No.167250

『舞い踊る季節の中で』 第77話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

思いを叶えた明命と翡翠、
その想いのまま、初めての夜を迎え、
此処まで来るのに、掛かった時間を取り戻すように、お互い求め合う。

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2010-08-21 19:11:40 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:18745   閲覧ユーザー数:12011

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-

   第77話 ~ 木漏れ日に舞う、幸せな魂達 ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術

  (今後順次公開)

  最近の悩み:脳裏に焼き付けられた、幼い少女の裸と、均整のとれた大人の女性の裸、幼い身体の方

        は、本来なら気にしない物のはずだが、何故だろう、それでも成人と知っているだけで、

        同じ筈なのに、意識してしまう。 だが、これだけなら、耐えられた。 及川の阿呆が持

        って来た雑誌や本のおかげで、幾らか耐性はついていた。 今だけは、あの阿呆に感謝し

        つつも、ずっと禁欲生活を送っていた俺には、それなりに衝撃が大きかった。 止めが、

        美羽達から目を逸らした先で見た幻視、これが非常に不味かった。

        そして、その結果、明命と翡翠に詰問される事になったのだが、これがまた不味い。 そ

        もそも、本当の事など答えられないし、二人の言う二択で答えたとしても、なにか別の地

        雷を踏む気がした。 その上……下を見るな北郷一刀、例え目を逸らすなと怒られようと、

        言われようと、まだ其方の方がマシだ。 二人の風呂上がりの雰囲気に、石鹸の香り、今

        俺の理性を攻撃しているのは、それだけじゃない。 二人は湯上りの薄着で、俺の腕を、

        その両手抱えるように掴み、その、……いろいろ当たる。 その上、……その寝るための

        緩めの服は、やはり首元も緩いらしく、上からだと……その、慎ましいものが見えてしま

        う。 ……何でだろう……二人のその、そう言う物から逃れようと、足掻けば足掻くほど、

        泥沼に嵌まって行くような気がするのは……、

        

 

 

翡翠視点:

 

 

「……ぅ…ん」

 

温かな日差しが、

開け放たれた窓から、

私の身体に降り注ぐ、

 

窓から流れ込む風が、

春を初旬の温かな空気が、

もう昼近くである事を私に教えてくれています。

 

昼近くだと言うのに、

瞼を開けようと思っても、いつも以上に重く感じます。

頭の中も霞が掛かったようで、どうにも鈍いです。

原因は分かっています。

 

「……ふふ♪…」

 

全身を満たしている喜びに、自然と笑みが零れます。

目を瞑っていても、彼が目の前にいる事が分かります。

きっと私の様に微睡んでいるか、まだ眠っているのでしょう。

昨夜は、あれだけ頑張ったんです。 無理もありません。

 

 

一刀君と結ばれた。

 

 

その想いが、その喜びが、

今の私を満たしてくれてます。

この重い瞼が、

気怠い身体が、

お腹の中に残る確かな感触が、

痺れるように、鈍く痛む箇所が、

一刀君と結ばれた、確かな証です、

 

正直、あそこまで痛いとは思いませんでした。

身体を、杭で突き刺されたような痛み、

その上、小さな私の身体は、一刀君のを受け容れるには小さく、

お腹が一刀君の形に膨らんでしまう程で、

その圧迫感のあまり、思わず苦しみの声を漏らしてしまう所でした。

ですが、そんな痛みや苦しみも、やっと結ばれた事の嬉しさが、

一刀君への想いの前に、

一刀君の想いが嬉しくて、

そんな痛みと苦しさなど、気にはなりませんでした。

むしろ、それさえ、一刀君の結ばれた証だと、嬉しさを感じました。

私達は、今までを取り戻すように求め合い、

次第に、あれ程あった痛みと苦しさも、別のものへと変ってゆき、

 

……ぁぅぁぅ、……あれは癖になります。

 

夕べの出来事を、

夕べの感触を思い出し、

顔が熱くなるのが分かります。

 

