No.142219

愛しい人4 人気者の受難と秘密

同人円文さん

シリーズ4作目です
もうそろそろラストかな…

2010-05-10 09:57:02 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:7332   閲覧ユーザー数:5971

城のある一室。顔を真っ赤にした美しい銀髪の眠り姫がいた。

姫はついさっきまで大量の酒を飲んでいたせいでぐっすりと眠っているようだ。

その寝顔は不機嫌になったり幸せそうになったりと忙しく変化している。

 

「はぁ…やっとここまで運べたわ」

「ほんと、たいへんだったの~」

 

その眠り姫を運んだ従者は沙和、真桜の二人である。

肝心の眠り姫は寝言で「たいちょうのぶぁかぁ…」とつぶやいている。

 

「しっかし凪に酒呑ませるとこんなんなるとはなぁ…」

「普段から飲まないからどうなるとは思ってはいたけど…なの」

「「はぁ…」」

 

 

二人の顔には物凄い疲れの色が見えていた。

それもそうである。

眠り姫となっている凪は酔ってから三時間以上一刀への愚痴からノロケを延々と続けていたのだった。

さすがに精神的に限界を迎えた所で凪が眠ってしまったのだった。

 

「隊長も同じ目にあわせな…」

「そうなの…」

 

今回の一刀への不満をこの方法で返してしまおうと考える二人だった。

 

当の凪はと言うと…

 

「えへへぇ~たいちょう~♪」

 

幸せそうな顔で寝ていた。

 

 

 

 

「・・・ということでした」

 

同じ頃、秋蘭は華琳の所へ来ていた。

昼間に起きた一刀の失神事件のことについて事情を説明しに来たのだ。

華琳に昼間のようなトゲトゲしさはなく落ち着いた様子に秋蘭は安心した。

ただ、どうも華琳は憂さ晴らしに桂花をイジメていたらしく、桂花がそばにぼーっと立ったままだった。

顔は赤く何かぼそぼそとつぶやいていた。

はたから見ると危ない人のようになっている。

 

「なるほどね・・・」

「今回のことは我らも非があるように思いますが」

 

一刀と我らの間にある秘密。

これが始まりだったといっても言い。

この件は現段階で凪達に知られるわけにはいかなかった。

一刀から念押しされてもいる。

本人が言うと決めない限り言うわけにはいかない。

 

「とはいえ凪は上官に手をあげたことになるわ」

「やはり罰則を・・・」

「軍律は守らなければいけないもの、例外は無いわ」

「しかし・・・」

 

とその時だった。

 

「しゅうりゃんいるかぁ!!」

 

と、突然背後から声をかけられた。

「姉者・・・」とため息をつく秋蘭。

秋蘭の姉である春蘭が猫状態で立っていた。

どこかで酒を飲んだのか、顔は真っ赤だった。

 

(まったく…姉者はどこで酒を飲んだのだ?)

「姉者・・・華琳様の御前だ」

「もうしわけありましぇんかりんしゃま~」

「あら良いじゃない、可愛いわよ春蘭」

「ふにゃ~///」

 

トテトテっと華琳の元に行って甘える春蘭。

喉をくすぐられ実に幸せそうである。

そんな姉を見て破顔する秋蘭。

 

(ああもう・・・かわいいなあ♪)

 

とか考えていた。

 

「華琳様申し訳ありません・・・姉者、私に用があるのではないのか?」

 

秋蘭は話を戻すために訪ねた。

 

「そうにゃ!しゅうらん!」

「どっどうしたんだ?姉者?」

「かじゅとがけがしたってほんとうかぁ!?」

「ああ本当だが・・・」

「どこにいりゅ!」

「部屋にいるが・・・だが姉者」かじゅと~!!」

 

ガチャ! ドドドドドドドドドドッ!!!

 

聞き出すなりものすごい勢いで去っていった。

呆気にとられる二人。

 

「あの種馬は・・・今回のことといい、本当に愛されているわね」

「確かに・・・」

 

華琳は呆れ顔で、秋蘭は満面の笑みで春蘭の走り去っていった方向を見た。

どこで聞いたか春蘭は一刀が怪我したのを知っているようだ。

酒のせいもあるだろうがあの様子を見るとよほど一刀のことが心配なのだろう。

 

 

「では話を戻すわ、秋蘭も思うところがあるかもしれないけど、凪達には罰則を与えることに決定よ」

「そうですか・・・」

「誰か!!」

「はっ!お呼びですか!」

 

華琳は近くにいた兵に凪を呼ぶように伝えた。

兵はそんなに時間をかけずに戻ってきた。

 

