No.210336

虚々・恋姫無双 虚廿伍

TAPEtさん

最後にちょっとニヤニヤ気な話で和ませてみようとしてみました。
最後のページに注目してみてください。

2011-04-06 22:03:04 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2348   閲覧ユーザー数:2002

撤退中の呉軍後方

 

「何?!どういうことだ!」

「何よ、どうしたのよ」

 

撤退している間、呉郡からの伝令を聞いた周瑜が驚く声を聞いて、桂花や穏たちが指揮をしてる手を止めて振り向いた。

 

「……信じがたい報告が入ってきた。というか、信じられん」

「何よ。…まさか、呉郡にもうあいつらに落されたとかじゃないでしょうね!」

「いや、そういうわけではない……寧ろ逆だ」

「どういうことですか、冥琳さま?」

「…………」

 

 

 

「孫策が来るそうだ」

 

 

「「はい?」」

 

 

・・・

 

・・

 

 

「( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!!!よーし!皆ぶっ潰すわよ!」

「にゃー、あのお姉さん、本当に死んでたのだ?」

「言いたいことは分かるんじゃが、それ以上言わないでくりゃれ。あれでも我が孫呉の先王じゃ」

「別に嫌いじゃないからいいのだ。それより、城で待っていないでよかったのだ?」

「良くはおらぬが……策殿が乗り気だしのぅ。それに……」

「にゃ?」

「儂もお主も、暴れたいのは策殿と同じじゃろう」

「にゃー、否定できないのだ」

「さぁ、二人ともなにしてるのよ。せっかく皆に助けてもらってるのだからもっとしっかりなさい!」

「散った英霊たちの護りをまさか本当に受けるようになるとはの……まぁ、良い。公瑾と権殿がこれを見て唖然とする顔を楽しむとしようかのぉ」

「鈴々は暴れられるのだったらどうでもいいのだ!」

「おぉー!チビッ子ちゃん、気に入ったわよ、その考え。よし、私に付いてきなさい!」

「がってんなのだー!」

 

「……やれ、やれ……」

 

 

 

 

一方西涼では

 

「鳳徳さんの部隊一度転身して敵の後に廻り込んでください!同時に鳳徳さんが動いて出来る隙は韓遂さんが守ってあげてください!」

「……すごい」

 

紗江の指揮に一糸乱れず動く西涼の騎馬隊を見ながら稟はボソっとそんなことばを漏らした。

西涼の騎馬隊。風と旅をしている時その姿を見ながら、自分ならこんな敵に対してどう動ければいいのか風と話し合ったことを思い出してみる。

あの時にはまだ、西涼のあの騎馬隊が味方となって戦うだろうとは思いもしなかった。

 

今、この戦場は、あのビクッともせず前進を続けていた五胡の軍が、春蘭と霞、そして西涼軍の騎馬隊によってその戦列を乱していた。

魏で騎馬では最強を誇る神速張遼に、魏の大剣夏侯惇の騎馬隊もすごかったが、西涼の騎馬隊はその上にあった。

 

あれを自分が敵にするときを想像すると、流石に胸が悪い。

けど、味方となった西涼軍は本当に頼もしかった。実際、彼らが今踏ん張ってくれているおかげで、元々長安まで引き上げながら戦おうとした自分の考えとは違い、今の状態

 

を保つまま戦いを続け、その上自分たちの疲弊した軍を少しながら休ませることができたのだ。

 

だけど、本当にこの西涼の騎馬隊を素晴らしくしているのは他にあった。

司馬懿の指揮。

五丈原での戦いでは、この騎馬隊を森の中で全焼させるという考えもしない恐ろしい策を使っていた彼女であったが、そんな変則的な策でなく、こうして彼女が指揮している

 

姿を見ると、益々彼女の実力が自分たちと離れていることがわかった。

戦況を早く読み取り、そこに直接戦っている将兵たちの状態も頭に入れて置かなければ、こんな無茶と上策の境界をギリギリまで届く指揮をすることはできない。

 

彼女の指揮は戦っている部隊にとって難しくはあっても、できないことはなかった。

しかもその指揮は全体図で見ると戦況を良くする。

部隊の士気や練度を見極め、彼らの十分の力を振り絞らせる。

彼女の指揮はそういうものだった。

 