「ぁぅ……」

 

私は、手をやさしく自分のお腹に当てます。

この中には、一刀君が私を求めてくれた証が、

何度も出してくれた証が、残っています。

……ふふっ、おかしいです。

満たされている筈なのに、

まだ足りないと、そう思ってしまいます。

一刀君の温もりを、もっと感じたいと思ってしまいます。

 

だから、目の前の気配に、

重い手を伸ばし、

手探りで、彼を引き寄せ。

 

「ん…ぅん…んぁ………」

 

彼の唇に私の唇を重ね。

私の唇は、舌は、彼を求めます。

彼の心を求めるように、

私の想いを注ぎ込むように、

私は、その行為に夢中になります。

 

 

 

 

「ぅん……ん……くぅ…」

 

途中、なぜか離れようとする彼を、

私は目を瞑ったまま、彼の頭を押さえます。

まだ駄目です。

もっと、一刀君を感じさせてください。

 

「うん、ん…ん…んぁ」

 

一刀君の拒むように暴れる舌を、強引に絡ませ、

そして、その事が、余計に私を燃え上がらせます。

今まで我慢してきたんです。

これくらい求めても罰は当たりません。

だから、私はもっと激しく彼の舌を、口内を味わいます。

混ざり合った唾液が、私の口内を満たし、

時折それを飲み込んでは、更に激しく求めます。

一刀君の甘い香りのする唾液を、

もっと欲しいと、私は、更に舌を、

 

……甘い?

 

確か夕べは、頭が、体が痺れる様な感じが、

他にも唇の感触が、舌がの感触が、小さい気が、

それに先程から一刀君の頭を抑えている手の感触が……、

私は、不思議に思い、重い瞼を何とか開けると。

 

「……………」

 

私は舌と唇を、

押さえていた手を離し、

更に身を離すようにしながら、

まだ気怠い体を、そのまま寝台の上で座り込せます。

今は何も言いたくありません。

でも、・・・・・・そう言う訳にはいきません。

ですから・・・・・・、

 

 

「………今のは事故です。 忘れてください、明命ちゃん」

 

 

そう、口にするのがやっとでした。

同じように身体を起こし、

寝台に座り込む相手に、

 

 

顔を赤くし、

目尻に涙を浮かべ、

呆然としている明命ちゃんに、

そう言うのが、やっとでした。

 

 

 

明命視点:

 

 

「……ぅ…ん」

 

そんな呻く様な声に、私は意識を取り戻します。

だと言うのに、気怠く重く感じる身体の感覚に、

いつもと違って、体を起こす気になれませんでした。

 

おかしいです。

風邪でも引いたのでしょうか?

 

私は、目を瞑ったまま、その理由を考えます。

昨日は、風邪をひいてしまうような、任務はありませんでした。

なにかと忙しそうにしている一刀さんの代わりに、一刀さんの部隊を鍛えてあげただけです。

それなりに選抜されてはいますが、所詮は元々下級兵です。

そんな『天の御使い』の部隊としては、まだまだです。

この間の朱然のような、気の抜け振りもそうですが、

思春様の所にいた丁奉も、一刀さんへの伝令の任務が出来なかったばかりか、

その後の調練に遅れてくる、と言う事があった事を耳にした思春様が、

 

『 …最初に、恥知らずな真似をしただけではなく、そんな事があったとはな、

  ……奴への借りもある。 少し、身の程と言う物を教えてやらねばな 』

 

と言う事で、二人で徹底的に鍛えてあげただけです。

そう言えば、あの後霞様が

 

『 一刀の部隊やったら、馬も乗れんとな。 お前ら今日は二十里は走るでーっ 』

 

と言っていました。

あの後更に馬で、二十里はどうかと思いますが、少しは気合が入ったと思います。

一刀さんに、もうあんな真似はさせたくありません。

一刀さん……あっ

 

かぁぁーーーーーっ

 

