No.202059

本日はすれ違い注意報 part7

active13さん

学生の最大の敵…テストに立ち向かう主人公スイカ、しかしそこにはさまざまな困難が!
本日はすれ違い注意報シリーズpart7です。
前回はなんか甘すぎましたねー…(泣)
今回はほどほどだと思います。
あくまで自分のなかでは!!

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2011-02-17 12:53:19 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:325   閲覧ユーザー数:313

「ユズ、休憩。」

 

「却下。」

 

 

即答かよ!

 

 

「なぜ!?」

 

「なぜ…って、あんた休んでばっかりでしょ!!」

 

 

うっ、痛いところを…。

 

確かに私は10分おきに30分休憩している。

 

 

「それに、あんたぜんぜん勉強進んでないでしょ!」

 

 

持ってきたルーズリーフの大半が白紙のままシャーペンと一緒に机の上に転がっている。

 

隣には意味不明な数字が並んだ数学のプリントが並んでいる。

 

 

「問題が難しいのが悪い。」

 

「悪いのは授業中に寝てたあんただから!」

 

 

ちょっとは努力しなさい、と言いながらスラスラとユズの手は動いていく。

 

あーあー、なぜ世の中にテストはあるのだろうか。

 

 

少しプリントと向き合ってみるが手の中のシャーペンと頭の中は止まったまま。

 

 

「もう!スイカ、夏休みに一緒に海に行くんでしょ?」

 

「そうだけど…。」

 

「じゃあ、がんばらないと!」

 

 

勉強も嫌だが、夏休み遊べないのはもっと嫌だ。

 

参考書を開いて少しずつだが問題を解いていく。

 

 

 

 

「スイカ、そろそろ休憩しない?」

 

 

ユズの声に時計を見るとかなり時間がたっていた。

 

その割にはあまり進んでいない…。

 

しかし、さすがに本当に疲れたので『うん。』と返事をして休憩することにした。

 

 

ジュースを啜りながらもルーズリーフに視線を落とす。

 

なんでここがx=4になるのかさっぱりわからん…。

 

っは!もしや解答が間違ってるのでは…。

 

 

「…ねえ、スイカ、門倉に教えてもらったらどう?」

 

「…はい?」

 

 

 

なんだって…?

 

 

 

「だから、門倉に教えてもらったら?彼って教え方もうまいらしいわよ。」

 

 

なるほどー。

 

じゃあ、教えてもらおうかな…って違う、違う!

 

 

「いや、無理でしょ…。」

 

 

どう考えても無理だろう。

 

日頃あれだけことをしていたら…。

 

まだ、全然知らない上級生に問題聞きに行く方が実現可能だ。

 

 

「でも、今のあんたを救えるのは門倉ぐらいよ。はっきりいって今のあんた本当にやばいわよ。」

 

 

うっ、痛いところを…!

 

確かにユズの言っていることは正しい。

 

門倉に教えてもらうことが今の私の最善の手であることぐらい自分もわかっている。

 

 

「わかってるよ…。でも、これだけは無理だって。第一、相手が承諾してくれないよ…。」

 

「そうよね…。やっぱりそう思うわよね!」

 

 

にっこりとユズは笑った。

 

この会話の流れはなんだか…なんだかとても嫌な予感がするのだが…!

 

 

「だから、門倉に今からスイカに勉強教えてってメールといたから。あ、ちなみに彼は了承してく

 

れたから大丈夫よ。」

 

 

 

ナ、ナンダッテ―――――――――――――!?

 

 

 

「門倉が?私に?ユズをメールで?勉強とスイカ教えて?はあああああああ!?」

 

 

「落ち着け――――――!!」

 

 

バコッ

 

 

「いった――――――――――!!」

 

 

ユズの容赦ない筆箱ブラックジャックが私の前頭葉をクリーンヒット!

 

 

 

私の脳細胞が!!

 

 

 

「あんたどうせ変な意地張って門倉のところ行かないと思ったから、私が重い重い腰上げてメール

 

したのよ。」

 

 

うっ、ばれてる…!

 

内心では門倉に頼るぐらいなら、赤点取ったほうがマシだと思っていたり…。

 

通りで携帯を何回もいじってたのか…。

 

というか、そんなに重い腰なら上げなくていい!

 

むしろ上げないで!

