No.185345

馬鹿が呉にやってきましたが何か? 5

はびゃさん

今回は第三者視点で書いてます。
お付き合い頂いてる方有り難う御座います。
次作を書くなら蓮華達を登場させたいと思います。

2010-11-18 23:18:43 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3076   閲覧ユーザー数:2558

 

 

雪蓮 「は~~~、めんどくさい……」

 

冥琳 「これも孫呉復興の為。 しっかりやってもらうわよ」

 

執務室。

たまった政務に目をやりながら愚痴をこぼす雪蓮を冥琳はたしなめた。

 

冥琳 「まったく、最近はあの馬鹿の事でお前への監督が行き届いてなかったな。 今日中にここにある物は全て片付けてもらうから覚悟しなさい」

 

雪蓮 「ぶ~~~~」

 

冥琳 「自業自得。 今日はどんな騒ぎが聞こえようとここから動かんぞ」

 

 バンッ

 

一刀 「冥琳さ~~~ん!!」

 

突然に部屋の扉が元気よく開いた、そこから表れた人物を認識した冥琳はおもわず頭を抱える。

 

雪蓮 「向こうから来てくれたわよ♪ 「騒ぎ」が」

 

一刀 「冥琳さん!! め~~~りんさん」

 

冥琳 「~~~~~っ。 人の名を気安く何度も呼ぶな、一体なんだ?」

 

一刀 「読みましたよ冥琳さんが貸してくれた絵本!! 俺滅茶苦茶感動しました!!」

 

 ガバッ

 

冥琳 「ちょ近っ!! 落ち着け!! 唾飛ばすな!!」

 

雪蓮 「絵本? ……一刀が読んだの?」

 

一刀 「そうっスよ!! もう俺感動が止まらなくて!!」 

 

雪蓮 「へ~~」

 

一刀 「それで冥琳さんにこの続きを借りようと思って来たんですけど……」

 

冥琳 「続き? アレにそんなのないぞ?」

 

眼鏡のレンズについた唾を拭取りながら冥琳が言う。

 

一刀 「え? マ、マジ!? じゃあ母親が死んで身寄りのなくなったあの女の子はどうなるんですか!!!」

 

冥琳 「それは……一人で強く生きていくのではないか? いずれくる死を悟った母親が残されたわずかな時間で娘を一人でも生きていける様に教育する……そういう話だろう?」

 

一刀 「そうですけど、でもこの終わり方じゃ女の子がその後どうやって生きたかわからないじゃないですか!!!」

 

冥琳 「言うとおりだが……絵本だぞ? 字の読み書きができない北郷に丁度いいと思って貸してやったから別に大人向けでもないし、そこまでこだわるものじゃあないだろう」

 

一刀 「それじゃあ続きが気になる俺はどうしたらいいんですか?」

 

冥琳 「そんなの自分で考えろ」

 

一刀 「……おぉ、なるほど!! 話の続きは俺が書けばいいんっスね、流石冥琳さん!!」

 

冥琳 「は?」

 

一刀 「よっしゃ!! じゃあ早速書いてきますね!!」

 

 

そう言い残すと一目散に一刀は部屋から出て行った。

 

 

冥琳 「コラ!! 扉くらい閉めろ……って、もうあんな所まで……」

 

 

嗜めようとした彼女があきらめ出入り口から室内へ顔を戻すと、そこにある不機嫌な顔と目が合う。

 

 

雪蓮 「(ムスッ) ……冥琳ってなんだかんだで一刀と仲いいわよね~」

 

冥琳 「雪蓮……まぁ悪いとはいわんが……お前、北郷のどこがそんなに気に入ったんだ?」

 

雪蓮 「ん~~~……全部?」

 

冥琳 「…………孫呉の悪夢だな」

 

雪蓮 「それより……一刀っていつの間に字が読めるようになったのかしら?」

 

 

疑問系の口調とは反対に、満足げな笑みを浮かべた雪蓮が言う。

 

