No.146424

真・恋姫✝無双 仙人で御遣い 38話

虎子さん

遅れてごめんなさいでした!

え~~と、今回は拠点っぽいヤツです。
星→朔夜→おまけ の順です。

続きを表示

2010-05-30 00:01:19 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:4617   閲覧ユーザー数:3682

<星>

 

 

『白虎』が結成して一月が経ち、暗部の訓練をしていた朔夜(さくや)が皆に合流したころ。

豪臣と朔夜は鈴花(りんふぁ)と将たちを呼び集めた。

 

「俺たちはこの多発し出した賊騒動の後のことを皆に伝えようと思ってな」

「・・・はて、その後、ですか?」

「ああ。皆はどうするつもりだ?」

「はぁ?我は、平和のために自身の力を尽くすつもりですが?」

「そうですな。私も、我が槍を民のために使いたく思っていますよ」

豪臣の問いに、昴(すばる)と星が答える。

そして

「・・・・・・旦那さんに付いてきゅ」

「・・・・・・そうか」

燈(あかり)の答えに豪臣が嘆息する。

「あらあら。“らぶらぶ”ですね、豪臣君」

「ですね。また、お仕置きですかね」

微笑む鈴花に唇を吊り上げる朔夜。

「おいおい、勘弁しろよ」

豪臣は、冷や汗をかきながら二人に愛想笑いをする。

「ま、まぁ、三人の考えは分かった」

「では、豪臣殿は如何なさる?私は、あなたに付いて行くつもりでしたが・・・その言い様では、何か別のことを?」

星の言葉に、豪臣が一瞬視線を逸らす。

「あ~、俺たちは、この乱が終わったら『白虎』を解散させようと思ってる」

「「なっ!?」」

豪臣の言葉に、星と昴が驚きに声を上げ、燈も目を見開いていた。

 

 

【視点・星】

 

豪臣殿が解散予告を宣言した次の日の夜。

私は、現在『白虎』が滞在している砦の城壁に来た。

理由は簡単、メンマと月を肴に酒を飲むためだ。

 

 

(豪臣殿、何故・・・)

酒を飲みながら昨日の話を思い出していた。

私は、何故、豪臣殿があんなことを言ったのか理解出来ていない。

民のため、自分の信ずる正義のために龍牙(槍)を手にした。

豪臣殿たち『白虎』の面々(燈以外)もそうだと思っていた。

この賊の討伐が終わった後は、豪臣殿を中心に民のための国に変えていけると思っていたのだ。

(いや、それだけではない。私は、ずっと豪臣殿と共に歩んで行けると思っていた・・・)

私は、豪臣殿と出会ってからの一月を思い返した。

 

浮かんでくるのは、傷つけられた民を労わる彼の顔。

賊討伐に向ける怒れる彼の顔。

賊を弔う沈痛な彼の顔。危機が去り、民に礼を言われたときの少し恥ずかしそうな彼の顔。

我々仲間に向ける彼の笑顔。

 

(こう振り返ってみると、私は彼のことばかり見ていたようだ)

自身を武士(もののふ)として槍を手にしていながら、何をしていたのだか、と思う一方で、これが偽りならざる自分の気持ちなのだろう、と思う自分がいる。

(しかし、豪臣殿は解散と・・・)

「ハァ・・・」

私は、大好物のメンマを食べているにも関わらず、溜息を吐いてしまった。

そのとき

「おいおい。大きな溜息だなぁ」

「っ!!」

声が聞こえ、慌てて辺りを見渡す。

「上だよ、上。上を見てみな」

声に従って上を見てみる。

そこには、物見台の屋根に座る豪臣殿だった。

「よっ、星!」

 

【視点・終】

 

 

豪臣は屋根から飛び降り、星の前まで進んだ。

「ひ、豪臣殿・・・でしたか」

「ああ。で、さっきの溜息はなんだ?」

「いえ、なんでm・・・いや、そうですな」

「ん?」

星の言葉に首を傾げる豪臣。

そんな豪臣に

「豪臣殿。一緒に月見酒でもいかがか?」

星は、地面に置いていた酒を持ち上げて訊いた。

 

 

【視点・豪臣】

 

星は、何故『白虎』を解散するのかと尋ねられた。

俺は、自分には目的があると告げる。

 

