No.199408

魏・アナザーED:『一』輪の『華』に会うために『橋』を渡る。

テスタさん

真・恋姫の魏エンドをやり終えてずっと考えてたことを
SSにしてみました。
楽しんでもらえると嬉しいです。


2011-02-03 04:16:42 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5094   閲覧ユーザー数:4324

 

 

 

洛陽にある屋敷。

そこに一人の老人がお茶を飲んでいた。

すると―

 

「橋玄さま!」

 

叫ぶと同時に心地よい重みが彼にかかる。

彼は自然と笑みを浮かべ飛び込んできた子供を持ち上げ笑顔を浮かべた。

 

「おおっ!いきなりどうしたのだ?華琳よ」

 

「聞いて聞いて!今日麗羽がまた私の髪を馬鹿にしたの!!」

 

「麗羽とは袁家のお嬢様だったか?」

 

「そう…あの子ったらまた私の髪を馬鹿にして……

『華琳さんより私の髪の方が鮮やかに巻かれていますわ。

つまり私の方が貴方より上ということですわ』

だって!!」

 

プリプリと怒る少女の名は曹操。真名を華琳という小さな女の子である。

 

「ハハ、彼女はただ華琳と仲良くしたいだけとワシは思うぞ。

あれがあの子なりの友愛の形なのだろうて」

 

「フン!あんな子が友なんてゴメンよ」

 

「本当にそう思っているのかい?」

 

「…………」

 

答えないものの顔を赤くして視線をそらす少女に彼は笑みを深め

シワシワの手で少女の頭を撫でる。

 

少女はそれを愛おしく受け止め目を細める。

 

少女は天才だった。

何かをやらせれば直ぐにそれを覚え、他の人より高みへ行く。

回りの者は少女を妬み、遠ざける。

 

だが、目の前の老人だけは違った。

祖母の代からの付き合いという老人は華琳を色眼鏡ではなく、

そのままの女の子、華琳として見て接してくれる。

 

少女は老人のことが大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかした?華琳」

 

「………え?」

 

駆けられた声に沈んでいた意識を戻す。

隣を見ると自分にとって愛しい存在になってしまった男。

天の御使い・北郷一刀がいた。

 

「何でもないわ。少し考え事をしていただけ」

 

「考え事?」

 

「橋玄様のこと。……少し昔を思いだしてね」

 

仕方のないことだろう。と華琳は思う。

なぜならたった今まで、その橋玄のお墓の前にいたのだから。

 

「……どんなことがあったんだ?」

 

一刀の言葉に考える。

この男になら昔話をしてもいいのかもしれない。

そう思った華琳は昔、橋玄との日々を一刀に話した。

 

が、話しをしていく内に一刀の顔がどんどん不機嫌に変わっていく。

 

「……何故そんな顔をしてるのよ?」

 

「いや……だって」

 

少し言いにくそうに口をモゴモゴさせ、

一刀がボソッと呟く。

 

「なんだか華琳……その橋玄って人のこと、

好きみたいに思ってさ」

 

そう言って顔を赤くする一刀。

拗ねているのだと、華琳にはすぐわかった。

 

「……ぷ」

 

「わ、笑うなよ!!」

 

「アハハ、ごめんなさい。

一刀でも嫉妬するなんてね」

 

「お、俺だって好きな子が他に好きな奴がいるかもって分かったら

嫉妬ぐらいするに決まってるだろ!!」

 

「好きな子……」

 

少し顔を赤らめる華琳。

からかったら予想外のしっぺ返しがきてしまったようだ。

 

それから一つ息を整え口を開く。

 

「そうね、好きだったわ。

男の中では初恋の人だと思うわ」

 

「初恋……」

 

沈んだ一刀に苦笑しながら続ける。

 

「でも振られてしまったし、今、男では貴方が一番よ」

 

「~~~~……ありがと」

 

照れる一刀を見て思う。

ああ、この男が愛おしい。

そして同時に気づく。

 

「……そういうことか」

 

「え?」

 

「どうして私が使えそうもない貴方を拾ったのか今わかったわ」

 

「??」

 

「……似ていたのよ、一刀と橋玄様が」

 

雰囲気も全然違う。

有能さも全然違う。

ただ纏う空気だけは同じなのだ。

 

華琳を暖かく包んでくれる温もりが同じなのだ。

 

「……なんだか複雑だな」

 

「心配しなくても、橋玄様と一刀を重ねてなんかいないわよ?」

 

「分かってるよ……」

 

それでもまだ複雑そうな一刀に、

華琳は笑みが止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に来てはくれませんか?」

 

この言葉を何度言っただろうか?

