No.341518

異聞~真・恋姫†無双:三九

ですてにさん

前回のあらすじ:一刀への仕置きは生殺しが一番よく効く。
正妻を自認する二人は理性と暴走の狭間の境界線を巧みに操り、一刀の精神力を削り落とすのであった。

人物名鑑:http://www.tinami.com/view/260237

2011-11-30 16:46:30 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6891   閲覧ユーザー数:4929

この作品はキャラ設定等が一刀くんを中心に、わりと崩壊しております。原作重視の方はご注意下さい。

時代背景等も大きな狂いがあったりしますので、

『外史だから』で許容できない方は全力でブラウザバックを連打しましょう。

 

オリキャラも出ますので、そういうのが苦手という方も、さくっとまわれ右。

 

一刀君とその家系が(ある意味で)チートじみてます。

物語の展開が冗長になる傾向もすごく強いです。(人、それをプロット崩壊という)

 

この外史では一刻=二時間、の設定を採用しています。

それでもよろしい方は楽しんで頂けると幸いです。

 

 

「なぁ、きらきらの兄ちゃん」

 

「ん? どうした、塩っ気が効き過ぎてた?」

 

「いや、この豚の丸焼きや内臓の煮込みは初めて食べたけど、すげー旨いよ!

俺、こんな旨いの初めて食べたもんな!」

 

「そりゃ良かった! 俺も作り方は知っていても初めて作ったから、正直ドキドキしてたんだ」

 

キラキラ目を輝かせながら、肉と米を嬉しそうに食べる子供達を見て、

これだけでも大掛かりな野戦料理の見世物をやって良かったと思う。

 

だが、一瞬陰が落ちたこの男の子の表情は何だったのか・・・と思ったら、

多分妹さんなんだろう・・・の、見事な手刀が頭に振り下ろされていた。

 

「あいてっ!」

 

「ち、違う。兄、兵士さんたち、一番偉い人がが、話聞いてくれるから、ちゃんと話・・・する!」

 

「だからって言っても叩くこと無いだろ!」

 

「あ、兄が悪い」

 

ああ、妹に主導権をがっちり握られている兄か・・・。

元の世界の、俺と鞘香(さやか)みたいなもんだな。ここ一年は、そこに華琳が加わってたけど。

また、急にいなくなったって怒ってるかな。それとも、爺ちゃんに窘められているんだろうか。

 

・・・ん? 妹さんはどもってる、のか・・・。なんだ、何故か引っかかるものを感じるな・・・。

 

「・・・鞘香を思い出すわね」

 

『俺の座椅子』という定位置から動く様子を見せない華琳がぼそっと呟く。

俺の世界に来てから、華琳は鞘香との関係性に苦慮していた。

鞘香はいわゆる『お兄ちゃん』っ子という所があり、俺の恋人として颯爽と現れた華琳を当初、明らかに嫌悪していたのだ。

 

「頑張ってくれて、ありがとうな」

 

「一刀の妹だもの。やはり嫌われると悲しいじゃない。

ただ、今は逆に二人してまた行方不明になって、って怒っているでしょうね」

 

俺や爺ちゃん達も勿論助力したが、鞘香との関係を傍から見ても好意的な所まで築き上げたのは、

華琳の地道な努力や辛抱による部分が殆どだ。

『大したことではないわ』と嘯いた彼女に、俺は陰ながら、本当にどれだけ助けられているのだろうか・・・。

言葉がうまく出ない俺は、彼女を抱えている腕に少しだけ力を込めた。

 

「で、一刀に言いたいことって何なのかしら?」

 

口喧嘩を止める意味合いも込め、華琳は兄妹に声をかける。

その両親と思える一組の男女には手でそっと制し、特に慌てる必要は無い意志を示しながら。

 

「この軍の…まぁ、臨時ではあるけれど、代表のこの男は、良くも悪くも変わり者。

だからこそ、誰が相手であれ、直言を聞き、その上で答えを返す。

大人も子供も、将軍も民も、一刀の前ではあまり意味のない位づけね」

 

だから、そんなに顔を真っ青にする必要はないのだ、と華琳は軽く笑ってみせる。

子供たちもそういう雰囲気を分かっているから、周りに集っているのだ、と。

 