一人で

 

 

「・・・酒に酔っていて来ることができない?」

「はい・・・ひどい酔いようで・・・」

 

凪は酒につぶれて眠っていたそうだ。

呼びに行った兵が起こそうにも「うるさぁい!!」と言われて、カウンター気味の一撃をもらったらしく目の周りが腫れていた。

 

「曹操様のお呼びです、とはもうしましたが・・・まったく耳に入っていないようで」

「はぁ・・・わかったわ、ご苦労様下がってなさい」

「ははっ!」

 

目を腫らした兵は外へでていった。

 

「まぁ酒も飲みたくなるわね・・・」

「そうですね・・・」

 

と二人は笑うしかなかった。

 

「わかったわ、凪には明日伝えることにするわ」

「わかりました、では失礼します」

「秋蘭」

 

部屋を出ようとする秋蘭を華琳が呼び止めた。

 

「なにか?」

 

華琳は不敵に笑い。

 

「今日は楽しかった?」

 

と言った。

秋蘭は、

 

「よい時間をいただきました///」

 

と顔を赤らめながら笑顔で答えた。

 

「そう、よかったわね」

「華琳様ももっと素直に一刀に甘えればよいのですが・・・」

「そんなこと、できるわけないでしょう」

「これは失礼しました・・・では」

「まったく・・・あいかわらずいい性格しているわね、あの子」

(私だってもっと一刀に甘えたいわよ///)

(それでも私は・・・覇王なのよ、秋蘭)

 

 

部屋を出ていった秋蘭を見てそんなことを思った華琳だった。

 

 

(さて、姉者は一刀のところかな?)

 

あれだけ酔った自分の姉をほおっておくわけにも行かず秋蘭は春蘭のところに行っていった。

一刀の部屋に近づくにつれ数人分の声が聞こえてくる。

 

「かじゅと~だいじょうぶかぁ!!」

「一刀!アンタのせいでエラいめにあったわ!!」

「兄ちゃん、大丈夫~?」

「おにいさんはまた女の子を泣かせて・・・いけない人ですねぇ」

「春蘭殿が一刀殿の服を!!・・・ぶふぅ!!」

 

声からして春蘭、霞、季衣、風、稟の五人だ。

どうやら城の中にいるほとんどの人間が一刀の部屋に集まっているようだ。

 

「落ち着いてくれみんな!!春蘭、怪我は大したことないから服脱がすな!つーか稟!人の部屋を殺人現場にするんじゃない!!」

「そうだぞ、皆一刀が困っているではないか」

 

集団で言い寄られる一刀に秋蘭が助け船を出してきた。

 

「秋蘭!助かった・・・」

 

一刀は春蘭に半裸にされながら秋蘭に助けを求めた。

春蘭は一刀の怪我の確認をしているのだが状況的には迫っているようにしか見えない。

そんな姿を見て稟が血の海に沈もうとしている。

秋蘭はそんな状況に苦笑しつつも華琳に今回の件を伝えたことを話した。

 

「北郷、とりあえず華琳様に今回のこと伝えたが・・・三人に罰則が与えられるそうだ」

「そんな・・・」

「何であれ凪は上官に手をあげたんだ、処罰は免れない。」

「・・・」 

「だが華琳様のことだ、良い判断をくだしてくださるだろう。私は華琳様の判断を待つ方がよいと思う」

「・・・そうだね、華琳を信じよう」

 

一刀は不安を残しつつも秋蘭に同意した。

 

「ちょっと待った!!」

 

そこに霞が入り込んできた。

 

「なぁんで凪達に罰則がはいるんや!悪いのは一刀やん!!」

 

霞が一刀を指さしし秋蘭に詰めかかる。

霞は凪達が処罰の対象になることが不満のようだ。

 

「それに凪達から話は聞いとるけど、一刀の口からも話してもらおか!」

 

凪達の酒を飲みヒドい目にあったせいか、その声には怒りというか、うらめしいさと言うかいろんなものが詰まっていてかなり怖い。

その隣に目をそらせば鼻から血を流し、命を散らそうとする稟を風がいつも通り介抱し、季衣は満面の笑顔で猫な春蘭をなだめている。

 

「そういえば霞にはまだ話してなかったね」

「なんや?何かウチに秘密にしとったんかいな?」

「ちょうど霞ここ数日騎兵の調練で居なかったからまだ話してなかったよな」

「確かにウチはおらんかったけど・・・何があったん?」

 

一刀は今回の秘密の件を話した。

この時この秘密の件を知らなかったのは凪達三人以外で霞だけだった。

 

