No.152069

涼州戦記 ”天翔る龍騎兵”3章15話

hiroyukiさん

大変お待たせしましたって待ってた人っているのかな?
居てくれたらいいな~
さて第3章15話のスタートです。

2010-06-20 23:12:32 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:4585   閲覧ユーザー数:3380

第3章.過去と未来編 15話  夏侯淵 危機一髪

 

 

一刀達が陳に到着した日の夜、

 

夏侯惇達の部隊と合流した曹操は戦場を離れ、野営をしていた。

 

「ふうー」

 

大きく息を吐きながら夏侯淵が姉妹に充てられた天幕へと入ってくる。

 

彼女は荀彧と共に軍の再編や雑事に追われ大忙しであったがそれもとりあえず終わった。

 

「姉者は・・まだ帰ってきてないのか・・んっ?」

 

姉の夏侯惇の姿を探したが見つけられず、その代わりにほぼ中央にある机の上になにやら書状らしきものがあるのに気づく。

 

机に近寄り書状を手に取ってみると表に“夏侯淵殿”とあったがそれだけで差出人の名はなかった。

 

「私宛か・・誰からだ?」

 

怪訝に思いながらも夏侯淵は書状を開いていく。

 

書状の中には夏侯淵が予想し得ないような内容が書かれていた。

 

 

夏侯淵殿へ

 

私は馬騰軍の軍師をしております北郷一刀といいます。

 

此度このような手紙をあなたに送ったのは、我らの提案と忠告を曹操殿に届けていただきたいからです。

 

先ずは提案ですが私が調べたところでは曹操殿も今の混乱の時代を治め、民が安心して暮らせる平和な世を作る為に起ったはずです。

 

ならば、我らと目的は同じ、協力し合えるはず。

 

つまり我らとの同盟を考えていただきたいと言う事です。

 

大陸最強を謳われる涼州騎馬隊を歩兵のみで打ち破ったことで曹操軍の精強さを世に喧伝することができたはず、もう十分でしょう。

 

今なのです、今ならば董卓も劉備も孫策も曹操軍の実力に一目置かざるを得ませんから同盟に入ったとて曹操殿が埋没するようなことにはならないはずです。

 

私個人としては寧ろ曹操殿には皆を引っ張っていってもらいたいと思っています。

 

唯、一言言っておきますがこのような提案をしたのは戦に負けて我々が不利になったからという訳ではありません。

 

なぜなら、我々は不利な状況にあるのではなく圧倒的に有利な状況にあるからです。

 

今回我々同盟の戦力を分散させた数々の策、流石曹孟徳と荀文若というところですが、劉備軍の牽制に青州黄巾党を使ったのは失敗です。

 

我が同盟の秘密兵器と劉備軍により今頃はもう青州黄巾党は壊滅しているはず。

 

この知らせは近日中に齎されることになるでしょう。

 

あなた方の今後の飛躍の要となる青州黄巾党が壊滅していてはこの先はない。

 

現有戦力をすり潰され何れ滅びるだけ、ならば我らの仲間となり同盟において指導者的役割を発揮していただきたい。

 

どうかよくお考えになってください。

 

そして忠告ですが、もしかするとあなた方も掴んでいるかもしれませんが元十常侍の張譲が生きており各方面に謀略を仕掛けていることがわかりました。

 

先の馬騰の件も張譲の仕業である可能性が高いと我々は思っています。

 

あのような輩に曹操殿が害されるのは我々としても甚だ不本意ですのでくれぐれもご注意の程を。

 

不躾なお願いですがどうか御一考を宜しくお願いします。

 

 

書状を読み終えた夏侯淵は書状を折りたたみ懐に仕舞い込むと椅子に座り顎に手を当て考え込んでいった。

 

「(北郷一刀か・・確か汜水関にて天の御使いと名乗っていた男だったな。

 

武はからっきしという話しだったが今日の戦で見せたあの騎射は見事なものだった。

 

騎射であのわずかな隙間を通すとは、認識を改めなければならんな。

 

ふふ、機会があれば手合わせを願いたいところだ)」

 

軽く笑みが浮かぶが振り払うように頭を振る。

 

