No.158533

雲の向こう、君に会いに-魏伝- 十七章

月千一夜さん

お久し振りですw十七章公開します
内容が薄いのは、次回への繋ぎということで勘弁してくださいww

2010-07-17 23:22:28 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:32970   閲覧ユーザー数:26764

「ふぅ・・・」

 

日記を読んでいた秋蘭の手が、ピタリと止まる

その瞳に、僅かに涙を浮かべながら

 

その手を、小さく震わせながら

 

 

「ふふ、キツイな・・・本当に」

 

 

静かに、噛み締めるよう呟く

 

思い出しているのだろう

 

一刀の言った言葉を・・・

 

 

「何が・・・『優しい嘘』だ

私たちが欲しいのは、そんなものではないというのに」

 

 

 

 

 

~だが、ありがとう・・・一刀~

 

 

 

 

 

「さて、私達は・・・ここまでのようです」

 

言って、秋蘭は日記を置いた

 

ふと・・・目に入ったのは、次の場面

 

 

ああ、そうか

 

ここからは・・・

 

 

 

 

「私達の番・・・ということですね」

 

 

 

そう言って、一人の少女が・・・机に置かれた日記を、そっと手に取った

 

 

「凪・・・」

 

「ここは、私達・・・北郷隊に、譲ってはもらえないでしょうか?」

 

 

凪の言葉

後ろにいた二人・・・沙和と真桜も、無言で頷いていた

 

その瞳の奥に、確かな『覚悟』が見て取れた

 

 

「わかったわ

ここは・・・あなた達に譲りましょう」

 

「ありがとうございます・・・華琳様」

 

 

一礼し、彼女は日記を開いた

 

 

 

 

そして見つめるのは・・・一刀との、思い出の場面

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達にとって、当たり前で・・・だけど、とてもかけがえのない『日常』の記憶

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《雲の向こう、君に会いに-魏伝-》

十七章 三羽の鳥は、日を目指して-KAZUTO-

 

 

 

~また・・・眠れない日が続いている

 

 

寝台に体を沈めるのが、たまらなく恐かったんだ

 

 

心地良かったはずの眠りは、もう恐らくはないだろう

 

 

正直、かなり眠い・・・けど

 

 

 

 

『今日って、凪と警邏の約束してたんだよな』

 

 

 

 

 

凪との、約束があるから

 

 

こんな顔してちゃ駄目だろって、思い切り自分の頬を叩いたっけ

 

 

ヒリヒリと・・・少しだけ痛む頬

 

 

意識が、覚醒していく

 

 

それと同時に、気づいたんだ

 

 

あんなに思い切り叩いたはずなのに・・・

 

 

 

 

 

 

 

『あんまし・・・音が、聴こえなかった』

 

 

 

 

 

世界はまた少し

 

俺を・・・拒絶していったんだ~

 

 

 

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「ふう・・・」

 

待ち合わせ場所

約束した時間よりも大分早く、俺はそこに立っていた

 

どうせ眠れないのだ

だったら、早くから外で待っていよう

そう思ったからだ

 

それにしても・・・

 

 

「静かだな・・・ほんと」

 

 

すっと、ポッケから一枚の紙切れを取り出す

そこに書かれていることを眺め、俺は溜め息を吐き出した

 

 

 

『味× 嗅△ 触△ 視○ 聴△』

 

 

 

聴覚・・・耳にまで、ついに拒絶が進んでしまった

 

 

 

 

「まぁ・・・完全に聴こえなくなったわけじゃないし」

 

確かに、些細な変化だ

聴こえにくくなった程度のこと

 

だけど・・・それでも、拒絶が進んだという事実には変わらない

 

終わりへと近づいたということに、変わりはないのだ

 

 

「ほんと、まいったな・・・」

 

 

見上げた空

気持ちの良い快晴

だけど今は・・・そんな空が、少しだけ憎かった

 

あぁ、ちくしょう

 

 

 

「誰か・・・俺を、助けてくれよ」

 

 

 

搾り出すような声で、俺は空に語りかける

空は、答えてくれない

変わりに返ってきたのは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ・・・隊長ーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞き覚えのある声だった

 

俺は視線を空からはずし、声がしたほうへ顔を向ける

 

そこには、こっちに向かって走ってくる・・・凪の姿があった

 

 

その瞬間、俺は心の中・・・たった今吐いた『弱音』を、奥底までに沈めていく

 

 

なにやってるんだよ

 

 

助けてくれ?