「その目的のために、態々解散までする必要があるのですかな?」

星は、少し悲しそうに訊いた。

「ああ、そうだ」

「その目的、という事柄を教える気は?」

「・・・無い」

(星たちには、俺が仙人になるための修行でこの世界に来たことを知らない。下手をしたら、もの凄く危険な“試練”の可能性もあるからお前たちには、教えられないんだよ・・・すまん)

豪臣は、心の中で誤りながら、簡潔に否定した。

「・・・そう、ですか」

答えを聞き、星は杯に口をつけた。

「寂しいですな、まだまだ始まったばかりですが」

星は、酒を注ぎながら呟く。

「すまん」

(そう言ってくれるのは嬉しい。けど、皆に平和のための戦いとは関係の無い“試練”(危険)に付き合わせる訳にはいかない。鈴花のように、最初から俺の目的についてくると決めていた訳じゃないんだ)

真剣に謝ると

「・・・・・・」

「えぇ~と・・・星さん?」

星は、すっと立ち上がり

「豪臣殿。目を閉じて歯を食いしばって頂けませんか?」

龍牙を構えた。

「おい、何するつもり、って何で龍牙の刃をこっちに向けるっ!

 って、引っ繰り返して柄を向けるな!

そして、譲歩したみたいな顔をすなっ!」

「我が儘な」

「いや、それは絶対に違う!」

俺は、顔が引き攣っていることを理解しながら怒鳴る。

星は、溜息を一つ吐いて

「では、これで良いでしょう」

龍牙を床に置き、右手を示す。

(・・・黙っていたんだ。パンチの一発や二発は仕方ない、よな)

「分かった」

目を閉じ、仙氣の強化を解いて来たる衝撃に備える。

仙氣を解いたのは、勿論自分への罰のためだ。

(・・・なかなか来ないな)

と、思っていると星の動く気配がした。

(来るか・・・)

と、身構えたとき

「ん~~~っ!!!」

唇を何かが塞いだ。

(なっ、せ、星!?)

驚いて目を開くと、目の前に星の顔があった。

そして、キスされたことに気付く。

俺は、予想と違う現状に動くことが出来ない。

「?」

星は、俺が目を開けたことに気付くと唇を離した。

「せ、星。これは・・・///」

「いけませんね、豪臣殿。目は閉じておく約束ですよ?

これは、追加でお仕置きですな」

星は、俺の言葉を無視して顔が近づいてくる。

「い、いや、星!違っん~~~!!」

俺は、混乱したまま、星に唇を奪われ

「~~~~~~~~~~~!!」

さらに舌を入れられた。

(や、やべぇ・・・スゲェ、上手、いんだけど・・・)

俺は、だんだんと理性を奪われていく。

そして、遂に星を抱きしめようとしたとき

 

ヒラリッ

 

(へっ?)

星は後ろへと飛び退いた。

「クスクス。豪臣殿、これはお仕置きですからここまでです」

星は頬を上気させて告げる。

その顔は、まるで誘っているかの様に妖艶で美しかった。

そんな姿に見惚れていると

「では、豪臣殿。これからは、このようなことの無い様に。では」

星は、背を向けて歩いていってしまった。

 

 

 

視線を下に移す。

(オイ・・・コレ、どうするよ?簡単には納まらねぇぞ・・・)

俺は、小悪魔の様な星の魔法?に項垂れた。

 

【視点・終】

 

 

【視点・星】

 

私は、城壁を降りると

「~~~~~ハァーーー」

大きく息を吐いた。

(やってしまった///)

本当は、ちょっと小突いて終わらせようと思っていたのだが、思い人の顔を見ていたら、つい口付けをしてしまっていた。

(・・・所詮は、私も女、ですかな・・・まぁ良い)

私は、唇を指でなぞって、先程の感触を思い出しながら

「豪臣殿。あなたと共に歩めるところまで、この趙子龍、全力でお傍に居ますぞ///!」

一人決意を口にし、夜空を見上げた。

 

【視点・終】

 

 

 

<朔夜>

 

 

 

朔夜が『白虎』に合流して一月がたったころ、豪臣は日々の暴力に耐えかねていた。

 

犯人は、朔夜。

理由は、ヤキモチ。

原因は、自分が居ない間に、豪臣と燈(ライバル)が仲良くなっていたため。

 