「(いや、武よりも智だ、奴の恐ろしさは。どうも我らの戦略は殆ど見抜かれていると思って間違いないだろう。

 

奴の言うように青州黄巾党は我らの戦略の要だ、これを戦力として取り込めれば我らは一気に飛躍することができるが、失敗すれば華琳様の野望は破綻する)」

 

そこまで考えたところで夏侯淵ははっと気がつく。

 

「(・・まさか!それを見越して馬超を囮に我らを引き付け、その間に劉備軍で青州黄巾党を叩く。

 

馬超が勝ったならそれはそれで良し、例え負けても青州黄巾党を失った我々は飛躍の機会を失い、後は董卓、劉備、孫策の波状攻撃で我らは疲弊し滅びるだけ。

 

なんと恐ろしい策だ、我らが討って出た時点で負けが決まっているとは)」

 

考えていくに従い夏侯淵は深刻な顔になるがある点を指摘する。

 

「(・・・だがそれも劉備軍が青州黄巾党を叩くことが出来たらの話しだ。

 

劉備軍は反董卓連合戦では洛陽の守備が殆どで功績らしい功績を挙げていない。

 

徐州を得て兵力は上がったようだがそれでもまだ青州黄巾党の方が戦力は上だ。

 

それに有能な将は数名いるようだが、あそこの軍師は、諸葛亮と言ったか、政の方が得意で軍事方

面は余り得意ではないという話しだったしそう簡単にはいかないはずだ)」

 

だが夏侯淵は書状の中に書かれていたある一言を思い出す。

 

「(確か秘密兵器と書いてあったな・・・まさか!汜水関での大爆発、あれを使われたら青州黄巾党といえどもやばいかもしれん。あれについてはまだなにもわかっていないのだ)」

 

夏侯淵は、うーんと唸ると首を振りながら立ち上がる。

 

「考えても埒が明かんな、気分転換に部下の様子でも見てくるか」

 

そう言って天幕を出て行った。

 

・・・・・・・・・・

 

ここで一刀の書状にあった秘密兵器について説明しておきます。

 

夏侯淵は汜水関で一刀が使った粉塵爆発では?と思っているようですが読者の皆様はわかると思いますが野戦では使えません、密閉できる場所が必要ですし。

 

ではなんなのか?

 

それは鳳統です。

 

鳳統の存在をここまで秘匿していた訳です。

 

諸候混成軍殲滅戦に軍師として参加はしていますが、あの戦いは馬騰達騎馬隊の活躍が際立っていた為、軍師としての仕事は殆どしていません。

 

その為、鳳統の名は知っていてもその能力については殆ど知れ渡っていません。

 

ですが鳳統は史実、演義、そして恋姫においても軍事に関しては諸葛亮を凌ぐ程の軍師です。

 

その軍師の存在を知っているのといないのでは大きな違いが生じます。

 

油断や判断ミスが起こりやすくなる訳です。

 

一刀達はそれを狙って諸葛亮の影に隠れて余り目立っていなかった鳳統を秘匿することにしたのでした。

 

・・・・・・・・・・・

天幕を出た夏侯淵は歩哨をしているはずの部下達の所へと歩きながら星空を見上げた。

 

「なにも考えずにこの星空を眺めることができればな・・」

 

視線を前へと戻し歩き続けるとかがり火の傍に立っている歩哨の姿が見えた。

 

「うん、ちゃんとやってるようだな」

 

後ろから聞こえてきた声に歩哨は反応し振り返る。

 

「えっ?みっ妙才様。どうされたんですか?」

 

「なに、お前達がちゃんとやってるか見に来たのだ」

 

振り向いた男は頬をぽりぽりと掻きながら苦笑する。

 

「ちゃんとやってますよ。ところで本当にどうしたんですか?」

 

それを受けて夏侯淵も笑みを浮かべながら

 

「いや、特に意味はない。気分転換がてらに様子を見に来ただけさ」

 

という訳で2人は雑談に入っていく。

 

しばらく雑談していた夏侯淵だったが、自分の視界になにか光らしきものが入ってくる。

 

「んっ?」

 

目を凝らしてみるとやはり松明かなにかの灯りでゆらゆら揺れている。

 