 

 

守るんだろ? 俺が、絶対に皆を救うんだろ?

 

 

弱音なんて、吐いてる場合じゃないだろう?

 

笑おう・・・ほら、いつもみたいにさ

 

そしたら、彼女達も笑ってくれるだろう?

 

 

その笑顔が、きっと俺の力になる

 

 

 

 

 

 

「やぁ凪、おはよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・それだけで、俺は頑張れるから

 

 

 

 

~あの時、凪と一緒に真桜と沙和までついてきた時

 

心の中でこっそり、俺は笑っていたんだ

 

ああ、なんて俺等らしいんだろうって

 

 

 

『はは・・・ま、やっぱこっちのが俺達らしいよな』

 

 

『隊長?』

 

 

『ああ、なんでもない

ただの独り言だよ

それじゃ仕方ないから、今日は三人で警邏するか』

 

 

『やったなの♪』

 

 

『よっしゃ♪』

 

 

『はい!』

 

 

 

こんな風に、四人で笑いあって・・・警邏して

 

 

まるで、北郷隊の結成当初に戻ったみたいだったな

 

 

 

 

『さ、いくぞ』

 

 

 

それと同時に、思ったことがあった

 

 

もしかしたら、これが・・・俺達が揃ってする、最後の警邏になってしまうんじゃないかって

 

 

そう思ってしまったんだ~

 

 

 

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所変わって、ここは以前にも来た事のある料理店

 

そこで俺は、ある意味危機に瀕していた

 

それは・・・

 

 

 

「さぁ隊長! さぁ、さぁ!!」

 

 

俺の目の前で、もはや真っ赤になってしまったマーボーをレンゲにのせこちらに向ける・・・凪によってだ

 

いや、確かに男として可愛い女の子に『あ~ん』なんてされるのは憧れるし嬉しいものなんですよ?

 

けどね凪、君のはなんか違うよ!?

 

なんでそんな、目が血走っているんだい!?

 

正直、ものすごく怖いんだけど・・・

 

 

 

「な、凪さん・・・なんか怖いんですが」

 

 

そう思い、口にした俺

 

それが、まずかった

 

 

「さぁ!!!」

 

 

「ひぃ!?」

 

 

俺の言葉に、さらに勢い良くレンゲを突き出す凪

 

そのあまりの迫力に、俺は咄嗟に一歩引いてしまう

 

直後・・・

 

 

 

「楽進、いきます!!

あ~~~~~~ん!!」

 

 

「ちょ、待って凪!

違う、なんか違うんだってばぐふおおおぉぉぉ!!!!??」

 

 

「「た、隊長ーーーー!!!??」」

 

 

容赦なく、口に突っ込まれる・・・激辛マーボー

 

響いた、真桜と沙和の悲鳴

 

 

そして、口の中一杯に広がる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの・・・『不快感』

 

 

 

 

 

 

 

 

感じたのは辛さでも、マーボーの味でもない・・・強烈な吐き気だったんだ

 

 

 

「げほっ・・・がはっ!!?」

 

 

俺はその場に膝をつき、何度も咳き込んだ

まさか・・・ここまで強烈なんて、思いもしなかった

 

 

ここまで、『拒絶』されるなんて・・・

 

 

 

「うっ・・・がは!!」

 

 

喉が・・・焼けるように痛い

『触覚』が無くなりつつあるのにこの痛み・・・はは、普段なら気絶してたかもな

 

 

「た、隊長!!??」

 

 

「ちょ、どないしたんや!」

 

 

「隊長!!」

 

 

そんなことを考えていると、三人がすぐ傍まで駆けつけてきた

それから、俺のことを心配そうな目で見てくる

 

まずったな・・・くそ

 

皆のこんな顔、見たくないのに

 

だから・・・

 

 

 

「あ・・・はは、ちょっとむせた」

 

 

俺は、また嘘をつく

胸が、少しだけ痛んだ気がした

 

 

「あ、もう・・・あんまし、心配させんといてや」

 

 

「そうなの、本当にびっくりしたの」

 

 

「ごめんごめん」

 

 

そう言って笑いながら、俺は立ち上がる

 

まだ、少し痛むのを・・・我慢しながら

 