「なんやそういうことか~」

 

霞は納得がいったような声を上げた。

 

「だから秘密にしたかったんだ」

「それやったらはよう言ってくれればよかったのに~」

「ごめんな・・・都合がつかなくて」

 

少なくとも霞は知っていれば昨日、酔って暴走した凪の被害にあうことはなかっただろう。

一刀も今回のことのためにわざわざ遠くで調練している霞に人を使うことも気が引けたので連絡が遅れてしまった。

結果ちょうど霞が調練を終えて帰ってきて入れ替わりで今回の事件が起きたのだ。

 

「このこと、みんな知っとたん?」

 

と霞が部屋にいるみんなに聞く。

 

「元々私と姉者と華琳様に一刀から相談があったんだ」

「僕は春蘭様と華琳様に聞いたよ」

「私と風は一刀殿本人から相談されまして」

「そうでしたね~」

「そないなことだったんか・・・でも今回のこと、一刀が悪いで!」

 

霞は改めて一刀のことを責めた。

 

「あの三人にはもうちょっとかまってやらんといかん!いくら三人のためてゆーてもかわいそうや!」

「そうですね、今回我々にも非があったとしても一刀殿がもっとうまくしていればこうはならなかったはずです」

「そうですよ~お兄さん、女の子は難しいんですから~」

 

もう復活した稟とその介抱をしていた風がさらに追い打ちをかける。

 

「・・・すいませんでした」

 

と一刀は寝台の上で頭を下げた。

 

 

その時だった。

 

「かじゅと!!」

 

猫モードの春蘭が再び飛びかかってきた。

一刀の上に覆い被さるような体勢になっている。

 

「うわ!どうしたんだ春蘭?」

「けがはだいじょうぶにゃのか?」

 

春蘭がまた一刀の心配を始めたようだ。

 

(また始まったか・・・!)

「秋蘭、みんな、ちょっと助けて・・・」

 

そんな一刀に無情な言葉が投げかけられる。

 

「北郷、すまないもう少しそのままでいてくれ・・・」

「春蘭様、相変わらず可愛いですね~」

と破顔する秋蘭と季衣。

 

「春蘭殿が一刀殿をおし・・・押し倒して!ブハ!!」

再び血を流す稟。

 

「あらあら、惇ちゃんかわええなぁ~一刀もまんざらじゃないやろ~」

「おうおうそこを聞くのは野暮じゃねぇかい?姉ちゃん」

「宝譿の言う通りですねぇ、ちょっとお邪魔ですかね~」

 

小芝居のようなことをする風と霞。風にいたっては羨ましそうな目で見ている。

 

(くっこれが四面楚歌って奴か!)

「かじゅと~!!聞いれるのか!?」

「聞いてるから、春蘭いい加減落ち着いて!」

「私は馬鹿じゃにゃいぞ~!」

「だぁ~も~!そんなこといってないってば!!」

 

この騒ぎは流琉が一刀に料理を運んでくるまで続いた。

 

 

翌朝、酔いからスッキリさめた凪は華琳に呼ばれていた。

沙和と真桜も呼ばれていたらしく途中で合流して華琳の部屋に向かっていた。

 

「なぁ、凪?昨日のことやけど・・・」

「昨日?・・・すまないが霞様に酒を飲まされてから全く覚えていないんだが・・・」

「ならいいのぉ~・・・」

 

凪はあの状況を全く覚えていなかった。

さらにあれだけ飲んどいて二日酔いになったような感じでもない。

 

(あんだけ飲んでなんともないとは…)

(凪ちゃんすごいの~)

 

そして沙和、真桜は考えた。

 

((やっぱ隊長も同じ目に!))

 

 

 

 

 

「昨日のことは秋蘭に聞いたわ」

 

凪達は華琳の前で正座をさせられていた。

三人は華琳の威圧に縮こまってしまっている。

 

「では隊長を助けたのは・・・」

「えぇ秋蘭と流琉よ」

「そうですか・・・」

 

凪は顔をうつむかせ暗くなってしまう。

 

(また・・・このいやな感じ・・・)

 

凪は心に再び暗い気持ちを感じてしまった。

華琳はそんな凪を見て笑う。

 

「凪、あなたが感じている気持ちは悪いものではないわ」

「しかし・・・」

「そんな感情、誰もが持つものよ。秋蘭だってこの私でも」

「華琳様・・」

「わかった?」

「・・・はい」

 

凪の顔に少しばかりか笑顔が戻る。

きっと凪はこの感情を悪いものとしか考えていない。

心の中の黒いものを黒いものとしか感じていないのだ。

だがもう少しでわかるだろう。

そうすればこの子はもっと可愛くなる、華琳はそう思った。

 

