No.216621

真・恋姫†無双~赤龍伝~第58話「襲撃」

さん

前回の続き。
許貢の残党による襲撃です。
そして、毒矢が雪蓮を狙います。

この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に

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2011-05-14 03:14:59 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:3839   閲覧ユーザー数:3274

真・恋姫†無双~赤龍伝~第58話「襲撃」

 

 

 

許貢の残党を追って、赤斗と雪蓮は窓から外に出た。

 

思春「雪蓮様っ!」

 

外では、思春が一人で残党たち三人を相手していた。

 

雪蓮「思春!」

 

思春「ご無事でしたか。賊の侵入を許してしまい、申し訳ありません」

 

残党との距離を取りながら、思春が雪蓮に近づく。

 

雪蓮「私は大丈夫よ。赤斗も一緒に居たしね」

 

そう雪蓮が言い終えると同時に、思春が赤斗を睨みつける。

 

赤斗「はは……思春こそ怪我はない?」

 

思春に睨まれた赤斗は、一晩中雪蓮の部屋に居た事を笑って誤魔化した。

 

思春「ふん。私なら大丈夫だ」

 

赤斗「それは、よかった」

 

そう言っている間も、残党たちはじりじりと距離を詰めてくる。

 

赤斗「けど、よくここまで侵入できたな。思春、増援は?」

 

思春「先ほどから呼んでいる! だが、誰も来ないのだ」

 

雪蓮「確かに静かすぎるわね。私たち以外に誰もいないかのようね」

 

赤斗「これだけの騒ぎなのに、誰も気が付かないなんて変だね」

 

早朝とはいえ、これだけ騒ぎなのだ。

 

誰も気が付かないなんておかしい。

 

許貢の残党②「ぐううぅぅっ、そそそ孫、さっさささ策くくぅぅぅ」

 

許貢の残党③「ここ……ここ殺ろろろろ……っすうすす」

 

許貢の残党④「がががあぁぁ、ぎぎあ……いいじきえりあ」

 

許貢の残党たちは言葉すら忘れてしまったかのようだった。

 

赤斗「さて、どうする?」

 

雪蓮「決まっているでしょ♪」

 

思春「全員、斬る」

 

赤斗「やっぱり」

 

雪蓮「赤斗。こいつらの事、助けたいなんて言わないでしょうね?」

 

赤斗「……大丈夫だよ。覚悟は出来ているよ。それに、今の僕にそんな余裕はないから」

 

雪蓮「それを聞いて安心したわ」

 

思春「…………」

 

許貢の残党②「かた……た、たきいぃいぃっぃぃ」

 

許貢の残党③「きょきょ、こぉ……ううう」

 

雪蓮「来るわよ」

 

一斉に残党たちが、襲いかかってきた。

 

 

残党たちが猛攻を仕掛けてくる。

 

本来なら、それほどの力がない残党たちだったが、今は雪蓮や思春が手こずる程の強さを見せていた。

 

赤斗も雪蓮を守る余裕などない。

 

しかし、赤斗は残党たちの異様な力と状態に心当たりがあった。

 

残党たちは、許昌で曹操を襲った給仕係にそっくりなのだ。

 

あの時の給仕係は、限界以上の力を酷使して、腕や脚の筋繊維が切れ、骨も所々砕けていた。

 

今、襲ってきている残党たちも、本来の自分の力を大きく逸脱している。

 

赤斗「まさか、司馬懿に! ……なら、手は抜けないな。“水月”!」

 

残党たちの異様な力に対抗する為に、赤斗はかつて関羽を追い詰めた流水と月空の奥義同時発動を見せた。

 

赤斗「はあぁぁーー!」

 

許貢の残党②「ぎぎ?」

 

赤斗と戦っていた残党は、赤斗の変化に気が付いて一旦後方に退こうとした。

 

だが、“流水”で相手の流れを先読みし、“月空”で相手の気配や動きを察知している赤斗の斬撃の方が早く決まった。

 

許貢の残党②「ぎひゃっ!」

 

赤斗の斬撃により、残党の一人は倒された。

 

赤斗「雪蓮、思春!」

 

残党を倒した赤斗は、すぐ様二人の安否を確認した。

 

雪蓮「大丈夫よ。もう終わるから!」

 

思春「ふん」

 

赤斗の心配をよそに、雪蓮と思春は先ほどと違い、余裕で残党たちを相手していた。

 

自分の力を大きく逸脱した力は、どうやら長続きしないようだった。

 

赤斗「ふうー。…………!!」

 

一息つこうとした赤斗は、鋭い殺気に気が付いた。

 

赤斗は殺気がした方を振り向いた。

 

そこには、弓矢を構えている許貢の残党がいた。

 

ビュッ

 

そして、矢は雪蓮に向けて放たれた。

 

 

赤斗「しぇれーーーーん!!」

 

赤斗の声が響く。

 

赤斗の目には、矢がゆっくり動いているように見える。

 

しかし、それ以上に自分の動きが遅く感じた。

 

先ほどの奥義同時発動の為に、身体が思うように動けない。

 

だけど…………、

 

赤斗(ぜったいに、死なせるか!!)

