No.191504

こんな休みもたまにはあるんよ

さむさん

真・恋姫†無双の2次創作SS。霞メイン……というか前作の霞視点バージョン。
嘘んこ関西弁による一人称小説のため読みにくいです。
キャラが崩壊してる気もしたり、しなかったり。

感想とかコメントをもらえると書いてる人が喜びます。

2010-12-24 21:12:47 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1758   閲覧ユーザー数:1571

 今日のウチは非番やった。

 昨夜は休みの前やからって隊の連中と遅くまで飲んでもうて、今朝起きたのはいつもより大分遅かった。それからメシ食ったりで気がついたらお日様がてっぺんを過ぎとった。

 朝寝するんも悪ないけど、せっかくの休みが寝てる間に半分終わってもうたって考えるとなんや損したような気分になる。つっても特にやりたいことがあるっちゅうわけやないんやけどな。

 こういう時、例えば一刀んとこの真桜や沙和やったら、やりたい事がいーっぱいあっていっくら時間があっても足らへんのやろうけど、ウチにはそういう『熱中してること』っちゅうんがないねん。

 そりゃ馬乗ったり、惇ちゃんと稽古したりってのも楽しいっちゃ楽しいんやけど、そういうのはどうしても仕事してる気になってまう。休みの日にはやっぱりそれっぽいことをしてたいんや。

 小さいころからずっと修行、修行ってそればっかりやったことを別に後悔してるとか、そういう気持ちはないけど…………ないんやけど、今みたいな時はちょっと寂しなる。

 

「やめやめ。せっかくの休みやのに部屋でクサっとってもつまらんわ。外の空気でも吸ってこよ」

 

 ワザと口に出すことで暗くなっとった気分を切りかえてやった。

 なんとなく心が落ち込んでるような時、ウチは遠乗りすることにしてる。

 己の足で走ってるうちは絶対にわからん風の感覚や、あっという間に流れていく景色は小さな悩みごとなんかぶっちぎってくれる。

 今日もそうするつもりでウチは部屋を出た。

 

 

 

真・恋姫†無双SS

 

こんな休みもたまにはあるんよ

 

 

 

 部屋から厩舎へは中庭を通るとちょっとだけ近道になる。

 空はそこらじゅう見渡しても雲がいっこも浮かんどらんくらい晴れとって、太陽がぽかぽかあったかい。風もカラッとしとるし、馬で飛ばしたったらきっと気持ちがええやろ。

 木の間を歩いとると奥のほうから誰かの話し声が聞こえてきた。一人はたまに一緒にメシ食ったりする季衣っちの声で、もうかたっぽはどっかで聞いたことがあるんやけど顔と名前がよう思い出せん。

 ちっとばかし気になったウチは何してるんか確かめてみることにした。

 植え込みを抜けると季衣っちと一緒に見覚えのある女がいた。あれは多分、あちこちで芸人をやっとる三人姉妹の一人だったはずや。

 それともう一人。

 そいつの背中を見ただけで心臓がどくんっ、てなる。

 ウチの奥に隠れてた女の部分を引っぱり出した男。

 

「あっ、一刀やん。こんなとこで何してるん?」

 

 一刀と一緒なら退屈なんて絶対せぇへん、ウチはそう思って後ろから声をかけた。

 やけど、季衣ともう一人の女に魅入っとるあいつはぜんぜん気づかへん。

 軽くムカついたんで強めに肩を叩いてやると、ようやくこっちを向きよった。

 

「なんだ霞か。びっくりさせるなよ」

 

 振り返った一刀はちょっと痛そうな顔をしとって、もう少し力を抜いたれば良かったな、なんて思うてまうのが我がことながら可笑しい。

 

「なんだ、とはごあいさつやな。せっかくウチが声かけたったのに」

「悪気があったわけじゃないよ。ちょっと驚いただけさ」

「別にええよ…………それよりずいぶん集中しとったみたいやけど、何見てるん?」

 

 言いながら一刀のとなりに座った。

 さり気なくやったつもりやけど、向こうはどう思ってるやろか。

 

「地和の舞踏教室。生徒は季衣」

「また珍しい組み合わせやな」

「……いろいろあったんだよ」

 

 そう話す一刀の視線はもう二人の方に向いとる。

 せやけど、ウチと話してる間くらいはこっちを見て欲しい。

 そら、季衣はウチから見てもかわいいし?

