No.278369

助手にセクハラをするだけの世界線

和風さん

そんな世界線があってもいいじゃない  
※シュタインズゲートの2次創作であり、現実の世界線とは一切の関わり合いが無いことを記述しておきます。あと過度な性的セクハラを期待した人は、まゆしぃに怒られる前に戻った方がいいです。

2011-08-19 09:09:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2896   閲覧ユーザー数:2863

 

 0.566──

 

 

「ねぇ、岡部倫太郎」

「なんだクリスティィィナよ。俺は今忙しい、後にしてくれ」

 まるで清潔とは程遠い無精ひげ白衣、それとオールバックの青年──科学者と言えばそうとも見える男だ。

 その男とはまるで対照的な女が居た。こちらも白衣に身を包んでいるが、こちらは上品さや清潔さがにじみ出てくるようだ。いつもはクールさが支配する表情も、何故か今日は頬に赤みを帯びていた。

「そう。でも私も凄く重要な案件なのよ」

「ほぅ。この俺の、そして未来ガジェット研究所の世紀の大実験。運命石の扉(シュタインズゲート)の謎を解き明かす為の準備を中断するほどの価値が、それにはあるのかね?」

「えぇ……なんで、なんで私が椅子に縛られてるのよーっ!!」

 

 ここは未来ガジェット研究所。秋葉原にある大檜山ビル2階、そこに研究所は存在する。

 狂気のマッドサイエンティスト"鳳凰院凶真”と愉快な仲間達と助手が、世界の覆う機關の侵略と日夜戦い続けているのだ!

 ちなみにこの助手は、私の合図ひとつで巨大化も可能──なように改造手術を施す予定だ。

 

「っておい、何サラッと言ってるのよ!」 

 よくドアや窓を閉めきって実験してる為か、割とホコリっぽい研究所。その中心でパイプ椅子に手錠で両手と両足を縛られた牧瀬紅莉栖(通称:クリスティーナ)は吠える。

「私がちょっと仮眠してる間に、何してくれてるのよ!」

「実はな助手よ。俺に運命探知の魔眼(リーディングシュタイナー)という、まさに運命から授かった能力があることは周知の事実だが──」

「ちょっと、話長くなるんなら解いてよ」

「どうやら、いやもしかしたらこの能力は──強い伝染力があるかもしれない」

「……は?」

「フェイリスのDメールを取り消した時の顛末。覚えているか?」

「──え、えぇ。あんたが説明してくれた通りのことは、一通り」

 少し目線を伏せながら紅莉栖は答える。

 フェイリスのDメール──それは、愛を知りたがった少女の願い。

 そのせいで秋葉原からは"萌え”が消失し、代わりに彼女の父親の存在する世界線。

 ある理由から通常、消えてしまった世界線での記憶は岡部倫太郎しか持たないのだ。しかし岡部の説得によりフェイリスにも、一部だが記憶が蘇ったのだ。

「そこから俺は考えた。もしかしたら凄く強い想いのある記憶は、世界線を越えて存在し続けるのではないか。それはまさに、運命探知の魔眼(リーディングシュタイナー)ではないか! しかしこれは俺しか持たぬ能力──つまり、もしかした強すぎる波動が、身の回りの人間にも影響を与えている──そう考えたのだ!」

「──ま、まぁ確かにあんたのその、運命探知の魔眼(リーディングシュタイナー)は詳しく解析した訳じゃないし、そういう特性があってもあり得ると言えばそうだけど──って、まさか岡部」

「鳳凰院凶真と呼べと言ったはずだ、クリスティィィィィナよ」

「じゃーあんたもその変な呼び方ヤメロ! ちゃんと紅莉栖と呼びなさいよ! ──じゃなくて、まさか私をその実験台にするってこと?」

「そのとぅぉぉぉぉりぃだ助手よ。今から俺が、お前の魂に刻まれるほどの、そんなことや、あんなことまで行い、次にDメールの取り消しを行った世界線で、覚えているかどうか──それを試すのだ」