怪訝に思い、夏侯淵は振り返った部下に問いただす。

 

「外を見回っている奴がいるのか?」

 

「いえ、そのような者はいないはずです、妙才様、ご注意を」

 

夏侯淵に注意を促すと部下は槍を構え数歩前進し誰何する。

 

「止まれ!何者だ」

 

誰何する声が聞こえたのか揺れていた灯りが止まる。

 

「こ・ここは・・曹操軍・・の陣か?」

 

灯りから弱弱しい声が途切れ途切れ聞こえてくる。

 

それを聞いた部下は指示をもらうべく夏侯淵の方へ振り返る。

 

松明に火を点けた夏侯淵は部下の横まで来ると剣の柄に手を当てながら声をかける。

 

「そうだが何者だ?」

 

それに返すように灯りの方よりほっとしたような感じで返答が返る。

 

「やっ、やっと着いた。・・伝令、荀攸様よりの・・伝令です」

 

荀攸の名を聞いた瞬間、夏侯淵の脳裏に一刀の書状の内容が浮かぶ。

 

・・・近日中に知らせが届くでしょう・・・

 

「(まさか!!)」

 

驚愕に囚われた夏侯淵は足早に伝令へと歩み寄る。

 

松明の灯りに照らされた伝令の姿を見て夏侯淵は最悪の事態に陥ったことを察する。

 

伝令の全身はぼろぼろであちこちに傷を負っていた。

 

夏侯淵は覚悟を決めて伝令に問う。

 

「夏侯淵だ、なにがあった」

 

「夏侯淵様・・申し上げます。青州黄巾党壊滅、張3姉妹は捕縛されました・・(ガクッ)」

 

それだけ伝えると伝令はその場に倒れ伏す。

 

それを聞いた夏侯淵は部下に伝令を介抱するよう告げると星空を仰ぎ見、一言呟く。

 

「終わった・・」

 

がっくりと肩を落とす夏侯淵だが聡明な彼女はすぐに自分の為すべきことを思い起こす。

 

「(斯くなる上は馬超と和を結ぶより他に道はない!幸いあの男は華琳様を高く買っているようだし、なんとしても説得しなければ!)そいつはお前に任せる、私はこれより華琳様のところに向かう」

 

そう言って振り返ろうとしたところに後ろより突然声がかかる。

 

「その様子からすると曹操殿に和睦でも進言なさるつもりのようですが。困りますな、そのような

真似をされては。あなた方には最後の一兵まで潰しあっていただかないと私が叱られてしまいます」

 

周りにはだれの気配もなかったはずなのにいきなり聞こえてきた声に夏侯淵は驚き、声の方を見る。

 

するとそこには全身黒尽くめの男達?が5人ほど立っており、その内の1人の顔に夏侯淵は見覚えがあった。

 

「んっ?お前は桂花が使っている影で・・確か胡車児ではなかったか」

 

思い出した名前を告げながら夏侯淵は警戒感を増していく。

 

「桂花?ああ、荀彧のことでしたな。はははは、我らがあのような小娘に本気で従っているとお思いでしたか?我らの主人はもっと凄い方ですよ」

 

胡車児の話しを聞いていた夏侯淵はピンとくるものがあった。

 

「そうか、張譲だな。お前達の主人とやらは」

 

胡車児は一瞬驚いた顔になるがすぐに元に戻す。

 

「ほー、驚きましたな、どうしてわかったのですかな。いや、今はいいでしょう、それよりも曹操殿に余計なことを吹き込むのは止めていただけないですかな?」

 

「もうこの戦は意味の無いものとなった。ならば速やかに収めなければならん。無駄に失ってよい命など無い!」

 

胡車児はやれやれという顔をしながら言った。

 

「残念ですな。仕方が無い・・・やれ!」

 

 

胡車児の合図で黒装束の者達が前後より夏侯淵と部下に襲い掛かる。

 

素早く前後を見た夏侯淵は右手の方が包囲が薄いことに気づき部下にだけ聞こえるように小さな声で告げる。

 

「右手の方が薄い、そちらを強行突破するぞ、続け!」

 