言葉を発した彼女はもう忘れてしまった。

それぐらいこの言葉を同じ相手に問うていた。

 

「すまん」

 

そしてこの言葉を聞くのは何度めだろう。

小さい頃より更に皺を増やした老人の言葉に悲しそうに眉を傾けた。

 

「どうしてですか!?貴方なら華琳様の隣で立っていける……

華琳様を支えられる筈です!!」

 

華琳以外には敬語を使わない筈の春蘭が、老人に詰め寄る。

 

「どうか我ら姉妹と共に、華琳様を支えてはくれませぬか?」

 

その妹の秋蘭も頭を下げるが、

とうとう老人が首を縦にふることはなかった。

 

「……理由を……、理由を聞いてもいいですか?」

 

それは華琳の懇願であった。

強い彼女が唯一弱みを見せられる相手。

それが老人であった。

 

その老人が傍にいてくれれば、自分にどれだけ力強い支えになってくれるかを

彼女自身、よくわかっていた。

 

老人……橋玄は暫く黙った後、口を開く。

 

「天下は乱れようとしており、当代一の才でなければ救うことは出来ない。

だからこそワシは天下を案ずるのは君だと思っている」

 

「ならば!」

 

「だが……そこに立つのはワシではない」

 

老人が指を刺す。

そこは誰も立っていない華琳の隣。

 

「君の隣は……ワシでは力不足だ」

 

「そんなこと「華琳」っ………はい」

 

「おいで」

 

老人の言葉に従い、華琳は老人に近づく。

そして目の前にたつと老人はいつもの優しい瞳で彼女の頭を撫でた。

 

「いつか……君の隣に立ってくれる者が現れる。

ワシには、その席を奪うことは出来んよ」

 

それは優しい、老人の優しい拒絶の言葉だった。

 

華琳は理解した。

自分は振られたのだと。

 

主として……何より、女として。

 

 

 

 

 

これが彼女の前に天の御使いが現れる、

少し前の話しである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……逝かないで」

 

寂しそうな少女の声が響く。

 

「さよなら……誇り高き王」

 

「……一刀っ」

 

静かな夜。

琥珀の月が浮かぶ小川の下。

そこに二つの人影があった。

 

一人は大陸を制した覇王・曹操。

一人はその覇王と乱世を駆け抜けた天の御使い・北郷一刀。

 

ただ二人には決定的な違いがあった。

それは……一刀の体が透けていることである。

 

「さよなら……寂しがりやの女の子」

 

「……一刀!!」

 

そしてどんどん少年の姿は薄くなっていき……

 

「さよなら。愛していたよ……華琳――」

 

とうとう少年は消えていった。

まるで、蛍火のように……。

 

―――――――。

 

「……一刀?……一刀!?」

 

少女は振り返る。

強がって、強がって、最後まで強がって少年を見ようとしなかった少女は、

少年が消えて要約少年の姿を探した。

 

だが、そこに少年がいるはずもなく……。

少女は……崩れ落ちた。

 

「……ホントに消えるなんて……なんで、私の傍にいてくれないの……っ!」

 

本人の前では口にすることが出来なかった少女の本音。

それは止まる事無く少女の口から流れ落ち……

 

「ずっといるって……いったじゃない!

ばか……ぁ……!」

 

そしてついには、涙となって決壊した。

 

「――――――――!!」

 

次々と涙が零れ落ちていく。

止めることなど出来ない。

止まるはずなどない。

 

覇王ではない、ただの一人の『寂しがりやの女の子』の涙は

ただただ悲しく流れていく。

 

「うそ……つき……ぃ!!」

 

そして漏れる言葉。

 

「一刀の……うそつきぃ!」

 

その言葉は一刀に向けて……同時に

 

「橋玄様の……うそつき!!」

 

かつて愛した老人に向けての言葉。

 

「いつか現れるって!……いったのにっ!