顔が薬缶のように茹で上がり、熱くなるのが分かります。

そ・そうです。

私は、一刀さんと

 

「……はぁぅ………」

 

駄目です。

恥ずかしい思いと、嬉しい思いで、頭の中がいっぱいで、

その上、ごちゃごちゃになって、上手く頭が働きません。

でも、

でも、

 

 

確かに、一刀さんと結ばれたんです。

 

 

 

 

そう思いだすと、体に残る感覚が、感触がはっきりと分かります。

重く、彼方此方が少し痛む身体が、

動かすと、下腹部に響くような、かすかな痛みが、

私の心を満たすように、

お腹の中に残る感触と、一刀さんとの証が、

私の心を、更に満たして行きます。

 

最初は、話に聞いた通り痛みましたが、

一刀さんと一つになれた事が、

一刀さんと結ばれた事が嬉しくて、

そんな痛みすら、心地よく感じました。

そしてその痛みすら、直ぐに……

 

はあぅぁぅ……

 

任務の特性上、そういうのは見てきましたし、

どう言う物かは、だいたい想像できました。

でも……、

 

……あれは凄すぎます。

 

途中、あまりの感覚に、全身の力が抜けてしまっても、

私は一刀さんを求め続けてしまいました。

一刀さんも、私を求めてくれました。

あぅぅっ……だ・駄目です、思い出すだけでも、力が抜けてしまいます。

 

ぐいっ

 

え?

 

頭を引っ張られる感覚に、驚く間もなく、

 

「ん…ぅん…んぁ………」

 

押し付けられる唇の感触に、

差し込まれれ舌の感触に、

私は驚きつつも、受け入れてしまいます。

 

一刀さん、こんな朝……いえ、たぶん昼近くですね。

とにかく、少しだけならと、思っていましたが、

 

おかしいです。

 

一刀さんにしては、感触が……

それに、私の頭に触れている手が、小さいような……

私は、不思議に思った事を確かめるために、重い瞼を開けると、

 

「ぅん!……ん……くぅ…」(んな!…翡翠…様…)

 

私は慌てて、翡翠様と離れようとしますが、上手く力が入りません。

その上、私の行動とは反対に、翡翠様は、ますます激しく舌を絡ませてきます。

だ・駄目です。 ……酸欠で頭が朦朧としてきます。

それでも何とか離れようとしますが、翡翠様の行為は、ますます激しくなるだけです。

ですが、その行為も、翡翠様が、やっと目を開けられた事で、終わりを告げます。

私は、やっと解放された体を自分で抱えるように、

重い体を無理やり起こして……こ・腰に上手く力が入りません。

それでも、何とか寝台の上に座り込む形で体を起こします。

酸欠の所を、無理やり体を起こしたせいか、

意識が朦朧としますが、やがて、それも落ち着き始めた時、

 

「………今のは事故です。 忘れてください、明命ちゃん」

 

私と同じように体を起こした翡翠様は、

下を俯きながら、そう言って来てくれます。

私は、その言葉を、複雑な思いで受け取ります。

 

『 一刀さん以外に、唇を奪われてしまった 』と言う悲しみ、

『 翡翠様に、そう言う趣味が無くてよかった 』と言う安堵感、

『 それでも、翡翠様と共に、一刀さんと結ばれた 』と言う幸福感、

『 初めてを迎えた後に、何でこんな目に 』と言う怒り、

 

そんな、たくさんの思いが、私の中を巡りました。

 

 

 

翡翠視点:

 

 

部屋を重く気まずい空気が漂います。

私も、あれから、何も言う気がせず、

ただ悪戯に、時間が過ぎて行きます。

 

自分でやった事とは言え、

幾ら寝ぼけていたとは言え、

一刀君と結ばれて、浮かれていたとは言え、

幾らなんでも、アレはありません。

 

普通は、夕べの余韻を、

お互いに恥ずかしがりながら、

それでも、それが夢ではなかった事を、

想いが勘違いでなかった事を、

少しずつ、

そして、

お互いの温もりを感じ合いながら、

確認しあうものです。

 

……それが、

それが、なんで、

何が悲しくて、

その相手が、本人ではなく、

明命ちゃんにしなくちゃいけないんですかっ!

