No.211301

真・恋姫無双 ~黒天伝~ #8

cherubさん

今回は拠点フェイズっぽく書いてみました。
時間が遅いので恋の分は書けませんでした。
恋の分はまた次回という事で・・・

2011-04-12 01:01:45 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1634   閲覧ユーザー数:1503

 

ねね「恋殿!まだここにおられたのですか?」

 

あれから一週間、恋は友奈に言われた通り仕事の時以外は友哉の部屋にいた。そこには友奈の時の紅い髪ではなく、普段の綺麗な空色の髪に戻った友哉が寝台の上で静かに眠っていた。

 

医者が言うには排泄をしない限り、一日に少しの水を飲ませるだけでいいらしい。友哉の唇が乾いてくると水を少しだけ友哉の口に注ぎ込む。恋の仕事はもう一つあった。友哉は一日に何度も涙を流していた。これを拭くのも恋の仕事なのだ。

 

恋「・・・ねねも、いっしょ」

 

ねね「な!?どうしてそのことを・・・」

 

ねねもまたちょくちょくと友哉の部屋にやってきていた。しかし恋が仕事に出かけている時を見計らっていたため、恋はこのことを知らないはずである。

 

ねね「そ、それより恋殿!もうすぐ練兵の時間ですぞ!」

 

恋「ん、わかった。じゃあね、友哉」

 

そういって友哉の頬をそっとなでると恋は部屋を出て行った。恋が出て行ったのを確かめると、ねねはそばにあった椅子に腰かける。

 

ねね「ねねだって、心配なのですぞ・・・」

 

ねねがそう呟いたとたん、友哉の両目から涙が零れおちる。ねねはそばに置いてあった手ぬぐいを手に取る。そして友哉の寝台に腰かけなおすと、優しく涙を拭きとる。

 

ねね「ねねが拭いてやるのです、感謝するのですぞ・・・」

 

そう呟くねねの声は普段の元気な声とは違い、優しさに満ち溢れた母親をも感じさせる声だった。

 

ねね「相変わらずいい匂いがするのです。少しだけですぞ・・・」

 

ねねは布団の中に入り友哉の左に横になる。そして、じっとその顔を眺める。しだいにうとうととしてきて、「すこしだけ」そう呟きながら目を閉じるのだった

 

 

詠「もう三週間よ!このまま目を覚まさないなんてことはないでしょうね!」

 

月「大丈夫だよ詠ちゃん。友奈さんだって大丈夫って言ってたし、ちゃんと息もしてるし」

 

あの日からまた二週間がたっていた。しかし友哉はいっこうに目を覚ます気配を見せない。

 

詠は友奈の説明を聞いたとき、胸のつっかえが一気に取れたような気がした。人前では見せないが一人になったときに見せるあの表情。以前迷子を助けた時に見せたあの悲しげな目。全て納得がいった。

 

詠(あんなものを背負ってたなんて・・・)

 

詠がそんな風に思いを巡らせていると、いつの間にか月が友哉の寝台に腰かけていた。

 

月「友哉さん、早く元気になってくださいね」

 

月の顔が友哉の顔に近づいていく。そして月の唇が友哉の頬に触れる。一瞬の出来事だった

 

詠「な!?ちょ、ちょっと月!何やってんのよ!」

 

月「前にね、本で読んだことがあるの。永い眠りについていたお姫様は王子様の口付けで目を覚ますんだよ。ほら詠ちゃんもやろうよ」

 

月の顔は真っ赤だった。本当はとても恥ずかしいんだろう。だから、一人ではなく親友と二人でということで恥ずかしさを紛らわそうとしているのだ。

 

詠「ちょ、なんでボクが!」

 

月「詠ちゃん。ほんとは早く元気になってほしいんでしょ?」

 

詠「・・・。わかったわよ。やればいいんでしょ!」

 

そうやって悪態をつきながらも、月の反対側に腰かけゆっくりと顔を近づけていく。詠の顔はほんのりと赤く染まっていた。

 

詠「これで、いいんでしょ・・・」

 

月「ありがとう、詠ちゃん」

 

そういって月は詠に笑顔を向ける。再び思う。やっぱりこの笑顔は反則だ!