「あ、あんなことやそんなこと、ですってぇ!!」

 頭の回転が速く、想像力も豊かである彼女だ。どんなことを考えたのか顔どころか耳まで真っ赤にしながら暴れるが、手錠はそんなことでは外れない。

「おやおや、どんなことを考えのだ。このHENTAI耳年増助手め!」

「う、うるさい! そ、そんなことしてみなさいっ! で、出るとこ出てやるわよ!」

「ふふん。その程度では、この鳳凰院凶真様のあふれる好奇心と探究心と、あとちょっとの下心を止められやしない! それに、むしろ次の世界線まで貴様がそのことを覚えていたら、実験は大成功となる訳だ。フゥハッハッハッ!」

「────なさいよ」

「おや、助手よ。何か言ったか?」

「やれるもんならやってみなさいよ!!」

 窓を閉めきっていても階下のブラウン管工房やご近所にまで聞こえそうな大声で紅莉栖は叫ぶ。

「アンタみたいなチキン童貞に、そんなことができるもんならやってみなさいよ! どうせ出来ないでしょ。日がな一日、@ちゃんねるの物理板でカキコばっかしてるようなリアル童貞に、私をどうこうできるもんですか!」

「フゥハハッハッハッ! それは俺に対する挑戦と受け取ったぞ、助手よ!」

「な、何よその自信……い、いつもあんたらしくな──あっ!」

 ここで初めて紅莉栖は、岡部倫太郎の左手に握られていたソレを発見した。

「ふふっ、気づいたか。そう、俺はこの実験の為に、ついに悪魔の飲み物に手を染めてしまった──もう後には戻れない。進むのは、未来ガジェット研究所の栄光ある光の道なり!!」

「って、ビールで酔っ払ってハイになっちゃってるだけじゃないの!?」

「まず初手はソフトに行ってやろうではないか。この鳳凰院凶真ほど慈愛と純情で満ち溢れる男もおるまい」

「狂気のマッドサイエンティストとしてどうなのよ、それ……」

「ふふん。恨むなら、この滾る好奇心を生み出す科学者としての性を恨むのだなっ」

「くっ──」

 せめての抵抗に紅莉栖は眼を瞑り、歯を食いしばりながらできるかぎり身を寄せる。

 そんなことをしても身体の自由を奪われてる限り無駄であり、むしろそういうのが劣情をそそる──と某板で書いてあったが、時既に遅し、だ。

 

 ふわっ──。

 

「……ん?」

「ふふふっ。どうだ、これは素晴らしいほどの衝撃だろう」

「え、と──」

 少々酒臭い岡部倫太郎の顔が紅莉栖の正面にあり、その右手は彼女の頭に添えられていた。

 いや、ぎこちない動作で前後している──これは、

「俺の撫で撫ではまゆり直伝でな。破壊力は、核融合に匹敵するのだ」

「え、えぇ……確かに、その、核融合並ね」

「ん? 助手よ、何故眼を逸らすのだ?」

「う、うっさいわね!」

「? よく分からんが──ともかく次のステップだ!」

「……ごく」

 岡部は紅莉栖の白衣を二の腕辺りまでまくり上げると、そこを掴んで揉みしだいた。

「ひゃっ、ちょ、ちょっと何してるのよ」

「──ふむ」

 ぷにぷにぷに──。

 一心不乱に二の腕を揉まれ、どこかくすぐったいような、とにかく落ち着かない気分になった紅莉栖は研究所内に視線を移す。

「────うむ」

 と、しばらくして、満足したのか岡部は白衣を元に戻した。

「い、今のになんの意味があったのよ」

「ほぅ。博識な俺の助手たる者が、そんなことも知らんのか?」

「はぁ。まぁ酔っぱらいの思いつきそうなことなんて、分かんないわよ」

「では教えてやろう。某ちゃんねるでは、ジョン・タイラーと共に噂された伝説がある。それはっ!」

「──それは?」

「二の腕は、女性の胸と同じ柔らかさであると──」

 

 

 間。

 

 