「何をしているのです!」

「!」

 

そういう感嘆に陥っていた稟は紗江の一喝で我に戻った。

 

「春蘭さんの部隊がまた深く入りすぎています。あのままだと韓遂さんの部隊をぶつかります!」

「あっ」

「………稟さん、あなたの気持ちは分かります。死んだ少女が突然現れて、指揮権を乗っ取って自分を蔑ろにしているのだと思って気にくわないでしょう。ですが、今はそれ

 

どころではありません」

「あ」

「稟さんの全力、少女の全力。その二つがなければこの状況を覆すどころか、維持することも難しいでしょう。ですから、お願いです。今回だけ、今回だけ少女の我儘を聞い

 

てください」

「……申し訳ない、紗江殿」

「?」

 

紗江は頭を傾げたが、直ぐに報告に来た伝令の方に耳を澄ませた。

 

「報告します!曹操さまと西涼の民たちは、無事長安城まで着いたとのことです」

「……はぁ…これで先ずは安心できそうです」

 

紗江は胸に手を乗せて安堵の一息をつぎながら言った。

だけど、本当の戦いはこれから。

 

「敵が一度引き上げる様子を見せますね。こちらもここは一度部隊を引いて、兵たちを休ませましょう」

「そうですね」

 

五胡の勢いは西涼の騎馬にぶつかってその勢いを失いつつあった。

だけど、まだまだ数の暴力は続く。

紗江は早く蜀と呉が助けに来てくれることを心の底から祈っていた。

 

 

 

長安城

 

「華琳さま、皆無事に長安城に入ってきたの」

「人たちの居場所の確保がまだ完全にはなってあらへんのがちょっと心配やけど……取り敢えず長安の軍事物資使ってなんとかしようとしとる」

「二人ともありがとう。もうちょっと苦労して頂戴」

「わかったの」「りょうかいやでー」

 

やっと長安までこれたわね……徐州から蜀まであの民たちを連れて行った劉備の気持ちがほんの少し分かる気がするわ。

報告に来てた沙和と真桜二人も清々しく答えて各々の場所に戻っていったけど、相当疲れが溜まっている。

やはり、人手が足りないわ……。

 

あら?

 

「一刀?」

 

居ない。確かに城に入ってくるまでは一緒に居たはずだけど………

嫌な予感がするわね。

 

確か紗江が指揮を取って私を下がらせる時……

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「華琳さま、一刀君から目を離さないでください」

「あなたに言われなくてもそんなこと分かっているわ」

「そういう意味ではありません」

「?」

「本当に、一時も目を放してはいけないのです、華琳さま……」

「……わかったわ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

それを言っている紗江の顔は凄く真剣だった。

そして、今一刀の姿が見えないということは……私は今、とんでもない過ちをしてしまったのかも知れない。

 

とにかく、早く一刀を探さなければ……

 

 

 

 

長安の侍女たちに聞いてみたところ、一刀の姿を見たというものが居なかった。

一刀は長安の城には来てみたことがないから、そう遠くまではいっていないだろうと思っていたけど…あの子ならどこにどうやって行ったのかが分からない分、逆にどこに居

 

るのかさがすのが難しいわね。

 

「一刀…どこに行っちゃったの」

 

陳留に置いてきた時にはまだ安心していたけど、前の紗江の言葉、そしてもう一人の紗江…左慈の言葉を思い出すと、側に一刀が居ないこの状況がどうしても不安になる。

もしあの子が私が居ない間に……

 

「しっかりしなさい、華琳。そんなこと考えてる時間があるのなら、もう少し足を動かしなさい」

 

取り敢えず、沙和たちにも兵を分けて少し城の周りを探してもらって……

 

ぐいぐい

 

「!」

「……」

 

一刀!