「では話を戻すわ」

「はっ!」

「は~い・・・」

「はいなの~・・・」

 

凪は何を言われてもいいよう声には覚悟がみなぎっていた。

対照的に沙和、真桜は不満げな声を上げる。

 

「凪は上官である北郷一刀に手をあげ沙和、真桜両名はそれを止めることなくあげく同調した、間違いないわね」

「はっ!」

「はい・・・」

「はいなの~・・・」

「軍律では上官に対し手をあげることは許されることではないわ」

「「「・・・」」」

 

三人に緊張が走る。

凪は額に汗を流し、真桜は息を飲み、沙和は目を潤ませている。

 

「あなた達への罰は・・・」

 

ゴクリッ…

 

「今日一日、一刀の仕事をすべてあなた達がやりなさい」

「「「はい・・・?」」」

 

 

三人はポカンとした風に口を開けた。

もっと厳しいものになるかと思ったら意外なものが出た。

 

「隊長の仕事を・・・」

「うちらがやる・・・」

「なの?」

「あら?不満ならもっと欲しい?」

「「「いえ結構です(なの)」」」          

「なら文句は言わずにやりなさい。いいわね?」

「華琳様・・・お聞きしたいことがあるのですが・・・」

 

凪は疑問を口にした。

 

「なぜ隊長の仕事をなんですか・・・?」

「それは不満かしら?」

 

華琳がじろりと凪を見る。

凪はビクっと体をふるわせる。

 

「いえ!そんなことは!!・・・ただ・・・」

「ただ?」

 

華琳は聞き返した。

 

「私は隊長に手を挙げたんです。もっと重い罰でもおかしくないはずでは・・・」

「凪は私の判断が間違っていると?」

 

暗い顔をしながら凪は首を振る。

 

「いえ、そうは思いません。ただわからないんです」

「華琳様・・・ウチも同じですわ」

「わたしもなの~・・・」

「あなた達は一刀がこそこそしているのがいけないのでしょう?」

「まぁそらそこが発端ですから・・・」

「なら正式に一刀に仕事を頼むわ。ただし一刀は今日一日私たちの預かりとする、仕事を放棄して一刀を探したり会いに行ったりするのは絶対だめよ」

 

その発言を聞いて凪はムッと顔をしかめた。

今日一日会うことができない、いつも一緒に仕事をしていた凪にとっては嫌なものだった。

そんな凪を見て華琳は笑顔で答える。

 

「今日一日、ちゃんと仕事をした子にはご褒美が出るわよ」

「…ご褒美?」

 

凪達は首をかしげた。

ご褒美とは何のことだろう?私達は罰せられる場にいるのになぜ?

 

「わからないことがあれば稟や風桂花に聞けばいいわ、では仕事にはしっかり励むこと!いいわね!!」

 

「「「御意!」」」

 

そして三人は疑問を持ちつつも仕事へと向かった。

 

三人が仕事に向かってすぐ。

 

 

「華琳ありがとな」

「あら、いいわよそれよりもご褒美は準備しているんでしょうね」

「ああバッチリだよ、今日一日時間があるなら最高のものにできるよ」

「ならしっかりやりなさい、今度はあなたが謝る番なのだから」

「わかってるよ」

 

苦笑する一刀、華琳はその横顔を笑顔で見る。

華琳は思う。

凪も秋蘭も春蘭もみんなこの笑顔にひかれている。

そして自分自身も…。

 

「一刀」

「どうしたんだ?」

「私もご褒美がほしいのだけれど?」

「う…今日は勘弁してくれよ…」

「なら今はこれでいいわ」

 

そういって華琳は背伸びをし、一刀に顔を重ねた。

 

 

 

シリーズ4作目です。

 

今回は現在出てきてない他のキャラを多少出してみました。

 

なかなかキャラを増やすと話を進めるのが大変です。

 

今回の見どころは猫な春蘭に最後の最後に素直になる華琳様です。

 

春蘭の猫話は大好きでしてぜひ使いたかったネタでした。

 

ちなみになぜ春蘭は酔っていたか?

 

町に出ている際に自分の部隊の部下におごっていたら…て感じにしています。

 

しかしこの話結構二転三転…。

 

最後に持ってく為にどうしようと悩みました結果こうなりました。

 

ということでおそらく次でこの話最後になると思います。

 

それでは何かありましたらどんどんいちゃってください。

 

ではここまで読んでくださいましてありがとうございます。


 
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