 

二人で、一刀君と結ばれた以上、

これから、そう言う事もあるでしょう。

でも、それはあくまで一刀君との行為中での話しです。

私も明命ちゃんも、二人だけでそう言う事する趣味はありません。

ましてや、初めてを迎えた後に、何でこんな目に……、

それと言うのも、みんな一刀君が悪いんですっ!

 

あっ

そうです一刀君は?

我ながら、理不尽と思う怒りを余所に、

一刀君の姿を探して、部屋を見渡すのですが、見当たりません。

いったい、私達を放ってどこへ?

 

「あの、一刀君は?」

 

私は、自ら気まずい空気を破り、明命ちゃんに聞きます。

そして、その時見た明命ちゃんの姿に、

改めて自分の姿を思い出し、

……服は寝台の下ですね。

とりあえず、足元の方に蹴飛ばされた布団を引っ張り、

布一つ帯びていない身体を、隠します。

(……ぁぅぁぅ……やっぱり、体型では明命ちゃんには勝てません……)

 

やはり、女同士とは言え、

さすがに、夕べの痕跡が残ったままでは、恥ずかしいです。

明命ちゃんもそれは同じなのか、私の反対側の布団で体を隠し、

 

「いえ、私も気が付いた時は、……その……翡翠様が……すみません」

「う゛っ……」

 

明命ちゃんの申し訳なさそうな言葉に、私は呻いてしまいます。

 

 

 

 

明命ちゃんの答えに、再び気まずい空気が、部屋を包み込もうとした時、

 

ぎっ…きぃーー

 

「あっ、二人とも起きてたんだ」

 

戸を開ける音と共に、一刀君は顔を覗き込ませ、そう声を掛けてきます。

 

「二人ともおはよう。

 お風呂沸かしたから、二人とも入るといいよ。

 それから、もうお昼になっちゃうけど、一緒に食事をしよう」

 

そう言うと、あの温かな、春の日差しのような笑顔を残して、

再び部屋を後にします。

……多分、食事の準備に行ったのだと思います。

目が覚めたら一刀君がいなかったのは、

私達が、お風呂に入りたいだろうと思って、

身体を拭きたいだろうと思って、

私達のためを思って、お風呂の準備をしていたのでしょう。

ですが……、

 

「「 はぁーーー、……… 」」

 

私の、そして明命ちゃんの溜息が重なります。

一刀君は分かっていません。

確かに一刀君の心遣いは嬉しですし、

正直、お風呂があると言うなら、お風呂に入りたいです。

ですが、そんな事より、

今一番したかったのは、

今一番大切だったのは、

一刀君との一時、

そちらの方が大切なんです。

 

でも……、

 

「「一刀君(さん)らしいです……」」

 

そんな苦笑染みた声が、もう一度重なります。

そして、その事に、

私は、

私達は、小さく吹き出し、

そして、次に笑い出します。

心の底から、笑います。

 

あまりにも、私達らしいです。

私と明命ちゃん、そして女心の分かっていない一刀君、

そんな三人が結ばれた最初の日、

それが、あまりにも私達らしくて、

それが、おかしくて、

それが、とても嬉しく、

私達二人は、声をあげて笑います。

 

 

 

 

結局、あまり一刀君を待たせてもなんですから、

私と明命ちゃんは、一緒にお風呂に入る事にしました。

私達の身分からしたら小さい屋敷とは言え、

その浴室は、小柄な私達二人が入るくらいの広さは、十二分にあります。

 

「まったく、一刀君は相変わらずです」

「本当です。 女心が分かっていません。

 ……でも一刀さんらしいです」

「あればかりは、治りそうもありませんね」

「でもそれを含めて、あれが一刀さんだと思います」

「明命ちゃんは強いわね……。

 まぁ、一刀君のあれが治ったら治ったらで、

 いろいろ問題もありますし、こればかりは仕方ありませんね」

「えっ? そうなんですか?」

 

私の半ば諦めの言葉に、明命ちゃんは疑問の声を挙げます。

はぁ……、此方は此方で、問題が残ったままですね。

 

「一刀君の茶館時代を忘れたんですか?