 

「……?」

「あなた、どこに行ってたのよ!」

「<<ビクッ>>!」『厠へ……』

「私にも言わないで消えちゃだめじゃない!」

「……」『御免なさい』

「………」

 

思わず大声を出してしまって自分でもびっくりした。

一刀が態としたわけでもないのに、あまり怒気の篭った声で言ったから、一刀もちょっと落ち込んでいる。

 

「………<<チラッ>>」

「……怒ってないわよ。これからは私じゃなくても良いから、ちゃんとどこに行くって言って行ってきなさい」

「……<<コクッ>>」

 

少し心を落ち着かせて更に言ったけど、それでも少し落ち込み気味だ。

 

「…御免なさい。大声出してしまって」

「!」『華琳お姉ちゃんが謝ることじゃないよ。ボクが急に居なくなったのが悪いんだし……御免なさい、もう急に消えたりしないから』

「………」

「……」『あの、華琳お姉ちゃんってやっぱ怒っちゃってる?ボクがまた勝手に戦うところに来ちゃって……』

「……ふぅ」

 

またこの子はそんなことを気にしている。

 

「一刀、あなたは私と皆にとって大切な子よ。私も皆も、あなたが来てくれて元気を出している。あなたがここに来ることを迷惑だと思っている娘なんていないし、怒っても

 

いないわ」

「……」『でも』

「…でも、何?あなたが私が実は怒ってるのに怒っていないって嘘を言っているのだと言いたいの」

「!<<ふるふる>>」

 

そこで激しく頭を振ってくれるのが、少し嬉しい。

 

「おいで」

「…!……♪」

 

私が腕を広げて一刀を抱き上げようとすると、一刀も素直に私の胸の中に入ってきた。

 

「大丈夫よ、一刀……全部うまく行くから、一刀は何の心配もしなくていいわ。あなたはただ、私の側に立っている、それだけで良いから……」

「………」

 

そう、あなたはそれだけしてくれればいい。

辛いことも、悲しいことももうあなたの前に居させないわ。

これからあなたの前に待ち構えているのは、幸せばかりでないと駄目なのよ。

それが、私があなたに受けた恩のほんの少しでも返すことになるのなら……

 

あなたとの余り少ない日々を絶対に幸せにしてあげる。

 

 

 

 

うぐぅー!

けほ!

けほ!

 

「……はぁ……はぁ………」

 

なにこれ……

なにこれ…!

 

気持ち悪い……

吐き気が止まらない。

もう吐くものも残ってないのに……吐くのが止まらない。

 

「うぶっ!」

 

西涼から長安に戻る道から急に身体の調子がまた狂っちゃった。

途中で皆が城に戻って西涼の民たちの面倒を見ているうちに、ボクはこっそり厠へ向かった。

そして、この様だ。

 

「うぐぅっ……けほ!」

 

苦しい。

ボク、本当に死ぬんじゃない?!

 

でもまだ駄目。

 

だってまだ何も終わってないもん。

 

民たちの幸せも、

 

お姉ちゃんたちの幸せも、

 

華琳お姉ちゃんの幸せも

 

まだ何一つちゃんと取り戻していない。

 

なのに、このまま死んだりしたら……

 

駄目。

 

「……はぁ……」

 

もうちょっと、

 

あとちょっとだけでもいい。

 

生きたいとか我儘言わない。

 

もうちょっとだけ、ここに居させて。

 

せめて、せめて華琳お姉ちゃんのことだけは……幸せにしてあげたい。

 

全てを終わらせた後の華琳お姉ちゃんの笑顔が見たい。

 

 

 

きっと、きっと凄く明るくて、嬉しそうな笑顔だよ。

 

華琳お姉ちゃん綺麗だし、きっと……見てるだけでも人たちが幸せになりそうなそんな笑顔を……してくれる。

 

だから……

 

「もうちょっとだけ……死なせないで」

 

 

 

 

その夜、紗江と稟、春蘭、霞が長安に戻ってきた。

 

「敵は一度引きあげました。私たちも一度長安で兵たちをまとめて、第二戦はこの長安で行った方がよいかと…」

「西涼は我々の縄張りだ。何故良い地を捨ててここまで引かなければなるまい」

 

そう言ったのは、馬騰の親友であり、今西涼軍でもっとも名を挙げている人物、韓遂であった。

 

「韓遂さんの意見は最もだと思います。ですが、今の我々の兵ではあの西涼の地で敵の二回目の攻撃を受けるにはあまりにも疲弊していました。それに西涼の地は確かに騎馬

 