 地和――――たしか、そないな名前やったか?――――の踊りは女の目でも見事やと思う。

 それに、特に地和(仮)の方は一刀に見せるために踊ってるの、丸分かりや。

 あないして女らしい部分を魅せつけられるんは、男にとって嬉しいもんなんやろか。

 ま、ウチはあない女の子らしゅうないし、そんなんが踊ってみせたところで男を釘付けにするなんてとても無理やろうけどな。

 

「やっぱかわええなぁ」

「あ、霞もそう思う?」

 

 独り言を聞かれたんは恥ずかしかったけど、声が聞けて嬉しかったウチはついつい相手に調子を合わせてまう。

 

「あったりまえやん。地和?の、華があるっていうんかな、そういうのもええけど、季衣っちの一生懸命なんもええ感じや。なんや頭とか撫でたなるし」

「うんうん、わかるなあ、それ」

 

 やけど、声はこっちに向いとっても、目の方はずっとむこうを向いたっきりやった。

 

「ひとりひとり見ててもきっと可愛らしいんやろうけど、二人一緒だと魅力倍増やな」

「お互いに引き立てあってるよなー」

「ま、偉そうなこと言うててもウチは踊りなんて出来ないんやけどな」

 

 なんや言うてて情けなくなってくるわ。

 やっぱり今からでも季衣っちみたいに教えてもらおかな。

 いやいや、そんなんウチの柄やないし。

 そうして頭の中で同じとこをグルグル回っとったウチの顔を、いつの間にか一刀が覗きこんどった。

 

「なんだか調子が悪いみたいだけど、大丈夫か?」

 

 生返事ばっかりしてるウチを気にかけた一刀が心配してくれるんは嬉しいんやけど、ワザとやないって言うてもこないな気の引き方するんはちょっぴり罪悪感を感じてまう。へこんでくる。

 ま、それも二人が休憩するまでのことやったけどな。

 地和が戻ってきたとたんに一刀にくっつきよったんや。

 見せつけられるこっちはたまったもんやない。

 でも、わかってるねん。

 ただ二人は惚れた男が見てくれとるのがうれしいだけやって。

 これは完全にウチが一人で勝手にへこんでるだけで地和や一刀や、もちろん季衣もやけど、悪いわけやない。

 それで一刀や季衣を心配させてまうのはおかしいやろ。

 せやから、ウチは精いっぱい元気なフリをして見せたんやけど、上手く出来たやろか。

 

 

 

 休憩しとる間も二人は一刀といろいろやっとったようやけど、ウチはずっと我慢しとった。

 正直、何度ここから逃げ出そう思ったかわからへん。

 それでも残ったのは、一刀の傍にいればそのうち何かのきっかけで振り向かせられるかもしれんっていうのと、どうせなら女を魅せつける方法を盗んでやろうっていう、まあ、それだけのことや。

 

「なあ、霞。さっきからずっと様子がおかしいし、何か悩んでることがあるなら相談に乗るよ」

 

 急に一刀がそんなことを言ってきよった。

 確かに、さっきからずっと悶々としてるけど?