 そう言う気持ちに気が付くって言う事は、ああ言う娘達の気持ちにも気が付くって事ですよ」

「う゛っ……それは大変な問題です……」

 

事の事態に気が付いたのか明命ちゃんは深刻な顔をするのですが、

それも一瞬の事で、

 

「あっ、でも、今の一刀さんなら、このまま気が付かないって事も」

「一刀君だって、少しは成長するはずです。

 昨日の事で確信しましたが、一刀君は結構流されやすいです。

 気を付けるに越した事はありません」

「…そ・そうですね…一刀さん、誰にでも優しいですから」

 

……明命ちゃんには、そう説明しましたが、

実際の所、一刀君の店に来ていた娘達程度なら、問題は無いと思います。

一刀君の外面的にな優しさしか見ていない娘達、

そんな娘達には、一刀君は優しくはしても、心を許しはしません。

問題は、一刀君の本当の姿を知っている人達です。

そして、一番気を付けないといけないのは……一刀君の心にいる人です。

でも……多分、大丈夫のはずです。

その人は、もう自分の気持ちに気が付いている筈です。

ですが、その一歩を踏み越えてはいけない、と分かってもいるはずです。

一刀君が例え、その事に気が付いたとしても、同じ事です。

私達の存在が、

私達を選んだ事が、

それが許されない事だと、その時点で気が付くはずです、

だから大丈夫のはずです。

………でも、心配です。

 

一刀君、こと女性に関しては、優柔不断ですから……、

 

 

 

明命視点:

 

 

ふぅ~、さっぱりしました。

 

温かいお湯に入ったら、だいぶ体も楽になりました。

身体の方も、ほぼ思い通りに動きます。

………まぁ、歩くたび、その……下腹部が…と言うか、

……とにかく、多少痛いのは仕方ありません。

それに、翡翠様の方が私より歩きづらそうです。

私より小柄な体で、一刀さんを受け入れたのですから、無理もありません。

 

はぁぅっ……いけません、思い出してしまいました。

 

別に昨夜の事ではありません。

いえ、むろんそれも少し思い出しましたが、

今、主に思い出したのは、先程の風呂場での出来事です。

こうして一刀さんと結ばれた今でも、

一刀さんの事ですから、きっと今まで通り、誰にでも優しくするはずです。

だから、今まで以上に気を付けなければと、翡翠様と話し合った後の事です。

 

その、………一刀さんと結ばれた今、

これからも、その……結ばれたいですし、

一刀さんからも求められたいです。

昨夜みたいに三人でと言うのも、仕方ありませんが、

やはりその、二人と言うか、……はっきり言えば、二人だけでしたいです。

ですから、その辺りの決め事をしているうちに、

その、想定しているうちに、いろいろ想像してしまいました。

翡翠様なんて、その、……何かを考えるあまり、

色々口から……と言うか、妄想が零れ落ちていました。

その内容が………その……とにかく、あんな事、私には思いつきません。

私も任務の上で知った知識は色々あるのですが、それが自分の事と結びつきません。

それに、翡翠様のそれは、その……やっぱり、翡翠様は凄いです。

 

まぁそれは置いておいて、

あと他にも、普段は、一刀さんが三人で居たい時は三人で抜け駆けなしと言う事、

そしてそれ以外は、まぁ………やり過ぎない範囲と言う事で、翡翠様と勝負です。

やはり世の中弱肉強食、勝負も恋も、勝った方が、良い目をするのは当然の事です。

 