 

 

「スイカ、あんたの軽い腰上げて門倉のところにさっさと行きなさい。」

 

「い、嫌だ―――――――!あと、誤解を呼ぶような表現はやめて―――――――――!!」

 

 

MAKURA-1ミサイルを発射して抵抗したが、ユズはライオットクリア下敷きシールドを使って無効化

 

すると、あれよあれよという間に私と荷物を家の外に放り出した。

 

ここ、私の家なんだが…。

 

 

「じゃあ、頑張って!応援してるわ!」

 

「いや、だから行きたくないって…!というか、ここ私の家!」

 

「大丈夫、大丈夫!ご両親には私から説明しておくから。ね?」

 

ね?じゃない!!

 

そりゃあ、ユズは大丈夫かもしれないが、私は全然大丈夫じゃない!

 

あと、今さらだけどその家は私の家なんだが…。

 

 

しばらく玄関をうろうろしていたが開けてもらえないので、しょうがなく表札の裏の影で涼む。

 

はあー、物影って涼しー。

 

 

ピロリン ピロリン

 

 

メールの着信音が鳴る。

 

こんな時に誰だ?

 

携帯を開けるとユズからだった。

 

嫌な予感リターンズ…。

 

メールを開けると、『早く門倉の家に行け。行かなかったら明日…、わかるわよね?』。

 

 

 

なんかキタ――――――――!!

 

 

 

こ、これ脅迫だろ…。

 

警察に渡したら完全に脅迫罪適用されるよね?

 

二階を見るとユズが…それはそれは素晴らしい笑顔をこっちに向けていた。

 

 

 

なんかヤバイ―――――――――!!

 

 

 

生命の危機を感じた私はしょうことなにし隣の門倉の家に向かった。

 

 

 

 

 

 

現在、私こと夏川スイカは門倉家の家の前にきております。

 

目の前には白を基調としたきれいな扉がある。

 

普段は何気ない単なる扉にしか見えなかったが、今の私にはその扉が鉄壁の城砦にしか見えない。

 

私の指はその扉のすぐ隣にあるインターホンの上を行ったり来たり。

 

 

うう、押せない…!

 

 

回覧板を持っていくときにピンポンピンポン押しまくっていた自分が懐かしい…。

 

もう16時だが初夏の太陽はまだ快晴の青空に健在だ。

 

暑い…。

 

ぽたっと汗が一筋落ちていく。

 

 

「なにしてるんだ?」

 

 

はっと声の方に振り返ると見慣れない私服姿の門倉がいた。

 

 

「あ…。」

 

 

勉強を教えて、これだけ言えばなんとかなるはずなのに意地っ張りな私の口はなかなか動かない。

 

 

「えっと…。」

 

 

門倉はさっさと私の隣を通り過ぎるとドアに向う。

 

 

あ、行っちゃう…。

 

 

門倉はドアを開けて家に入った。

 

ユズ、ごめん。

 

やっぱり無理…。

 

 

 

「なに、ぼさっと突っ立てる。勉強するんじゃないのか?」

 

 

門倉がドアを開けている。

 

 

「お、教えてくれるの?」

 

「夏休み、部活が忙しい時に泣きつかれたくないからな。」

 

 

入らないなら閉めるぞ、と言われ家の中に慌てて入った。

 

門倉に、『先に部屋行ってろ。なんか食いもん持ってくから。』と言われ先に門倉の部屋に行くこ

 

とにした。

 

 

部屋の中に入ると年頃の男の部屋のはずなのに女の私よりもきれいである。

 

なんか複雑…。

 

ただ、置いてあるものは随分と変わったようだ。

 

何年ぶりだろう、門倉の部屋を訪れるのは…。

 

昔はよく門倉の部屋で遊んでいた。

 

しかし、年齢が上がるにつれてだんだん門倉と話さなくなった。

 

 

「入るぞ。」

 

 

ガチャッとドアが開いてお盆をもった門倉が入ってきた。

 

慌てて勉強道具をだす。

 

勉強道具を出しながらも門倉に目がいく。

 

門倉が私服…。

 

 

「なんだよ。」

 

「いや、門倉って私服あるんだね。」

 

「いったい、おまえは俺をなんだと思ってるんだ…。」

 

 

門倉は自分の教科書を机に置く。

 

すごい使い込んである…。

 

私の新品同様の教科書とは大違いだ。

 

