No.329207

化物語~日々物語~1“こよみサンデー~其ノ壹~”

月千一夜さん

化物語の需要、増えればいいなぁと思いつつ
リクに応えて、投稿します

ひとまず、平和な、平穏な、穏やかな
だけど・・・当事者からしたら、胃が痛くなるような

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2011-11-04 00:47:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5202   閲覧ユーザー数:4392

以前にも言ったとおり、僕は現在“受験勉強”という過酷な日々を過ごしている

必死に、頑張って勉強をしている

愛する彼女と、同じ大学に通う為に

等と言えば、聞こえはいいが

いや、実際問題間違ってはいないのだが

 

ーーー僕の彼女・・・“戦場ヶ原ひたぎ”は、つい最近“ツンデレ”を卒業した

そして、見事にデレた

それはもう、もの凄い勢いで

いや、もう“ドロ”って勢いかもしれない

わかりづらい、というか何だか響きが物騒かもしれないけど

ともかく、以前から可愛かった彼女が、さらに可愛くなったのは言うまでもないだろう

 

ーーーそんな彼女だ

もしかしたら

いや、もしかしなくても

僕が浪人なんてことになったら、本気で一緒に浪人しかねない

それだけは、何としても避けなければならない

そんなわけで、今日も今日とて、僕は必死に勉学へと励むのだった

が、しかしだ

 

 

「流石に、少しは気分転換もしないとな」

 

と、まぁそういうわけだ

 

今日は日曜日

本当なら朝から戦場ヶ原との勉強会の予定だったのだが、彼女の都合が突然悪くなったとかで

結局、夕方からとなったのだ

それまでは、自主的に勉強しようと頑張っていたのだが

流石に、朝っぱら、ずっと机に向き合えるかと言えばーーー“否”

はっきり言って無理だ

それに、根を詰め過ぎるのもよくないし

いや、まだ詰めてすらいないが

それでも、だ

折角の良い天気、しかも日曜の朝

部屋に籠りっぱなしなのは、いかがなものかと・・・と、思った次第なのだ

 

 

ーーー閑話休題

 

 

そんなこんなで僕は、いつものパーカーに着替えると

財布と携帯を持って、外に出たのだった

 

「ぶっちゃけ、朝からガハラさんの顔が見れなくて・・・テンション、上がらないんだよね」

 

・・・はい、ぶっちゃけちゃいました

そうです

朝から会えると思ってた、愛しのガハラさんに会えないからってテンション下がりまくりです

こんな状態で勉強とか、マジ無理っす

てなわけで、外に飛び出したわけですよ

 

これは、そんな日曜日の物語

 

 

 

 

≪こよみサンデー 其ノ壹≫

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

「ん~」

 

と、背を伸ばし、僕は歩いていく

日曜の朝っぱら、静かな街中を

コースは、いつもと変わらない

僕愛用の、散歩コースだ

見上げると改めて思うが、やはり今日は良い天気だ

うん、外に出てよかったな

 

「・・・と、あれは?」

 

ふと、そんな僕の視界の先

“ぴょこん”と、揺れる見覚えのあるツインテールが見えた

その背中には、もはやトレードマークとなっている大きな大きなリュックサックが背負われていた

そんな少女、見覚えのある少女のことを

僕はーーーよく知っている

 

「八九寺・・・」

 

 

“八九寺真宵”

 

蝸牛となった、小さな少女

帰るべき場所に帰れない、一人の“少女の霊”

ともあれ、それすらも、もはや過去のお話

しつこいようだが、遥か昔の物語

それらを今この場で語るのは、もう何度も言ったが無粋なことだ

それに、今の彼女は違うのだ

以前は例えるなら、一種の“地縛霊”

今はーーー二階級特進し、“浮幽霊”らしい(どちらも、本人の言葉だ)

 

とにかく、今の彼女は以前とは違う

人を迷わすこともなく、自分が家を探し彷徨うこともなく

ただ日がな一日、街を歩き回る可愛い小学生の“幽霊”だ

 

さて、話が長くなってしまったが

目の前には、その件の少女ーーー八九寺真宵

彼女は先ほどから何やらキョロキョロと辺りを窺っているが、未だに僕のことには気づいていないようだった

さて、こんな状況の中

この語りを聞く皆は、当然のことながら、僕が周りの目など一切気にせずに彼女に向って走っていくと

さらには、彼女を後ろから抱き締め、色んなところを触ったりと

それはもう、犯罪ギリギリなスキンシップをとるとでも

そう思ったことだろう

唯一つ・・・唯一つ、言わせてほしい

 

 

ーーー馬鹿にするな、と

 

 

ハッキリ言う

僕はもう、受験を控えた善良な一受験生なのだ

今は一時間でも、一分でも、一秒でさえ、勉強へと回さなければならないほどに忙しいのだ

ましてや、だ

今はそんなとても貴重な・・・それこそ、ウルトラマンが戦闘の為に使う貴重な三分間のような時間を

こうして、気分転換として、息抜きとして、次なるステップへと進む為の準備時間として

大事に、大事に使っているのだ

そんな貴重な時間を、小学生相手に使えるかどうかなんて

そんなこと、考えるまでもないだろう?