「はっ!」

 

2人はそれぞれ武器を構えると右へ向きを変え突っ込んでいく。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

辛くも包囲を突破した2人だが、やはり多勢に無勢で追い詰められていった。

 

特に部下の方は突破する際に夏侯淵を庇い手傷を負っており段々と動きが鈍くなってかなりやばい状態だった。

 

「(正直やばいな、やはり数が多すぎる。時間を稼げば歩哨がいないことに気づき助けがくるかもと思ったが・・このままではもたない!)」

 

苦悩の顔になっていく夏侯淵だったが胡車児の方でも夏侯淵達の意外な粘りに焦りが出始めていた。

 

歩哨に関しては身代わりを置いてあるのですぐにどうこうということはないが、圧倒的多数で囲んでいるものの中々倒すことが出来ずイライラが溜まってきていた。

 

「仕方が無い・・」

 

そう呟くと懐から筒状のものを取り出すとそれを口に当てる。

 

「・・・・・ふっ!」

 

「ぐっ!?」

 

襲い掛かってくる黒装束に気を捕られていた夏侯淵の左腕に吹き矢の矢が刺さり、左腕に痺れが広がっていく。

 

「くっ、毒か」

 

痺れていく左腕に“しまった!”と思うもののもう遅かった。

 

言うことを聞かなくなっていく左腕により動きが鈍くなっていく夏侯淵を黒装束は見逃さなかった。

 

ブンッ

 

ザシュ

 

「ぐあッ!」

 

「み、妙才様!!」

 

左肩に斬撃を受けてしまった夏侯淵はよろよろと後退していく。

 

好機と見た黒装束は嵩に懸かって攻めていく。

 

だが、かの大剣、夏侯惇を姉に持つ夏侯淵、弓の腕が有名であるが剣についてもかなりの腕を持つ。

 

後退しながらも態勢を持ち直し黒装束を撥ね除けたその時。

 

足元が崩れ始める。

 

「な、何!?」

 

為すすべも無く夏侯淵は崖下へと落ちていく。

 

頭に浮かんだのは敬愛する主と姉の笑顔。

 

「(華琳様、姉者!!)」

 

少しして川に落ちた音がする。

 

ドボンッ

 

 

崖下に落ちた夏侯淵に気を捕られた部下は黒装束に討ち取られてしまう。

 

「やれやれ、やっと片付いたか」

 

「死体を確認しに行きますか?」

 

軽く溜息を吐く胡車児に黒装束の1人が確認するように聞く。

 

少し考えた後、胡車児は言う。

 

「まあいい、後数日の間曹操と接触させなければいいんだ。毒を受けた上にここから落ちたんだ、生きていたとしても2,3日は動けんだろう」

 

頷く黒装束。

 

「それよりも後始末の方が先だ」

 

そういうと胡車児は黒装束に2,3指示を出し立ち去っていく。

 

夏侯淵の運命や如何に。

 

・・・・・・・・・・・

 

しばらくして後、崖下にて

 

「どうやら立ち去ったようですね」

 

長い黒髪の少女が数名の男達に声をかける。

 

「いやーびびりましたよ。見つかったのかと思いました」

 

「しかしなんだったのでしょうね?」

 

とそこに1人の男がだれかを背負ってやってくる。

 

「今、戻りました」

 

そう言って背負っていた人間を横たわらせると月明かりによりその人物の顔が明らかになる。

 

「こ、これは夏侯淵将軍!?」

 

黒髪の少女が小さく驚きの声を上げる。

 

「え?夏侯淵と言えば曹操軍の重臣中の重臣じゃないですか。なぜそんな人が・・」

 

黒髪の少女も男達も首を捻るが答えは出ない。

 

「ここで悩んでいても仕方ないです。幸い息はあるようですのであなた達は彼女を城まで連れ帰っ

てください。私は予定通り曹操軍に潜入します」

 

「はっ!わかりました」

 

男達は夏侯淵を背負い足早に立ち去っていく。

 

それを見送った少女は意を決したように崖を登っていく。

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

夜が明けて2つの陣営はそれぞれに騒がしい朝を迎えていた。

 