 

ですが、この後早速、私は翡翠様に先手を取られてしまう事になりました。

 

 

 

どこかお互い気恥ずかしい思いのまま、誰の言葉も無く、食事を終えた後、

 

「朝、冥琳の使いの者が来て、『今日は三人とも仕事は休め』ってさ、

 おまけに、『今日は城に出入りするな』とまで言われたよ。 皆に、気を使わせちゃったかな」

 

う゛っ……、確かに気遣いは嬉しいのですが、後が怖いです。

こう、祭様辺りに、根掘り葉掘り聞かれそうです。

それなら、これくらいの痛みなら支障が無いので、任務があった方が、まだマシな気がします。

そう思っていた所へ、

 

「なら、せっかく温かい日ですから、たまには庭でゆっくりしましょう」

「ああ、そうだね」

 

翡翠様の提案を、一刀さんは快く受け入れます。

私も、その提案には賛成しました。

せっかくの心遣いです、今は祭様達の事は忘れて、

寝起きにできなかった事を、一刀さんとの時間を、ゆっくりと味わうべきかもしれません。

そう思っていたのですが、翡翠様は一向に動こうとしません。

疑問に思った一刀さんが、傍に行くと、

 

「一刀君ちょっと」

 

そう言って一刀さんをしゃがみ込ませるなり、

一刀さんの首に両手をまわし、

 

「すみません、まだ少し歩きづらいので、このまま連れて行ってください」

 

そう言って翡翠様は、一刀さんの両手に抱かれるようにして、庭へ移動していきます。

翡翠様は、幸せそうな顔を、一刀さんの首に摺り寄せ、一刀さんに甘えます。

陽の光を受け、金糸のように長い髪を輝かせながら、

まるで、翡翠様の想いを表現するように、三つ編みされた髪は、

その髪先を、楽しげに揺らしています。

 

う゛っ……やられました。

まさかこうも早く、しかも一刀さんが断れない理由で、こんな手を打ってくるとは……、

うぅっ、うらやましいです。

 

そうです。

負けてはいられません。

翡翠様の大胆な行動に、私は心を奮い立たせ、

 

庭に生えた大木の下、

木漏れ日の心地よいその一画に、

一刀さんは其処へ翡翠様を降ろし、

自らもその横に、大木に凭れ掛かように座り込みます。

そこへ、私は飛び込みます。

飛び込み、一刀さんの膝に座り込みます。

 

 

 

 

一刀さんの胸に、頭と背中を預けるように、凭れ掛かります。

やっている事そのものは、いつもと同じです。

以前は義妹として、でも……、今は違います。

同じ行動でも、その意味と感じる想いは違います。

この心地良さは、以前とは比べ物になりません。

 

とくん、とくん、

 

一刀さんの胸の鼓動、

一刀さんの温もり、

一刀さんの匂い、

私達がまだ寝ているうちに、湯に入られたのでしょう、

今日は、いつもより汗臭くはありません。

でも、以前より、確かに感じます。

一刀さんが、私を想う気持ちが、

私が、一刀さんを想う気持ちが、

とても、心地よく、

そして、私の心を満たして行きます。

 

翡翠様は、そんな私を、優しげな眼で見た後、

御自分も、そのまま一刀さんの腕に、肩に持たれるように寄り添います。

とても、幸せそうな表情をされています。

一刀さんは、そんな私達を、少し困ったような、

それでいて、恥ずかしげに、

でも、安心したような顔をします。

 

勝負なんて、関係ありません。

今こうやっている事が、大切なんです。

私の想い、

翡翠様の想い、

そして、一刀さんの想い、

多分、これが幸福と言う物なんだと思います。

 

今まで色々あったけど、

その果てに掴んだ、

確かな想いなんです。

 

 

 

 

ん?