という感じである。

因みに、ヤキモチによる八つ当たりであることは分かっているが、原因に関しては豪臣は気付いていなかった。

豪臣は、どうにかして解決しようと頭を捻った。

そして、思いついたのが

 

“朔夜弄り”

 

である。

そう。殴られることを防ぐのではなく、殴られるなら仕返しをしてやる、ということにしてストレスを発散させようとしたのである。

 

では、どのようにして、となる。

その方法は・・・

 

 

豪臣が決意して数日。

夕食時、燈が豪臣の膝の上に陣取り食事をした。

当然、朔夜は嫉妬して燈と罵り合いをした。

そして食後。腹ごなしに中庭を星空の中散歩していた豪臣の前に朔夜が現れた。

いつもなら、ここからフルボッコにされかけるのだが、豪臣は不敵に微笑む。

「・・・豪臣。何ですか、その笑いは?今から、どうなるか分かっているのでしょう?それとも、殴られ過ぎてMな性癖でも身に着けましたか?」

朔夜は、イラついたように眉間に皺を寄せる。

しかし、今までの経験上、こう来ることを読んでいた豪臣は

「いや、今日はちょっと趣向を凝らして相手をしようと思ってな」

ニヤ、と唇を吊り上げる。

それを聞いた朔夜は、一度目を閉じ

「そうですが。ではっ!」

豪臣に襲い掛かった。

 

 

 

スッ

 

豪臣は、腰の後ろ、上弦と下弦を差している部分に右手をやり、何かを抜き取って朔夜の方に掲げて見せた。

「!!!」

朔夜の突進が止まる。

夜目の利く朔夜には、豪臣の手に握られた小さな物体が良く見えた。

「そ、それは・・・豪臣、あなたは、まさかそれを!?」

「そうこと」

驚愕する朔夜に、満面の笑みで答える豪臣。

その手に握られているのは

エノコログサ―――俗に言う“ねこじゃらし”

だった。

 

フリフリフリ

ピクピクピクッ

 

豪臣がそれを揺らすと、朔夜の眼が釘付けになる。

 

フリフリ

「くっ!卑怯なっ!」

 

朔夜は、目線をねこじゃらしから逸らすことなく講義する。

しかし

「ほれほれ」

豪臣は取り合わず、ねこじゃらしを揺らしながらゆっくりと左右に動かす。

 

朔夜の元の姿はトラ。トラはネコ科。ネコ科の動物は総じて、ねこじゃらし的な物に反応してしまう本能を持つ。

それは、朔夜も例外ではない。

 

朔夜の顔付きを見て限界と見た豪臣は

 

ヒュッ!

 

と、勢い良く腕を振るった。

すると

「ニャ~~~~~///!」

と叫びながら、朔夜がねこじゃらしに跳び付いた。

「フンッ!」

「変態~~~~~///!」

「ほっ!」

「ニャ~~~~~///!」

「あらよっ!」

「鬼畜~~~~~///!」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

2時間程動き回った朔夜は、息を切らし豪臣を懇願するような眼で見ていた。

普段の朔夜ならば、この程度の運動量で肩で息をする様にはならないが、ねこじゃらしという興奮材料があったため、疲れ方が尋常じゃなかった。

今は、ねこじゃらしが動いていないので、じっとして居られるのだ。

「ひ、豪臣。お願い、します。もう、止めてください」

朔夜は、満身創痍の体で懇願する。

豪臣も、途中から楽しみ過ぎて、やり過ぎたか、とも思っていたので、ねこじゃらしを捨てる。

朔夜は、呪縛から解かれたように、その場にへたり込んだ。

「で、朔夜。何で合流してからの一ヶ月、俺に暴力を振るっていたのか、理由を言いなさい」

 

 

(・・・・・・気付いていなかったのですか、この変態は)

 

 

 

 

 