隊が戦うに適した場所ですが、長安とで騎馬隊が働きにくいところではありません」

「我らの騎馬隊があれほどの戦いで疲れると思ったら大間違いだ!曹操などの軟弱な兵たちとは違う!」

「ふざけるな!!」

 

韓遂の言葉に春蘭が怒鳴る。

 

「貴様らに何が分かる!我々はこの地を守るために全力で戦った!貴様らみたいに戦いもできずに死んだ連中とは違う!」

「何!その言葉、我々西涼の人たち全てを敵に回したと知r……」

「……韓遂さん、春蘭さん」

「!」「!」

 

韓遂も春蘭の罵倒に応じて言い返そうとしたけど、二人とも静かな紗江の言葉に凍りつく。

いや、実際そこにいた全員が驚いた。

あの紗江が…やさしくて人を傷つかせることを嫌うあの紗江が…あんな冴えそうな冷たい剣幕を出すなんて……

 

「今は互いを罵り合う場合ではありません。力を合わせなければ西涼の地はおろか、この長安、先にはこの大陸を守ることなんてできません。この大陸に生きる者たちをして

 

、今は互いを助け合い、一緒に戦わなければいけないというのに、こんなところで互いに傷をつける言葉で内から壊れていては、敵の勢いは上がる一方で、こちらに勝ち目は

 

ありません」

 

紗江の言葉に二人とも口を閉じる。

 

「韓遂さん」

「な、なんだ」

「西涼の方々への妄言、代わりにお詫び申し上げます。ですが、韓遂さんも度がすぎる言葉は謹んでくださいませ」

「………済まぬ」

「春蘭さん」

「っ」

「今西涼の方々は西涼の民たちを守るという一心でここに居ります。それは春蘭さんや華琳さまも同じです。彼らを罵ることは、春蘭さま自分自身、そして華琳さまの志を穢

 

しているも同じと思ってください」

「……失礼した」

 

春蘭と韓遂が各々謝罪の言葉を告げると、紗江は微笑みながらその剣幕を消した。

やはり紗江は、私が知っている部分よりも知らないところが大きい娘だったのかもしれないわね。

 

「紗江」

 

私はそんな紗江を呼んだ。

 

「はっ」

「…ありがとう、あなたにまた借りを作ってしまったわ」

「……それは違います。今回少女がここに居るのは華琳さまに借りを作らせるためでなく、他の方の借りを返すため……ですから華琳さまはただ、あの方のことだけを考えて

 

ください」

「……ありがとう、紗江」

「……稟さん、華琳さまに今の状況を」

「ええ」

 

紗江は軽く顔を下げて稟を呼ぶ。

 

「現在私たちの全力は、私が連れてきた兵と西涼軍を合わせて役二十五万。斥候を数々放したところ、数は少なくとも戻って来た者たちの情報をかき集めると、敵の数は、今

 

西涼に来ているだけで役30万、しかし、今もまだ西涼の外から援軍が来る様子があり、敵の数を定めることは難しいです」

「あれでもっと増えるってぇの?一体どこからそんな数が出てくるねん」

「それはわかりません。今回の戦いはあまりにも常識から離れています。とても軍師としての身では判断がつきません」

 

稟がそう言いながら紗江と韓遂の方を振り向くと、紗江は苦笑しながら顔を逸らした。

 

「常識から外れているところで何の問題がある!目にあるのは我らの地を穢す敵だ!全て蹴散らすのみよ!」

「無論だ!あんなやつら、一人でもこの地に残すわけにはいかん!」

 

さっきは喧嘩しそうになっていた韓遂と春蘭がそう頼もしく言ってくれるのを見ると、二人が少しにているような気がした。

 

「ですが、敵の兵はあまり疲れを見せない上にその数がどんどん充実されて行く一方、私たちの兵は現在でも随分と疲れが溜まっています。このまま正攻法で戦ったところで

 

、負けることが順当な結果と言ったところです」

「それをなんとかするのがお前の仕事だろ!」

「っ」

「いや、惇ちゃん、あまり稟だけを攻めんなって。稟が頑張ったってことは、惇ちゃんがもっと良く知ってるやろ」

「うぅっ……」

 

唇を噛み締める稟を見て、霞がフォローをしてくれる。

確かに稟は頑張った。

ただ、今回はあまりにも稟一人では手に収まらない状況だった。

だけど……

 