 

「で、どこがわからないんだ。」

 

「全部。」

 

「…わざわざ休日に喧嘩を売りにきたのか?」

 

 

本当にわからないんだよ!と必死に訴えると門倉は『わかった、わかった。問題見せてみろ。』と

 

言ったので問題を見せた。

 

 

「…まさか、まさかとは思うがこれがわからない?」

 

「うん…。」

 

 

門倉の表情が見る見るうちに険しくなっていく。

 

 

「おまえ授業中になにしてたんだよ!」

 

「わ、わかんないから寝てた…。」

 

「まじかよ…。」

 

 

門倉は、はあーと深い溜息をつく。

 

 

「…まじめにこの問題がわからないか?」

 

 

こくこくと頷くと門倉は沈黙した。

 

どうしよう、沈黙しちゃったよ!

 

 

「あー…、わかった。一から教える。」

 

 

門倉は教科書を開けて学校の授業と同じように説明し始めた。

 

あ、わかりやすい…。

 

門倉は私がわかるように教科書に補足をちょくちょく入れて説明している。

 

私のレベルに合わせて説明してくれてるんだ…。

 

いつもがいつもなだけになんだか申し訳ない気持ちになる。

 

門倉が一通りある単元の説明が教え終わると、私がその単元の問題を解く。

 

 

「これって、ここをxって置かないの?」

 

「これは、問題の問いたいことと違うからxとはおかない方がいい。yとおくと上手くいく。」

 

「あ、本当だ。」

 

 

カリカリとシャーペンの書き込む音が部屋に響く。

 

門倉が説明しては私が問題を解く、この流れ作業が延々とくり返された。

 

どれくらいたったか、門倉が今日はこれぐらいにしておいた方がいいと言った。

 

 

「でも、まだ問題が…。」

 

「もう暗い。」

 

 

窓の外を見ると外はすっかり暗くなっている。

 

あんまり長居し過ぎるのも門倉の家に悪いので帰ることにした。

 

 

「うー、終わった!」

 

 

なんとか半分ぐらいが終わった。

 

ユズ、私やったよ…!

 

しかし、あと半分もあるのか…。

 

 

「達成感を味わうのもいいが、授業もちゃんと聞けよ。」

 

「…。」

 

「そこで沈黙するなよ…。」

 

 

じゃあ、と言って私は家をでた。

 

そのあと、門倉は私を家まで送ってくれた。

 

私はもちろんのこと『大丈夫だってば、よ!』とか言ったが「黙ってろ。」と一喝されて、送ら

 

れ…ではなく送ってもらった。

 

 

「家までよかったのに…。」

 

「別に隣だろ。」

 

「…。」

 

「…。」

 

 

会話が途切れる。

 

き、気まずい…。

 

 

本当はわかってる。

 

今言わなきゃいけない言葉を。

 

『ありがとう』という言葉を。

 

でも、可愛くない私はなかなか口が動いてくれない。

 

 

「じゃあ、帰るな。」

 

 

ああっ!帰っちゃう…。

 

動けよ、口!

 

ありがとうって言うだけでいいから!

 

 

「えっ、あ…、うん。おやすみ。」

 

 

なのに自分の口からでたのは、おやすみという言葉。

 

ありがとうって言いたいのにおやすみ言ってどうする、自分!

 

門倉は背を向けて歩きはじめている。

 

今しかない…!!

 

言うんだ、自分!

 

 

「き、今日は…教えてくれてありが、とうー!」

 

 

い、言えたー!

 

若干イントネーションがおかしかったが日本語のありがとうという言葉に違いはない!…はず!!

 

 

門倉が驚いたようにふり返った。

 

驚いているためか口が半開きである。

 

しかし、すぐにいつもの澄ました表情に戻る。

 

…と思ったら、今まで見たことないくらいやわらかく笑った。

 

 

「ああ、どういたしまして…。」

 

 

そう言って門倉は帰った。

 

 

 

…び、びっくりした!

 

あんなふうに門倉が笑うなんて…。

 

だけど、なんだか嬉しかった。

 

 

 

 

 

二階の自分の部屋に戻ると窓から星が見える。

 

きらきらと輝いている。

 

手を伸ばせば届きそうである。

 

 

 

明日はいいことあるかな?

 

いや、きっとあるにちがいない。

 

 

 

 


 
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