「じゃあ、兄ちゃんに姉ちゃんも聞いてくれ」

 

俺と華琳は真っ直ぐに少年の瞳を見据えて、軽く頷いた。

 

「あのさ、兄ちゃん達も『天の御遣い』なのかな」

 

「ん~。確かに俺はこの大陸の人間ではないし、こんな変わった衣服を着てるからな。

ただ、管輅の予言にある、流星とともに流れ降りた、乱世を鎮める御遣いかって問われると、違うと思うんだ。

俺自身に圧倒的な武や、神懸かった智があるわけではないからね」

 

「予言というのは曖昧なものだわ。流星と共に、という所だけを見るのなら、確かに私や一刀に資格はあるのかもしれない。

ただ、それは貴方達を導き、私腹を肥やしていた役人たちを打倒した、彼にも言えることだと思うの」

 

目を向けた方向には、縛られてはいるものの、

俺に瓜二つの姿形…目つきは多少鋭くて下世話なものが混じってるように見える、と華琳たちが評していた、

反乱軍の指導者である『御遣い』の姿がある。

俺にそっくりということで、雪蓮を始めとする呉の面々などに遊ばれているようだ…

『あ~ん』とかさせられたり、無理やり酒を飲まされてるな。

うん、頑張れ、そっちの俺…。

 

「違うって、こと?」

 

「『御遣い』を名乗るための最低限の資格を持っているだけ、ということかしら。

ただ、本当に乱世を鎮める力を持てるのかなんて、正直分かるわけがないのよ」

 

俺達の答えを聞いた少年は、ぎゅっと拳を握りしめ、懸命に、ぽつりぽつりと、絞り出すように、言葉を綴り始めた。

 

「ありがとう、兄ちゃん姉ちゃん。こんなガキに真剣に答えてくれて。すげー嬉しいよ。

…たださ、おんなじなんだ。俺たちにとって」

 

「…あ、あっちのお兄ちゃんも、優しい。ちょっと口悪い、けど、わ、私たちの生活、本気で怒って、くれた。

お、お、お父さんやお母さん、皆励まして、先頭で動いてくれた」

 

兄の言葉の続きを必死に紡ぐ妹。その兄妹を抱き締めながら、その父母も必死に頷いている。

 

「御遣い様は自ら率先して手を血で染めることも厭わず、我らを助けて下さいました。

貴方様方が我らを拘束もせず、こうして暖かく美味しい食事を与えて下さり、こうして団欒の輪を作って頂いたように」

 

「ワシらにとっては、貴方様たちも、あの方も『御遣い様』なんです」

 

『どうか! あの人の命を! 助けて下さい…!』

 

声を揃え、頭を深く下げる家族の姿に、周りの人たちも一斉に同じ姿勢を示し、同じ訴えを繰り返す。

 

その頭を下げる皆を見つめ、続いて周りを見渡し、

公路さんの心配そうな顔や、七乃さんや子敬さんの色んな思いを混じった表情、

愛紗や風たちの、信頼を込めて俺の判断を待ってくれている、落ち着いた表情や、

どんな決断を下すのか、むしろ楽しそうにしている風の、雪蓮たち孫呉の皆や孟忠さん。

 

そして、すっと俺の横に立ち上がった華琳が、手を伸ばして、俺を助け起こしながら、

晴れやかな笑顔で、俺の背中をそっと押してくれる。

 

「我らが主よ。どうぞお心のままに」

 

どこか芝居がかった言いようの彼女の言い方に、くすりと笑いを零しながら、

俺も続けて立ち上がり、静かに瞑目する。

 

『私は一刀に全てを捧げ、一刀に殉ずる。それが今の私の誇り』

 

この寿春の地に至る旅程の中で、雪蓮の問いかけに、華琳が誇らしげに返した言葉。

俺が華琳のために動き、俺と華琳の贖罪を果たす為に、この世界を駆けるように。

華琳も同じような想いを胸に秘めてくれていたと、雪蓮の悔しそうな表情と共に聞かされた時は、

どれだけ心が震えただろう。思うたびに身震いが走る。これからも思い出すたびに身を震わすことだろう。

 