 

確かにーーー確かに、だ

昔の僕だったなら、彼女を見つけるなり、全力をもって駆け寄ったことだろう

だけど、だけどさ・・・それは、昔の僕の話

まだまだ青かった、若かった、色々と未熟だった頃の僕の話だ

けど、今は違う

今の僕は、進むべき目標も見据え、共に寄り添うべく彼女もいて

あの頃に比べると、全てにおいて大人になったといえよう

故に、八九寺

本当に、本当に申し訳ないことだが

僕は、君に構っている時間はないんだよ

 

 

「さて、行くか」

 

言葉を一つ吐き出し、僕は歩き出す

向うのは・・・“八九寺真宵がいる方向”

 

 

ーーーうん、まぁね

そんなことを思っていた反面、僕はこうも思うわけですよ

目の前に、ツインテールの小学生がいる

その光景を前にし、僕は思ったわけですよ

“本当にそれでいいのか?”と

いやいやいや、正直な話

あの、八九寺だよ?

目下、浮幽霊として街を歩き回っている為に、本当にたまにしか会えないあの八九寺が

今、僕の目の前にいるんだよ?

なのに僕は、それをスルーするのか?

ハッキリ言う

スッパリ言う

もう、断言しよう

 

ーーー無理である

 

 

「そっか、うん。無理なら、仕方ないよな、うん」

 

ああ、そうだ

本当に残念ながら

本当に遺憾ながら

この身が、この心が、彼女とのスキンシップを求めてやまないのならば

最早、僕からは何も言うことはないさ

唯々、その想いに、従うことしかできないのさ

 

「てなわけで・・・」

 

前置きが、長くなってしまったが

結局僕がやることなんて、唯一つ・・・

 

 

 

 

 

「はっちくじーーーーーーーーーーーー!!会いたかったぞ、コノヤローーーーー!!!!」

 

「キャァァァアアアア!!!??」

 

ーーーと、勢いよく

やっぱり、全速力で駆け寄って

案の定、というかいつも通り・・・彼女を思い切り、抱きしめることなのだろう

 

「久しぶりだなーー!元気だったか!?」

 

「キャーーー!キャーー!?」

 

「それじゃ、いつも通り触らせろ!揉ませろーーー!」

 

「キャーーーーーーーー!!!??」

 

言いながら、暴れる八九寺など知るものかと

僕は、彼女の胸を豪快に揉んでみせた

うん、うん・・・うん

相変わらず、素敵な触り心地・・・

 

「ガウッ!!」

 

「いってぇええええええ!!!???」

 

いてぇぇええ!!?

噛んだ、噛んできおった

僕の左手を、それはもう野犬の如く

恐ろしい勢いで、なんの躊躇いもなく

八九寺は、噛んできやがったのだ

僕は慌てて左手を彼女から離すと、彼女の体を開放する

 

「ガウ!!ガウ!」

 

八九寺は、野生に戻っていた

目が、目が恐いですよ八九寺さん

 

「どう、どう。落ち着け、八九寺!

僕だ、阿良々木だ、君の味方だ!」

 

「ガウ、ガウ・・・」

 

「ほら、覚えてるだろ?

君の大好きな、とっても素敵なお兄さん、阿良々木暦だ」

 

「ガウ・・・あ、あれ?