 

冥琳 「そういえば……」

 

雪蓮 「あの子、そんなに物覚えがいい方じゃないらしいわね……穏が言ってたわ」

 

冥琳 「ああ、馬鹿だからな」

 

雪蓮 「じゃあ一体なぜ、その馬鹿はこんに早く字が読めるようになったのかしらね」

 

冥琳 「……意地の悪い言い方ね、そんなの努力したからに決まってるでしょう」

 

雪蓮 「フフ、そうね……私は一刀のそういう所が好きなのよ」

 

 

目を彼方へ向け、くすぐったったそうに笑った雪蓮。

 

 

冥琳 「(まったくもう……重症だな)」

 

 

その表情を見た往年の大親友は少しの寂しさと嬉しさを感じるのであった。

 

……

 

 

 

そんなこんなで数刻後。

 

 

雪蓮 「あ~~~もう、うざっ!!」

 

冥琳 「そのように自棄になっても仕事は減らんぞ。 後少しなんだから頑張りなさい」

 

 バンッ

 

一刀 「出来たっ!!」

 

 

使用者の集中と疲労により、沈んだ空気が充満した室内。

それを吹き飛ばすかのごとく再び元気よく開いた扉、そこに再び同じ人物が現れた。

 

 

冥琳 「北郷、もう少し静かに入ってこれないのか?」

 

雪蓮 「一刀、何ができたの?」

 

一刀 「何って、決まってるじゃないですか。 絵本ですよ、絵本の続き」

 

冥琳 「もう出来たのか?」

 

一刀 「はい! 絵は俺が描いて字は穏に書いてもらいました!! 魂の力作、見てください!!」

 

そういって差し出された数枚の紙を受け取った冥琳。

 

冥琳 「また紙の無駄使いをして……」

 

一刀 「そんな事言わずに見て下さいよ~」

 

雪蓮 「もちろん私にも見せてくれるわよね」

 

 

椅子から立ち上がった雪蓮が冥琳の肩口から顔を出し、彼女の手元に視線を送る。

目の前には期待に目を輝かせこちらを見てくる男の子が一人。

 

 

冥琳 「仕方ないわね」

 

 

その光景に思わず笑みをこぼし、彼女は紙をめくった。

 

 ペラ

 

冥琳 「…………」

 

雪蓮 「…………」

 

 ペラ

 

二人 「……」

 

 ペラ 

 

 ペラ

 

 ペラ

 

静かな部屋に一定の間隔で紙の捲れる音だけがが響く。 

 

 ……

 

 …

 

 ペラ

 

 

そしてついに最後の一枚が捲られた。

 

 

冥琳 「…………」

 

 

一刀 「ね、ね、どうでした? すんごいいい話になったでしょ? めでたしめでたしでしょ?」

 

冥琳 「……北郷、もしかしたら私は解釈を間違えたかもしれない。 この話の流れをもう一度、今度はお前の口から聞かせてくれないか?」

 

 

一刀 「え? いいっスよ。 

『身寄りのないかわいそうな女の子、彼女はある日生活の為にその身を売ることを決意します。 その後、買い手先のご主人様に調教され立派な性奴隷となった女の子は毎日ご主人様を悦ばせてあげましたとさ』 めでたしめでたし」

 

 

冥琳 「ぜんっっっぜんめでたくなーーーーい!! 貴様は一体どれほど歪な常識を持ってるのだ!!」

 

一刀 「え? へ? な、なんで怒ってんスか!?」

 

冥琳 「成敗!!」

 

 ドゴッ

 

一刀 「ひぐはっ」

 

冥琳の華麗な後ろ回しげりが一刀の意識を刈り取り、その後ろで雪蓮は一刀の作品を見直していた。

 

 ペラ ペラ

 

雪蓮 「う~~~ん……見ようによってはいい話……カナー?」

 

 

納得のいく終わり方は人それぞれである。

 

 

 

 


 
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