 

赤斗「“疾風”!!」

 

残された力を全て振り絞って赤斗は、奥義“疾風”を発動させた。

 

赤斗は爆発的な加速と走力で、雪蓮のもとへと疾走する。

 

赤斗「邪魔!」

 

雪蓮と戦っていた残党に、赤斗はそのままの勢いでぶつかった。

 

ぶつかった残党は吹っ飛ばされ、勢いよく壁に激突する。

 

雪蓮「な、なに?」

 

いきなり、自分の前に赤斗が現れたので、雪蓮は少し驚いている。

 

赤斗「はあ、はあ、雪蓮。無、事……だね。はあ、はあ、はあ」

 

赤斗は息を激しく切らせながら、雪蓮に怪我がない事を確認した。

 

赤斗「ははは……、よかった……」

 

赤斗は笑いながら、その場に倒れた。

 

雪蓮「え? ちょっと、赤斗? ……これは!」

 

雪蓮は倒れた赤斗の右腕に矢が刺さっている事に気が付いた。

 

雪蓮に向かって放たれた矢は雪蓮ではなく、矢の軌道上に割って入った赤斗に命中したのだ。

 

 

思春「貴様らーー!」

 

思春は目の前の残党を斬り倒し、矢を放った残党に向かって駆けだした。

 

そして、一瞬にして残党を斬り伏せた。

 

雪蓮「赤斗、しっかりしなさい!」

 

雪蓮は赤斗を抱き起こして、刺さっている矢を抜いた。

 

赤斗「はあ、はあ、はぁ、き、気持ち……悪い、はあ、はぁ、はぁ……」

 

雪蓮「矢じりに毒が塗ってあったのね。待ってなさい。すぐに医者を」

 

玄武「無駄だ」

 

先ほどまで赤斗、雪蓮、思春や残党たちしかいないと思っていたが、玄武が新たな残党たちを連れて現れた。

 

玄武は魏軍の鎧は纏っておらず、黒の衣を纏っていた。

 

雪蓮「!!」

 

思春「何者だ!」

 

玄武「我が名は玄武。そして、その矢じりに塗られた毒は特別製だ。医者に診せても助からない」

 

赤斗「はあはあ、お前、官渡の時の……」

 

玄武「ひさしぶりだな。風見赤斗」

 

雪蓮「赤斗の知り合い?」

 

赤斗「官渡で、はあ、はあ、命を狙われた」

 

雪蓮「今回も懲りずに、赤斗を狙いにきたってわけ?」

 

玄武「いや、今回は孫策。貴様の命を貰いにきたのだが……あの役立たずどもめ、どんなに力を与えてもカスはカスか。満足に主人の仇も討てんとはな」

 

玄武は蔑んだ目で、倒れている残党や、まだ後ろで待機している残党たちを見た。

 

雪蓮「ふーーん。じゃあ、あんたが黒幕なのね」

 

玄武「そうとって貰って構わない」

 

雪蓮「……そう。思春!」

 

思春「はっ!」

 

雪蓮「赤斗を医者のもとへ」

 

思春「雪蓮様は?」

 

雪蓮「私は、こいつを殺してから行くから」

 

玄武「無駄だ。ここからは逃げられないし、外から助けが来る事もない」

 

雪蓮「何ですって」

 

玄武「おかしいとは思わないか? これだけ騒いでいるのに、兵士が一人も来ない事を」

 

雪蓮・思春「…………」

 

赤斗「はぁはぁ、け、結界か!」

 

思春「何だそれは?」

 

赤斗「簡単に言うと、はあ、はあ、この辺りを外から遮断しているんだ」

 

雪蓮「じゃあ、どうすればいいの?」

 

赤斗「はあ、はあ、ぐっ。天の世界のお決まりでは、はあ、はぁはぁ、結界を張った張本人が自ら解くか、死なないと外には出られない」

 

玄武「その通りだ。さすがによく知っているな。だが、もう終わりだな」

 

雪蓮「?」

 

赤斗「うっ……がはっ……ごほ、ごほ……」

 

赤斗が大量の血を吐きだした。そして、赤斗の意識は薄れていった。

 

雪蓮「赤斗っ! 待ってなさい。すぐにこいつを殺して、医者の所に連れて行ってあげるからね」

 

雪蓮と思春が、玄武に向かって武器を構えた。

 

玄武「ふふ……二人がかりか。面白い」

 

雪蓮と思春の二人を前にしても、全く臆する事無く玄武は剣を抜いた。

 

 

ずずーーーん

 

一同「?」

 

大きく鈍い音が響く。

 

ずーーーん

 

雪蓮「なに?」

 

ずずーーーーーーーん

 