ぐらりと揺れてしまいそうな体に、力を込めて

 

そんなギリギリな状態だったからなんだと思う

 

 

 

「ああ、隊長口元に唐辛子のお汁がついてるの~」

 

 

先ほどの『拒絶』

 

それにより流れ出たものに、気づくことができなかったのは

 

 

 

「え・・・っ、ほんとだ

あはは、恥ずかしいな」

 

 

慌てて、手で口元を拭う

 

その手についた赤をみて、俺は苦笑してしまう

 

 

なんてザマだ・・・と

 

 

もう既に、俺はボロボロじゃないか

 

 

けど、それでも・・・まだ、頑張るんだろう?

 

 

自問自答

なんて馬鹿らしい・・・等とは、決して言えなかった

 

答えなんて、決まっている

 

俺は、まだ頑張れる

 

まだ、皆と笑っていられる

 

なら、やるべきことなんて・・・簡単だ

 

 

とりあえず、まずは・・・

 

 

「・・・」

 

 

 

俺の目の前で目に見えて凹んでいる、可愛い部下の笑顔を・・・取り戻すとしようか

 

 

 

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「それじゃ、お疲れさん」

 

 

俺の言葉、三人は大きく頷く

あれから特に変わったこともなく、楽しい警邏は今・・・終わりを告げた

 

俺は三人にそれぞれ声をかけると、一人詰め所に向けて歩き出す

 

 

その途中見上げた空は、紅く染まっていた

 

 

「今日も・・・もうすぐ終わりかぁ」

 

 

呟き、伸ばした手

その直後・・・『ソレ』はやってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「が・・・ぐ!!?」

 

ガクリと、胸をおさえ俺は・・・その場に膝をつく

 

これは・・・この痛みはなんなんだ!?

 

苦しい・・・息ができない

 

 

『貴方は・・・少しずつ、この世界から拒絶されていくわ

その意味がわかる?』

 

『う~ん、正直・・・よくわからない』

 

『そうねぇ、簡単に言ってしまえばねん・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~最終的には『世界』からしたら貴方は『毒』となり、貴方にとってもまた『世界』は『毒』となるのよ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がぁっ・・・!」

 

思い出したのは、あの日の【アイツ】が言ったこと

 

なるほど、こういうことだったのか

 

もう世界は俺にとって・・・『毒』になりつつあるのか

 

だから、こんなに苦しいのか

 

 

「くっそ・・・!」

 

 

だからって、こんなとこで・・・倒れるわけにはいかないだろうが!

 

フラフラと、何とか立とうとする

 

だが、うまくいかない

 

体に、うまく力が入らないのだ

 

ああ、くそ・・・このままじゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お主、大丈夫か!?」

 

「え・・・?」

 

そんな時、ふと・・・声が、聞こえてきたんだ

 

次いで感じた、優しげな温もり

 

誰かが、俺の体を支えてくれている

 

 

「あ、ありがとう、ござ・・・い・・」

 

 

お礼を言わなきゃ

そう思い向けた視線の先・・・俺は、言葉を失う

 

何故かって?

 

だって、そこにいたのは・・・

 

 

 

 

「黄蓋・・・さん?」

 

 

「なんじゃ、お主・・・ワシを知っておるのか?」

 

 

 

 

~この日、俺が出会ったのは・・・あの日、あの戦い

 

 

死んだとされていた、一人の女性

 

 

黄蓋さんだった

 

 

消えゆく俺が見つけた、消えたはずの彼女

 

 

この出会いが何を意味するのか、俺にはさっぱりわからない

 

 

けど、この時

 

 

俺は、すごく嬉しかったのを覚えている

 

 

彼女が生きていてくれた

 

 

それが、何故か・・・すごく嬉しかったんだ~

 

 

 

★あとがき★

 

はい、遅くなってしまいました

十七章ですww

 

今回はいよいよ、祭さんが登場しました

こっからさらに、物語の奥底を紐解いていきましょう

 

というか、明日は何週かぶりの休みです

これはもう、明日は十八章を投稿するしかないでしょwwwと、無駄にやる気だけはあるんです

ええ、やる気だけはww

 

 

 

【華伝】【呉伝】の試作版のメールでの配信は、まだ受け付けておりますww

興味がある方は、ご連絡くださいww

 

 


 
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