「しゅう~ら~ん、どこだ~、どこにいる!!!」

 

いつも朝起こしにくる夏侯淵がやって来ず、朝餉の時間になっても姿を見せないことに異常を感じ

た曹操は夏侯惇に命じて陣内を探させたのだが見つからなかった。

 

夏侯淵の身に何か起こったことを察した曹操は捜索の目を陣外へと向け、楽進、李典らを投入して大々的な捜索を行なったところ川沿いの崖付近で多人数が争ったらしい跡が見つかり、付近を詳細に捜索した。

 

その結果、曹操軍兵士の死体が埋められていたのと崖から何かが落ちたと思われる跡が発見された。

 

だが川の方も捜索したものの夏侯淵を発見することはなかった。

 

「くそ!だれだ、だれが秋蘭を・・はッ!馬超か、戦に負けた腹いせに秋蘭を闇討ちするとは。なんと見下げた奴らだ!うーーー絶対に許さん!ぎたぎたにしてくれるわ!!!」

 

夏侯惇が吼え、楽進達若手の将達も怒りに満ちていた。

 

だが曹操は浮かぬ顔をして考えていた。

 

「(しかしいったい誰が、いえどこが?春蘭の言うように馬超?それはないわね。あの誇り高い菖蒲様が許す訳ない。となると後考えられるのは第3者の介入か・・でもどこが?麗羽?それはないわね、あの気位だけは高い女がこんな汚い真似をしてくるとは考えられないわ。しかしその他の勢力といっても小粒なのしかいない・・・う~ん・・まあいいわ、どこの誰だろうと私の愛する者に手を出した報いを必ず受けさせてやる!!)」

 

浮かぬ顔で考えていた曹操だが、考えを打ち切ると憤怒を纏い立ち上がる。

 

「皆聞きなさい。秋蘭を害した者が何者なのか現時点ではわからない。でも我が愛する者を卑劣な手で害した者には必ずその報いを受けさせる」

 

そう宣する曹操に同調するように夏侯惇が吼える。

 

「華琳様!その時はぜひとも私にやらせてください。秋蘭の仇はこの私が必ず取ります!!」

 

吼える夏侯惇に微笑みながら曹操は続ける。

 

「春蘭、秋蘭は死んでないわ。私は秋蘭に死ぬ許可なんて出してないわよ?ならば秋蘭は必ず生きていて何れ帰ってくるわ。だから帰ってきた秋蘭をがっかりさせないように今は馬超との決戦のことのみを考えなさい。いいわね?」

 

曹操に言い含められ、しゅんっとする夏侯惇に笑みを見せた後、瞬時に顔をきりっとしたものに戻し曹操は配下の者達に指示を出す。

 

「さあ、皆の者。馬超との決戦よ!準備が出来次第出発する。準備を急ぎなさい」

 

「はっ!!」

 

曹操の指示に答えるように部下達は足早に天幕を出て行く。

 

荀彧と共に残った曹操は馬超達がいると思われる方向を向き呟く。

 

「今度こそ決着を付けるわよ、馬超!」

 

・・・・・・・・

 

 

一方、馬超はというと

 

・・・・・・・・・

 

「げ・ん・き・になぁれーーーー!!!」

 

・・・・・・・・・

 

相変わらず五月蝿い華陀でした。ありがとうございました。

 

・・・・・・・・・

 

「しかし驚いたな~。まさか夏侯淵が担ぎ込まれてくるとはな」

 

会議室へと続く廊下を一刀や孫策達と歩きながら馬超がふと零す。

 

明け方のまだ暗い内に一刀の部下達が帰ってきたのだがなんと夏侯淵を連れていたのである。

 

それも傷ついて意識不明の状態であった。

 

大急ぎで城に運びこみ、華陀を叩き起こして治療をしてもらったのが先ほど光景である。

 

「曹操軍で内紛ってのは考えにくいからおそらく奴らの仕業だろうな」

 

そう冷静に分析する一刀に反応したのは孫策だった。

 

「まったくちょろちょろうっとしい奴らね。・・・ところでこっちは大丈夫?」

 

「ああ、それは大丈夫、対処済みだよ。明命に鍛えてもらった部下達がしっかりと調べたからね」

 