ピシっ

 

思春「雪蓮様! あれを!」

 

思春が何もない空中を指差す。

 

雪蓮「何あれ?」

 

空中に亀裂が入っている。

 

玄武「まさか!」

 

ビキっ、ビキっ……

 

空中の亀裂がどんどん広がっていく。

 

ずずーーーーーーーん

 

ビキっ、ビキっ、ビキっ、ビキっ…………

 

ガッシャーーーーン

 

まるでガラスが割れたような音が辺り一面に響くと同時に、先ほどまでの静かさが消えた。

 

人の声や鳥の泣き声など、いつもと変わらない音が聞こえてきた。

 

 

玄武「馬鹿な! 結界が外から破壊されるなんて!」

 

恋「あっ、赤斗…見つけた」

 

そう言いながら恋が現れた。

 

雪蓮「恋っ!」

 

玄武「呂布っ! 力任せで結界を破ったのか……バケモノめ!」

 

そう言うと玄武の周りに霧が立ち込めてきた。

 

玄武「……まあいい。目障りな風見赤斗を始末できた事だしな。今日はこれで退かせてもらおう」

 

思春「逃がすか!」

 

思春が玄武に斬りかかったが、玄武の姿は霧の中に消えた。

 

残っていた残党たちも、いつの間にか逃げ去っていた。

 

恋「……消えた」

 

雪蓮「逃げられちゃったわね。…………そうだ、赤斗!」

 

雪蓮たちが赤斗のもとに駆けよる。

 

雪蓮「赤斗。しっかりしなさい! 今、医者のところに連れて行ってあげるから!」

 

赤斗「う、うう……雪蓮?」

 

雪蓮の声で赤斗は目を覚ますと、蓮華が数人の兵を連れてやってきた。

 

蓮華「姉様っ! 緊急事態です! ……! なっ、これはどうしたのですか?」

 

異変に気が付いた蓮華が駆け足でやってくる。

 

思春「雪蓮様を狙った刺客の矢が風見に……」

 

蓮華「何だとぉ……っ!? すぐに犯人を捜して八つ裂きにしてくれる!」

 

赤斗「はあ、はあ、落ち着きな。ぐっ、げほっげほっ」

 

赤斗は再び口から血を吐く。

 

蓮華「赤斗。おい、しっかりしろ!」

 

赤斗「はぁはぁ、それよりも蓮華、何で此処にきた。何か雪蓮に報告があるんじゃないのか?」

 

蓮華「黙れ! もう喋るな!」

 

雪蓮「蓮華、落ち着きなさい」

 

蓮華「しかしっ!」

 

赤斗「落ち着け孫仲謀! 孫呉の次期王たる者が取り乱してどうする!」

 

蓮華「!!」

 

雪蓮「赤斗の言うとおりよ。蓮華、落ち着いて話しなさい」

 

蓮華「は、はい。……曹操が攻めてきました。曹操の軍はすでに本城近くまで迫っています」

 

蓮華は落ち着いて話し始めた。

 

 

赤斗「曹操が……」

 

雪蓮「ついに来たわね。……行くわよ。二人とも」

 

雪蓮が蓮華と思春に向かって言った。

 

蓮華「でも、姉様。赤斗が!」

 

赤斗「蓮華。僕の事はいいから早く行け」

 

蓮華「しかし……」

 

赤斗「そんな事では、あの曹操に勝てないぞ!」

 

蓮華「な、なんだと……!」

 

赤斗「蓮華、雪蓮、思春。もう行ってくれ。はあ、はあ……」

 

雪蓮「恋。赤斗の事、任せたわよ」

 

恋「(コクン)」

 

赤斗「はは……ありがとう。雪蓮」

 

雪蓮「お礼を言うのは私の方よ。ありがとう。……もう行くね♪」

 

赤斗「ああ。はあ、はあ……がんばれよ」

 

雪蓮「うん」

 

そう言って雪蓮は走っていった。

 

しかし、蓮華は赤斗の傍を離れようとしなかった。

 

蓮華「…………」

 

赤斗「僕なら大丈夫だから、はあ、はあ、早く行って、この国を、はあ、はあ、この国に住む人たちを、家族を守れ!」

 

そう言って赤斗は、蓮華の頭を撫でた。

 

蓮華「こ、子供扱いしないで! ……分かった。行ってくる。……必ず曹操を倒して戻って来るから……だから、赤斗も」

 

蓮華は無事でいてとは言えなかった。それほど赤斗の容体は悪かった。

 

赤斗「ああ、出来る限り努力するよ。はぁはぁ、蓮華こそ気をつけてね。思春も頼んだよ」

 

思春「ああ、任せろ」

 

蓮華「……じゃあ、赤斗。行ってくるわね」

 

赤斗「ああ、行ってらっしゃい」

 

蓮華にこれ以上の不安を与えないように、赤斗は笑顔で見送った。

 

 

 

つづく


 
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