No.201736

本日はすれ違い注意報 part6

active13さん

恋愛小説ような恋に憧れる遅刻魔の主人公スイカの遅刻の理由に変化が…!?
本日はすれ違い注意報シリーズpart6です。
ちょっとずつ雰囲気が変化してきていると自分では思います。
あくまで自分ではです(笑)

2011-02-15 11:26:38 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:342   閲覧ユーザー数:340

 

 

「スイカ…あんた、今日も遅刻したわね。」

 

「遅刻じゃないよ!」

 

 

遅刻だって!?

 

失敬な!

 

点呼30秒前、ぎりぎり教室に入ったから遅刻にはなっていない!

 

 

「同じよ。」

 

 

相変わらずユズは私の主張をばっさりと切る。

 

ちょっとは胸が痛まないものなのか…。

 

まったく、毎回、毎回ばっさり切られるこっちの身にもなってほしいね!

 

 

ユズの言うとおり私は今日も遅刻しかけた。

 

いたっていつもと同じ日常である。

 

ただ、いつもと違ったのは、寝坊の理由が門倉のせいだということだ。

 

それも一晩中門倉の表情が頭から離れなかったという痛い理由のせいで!

 

 

「…あんた今日一日、元気ないみたいだけど、なにかあったの?」

 

「い、いつも通りだよ!スイカマン元気100倍!!」

 

 

ふーん、と言いながらも納得いかないという顔をユズはしている。

 

危ない、危ない!!

 

こんな痛い理由で悩んでいるのがばれたら…なんてからかわれるやら!

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

ちょうどHR終了のチャイムが鳴り、私は図書委員の仕事をしに図書室へ逃げるように向かった。

 

 

 

 

 

 

放課後の図書館は生徒がまばらにいる。

 

 

図書委員の仕事はいたって簡単である。

 

本の貸し借りの手続きと返却された本を元の本棚に戻せばよいだけである。

 

あとは好きな本を読もうが自主学習しようが自由なのだ。

 

私はこの自由時間のために図書委員になったといっても過言ではない。

 

 

はじめは睡眠不足補充のための時間にあてようと思っていたが、今は恋愛小説を読んでいる。

 

本当はこんなもの読む性質ではないのだが、たまたま開けっ放しで置かれていたこの本を読んでみ

 

たら、すっかりこの本の世界観に引き込まれてしまったのだ。

 

物語の話は、意地っ張りな少女がとある少年に恋する、そして数々の困難を乗り越えて少女と少年

 

は結ばれるという恋愛小説の王道だ。

 

私もこんな恋ができたらいいな…。

 

 

 

ガラガラ

 

 

 

あ、誰か入ってきたんだ…。

 

 

「本の返却お願いし…って、なんだ夏川か。」

 

 

この声は…!

 

 

「門倉シュウゾウ…!!」

 

「…だからどうして、おまえはいつも俺をフルネームで呼ぶんだ…。あと、今声裏返えったろ?」

 

 

 

なんてこった!

 

 

フルネームで門倉の名前を呼んでしまったよ!

 

それに声が裏返るなんて!!

 

門倉相手に…は、恥ずかしい…!

 

 

「べ、別に裏返ってもいいでしょー!フルネームで呼んでないから!!」

 

「は?」

 

 

っは!

 

逆にいっちゃたー!!

 

『別にフルネームで呼んでいいでしょ、裏返ってないから』って言おうとしたのに!!

 

あわわわわわ、どうしよう!

 

 

「…ははははは!!夏川、おまえなに緊張してんだよ!」

 

 

きんちょう…?

 

私が?

 

門倉に?

 

 

 

う、うそだ!!

 

 

 

私が門倉相手に緊張なんてするもんか。

 

だいたい門倉とは幼馴染なのだ。

 

家だって隣だし。

 

昔からずっと顔なんて見てきた。

 

だから……だから、私が門倉に緊張なんてするはずがない!

 

 

「べ、別に普通だよ!!」

 

「どもってるぞ。」

 

 

ぶははははは、と門倉は吹き出してしまった。

 

私は断じて緊張なんかしてない!!…はず!

 

 

「ふ・つ・うです!で、何の用なの?門倉!」

 

 

さっさとこいつを図書館から出すのが先決だ。

 

 

「わかった、わかった。この本を返却で頼む。いやー、それにしても……クックック…。」

 

 

こいつ、まだ笑うか…!

 

 

構うと門倉の笑いを助長しそうな気がしたため私はさっさと本の返却手続きをし始めた。

 

門倉の本の貸し借りカードってどこかな…。

 

 

「なあ、おまえさ…。この前、サッカーの試合見に来てただろ。」

 

 

 

ギクッ

 

 

 

「さ、さあ何のことやら?」

 

「とぼけるのか?」

 

 

っち、ばれてる!

 

上から門倉の鋭い視線が降ってくる。

 

まあ、あの声援が聞こえてなかったらいいか…。

 

 

「…『くたばれー、門倉ー!』だったか?」

 

 

 

聞こえてるー!!

 

 

 

「…聞こえてた?」

 

「ばっちりな。素晴らしい応援ありがとうな。」

 

 

門倉はにっこり笑う。

 

笑顔のはずなのにものすごい威圧感を感じるんだが…。

 

と、とりあえず返事をするのが先決だ!

 

よしっ。

 

 

「礼には及ばないよ。」

 

「……。あのさ…、皮肉ってわかるか?」

 

 

門倉は頭に手をあてて溜息をつく

 

いつも通りの門倉だ。

 

何も変わっていない。

 

そんないつも通りの門倉を見ていたらなんだかほっとして笑いがこみ上げてきた。

 

私はついに、あはははは!と笑い出してしまった。

 

そんな私を見て門倉は『…こいつ、本当に大丈夫なのか?』という表情をしている。

 

 

「うふふふー。私、大丈夫だよー。」

 

「そう言ってるやつが一番危ないんだよ…。」

 

 

門倉は、俺はそう言ってあんパンを13個食った田中の顛末を知ってるだよ…、と意味不明なことを

 

言っている。

 

 

 

 

いつも通りだ。

 

そう、いつも通りの私たち。

 

 

 

「ねえ、門倉。」

 

 

 

夕焼けと言うには薄い赤と昼間の青空とは違う橙色の空が広がっている。

 

昼と夜の曖昧すぎる境界線―――。

 

 

「…私たちこれからもいい幼馴染でいようね。」

 

 

門倉は一瞬驚いたような表情をしたが、またいつも通りの不敵そうな表情に戻った。

 

 

「…ああ。これからもな。」

 

 

 

 


 
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