「こ、ここここの最低セクハラ野郎!!」

 今度は耳どころか、髪の毛が逆立つほどに蒸気する紅莉栖。

「アンタなんかあぼんされちゃえばいいのよ! 水遁で流されちゃえ!! このバカ! 変態!!」

「フゥハッハッハッ! どうやら順調に魂に我が情報が刻まれているようだな。では次のステップは──こんなものでは済まないぞ」

 残ったビールを一気に飲み干し、少し据わった表情になった岡部に少し引き気味になる紅莉栖。

「ど、どうしようって言うのよ」

「うむ──」

 テクテクと紅莉栖の周囲を徘徊したかと思うと──耳元へ一気に顔を寄せ、

「ふぅ」

「あっ、ひゃんっ!?」

「な、何奇妙な呪文を垂れ流してるのだ!」

「アンタが耳に息なんか吹きかけるからでしょっ。よ、弱いんだから止めてよね」

「ほぅ、それは良いことを聞いた!」

「げっ、しまった……」

「もう遅いぞ、助手よ。さぁ、この鳳凰院凶真の攻めに、貴様は耐え切れるかな!?」

 

「ひゃんっ、こら、ちょっとヤメ」

「あっ、そ、そこはぁ!」

「ぅ、ぅんっ。ちょ、やめなさ──」

 

 10分後──。

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

 息の吹き過ぎで息切れしているのと、悶えすぎて息切れのする男女がそこには居た。

「な、なかなかやるではないか」

「あ、あんにゃの酒臭い息なんか、どうってことないわよ」

 動揺のし過ぎで舌が回ってない紅莉栖であった。

「ふむ。そろそろ我が世紀の大実験も、大爪に入るべき時が来たようだな!」

「えっ、もう大爪!?」

「ん? なんだ助手。不満か?」

「い、いや、そんなことは、べ、別に無いわよっ。ていうか、早くコレ取りなさいよ」

「だが断る──この鳳凰院凶真が最も好きな事のひとつは、自分で賢いと思ってる助手に『NO』と断ってやる事だ…」

 

 ド ド ド ド ド ド──。

 

「いや、その奇妙なポーズとかどうでもいいから」

「ふむ。では行くぞ!」

「くっ──」

 フェイントのつもりか、いきなり大げさに両手を広げ、今にも襲いかかるような仕草に思わず眼を瞑る紅莉栖。

 今までの行動はまさに、この時の為の準備運動程度でしかなかったのだろう。

 最初に想像した通りの出来事が我が身に起こる。そう思うと紅莉栖は、恐怖と嫌悪感と──少しの好奇心が頭を埋め尽くした。

 

 間。

 

 間。

 

 間?

 

「むむむ──」

「なにがむむむ、だっ! 岡部、もしかしてあんた──考えてなかったとか?」

「な、何を言うかクリスティィィナよ! この緻密で繊細な鳳凰院の計画に、抜かりなぞある訳が無いだろ!」

「……正座」

「ん?」

「ちょっとそこに正座しなさい」

「……はい」

 視線だけで射殺しそうな勢いで睨みつける紅莉栖に、思わず素直に応じる岡部。

「なに? 結局、特に深く考えもせずに私を拘束して? それでやったのが頭を撫でる、二の腕を揉む、息を吹きかける──?」

「そ、そういうことになるな」

「巫山戯るのも大概にしなさいよっ!! なにそれ、割と本気で怖かったりしたんだからね! きょ、今日で私のバージンが消失するかもって覚悟もしてたのに! それがなに!? JCが休憩時間にやってるようなのを妄想してみました。童貞乙、みたいな貧相なことしか思いつかないで、それでよく狂気のマッドサイエンティストを名乗れたわねッ!」