誰かと思えば、“小此木さん”じゃないですか」

 

「僕をそんな“雛見沢”という村の中、暗躍する作業着を着たオジサンと一緒にするな

僕の名前は“阿良々木”だ」

 

「失礼、噛みました」

 

「違う、わざとだ・・・」

 

「かみまみた」

 

「ワザとじゃない!?」

 

「かみマミッた」

 

「マミさーーーん!!って、ネタが限定されすぎてる!!!!」

 

“まど☆マギ”とか、知ってる人しか知らないよ

しかも、よりにもよってマミさんかよ

ていうか、八九寺知ってんのか

地味に凄いな

 

「まぁ、私は流行に敏感ですからね」

 

「だったらお前は、流行には乗れてねーよ。まど☆マギ、もうとっくに終わっちゃってるもん」

 

「ほむぅっ!!?」

 

知らんかったんかい

そして、驚き方すらその流れを貫くんかい

凄いのか、馬鹿なのか、判別がつかんぞ八九寺

 

「ていうか、久しぶりだな八九寺」

 

「そうですね、何だか久しぶりな気がします

つい最近は、岩にでも隠れてたんですか?」

 

「それはない」

 

受験勉強だ、馬鹿

よほどのことがない限りは、放課後は決まって勉強だしな

あんまり、自由な時間とかはなかった気がするし

 

「ま、こう見えても、僕だって受験生だからな

最近は頑張って、勉学に励んでたわけですよ」

 

「ほ~、そうだったのですか

“馬鹿々木さん”にしては、本当に頑張ってるみたいですね」

 

「・・・八九寺、非常に残念なお知らせだが、それはネタ被りというものだ」

 

「なんですと!?」

 

驚いていた

まぁ、まさか自分の“キャラ”が使われるとは思っていなかったのだろう

ドンマイ、八九寺

 

「むむむ・・・これは、私もさらなるレベルアップを図るほかありませんね」

 

「ほう、良い心がけだな」

 

「そしてアニメ版の“偽物語”では、私が主役を・・・!」

 

「そうはさせんぞ!

僕の月火ちゃんと火燐ちゃんの見せ場を、八九寺如きに奪わせはせん!!」

 

「うわ・・・自分の実の妹を“僕の”とか、ドン引きです」

 

「そこで、一気にクールダウン!?

あれ!?ちょっと、ここはノッテくれよ!!」

 

「近づかないでください。私、貴方のことが嫌いです」

 

「戻ってる!!?出会ったころに戻ってるよ!!?

そんなに、今の僕アウトだった!?」

 

せ、切な過ぎる!

初対面の時と同じ反応とか、切な過ぎる!!

ていうかメタな発言に、あえてノッテみたのに、このザマですか!?

 

 

「と、まぁ冗談はさておき

今日は、どうしたのですか?

勉学に励んでいるとか言っておきながら、こんなところをブラブラと」

 

「気分転換、または息抜きさ

ま、あんま根を詰めるのもよくないし

折角、こんな良い天気なんだ

外の空気だって、吸いたくもなるさ」

 

「ああ、そうですね

確かに、今日は良いお天気です」

 

などと、二人で見あげた空は、やっぱり快晴

昨日の天気なんて覚えちゃいないが、“本日もまた、晴天なり”なんて、言ってみたくなるくらい

今日は、本当に良い天気だ

 

「あ、そうだ“パララぎさん”」

 

「僕をそんな“頭の中パッパラパー”みたいな名前で呼ぶな

僕の名前は、阿良々木だ」

 

「では、阿良々木さん

折角こうして出会えたのですから、ご一緒にお散歩と洒落込みませんか?」

 

 

“どうです?”と、八九寺

これは、何て言うか珍しいっていうか

まさか、八九寺のほうからお誘いがあるなんて

嬉しいっていうか、願ったりかなったりっていうか

そもそも、八九寺が言わなければ、恐らく、というか確実に

僕から、その台詞を言っていただろう

何せ、今日は夕方まではフリーなのだから

 

 

「そうだな

一緒に、散歩と洒落込んでやるか」

 

だから、僕は言う

ーーー無駄に、決め顔で

いつの日か、僕が出会った奴のような言い方をするならば

『ーーーと、決め顔で言ってみた』なんて

そんな、本当に無駄にかっこつけて

僕は、八九寺に笑い掛ける

 

「なら、お隣失礼しますね」

 

「ああ、構わないさ」

 

わざわざ一声かけてから、僕の隣を歩く八九寺

並んでみれば、身長の差は歴然で

比較的・・・というか、個人的にcomplexな僕の身長よりも低い八九寺は

やっぱり、年相応な少女に見えた

 

 

「それでは、行きましょうか♪」

 

「ああ、そうだな」

 

そして、彼女は笑うのだ

“ニッ”と、その身長と同じく

やっぱり、年相応な笑顔で

彼女は、笑ったのだった

 

 

 

ーーーそんなわけで、始まった八九寺とのお散歩は

この後、僕の想像を遥かに超えて

まぁ、胃が痛くなるような、そんなオチが待っていたことなんて

やはり、今の僕は知らなかったのだ

 

 

 

 

ーーー次回へ続く。


 
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