました!」

「そうか………追撃は周喩隊にさせろ」

ついに動き始めたか。そう思い、報告に来た兵に指示を与え陣へと戻ることにした。

「恋たちも出る」

「いや、恋達は待機だ。もしかしたらこの隙に敵が攻めてくるかもしれないだろ」

「……………うん、分かった」

俺の言葉に恋は長く間をおき、頷いた。

さっきの信じてくれという言葉を、信じてくれたのかもしれない。

 

陣に戻ると祭の逃亡の報を受けて、兵達が慌しく動きまわっていた。

あることを確認しておきたいと思い冥琳を探したが、もう祭を追って出陣した後のようであった。

俺の、俺達の考えが同じだったら確認をとらなくても大丈夫であろう、とそう切り替える。

兵達に指示を出し終えると、諸葛亮と龐統が祭壇を作りその上に羽扇を持って立っていた。

「何をしてるんだ?」

「あ、孫権様。今からこの戦いのための祈祷を行おうと思い、その準備をしていたのです」

祭壇の中央に薪を組んで焚き火をおこし、その前に捧げ物が置かれていた。

準備が完了したらしく、2人は祈祷の舞を舞はじめた。

「う~ん、神さま神さま、お願いします」

「神さまー。神さまー」

羽扇を持った手を天に力一杯掲げ、お尻を振り振り、焚き火の周りを2人はまわる。

その姿は、うんとっても可愛い。

とても神に祈りを捧げている姿に見えないな。周りの兵達もその愛らしい姿に作業の手を止めてしまっている。

いかんいかん、俺も出る準備をしなくてはいけない。

「よし!俺達も出る準備をするぞ!」

船を用意させ、戦の準備を進める。

 

再び祭壇に目を向けると、もう祈祷は最終段階に入ったのか2人はその場に立ち止まり願いを込めていた。

「お願いします、お願いします。私たちに勝利の風を」

「神さまー」

その時、かすかに感じた。

今まで向かいから吹いていた風が、魏軍からの風が向きを変えた。

俺達の後ろから、追い風のように吹く風を。

この風を待っていた!

「これだ……全軍!出陣!目指すは曹操の首級一つ!!」

「「「おぉーーー!!!」」」

準備を終え、待っていた風に乗り出陣。

すると前方でかすかに明かりが灯るのが見えた。

その明かりは瞬く間に広がり、河を照らし、より大きくなろうとする。

赤壁はその名のように真っ赤に染まっていく、魏の船を飲み込む大火によって。

ということで、赤壁の戦いの開幕です。

赤壁の戦いは演義では大きな見どころの一つですが、史実ではあまり詳しくかかれてないようです。

魏の船が燃えたのも、演義では呉の火刑ですが、史実では曹操が自分で燃やしたとかいろいろあるよう。

孔明も全然活躍しないらしいですし。

だからいろいろと考える余地があったのかも知れません。

 

今回で一応、今年最後の投稿。ではよいお年を!


 
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