帰っちゃった……一刀……帰っちゃったよぉ!!」

 

かつて愛した者には振られ、

今愛している者は消えてしまった。

 

その悲しみは深く華琳の心を抉り、

少女は暫くずっと泣き続けた。

 

―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(華琳……)

 

目の前の泣き崩れる少女を見て、

痛ましそうに呟く。

 

呟いた者の正体は消えた筈の一刀であった。

 

確かに一刀は華琳の目から消えた。

だがそれは見えなくなっただけで、一刀は今だ華琳の傍にいた。

 

だが、それも時間の問題であろうということも一刀は理解していた。

 

今はとどまっているが、すぐにでも自分は本当に消えてしまうだろう。

それが分かってしまったのだ。

 

(華琳……!)

 

泣き続ける華琳を見ていられず、一刀は触れらないと分かっていながらも

少女を抱きしめる。

 

思っていた通り、華琳に触れることは出来ない。

だが、一刀は気にした風もなく触れるように抱きしめ続ける。

 

(華琳……ゴメン!約束護れなくて!

……でも、約束する!俺は絶対もう一度君と会う!

そして君と一緒にいる!ずっと……ずっとだ!)

 

次第に一刀の体が消えていく、

今度こそ本当の終わりである。

 

それでも一刀は最後まで聞こえない叫びを華琳に語り続ける。

 

(この言葉が届かなくても……もし君が俺のことを忘れていても、

それどころか俺を知らなかったとしても!!

『北郷一刀』は……君とずっと一緒にいるから!!

今度は約束を破らないから……絶対、会いに行くから!!

 

だから華琳――!!)

 

そして………北郷一刀はこの世界から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流れる……。

流れる……。

 

意識は朦朧としている。

ただ『北郷一刀』としての意識がただ何処かに流れるのを感じていた。

 

俺は……『北郷一刀』は何処へいくのだろうか?

分からない。

分からない。

ワカラナイ。

 

頭が痛い。

何かがドンドン自分の中から消えていく。

 

それは思い出というやつだろうか?

記憶、過ごして来た時間。

自分を象る存在全て。

 

それらがドンドン消えていく。

 

あ……ああ。

あああああああああああああああああ。

 

消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える。

 

 

 

 

 

…………。

 

………。

 

……。

 

…。

 

 

 

 

 

 

『うそ……つきぃ!』

 

 

 

 

 

「!?」

 

瞬間、消えかけていた全てが俺に『北郷一刀』に戻ってくる。

 

そうだ……そうだ!

俺は忘れちゃいけないんだ!

今度こそ約束を護るんだ!!

 

俺は彼女に……華琳に会う!

絶対にまた会うんだ!!

 

だから絶対に俺の記憶を――

 

 

 

 

「消させるもんかああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

一刀は手を伸ばす。

目の前に広がる光に向かって。

 

本能が告げていた。

あれに触れればまた会える。

 

彼女に会えると。

 

精一杯手を伸ばす。

全身の感覚なんてない。

それでも『手』を伸ばす。

 

今度こそ、大切なモノを失わないために!

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

光に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ん」

 

眩しい?

ていうか背中が痛い……地面?

あれ?俺外にいるのか?

 

とりあえず目を開けてみる。

 

「………庭?」

 

そこは何処かの庭みたいだ。

でも造りは古い。

というか現代じゃ考えられない。

 

まて、現代でってことは三国志の時代なら!?

 

「あっても不思議じゃない……!」

 

数秒固まってしまう。

でもだんだんと事態を飲み込めてくると笑いがこみ上げて来た。

 

「は、ハハ!

やったぁ!!アハハハハハ!!

俺、戻ってきたんだ!!

帰らずにすんだんだ!!

