No.178421

魏√after 久遠の月日の中で 8

ふぉんさん

魏√after 久遠の月日の中で8になります。
前作の番外編から見ていただけると幸いです。

それではどうぞ。

2010-10-15 21:21:31 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:24301   閲覧ユーザー数:20045

「すごい隈だな。どうしたんだ?」

 

「……何でもない。大丈夫」

 

朝。あれから宿へ戻り寝台に潜りながら必死に頭を働かせていた。

答えは……一応出た。それはとても情けない答え。

だが今の俺にはこれが限界だった。

 

重い頭を振る。

考えてる最中には無かった眠気が、今になって襲ってくる。

 

「むぅ、その様子だともう一日ぐらいこの村で休んだほうがいいか」

 

「あー……いや、本当大丈夫だから、用意ができたなら今日中にでも行こう」

 

数日村に留まると思ったが、華雄はすぐにでも出たいらしい。

俺としてはお言葉に甘えたいところだが、自分の勝手な事態で華雄との旅に支障が出るのはとても忍びない。

 

「一刀がそう言うなら別にいいが……なら昼までに荷の確認はしておくからゆっくりしていろ」

 

「ごめん、ありがとう」

 

俺を気遣ってか、華雄が旅支度を整えてくれるらしい。

彼女に感謝しながらも、俺は約束の場所へ向かった。

昨日の場所へ着いた。

彼女達の姿はまだ無い。

 

……正直、怖い。

俺の答えに彼女達は怒るかもしれない。納得しないかもしれない。

だが伝えないといけない。五年間も待たせた俺に、少なくともさらに時間をくれた事に感謝をしなければ。

それが無ければ、答えが出ずその場で狼狽していたことだろう。

 

「待たせてごめんなさい」

 

「いや、今来たとこ」

 

返事をしながら振り返る。

そこに居た三人は、それぞれ違う表情を浮かべていた。

 

天和は不安気な、地和は怒った様な、人和は無表情。

 

「答えを、教えてください」

 

人和が俺に問いかける。

緊張から鼓動が早まる。恐怖に身が竦む。

震える唇を必死に押さえ、俺は答えた。

 

「……旅を続けるよ」

 

「………………そう」

 

目を伏せる人和。

悲しげな彼女達に、続ける。

 

「少し、待って欲しいんだ」

 

「え?」

 

「情けない話しだけど、まだ俺に彼女達の前に出る覚悟が無い。いつになるか分からないけど、その覚悟が固まるまで旅を続けたいんだ。まだ始めたばかりの旅だけど、今まで華琳達の下でしかこの世界を見た事が無い俺にとって、見聞を広めるいい機会だと思う」

 

それは言い訳。覚悟ができていない俺の逃げ。

彼女達はそんな俺の情けない答えに溜め息を吐いた。

 

「昨日言った通り、私達は一刀さんの出した答えについては何も言わない。でも……」

「繰り返すことになるけど、みんな一刀の事待ってるんだからね!」

「いくら時間がかかっても、それだけは絶対なんだよ」

 

彼女達の言葉に涙腺が緩む。

こんな情けない俺の事を、後押ししてくれている。

 

三人は俺を囲むように抱きついてきた。

 

「え……ちょ……」

 

狼狽える俺に無言で力を込め抱きしめてくる三人。

少ししたら離れてくれた。

 

「五年分には足りないですが、今日はこのくらいでいいです」

「……ちぃはまだ許したわけじゃないんだからね」

「ちょっと足りないけどー、今はこれで満足しといてあげる」

 

そんな三人の言葉に、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。

それから三人は、舞台報告に許昌に戻ると言い別れた。

別れ際寂しそうにしてる三人に罪悪感を抱きながらも、優しく手を振った。

 

宿に戻ると華雄が既に支度を終えていた。

次の目的地は呉との国境付近。華雄が村人から仕入れた情報。例によって野盗の噂だった。

 

 

 

 

「……むぁー」

 

「お、おい。本当に大丈夫なのか?」

 

村に着く前と同じように、纏風に跨る俺と腕の間に収まる華雄。

しかし今の俺は凄まじい眠気から煩悩を抱く余裕が無かった。

首が据わらずかっくんかっくん。どうにも力が入らない。

 

「あっ……飛ぶ」

 

「一刀!そんなにもたれ掛からないでくれ!!」

 

華雄の罵声と共に、俺の意識が睡魔に飲まれた。

「ねーえー。本当にこれで良かったのー?」

 

一刀さんと別れた後、私達は報告のために許昌に向かっていた。

天和姉さんは不満そうに頬を膨らましている。

 

「仕方ないでしょ。一刀さんが決めた事なんだから」

 

「あんのバ一刀!早く戻らなかったら承知しないんだから!」

 

地和姉さんが喚きだす。護衛の人たちもいるんだから止めて欲しい。

 

「人和はなんでそんなに落ち着いていられるのよ。少しは一刀の態度にむかつかないの?」

 

「え、何?」

 

「何って……ひっ」

 

私を見て怯える地和姉さん。

地和姉さんは何を言ってるんだろう。私が怒ってないわけが無いじゃない。

煮え切らない態度で結局旅に出る事を決めた一刀さん。彼の気持ちは分からなくも無いけど、私達が納得できるものでもない。

私はとても怒っているのだ。

 

「れ、れんほーちゃん……落ち着こうよー」

 

「何言ってるの天和姉さん。私は冷静よ」

 

そんな一刀さんにはお仕置きが必要だ。

報告する事が増えた。

口止めをされたわけではない。あんなやり取りの後じゃ、言わないのが当然なのだと思ってそうだけれど、その考えを利用させてもらおう。

魏のみんなはどんな反応するのだろうか。そんな想像をすると、少し面白くなってくる。

許昌に着いたら華琳様に言ってやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一刀さんが帰ってきてますよ』と。

あとがき

 

 

 

どうもふぉんです。今回も短めです。

久遠の方、ようやく一段落ついたことになるんでしょうか。ここから波乱が巻き起こされるんでしょうけども

私は三国志うんぬんの地理がまったくわかりません。地名とか街名は有名どころ(本国)くらいしか分かりませんのでご了承を……

 

さてここで唐突ですが、これからの投稿作品(短編シリーズ)についてのアンケートをとりたいと思います。

よろしければ希望の番号をコメントにお願いします。

 

1、短編なんか書かず久遠の続きが読みたい

 

2、天女光臨の続き短編が読みたい

 

3、短編の華雄さんが読みたい

 

4、その他おまかせの短編が読みたい

 

5、もう書くな

 

以上です。多くのアンケート回答待ってます。

※アンケートは終了しました。たくさんのコメントありがとうございます。

 

みなさまが見てくれるのと、感想を書いてくれるのがとてもうれしいです。

頑張りますのでこれからも応援お願いします。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
96
11

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択