「稟、それでもあなたは私の軍師よ。何か策は練っているはずよね」

「はいっ…」

「では……いいえ、ここで言わないで頂戴。紗江と一緒に策を講じて、明日までもっと確かな形にまとめてからでも遅くはないわ」

「…承知しました」

「今日は皆疲れが溜まっているでしょうから、皆早く休みなさい。今の時に出来るだけ休んでおいて……桂花と秋蘭たちが来てくれるまで、私たちだけでここを守らなければ

 

いかないわ」

「「「はっ」」」

「韓遂、助けてくれてありがとう。あなたたちの部屋は他に用意してあるのだけれど…」

「要らぬ。私いつもは兵たちと寝食を友にしている。私だけ特別に気にしてくれる必要はない」

「そう……なら、あなたの好きなようにしなさい。本日の会議は以上よ」

 

 

 

 

がらっ

 

「!」

 

部屋に戻ると、私の部屋で寝ていた一刀が起きる。

 

「いいわよ、そのまま居なさい」

 

寝床から起きようとする一刀を私は止めた。

 

「………」『皆、疲れているよね』

「ええ…だけど、弱音を吐いている場合ではないわ。ここで負けてしまえばいままでしてきたことが全て無に帰る。それを止めるためにも私たちは戦わなければいけないわ」

「……<<コクッ>>」

「……私も疲れたわ。今日はさっさと寝てしまいましょう」

 

私は一刀にそう言って服を寝巻きに着替える。

そして、最後に灯りを消そうとしたら一刀が私を止めた。

 

「?」

「……」『ボクは華琳お姉ちゃんが幸せに居てほしい』

「……ええ」

『でも、明日のために華琳お姉ちゃんが今日華琳お姉ちゃんが苦しむとしたら、ボクはそんなのは嫌。今日も明日も、幸せに居てほしいの』

「…一刀」

『我儘だって分かってる。でも、いつもそうだったから悪いとは思っていない。ボクはただ、華琳お姉ちゃんがずっとずっと幸せにいてくれて欲しいの』

 

………

ありがとう、一刀。

 

でも、分かっている?

私の幸せは

 

あなたの幸せから来るのよ。

だから、あなたはもっと自分の幸せのために頑張って。

そしたら、私も幸せになれるから。

 

「あなたの我儘を一々聞いてあげていたらいつか私はいつかあなたの人形になってしまいそうね」

「<<カビーン>>!?」『そんなつもりじゃないよ』

「ふふっ、自分の欲望に充実な子は嫌いじゃないわ。で、本当はあなたは今私に何をして欲しいのかしら」

「………」

「何?言ってくれないと分からないわよ?」

「……」『一緒に寝るの』

「それはいつもしてるでしょう。というか、そうでないとこっちの方が困るわ。他には何かないの?」

「……<<あわあわ>>」

 

少し一刀が困っている様子を楽しんでいたら、一刀は竹簡に何か書いた。

…何か妙に顔が赤くなっている気がするのだけど…灯りに近いせいじゃないわよね。

 

やがて一刀が竹簡を見せると、絶対灯りのせいじゃないってことがわかった。

 

『お休みのチュー』

「!」

 

流石に思いの外過ぎたわ。

 

「……!<<ふるふる>>」

 

ちゃら

 

私が固まっていたら、一刀は直ぐに顔色を戻して竹簡を閉じた。

 

「待ちなさい」

 

そのままベッドに戻ろうとする一刀を止める。

ここだけしておいてこっちから引いたら覇王(前)の名が泣くわ。

 

「し、してあげるわよ」

「……<<ふるふる>>」

「遠慮することはないわ」

 

灯りを消して、寝台に座っている一刀の顔を両手で掴んで顔を近づける。

 

ちゅっ

 

「………」

「………」

 

灯りがなくて、暗くて見えないけど、私の顔は今凄く赤いだろうと思う。

そして、一刀の頬を支えている手も暖かくなっていくのが分かった。

 

「さ、さぁ、早く寝ましょう」

「……♡」

 

疲れてるのに、熱上がって寝るのに相当時間がかかってしまった。

 

 

 


 
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