 

そう言えば、

私が一刀さんの想いに気が付いたのは、一刀さんの初陣の後です。

でも、一刀さんに惹かれていたのは、多分丹陽の街に居た時からだと思います。

そうです、折角ですから聞いてみましょう。

 

「一刀さん」

「ん、なんだい?」

「一刀さんが、私を気にしだしてくださったのは、いつ頃なのでしょうか?」

「え゛っ、 いや、・俺は昨日自分の・」

「一刀さんが、昨日、『 や・~・っ・と 』気が付いてくださったは知っています。

 私が知りたいのは、気が付いた今、今考えて、いつ頃からなのかと言う事です」

「え・・・・えーと・・・・」

 

私の質問に、一刀さんは、困ったような顔をされながら、考え込む様に空を見上げます。

か・考え込むような事なんですか?

 

「明命ちゃん、良いじゃないですか、 一刀君がこうして、自分の気持ちに気が付いてくれたのですから」

「ほっ…」

 

そんな、翡翠様の言葉に、一刀さんは安堵の声を出します。

それはそうなのですが、やはり気になります。

 

「それに、そんな事が知りたいのなら、あとで教えてあげます。

 一刀君、そう言うのは、すぐ表に出ていましたから」

「ちょっ、翡翠っ」

 

そうですね。 確かにそれは言えます。

翡翠様なら、きっと気が付かれていたはずです。

 

「私としてはそんな事より、

 今まで散々一刀君を誘惑したり、そう言う雰囲気になったりしたのに、

 一刀君ったら、動揺するばかりで、手を出してくれなかった事の方が気になります」

「う゛っ……えー…と、……ば・ばれてた?」

「「 はぁーっ 」」

 

一刀さんの答えに、私と翡翠様は同時に溜息を吐きます。

あれで、気が付かれていないと、本気で思っていたんでしょうか………、

 

「まぁそれはいいです。

 とりあえず、一刀君が私に化粧を施してくれた時、一刀君は何を考えてたんですか?」

「いや、あの、普通に綺麗だと…」

「ふふっ、駄目ですよ。

 それだけっじゃないって、あの時顔に書いてありましたよ。

 誤魔化さないで、聞かせてください♪」

 

翡翠様は、悪戯っぽい笑みを、

そして笑みの中に、艶やかな表情を浮かべながら、一刀さんに詰め寄ります。

一刀さんは、そんな翡翠様に、……それとも、その時の事を思い出してでしょうか、

顔を赤くしながら、逃げ出そうとしますが、膝の上には私が、

そして片腕は、翡翠様が腕を絡ませていて逃げだせません。

でも、確かにそれなら、私も聞きたい事がいっぱいあります。

一刀さんが私達を『 恩人 』だと、必死に耐えていたのは知っています。

でも、だからこそ知りたいです。

 

必死に耐えながら、私達をどう想っていたのか、

私達の心を、どう感じていたのかを、

 

だから、

 

「一刀さん………」

 

 

 

 

 

 

 

「か・かんべんしてくれーーーーーっ」

 

 

 

 

七乃視点:

 

 

 

あぁ~、

民を苦しめてしまう事に心を痛めず、無茶苦茶な要求も無い上、

あの人達の目を気にしながら、策を張り巡らす事を思えば、

普通の事務仕事の、なんて気楽な事なんでしょう♪

 

「お嬢様~、書き取りの練習は終わりましたか~?」

「うぅぅ、もう少し、もう少しだけ待つのじゃ」

「はい、はーーい、 後で、今までの分も合わせて、覚えているか確認するので、頑張ってくださいね」

「ぬぉっ! これだけじゃないのかっ!? 昨日までその様な事なかったではないか」

「お嬢様、油断は禁物です。

 いつどこから災いが降ってくるか分かりませんから、日頃から心がけておくことが必要です。

 だいたい、その場限りの記憶なんて、役に立つ訳ないじゃないですか~、もうお嬢様ったら、御茶目さん

 なんですから~、 うーん、突然の事態に慌てふためくお嬢様も素敵ですよ♪」

「待て、待つのじゃ、せめてあと半刻待つのじゃ」

 