 そんなん自分に言えるわけないやろ。

 

「せやから、何でもあらへんって。しつこい男は嫌われるで」

 

 こない無神経なこと言われたら、答える方もさすがにキツイ口調になってまう。

 

「何でもないって、そんなわけないだろ。ここへ来たときは元気だったじゃないか…………霞、元気出してくれよ。こんなの、なんだか霞らしくない」

 

 挙げ句のはてにこの台詞や。キレそうになってもしゃあないやろ。

 

「ウチらしない?やったら、ウチらしいってどういうこと?一刀はウチのこと、わかってるって言うんか!」

 

 せやけど、一刀の目はまっすぐウチを覗きこんでて、真剣に心配してくれてるんがわかった。

 一刀はたしかに無神経なとこもあるんやけど、優しいとこもあるねん。

 本気でわかってないみたいやし、一回だけ猶予っちゅうのをやってみるか――――そのかわり、次にしくじりよったら覚悟してもらうけど。

 

「まあ、ええわ。自分はウチのことをどんな風に思ってるか、はっきり言うてみぃ」

「言葉にするのはちょっと難しいけどさ…………明るくて思ったことをためらわず実行する。でも、他への気づかいもさりげなく出来てて、そういうところがやっぱり女の子だなーって……」

 

 『女の子』?

 一刀はウチのこと、ちゃんと意識してくれてるん?

「ちょい待ち…………なんやの急に。聞いてるこっちの歯が浮きそうやわ。ウチを褒めたってなんも出ぇへんで」

「……まあ、ともかくだ。さっきみたいなのはいつもの霞とは違うだろ」

 

 もっとようさん言うて欲しかったけど、すっかり照れてまった一刀からはもうこれ以上言葉は出てこないやろな。

 今さら後悔してもあとの祭りなんやけど、変なとこで口を挟むんやなかったわ。

 

「ウチらしない、か……せやな、ここでウジウジ悩んどっても始まらんわ」

 

 そもそも、この『悩んどる』状態が普段のウチとはちゃうわな。いつもやったらさっさと二人に混ざって踊ってるか、一刀と一緒に囃したてるか、それともさっさと他所へ行ってまうか――――少なくともこんなとこで悩んだりせえへんやろ。

 ウチにしてはめずらしくまわり道しとったわけなんやけど、まだまだ間に合うんやからかまへんやろ。

 

「なあ、一刀。ウチもあっち行って踊ってくるわ。こっから見とってな。あとな、上手く出来たらちゃんと褒めてぇな!」

 

 一刀の目を見つめながらはっきりと言うてやった。

 武張った女が上手く踊れるかなんてわからんけど、ここでただ座っとるよりは十倍マシやろ。それに……たぶん一刀はうまいとかへたとかそういうんはあんまし気にせんと思うし。

 ウチはさっぱりした気持ちで二人の方に歩いて行った。

 顔が勝手に笑顔になってまう。

 けど、しゃあないやろ。

 だって、一刀がウチをどんな目で見てくれるか、どんな言葉をかけてくれるか――――ほんまに楽しみで、楽しみで仕方がなかったんやもん。

 

<あとがき>

 

 本作から読んでくださった方ははじめまして。他の話も読んでくださった方はお久しぶりでございます――――今回は言うほど間は空いていないんですけども。

 

 本作は、先にUPした「マズルカ」を霞視点で語ったものです。

 だからといってそちらを読まないと意味がわからないとか、そういうことは一切ないのでそこはご安心ください。

 

 むしろ作者的には前作はなかったことにしたいんですよね。可笑しなところが沢山ありますし。

 安易に黒歴史にするよりは蛇足をつけた方がいいだろうと思ってこちらを書いたんですが、ニセモノ関西弁の一人称話なんていうどこの生まれかを問わず読みにくいシロモノと較べて、果たしてどっちがマシなのやら。

 恥の上塗り、なんて言葉もふと頭を過ぎったり。

 

 では、年内にもう一度お会いできるよう気合入れていきますので、みなさま、よろしくお願いします。

 

 末筆ながら、読んでくださった方に感謝を、コメントやメッセを下さる方には更に大きな感謝を捧げつつ、今回はこのあたりで筆を置きたいと思います。

 乱筆・乱文失礼いたしました。

 


 
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