「──バージン?」

「そこに食いつくな!!」

「では逆に問おう助手よ。俺はどうすれば良かったのだ!!」

「え、そりゃあ──橋田さんのよくやってるギャルゲーでやってそうな、アレよ」

「アレ? 謎の触手に捕まったヒロインが、何故か都合よく服のみを溶かす酸を放出するようなアレか? そして裸になったヒロインがらめぇぇとか叫ぶアレ?」

「ちょっと違う、けど──べ、別にそういうの期待した訳じゃ……」

「なるほど。ならば今からそういう謎物質を作り出せばいいの──」

 いきり立った岡部は方向転換しようとした所で、足をもつれさせ──そのまま前へとすっ転ぶ。

「いやだから、別に私はそういう体験を──」

 すっ転んだ岡部の先には当然、紅莉栖が居る。

 激突は必然である。

『っあっ!!?』

 パイプ椅子ごと押し倒す形になってしまい、岡部の顔は紅莉栖の顔の下辺り──有り体に言えば、胸元である。

 背中と軽く後頭部を撃った紅莉栖がその事実を確認したのは、その3秒後。

「って、岡部ッ! あんた、どさくさに紛れて、な、何やって!!」

 あいにく両手は塞がれ、もしもこのまま欲望のままに目の前の男が行動したとすれば──最初に想像したあんなことやそんなことが現実になることであろう。

 それになにより、薄い服を通して感じる体温がどこか心地良く感じてしまってる自分が、とてつもなく恥ずかしい。

「ちょっと、聞いてる!?」

「……紅莉栖」

「聞いてるってそれはこっちの──ってあんた、今私の名前、」

「まゆりが、死んだのだ」

「……え? な、何を言って……」

「フェイリスのDメールを消したら、まゆりが死ぬ日が1日延びた。そこで俺は考えつくあらゆる手段を行った──お前の言う通りだ。紅莉栖。俺の貧困な想像力では、やはりまゆりは救えなかったのだ」

「岡部──」

 いつもの妄想などではない。ただただ己の無力感と共に真実を語っている岡部に、紅莉栖もまた呆然とするしかなかった。

「バイト戦士──鈴羽の言う通り、やはり1%の向こうへ飛ばなければならないのだろう。それまでに、俺は何度、あいつが死ぬ様を見れば良いのだろうか」

 岡部は身を起こし、ポケットに入れていた鍵で紅莉栖の拘束を解き、彼女を抱き起こした。

「あ、ありがと──」

「いや……こんなものに手を出してしまったのも、どこか疲れていたのかもな」

 潰れたビールの缶を放り出し、ソファへと身を静める岡部の顔は──彼女には、少し老けて見えた。

「まゆりは死なせない──その世界線へたどり着くまで、立ち止まってはダメだ。──すまなかったな」

「い、いいわよ。あんたのその破天荒な行動にも慣れたし──」

 紅莉栖は一瞬だけ躊躇する素振りを見せ、そのままソファの後ろへ回りこみ、抱きしめるように両腕を回す。

「全く、ようやく私の名前を呼んでくれたと思ったら……相変わらずバカなんだから」

「紅莉栖?」

「別にいいのよ。疲れた時は、こうして立ち止まっても。どの世界線にだってまゆりも、橋田さんも、漆原さんも──わ、私だって居るんだし。頼ってもいいのよ? 私たちは、仲間なんだし」

「仲間、仲間か──そうだな。その通りだな」

 そう言って岡部は立ち上がると、未来ガジェット008──電子レンジ(仮)の前までやってくる。そこには装着した者の記憶を過去へと飛ばせるタイムリープ装置(見た目にはヘッドフォン)もある。

「行くの?」

「あぁ、次はるか子のDメールだ」

「そう。……岡部」

「なん──」

 振り返った岡部を口を塞ぎ、柔らかな何かと薄く甘いような匂いに包まれた。その正体に気づく前に、紅莉栖は岡部から離れる。

「──忘れないでよね。どんなことがあっても、私は岡部倫太郎の味方よ」

 恥ずかしさで逃げ出したい衝動を必死に抑えたかのように頬を紅潮させながらも、瞳はずっと岡部を捉えて離さなかった。

「──あぁ、覚えておく。それでは、行ってくる」

「えぇ。いってらっしゃい」

 

 まゆりは死なせない。

 例え、それに至るまでがどんなにも辛かろうと──俺には仲間が居る。

 大切な、大切なラボメンが居る。

 そのことを、俺は忘れない。決して──!

 

 
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