ちなみに一刀は今後必要になるだろうと部下達を周泰に預けて工作員としての訓練を受けさせていたのだが・・

 

部下達の感想

 

「隊長、いくらなんでもあれは・・・」

 

「うううう、もうお婿に行けない(涙)」

 

「ブツブツブツブツブツ」

 

「・・(思い出している)・・・(涙涙涙大洪水)」

 

「あは、あははははは・・・(ガクッ)」

 

「(きょろきょろ)・・(ビクッ)う、後ろに立つなー」

 

その他もろもろありますが割愛させていただきます。

 

部下の感想を聞いた一刀の感想

 

「・・(汗)明命・・いったいなにをしたんだ?」

 

 

会議室に着いた一刀達は早速曹操との決戦について話し出した。

 

「報告から察するに夏侯淵を襲った者達はまだ曹操の陣営に隠れているようですね」

 

「まいったな~、決戦前にやっかいな連中が出てきちゃったよ」

 

確認するように問いかける郭嘉に一刀は頭の後ろに手を組み目線を上に上げながら言う。

 

単純に曹操軍との決戦ならこちらの兵数が少ないとは言え、いろいろとやり方があるのだが、そこに第3勢力が介入してくると思わぬ痛手を受けかねない。

 

それに今回は対張譲戦を考えると自分達はもちろん曹操軍にも余り損害を与えないで勝たないといけない。

 

その為の策はいろいろ考えているのだが、策と云うものは予想外の事態が起きた時脆くも崩れ去るもので優れた軍師は幾重にも対応策を考えておくものだが今回は相手の出方が不明な為対応の取り様がないのである。

 

「こんなことなら思春(甘寧)を連れて来ておけばよかったな~。明命に思春と後、一刀んところの連中がいれば、事前に片付けておけると思うんだけど」

 

「まあ、居ない者は仕方ないさ。それよりもどうするか・・う~ん」

 

どうにもいい案がなく、八方ふさがりに陥っていこうとした時、それまで一言も発しなかった程昱が徐に声を発してきた。

 

「ないこともないですよ~~」

 

「えっ!?ほんとか風?」

 

あいかわらず眠そうな声で言う程昱に一刀は驚いたように問いただす。

 

「はい~、要は相手が何を望んでいるかということですよ~。張譲さん達は曹操さんと私達にこの戦いでお互いに戦力を磨り潰してほしいと思っているはずです~。ですから決着が付こうとしたら介入して戦を長引かせようとするでしょう~。特に早期決着ともなればあわてて馬脚を現すに違いありません、その機会を逃さずに手を打てばいいのですよ~」

 

「「「なるほど」」」

 

程昱の説明に皆頷いていた。

 

「で、どんな手を打つんだ?」

 

「それは~~」

 

・ ・・・ひ・み・つということで次話をお待ちください。

 

という訳で一刀達も曹操との決着を付けるべく準備に取り掛かるのだった。

 

 

<あとがき>

 

どうも、hiroyukiです。

 

今回は本当にすんご~くかかってしまいました。

 

どうも申し訳ありません。

 

さて、今回は決戦前の変事ってな感じで夏侯淵襲撃事件を書いてみました。

 

前回のあとがきで今回は劉備の話しと言っていましたが・・・すみません!さらっと流してしまいました。

 

当初は泣いて馬謖を斬るを劉備と陳珪親子でやろうと思っていたのですが、どうにも納得いく話しができません。

 

いくつか作ってはみたのですが辻褄が合わなかったり、その時はよくても後で読むとこりゃないだろうというのになったりとどうにもうまくいきませんでした。

 

まあこれが今回長く懸かった主な理由なんですけど、劉備とは相性悪いのかな?。

 

余りこのネタに拘ってると何時まで経っても投稿できそうになかったので没にして代わりに夏侯淵の話しにした訳です。

 

もし劉備の話しを期待してた方がいたのでしたらごめんなさいです。

 

次回で第3章は終わりにする予定です。曹操とどのような決着を付けるのか、多少はご期待ください。

 

では、あとがきはこのくらいにしてまた次の更新でお会いしましょう。


 
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