覇道に生きた女性が、ただ一人の男の為に、俺の為に生き方を完全に変えた。

変えさせた、変えてくれた、男としてこれ以上の歓喜があるか。

 

応えるしかないだろう。華琳が求める、北郷一刀であるために。

華琳が第一というのは譲れないし、それは彼女だって判ってる。

その上で、俺に想いを、期待を寄せてくれる皆に、出来る限り応えてみせろと。

『覇王を従える男』ならば、それぐらいはやってみせろ、と。

 

華琳が寄せてくれる愛情と信頼だけで、俺は、行ける所まで行ってみせる。

 

「その瞳よ。私を遅行性の毒薬のようにじわじわと染め変えていった、貴方の瞳を持ち続けてくれる限り、私は生き方を変えたことを後悔などしない。

する訳もないわね」

 

眼を再び開いた俺に、華琳は瞳を潤ませつつ、熱の籠った吐息を漏らしながら、満足げに頷いた。

どこか扇情的にすら感じるのは、気のせいじゃないはずで。

 

「高過ぎる評価に涙が出るよ。が、応えてみせるのも、男の意地、かな」

 

抱き寄せてしまいたい…そんな衝動を抑えるために、俺はわざとカッコつけてみせるのだった。

 

 

「ふん。殺すならとっとと殺せよ、偽善者が」

 

目の前に連れられてきた、俺の分身が毒を吐く。

確かに鋭い目つきの中に、邪な意識も混じっている、と見える。

だけど、それだけじゃない。純粋な怒り。それを俺に向けている。

 

「孫家は、所詮荊州を自分たちのものとしようとして、

結果、君主が討たれたのを逆恨みし、さらに、袁家の保護下に入ったことを恨み、自分達の支配を取り戻そうとした侵略者だ。

民が苦しんでいることだって、自分達の決起にしか利用しようとしない。

下々にとっちゃ、結局搾取するお役人様連中と変わりはしないのさ!」

 

「貴様っ!」

 

先ほどまで愛玩すらしていた相手に手のひらを返された、という思いもどこかにあるのか、

ゴゥっと唸る突風と共に、雪蓮を筆頭とする孫家の面々から、この場を圧するような殺気が一気に放たれる。

それに中てられ、次々に顔色を失い、気を失う者も多数出た民達を見、分身はせせら笑う。

 

「はっ! 見たことか! この場で殺気を放つことで民がどうなるかなんて考えもしてやがらねえ!

そんな連中と仲良しごっこをしている御遣い! お前も同じなんだよ!

こんな施しを一度恵んだところで、救われなんかしねぇんだ!」

 

華佗や華琳、愛紗…貂蝉、風、朱里、愛理、元皓さん、といった、

俺個人についてきてくれる人たちは、倒れたり、気を失い倒れた人達の介抱へ即座に動いた。

こいつの言葉に思うところがあっても、俺を信じ、最優先でやるべきことを成す、と行動で答えてくれる。

 

俺が制止を仕草で示した為、憤怒を堪えるのに精一杯で動けない、雪蓮たち。

冷たい視線のまま、兵士達を留めたままの七乃さん。

それはとても対照的な構図で。

 

「…なぁ、俺。雪蓮たちはお前の挑発に乗ったけどさ。偽善者って自覚してる俺には通じないよ」

 

そう言いながら、分身を縛る縄を切り、俺は俺の前にどっかと腰を下ろす。

 

「…正気かよ?」

 

「ああ、正気だ。それに、お前ぐらいの腕じゃ、俺を如何にかなんてできないよ。

慢心でも何でもなく、これはただの『事実』だ」

 

「…ふん。そうだろうな。多少生い立ちが変わろうと、自分のことは嫌でも判るもんだ」

 

ふてぶてしさを前面に出しつつも、こいつも腰を下ろしたまま。

ああ、枝分かれしていようと、俺は俺なんだな、と思い知る。

 

「俺は、ある女性を何より最優先にして動いていて、他の人を利用することを厭わない。

その利用の範囲内で、親しい人たちを出来る範囲で守る。その生き方を肯定している」

 