朔夜が、呆れて固まってしまうと、豪臣が近づいてきて朔夜の前に腰を下ろした。

そして、朔夜を抱き上げて膝の上に乗せ、優しく朔夜の金髪を撫でる。

これは、朔夜が虎の姿のころによくやっていたことだ。

昔は、朔夜が落ち着くからと豪臣にせがんで、そのまま眠ってしまったことが多々あった。

「朔夜。いくらお前のやることだからって、何でも許せる訳じゃないんだぞ?」

豪臣は、そのまま優しく語り掛ける。

朔夜は、泣き出しそうになった。

そして、ポツリ、ポツリと囁き始めた。

「ズルイ。豪臣、あなたは、本当に、ズルイ。あたしは、あなたに抱きしめられるだけで、こんなにも胸が一杯になってしまいます。昔は、この腕はあたしだけの物でした。

 でも、この世界に来てからのあなたの周りには、たくさんの大切な人たちが居ます。そして、あなたの腕は、あたしだけの物ではなくなりました。

 それが、悔しくて、悲しくて・・・寂しくて・・・ぅぅうう」

豪臣は、初めて見る朔夜の涙と紡ぎだされる言葉を聞き

「ごめんな」

朔夜を抱きしめた。

(そうだよな。俺たちは、ずっと一緒だった。二人で、厳しい修行を乗り越えてきたんだもんな。今みたいに人の姿じゃなかったけど、ずっと支え合ってきたんだよな。

 心のどっかで、朔夜なら構わなくても大丈夫だと思っていた。

だから、朔夜にこんなにも寂しい思いをさせてしまった。泣かせてしまった。

 ごめん。ごめんな、朔夜)

そんな、思いを乗せて強く抱きしめる。大切な、愛すべきパートナーを。

 

 

 

 

そして、いつしか朔夜の涙も止まり、場に沈黙が訪れた。

見詰め合う二人。

そして

 

「俺たちは、二人で支え合って来た。そして・・・」

「これからも支え合って、ですか?」

「ああ。これからも、傍で支えてくれ」

「ええ。支えてあげますよ」

 

二人の主従は、口付けを交わした。

そして

 

「やっと手を出してくれましたね、ロリコン」

 

と、朔夜は嬉しそうに眼を細めて呟いた。

 

 

 

 

 

<おまけ・前>

 

 

 

朔夜が訓練を終えた暗部を引き連れて、『白虎』本隊に合流したときのこと。

一月ぶりに会った朔夜に、懐かしそうに話し掛ける鈴花たち。

そんな中、豪臣は一人、離れたところでその様子を見ていた。

豪臣の周りには、少し離れたところに護衛として近衛兵が数人立っているだけだ。

(態々、騒がしくなるであろう場に、行こうとは思わないんだよ、俺は)

星に誘われたがそれを断り、燈が残ろうとしたがそれを送り出し、一人残ったのだった。

(それにしても、よく話す。もう10分くらい話してるぞ・・・まぁ、燈は頷いているだけみたいだが)

そんなことを考えながら、豪臣が眺めて居たとき。本当に、偶々顔を左へ向けた瞬間だった。

「ッ!?」

目の前に脚が迫っていた。

 

 

 

【視点・豪臣】

 

「のわっ!?」

左から迫って来るハイキックを仰け反ってかわす。

が、次の瞬間には腹に衝撃が走り

「ぐふっ!?」

吹っ飛ばされた。

俺は、地面に転がされた直後に、転がる体の力を利用して立ち上がる。

(気付けなかった?この俺が?真後ろに立たれても気付けない?

冗談だろ!?貂蝉でも無いんだ!『消(しょう)』でも使われないかぎりそんなこと・・・ッ!?)

混乱しながらも、立ち上がった直後に相手の確認を行うことを忘れない。

そして、そこに居たのは

「流石です、“天の御遣い”様」

全身白い忍び装束の様な物に身を包んだ野郎だった。

 

【視点・終】

 

 

 

あとがき

 

どうも、虎子です。

二回連続で予定オーバー。申し訳ないです<m(__)m>

何ででしょう?予定通りに事が運びません。呪われているのでしょうか?

 

では、作品の話です・・・

今回は、星編と朔夜編、おまけ前編でした。

星は、劉備軍編で出た「口付け事件」について。

朔夜は、「こんな弱い朔夜もどう?」という感じですね。

おまけは・・・何となく書きました。

星については、どっかのSなロリドリルっぽい感じもありましたがご容赦を。

朔夜については、意見をたっぷり聞きたいですね。コメントくれたら嬉しいです。

おまけは、後編を何となく読んで頂ければと思います。

 

次回ですが、鈴花、燈、昴、おまけ後編です。

予定は未定にしておきます。何か、守れない気がしまくりですので・・・

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
34
3

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択