また会えるんだ……皆に、華琳に!!」

 

さっそく起き上がる。

そして歩き出そうとして止まった。

 

「待てよ……本当にここは華琳がいた時代なのか?」

 

そうだ。まだ戻ってきたか確証はないんだ。

とにかく、あの時代だって証拠を見つけないと。

 

とりあえず外にでて街の様子を見よう。

それで一目両全だろうしね。

 

ガサッ!

 

「誰だ!?」

 

物音のした方へと振り返る。

するとそこには……。

 

「……じ~」

 

小学生くらいの小さな女の子がいた。

 

俺はその女の子を見てドキリとなる。

だって余りに似ていたから……華琳に。

 

髪はドリルじゃないけど金髪の髪に華琳を髣髴とさせる鋭く綺麗な瞳。

俺は思わず口に出していた。

 

「華琳……?」

 

慌てて口を押さえる!

もし目の前の女の子が華琳だったら、真名を勝手に読んだことで

マジで殺されてしまうかもしれない。

 

だが、俺の心配は外れる。

 

「華琳て……だれ?」

 

いつの間にか近づいてきていた女の子が問いかけてくる。

 

「え~と……

知り合いかな」

 

それにしても似ている。

服もあの時代の服っぽいし……。

 

ま、まさか!

華琳の子供!?

 

お、俺という奴がいながら結婚したのか華琳!?

 

と、勝手に暴走していると……

 

「で、あなただれ?」

 

女の子がそう聞いてくる。

ちょこんと首を掲げて聞いてくる姿は実に愛くるしい。

 

うん、ここは紳士として答えないとなっ!!

 

「俺の名前は「あ、まずは自分の名前をいわないとダメってお父さまにいわれてたんだった」あ、そう……」

 

とりあえずまずはこの子の名前を聞くか。

俺が待っていると女の子は腰に手を当てて自分の名前を言う。

 

そして俺はその名前を聞いて固まった。

 

「あたしの名前は曹騰よ」

 

…………………。

 

…………………。

 

「……?ちょっと次はアナタの番「アッハハハハハハハハハ!!!」っ!い、いきなり何!?」

 

俺は笑った。

これでもかってぐらい笑った。

 

そうか…そういうことか!

 

これが……俺の次の役目なのか!!

 

「確かにこの役目だったら約束は護れるよな、ハハハ!」

 

笑いは止まらない。

神様に感謝したくて、同時に呪いたくて仕方がなかった。

 

曹騰とは確か曹操の祖父だった人。

そして目の前の女の子が曹騰という。

 

つまりはそういうことだ。

 

「ちょっと笑ってないで何とか……!

アナタ……泣いてるの?」

 

女の子の言う通り。俺は泣いていた。

ただ俺にもこの涙が何なのか分からなかった。

 

うれし涙なのか、

悔し涙なのか……。

 

ただ一つだけ、分かったことがある。

ここでの俺の役目。

俺が護るべき約束。

 

それを叶えるために必要なこと。

 

俺は気がつけば目の前の女の子を抱きしめていた。

いや、すがりついたのかもしれない。

 

「わぷっ。ちょ、ちょっと!」

 

「………だよ」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の名前は橋玄だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

華琳……約束だ。

 

俺はこれからずっとお前と一緒にいる。

もし君が俺のことを忘れていても、

それどころか俺を知らなかったとしても、

『北郷一刀』が、ずっとお前の傍にいるよ。

 

華琳。

 

だから……

 

だから、どうか幸せに―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり。

 

 

 

 

 

あとがき。

 

どうもここまで見てもらってありがとうございます。

いかがだったでしょうか?妄想前回の話しですたがww

 

ファンブックとか見てないので公式では橋玄がもしかしたら女性かもしれませんが、

この話しでは男性です。

 

そして=一刀です。

 

作者は魏ルートを終えて考えたのが一刀はどこへ行ってしまったのか?です。

で、いろいろ考えていくともしかしたら橋玄が一刀だったら面白くね?

と考えつきました。

 

これまで頭の中で治めてただけですが、このたび文章に書かせてもらいました。

楽しんでもらえれば嬉しいです。

 

では長々と書くのもあれなのでこれくらいにしときます。

 

ではノシ

 

 

 

 


 
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