「全ての人を守るんだ!…って、厨二病みたいな絵空事を抜かすより、よっぽど人として信用しやすいな」

 

「はは、違いない」

 

「…どうするつもりだ。孫家も汝南袁家も、どうにも本気でお前に全権を預けているように見える」

 

…あえて抑揚つけないように言ったつもりなんだろうけど、孫家を敵視し、袁家の部分に僅かに感情の色が出る。

人を正しく見る…見ようとする感覚、俺は元々、心を平静に置くことを爺ちゃんに鍛えられていたこともあるけど、

どちらかといえば、得意にしている。

さらにその感覚を、元の世界では爺ちゃんや華琳に、こちらに来てからは風に願って、積極的に鍛えている部分でもある。

交渉事の矢面に出ることが増えるだろうから、磨くに越したことは無い、という共通認識の元に。

 

とはいえ、未だに風に至っては、考えが全然読めないんだけどな。

薄くても意図的に出してもらわない限りは、経験則から離れると全然駄目だったりする。

 

「ハーレムでもやるのか?」

 

ニタァっと悪い笑みを浮かべながら、嬉しそうにコイツは問いかけてくる。

 

…あー、うん。確かに、俺が最初にこの世界降り立った時、こんな感覚持ってたなぁ。下半身に忠実に生きたというか。

外でも複数でもどんと来いハッハー! 月や詠がメイド服なのは俺の趣味じゃあああ!!! …とか言ってた。

ある意味、清々しいし判り易いからか、刺されずには済んだけど。

 

攻めてたよね、俺。今みたいに搾られるって思うことも無かった。

 

「…実際、毎晩根こそぎ吸い取られてみろ。三日と経たず、その台詞は吐けなくなる」

 

「腹上死上等じゃねえか! 今からでも変わってやるぜ!?」

 

周りには聞こえない程度に興奮した口調で…器用な奴だな…、目の前の俺は目を輝かせている。

ふふ、まるで昔の(肉体年齢は似たようなもんだけど)俺が再生されているようだぜ…。

 

が、本質はそうじゃないよな。なぁ、俺?

 

「公路さんや七乃さんは入って無いよ、それでもいいわけ?」

 

「…なんで、そこで美羽や七乃が出てくんだよ」

 

「俺ら以外にもさ、この大陸に『北郷一刀』が各地に落ちてる。

んで、俺の予測だけど、枝分かれした外史での各諸侯に対する御遣いなんじゃないかな、って。

陳留の曹孟徳だろ、南皮の袁本初だろ、天水の董仲穎、武威の馬寿成、北平の公孫伯珪に、

洛陽での目撃談と踏まえると、ひょっとすると帝の傍にも。

・・・まぁ、あくまで俺の予測込みだけど。正直出来すぎだと思ってる」

 

「・・・ハッキリ言いやがれ」

 

「お前は公路さんの元に降りた御遣いだ。が、何らかの理由で、七乃さんに敵視されて、城から追い出された。

その果てが、腐った古狸どもの一掃に繋がった、ってところじゃないのか」

 

「・・・ちっ。七乃には真名を許されたのかよ・・・この誑しが。ま、美羽に手を出そうとして、追い出されたんだよ、俺は」

 

美羽って公路さんの真名だよな? なんてこった。こいつはロ・・・。

 

「・・・先に言っておくが、俺が知ってるはずの美羽はとっくに十八だったはずだ。

だが、この世界のアイツはまだ十五だっていう。おまけに俺のことを覚えちゃいなかった。

・・・っておい、思い切り安心しきった顔するんじゃねぇ! 心底ロリじゃなくて良かったとか思ってるだろ!」

 

「ぜんぶセツメイしてくれてアリガトウ」

 

「完全に棒読みしてるんじゃねぇ! 遠い目もするんじゃ・・・ね・・・ぇ」

 

アイツの罵声が途中で掠れた理由、それは。

涙を両目に浮かべて、拳をきゅっと握り締めて、ふるふると身を震わせる、小動物みたく保護欲をそそるような袁家のお嬢様が、

俺のすぐ後ろで、もう一人の俺をその視線でしかと射抜いていたから───。


 
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