本当、まるで、大型動物さんに、突然出合った小動物さんのようで、可愛いですよ。

 

「駄目ですよ~♪ 私が今書いている物が終わったら、始めますね~♪」

「ぬぉぉーーーーっ」

 

慌ててます♪ 慌ててます♪

『今書いている物が』と言っても、本当はもう書き終えていたりするんですけどね~、

今やっているのは、兵とは名ばかりの人達を、御主人様の案で、屯田兵として

開拓や、荒れた田畑を復興させるためのものです。 そのための場所や、人数、糧食や費用、

そう言った細々したもの実安を纏めたものです。

孫呉の政……正直、私が、私達がもう関わってはいけない物です。

今回は、急遽人手が無くなったため特例と言う事と、私の手腕を見たいとの事でした。

 

急遽人手が無くなった理由、

私と美羽お嬢様が、突然城に呼ばれ、城に泊まらせられた理由、

それは、昨日屋敷を出る時に三人の様子を見て、直ぐに分りました。

そして、夕べ翡翠さんも明命さんも、屋敷から出られていないそうですから、

きっとそう言う事なのだと思います。

その事自体は、とても喜ばしい事です。

正直、

 

 『こんちくしょうー、この女ったらしさんめ♪ いつか刺されちゃえ♪』

 

と思う気持ちはありますが、御主人様達を祝福する気持ちに変わりありません。

私達が、今入り込む余地が無い事など、分かっていた事です。

だから、その話は今はおしまいです。

 

 

 

 

今は、それよりもやるべき事があります。

 

美羽お嬢様、少しずつ罪を償っていきましょう。

 

その為に、少しずつ学んでいきましょう。

 

『 民の笑顔 』のために、それが私達の夢でもあるんです。

 

その為に、一歩一歩、しっかりと歩んで行く

 

それが一番大切な事です。

 

 

 

 

もう一つの夢は、

 

ゆっくりと歩んで行けばいいんです。

 

急ぐ必要なんてないんです。

 

勝ちなんて、最初からありません。

 

でも、負けなければ良いんです。

 

それが、私達にとっての勝ちになります。

 

だから美羽お嬢様、

 

一緒に少しずつ、歩んで行きましょう。

 

そして、入っていきましょう。

 

………様の心の中に、

 

 

 

 

 

「さぁ、美羽お嬢様、始めますよ」

「七乃もう少しだけ待ってほしいのじゃ」

「良いですよ~♪」

「おぉぉ、言ってみるものじゃな」

「はい、少し経ちました」

「なっ! ほ・本当に少しではないかっ」

「ですから少しって言ったじゃありませんか~♪

 さぁ始めますね♪」

「ぬぉぉぉーーーーーーっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第77話 ~ 木漏れ日に舞う、幸せな魂達 ~

 

うーん、何ででしょう。 何故か最期は一刀が悲鳴を上げる羽目に(w

と言う訳で、長い時を掛け、多くの想いの果てに結ばれた三人の翌日を書いてみました。

規制に引っ掛からないように、執筆したつもりですが、警告が来ない事を祈るばかりです。

明命達への呪縛が取れても、一刀の朴念仁ぶりは相変わらずです(w

ですが、それでも幸せそうな明命と翡翠を掛けたのは、私としても嬉しくあります。

この外史の結末までの流れを知っているだけに、今の幸せな時を、しっかりと心に刻みつけてほしいと思っています。

………最初の不幸な事故は、本当に御愁傷様です。 一刀、それが一番大切だと言うのに(TT-TT)………、

 

ちなみに最後の方の、七乃視点は、設定と言うか、背景としては形作られたものではありますが、プロットに無いものです。

何故、予定に無いものを入れたかと言うと、今回の話数が77話だったからと言うしょうも無い理由です(w

 

これで、寿春城編は終わりとなります。

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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