 

??「み~た~で~」

 

月・詠「ひゃ!?」

 

いつの間にか扉の所に霞が立っていた。全く気配を感じなかった。さすがは将軍様といったところだろうか

 

霞「昼間っからお熱いな~」

 

月「へぅ~」

 

詠「ちょ、霞!いつからいたのよ!」

 

霞「ニャハハ~♪いつからやろな~。まぁ安心しぃや。誰にも言わんといたるから。それより確か莉空が後で来るゆうとったからそろそろくるんとちゃうか?二人とも、隠れるで!」

 

霞は二人を抱え上げ友哉の部屋を出て反対側の窓の外へと向かう。

 

 

しばらくすると、莉空が友哉の部屋を訪ねてくる。莉空は部屋に入るとすぐにいすに腰掛けじっと友哉を見つめる。

 

霞「(なんや、ええ雰囲気やなぁ~)」

 

月「(本当にこんなところから覗いていていいのでしょうか・・・)」

 

詠「(まったく。何でボクまでつき合わされなくちゃいけないのよ!)」

 

結局三人とも窓の外から覗いていた

 

莉空「まったく。いつになったらお前は目を覚ますんだ。鍛錬相手がおらんではないか。霞と恋はいつも一緒だし、ほかのものでは弱すぎるし、お前がちょうどよかったというのに・・・」

 

初めて仕合をした後も、友哉と莉空は何度も仕合をしていた。実力が拮抗していたこともあり、二人はいいライバルとなり親交を深めていったのだ。

 

莉空「私だってお前がいないと寂しいのだぞ?いつもどれだけお前のことを思っているか・・・早く戻って来い。・・・寝込みにというのはいささか気が引けるが・・・」

 

莉空は辺りを見回し誰もいないのを確認する。

 

莉空「よし、誰もいないな。それでは・・・」

 

そういうと莉空は顔を友哉の顔へと近づけていく。途中一瞬止まってしまうが、目をぎゅっと瞑り決心してその唇を触れ合わせる

 

霞・月・詠「!?」

 

唇が触れ合ったのはほんの一瞬だった。しかし、莉空は顔を真っ赤にして部屋から飛び出していく。

 

霞「意外とやりおるなぁ~」

 

月「だ、大胆です~」

 

霞「月たちでもぽっぺにチューやったのになぁ?」

 

月「へぅ~霞さ~ん。ん?詠ちゃん?」

 

詠「・・・。」

 

詠はあまりの衝撃に口から魂が抜け出そうとしていた。

 

 

翌日。

 

霞「よし!今日はうちの番やな」

 

部屋の中には眠っている友哉と酒を飲んでいる霞だけだ。しばらくの間、霞は黙って杯を口に運び続ける。

 

霞「あんな、うちな最近おかしいねん。友哉のこと考えると、胸がぎゅうってなんねん。なんで何やろ?全然わからへんのよ。友哉のことがごっつい心配なんよ。もうあの笑顔が見られんのとちゃうかって。そんなんいやや。せやから、はよう元気になってうちを安心させてぇな」

 

霞が友哉の頭を撫で始めた。その髪の色を匂いを、感触をその手で確かめていくように。

 

霞「友哉の匂いや。うち友哉の匂いめっちゃ好きなんで?なんや優しい気持ちになるんや」

 

友哉を見つめるその目は戦場のものとは違う、一人の霞という女の子の目だった。再び杯に手を伸ばすと、中に残っていた酒を口に含む。そしてそのまま顔を近づけていき、友哉に口移しで飲ませる。

 

霞「これ飲んではよう元気になってな」

 

ねね「ちーんーきゅーうーキーック!」

 

いきなりねねが霞の後ろからとび膝蹴りをお見舞いする。言ってみればライ○ーキックだ。

 

ねね「何をしてるのですか、まったく!寝込みを襲ってしかも病人に酒を飲ませるなんて言語道断なのです!」

 

霞「い、いやぁ、酒は百薬の長とか言うやろ?」

 

ねね「そんな言い訳通用しないのです!しっかり反省するのです!」

 

霞「三十六計逃げるに如かずやー!」

 

ねね「こ~ら~!待ちなさ~い!」

 

そういって霞とねねは友哉の部屋を後にした。このとき霞は気づいていなかった。一部始終を覗いている少女がいたことに・・・

 

 


 
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