No.142007

真・恋姫†無双 あなたと共に 5

highstaさん

一刀くん帰還します。

大容量です。ですので、誤字・脱字があるかもです。

もし見つけたら報告していただければと思います。

2010-05-09 12:05:41 投稿 / 全23ページ    総閲覧数:31386   閲覧ユーザー数:18900

一刀

 

 

彼は3年前、奇妙な体験をした

 

 

 

 

約1800年前の世界に突然飛ばされ、曹孟徳を名乗る少女に出会った

 

 

 

 

彼は”天の御遣い”として、彼女に拾われ多くの仲間たちと共に戦乱の世を駆け抜けた

 

 

 

 

そして・・・・・・

 

 

 

 

世に平和をもたらし、役目を終えた彼は・・・・・・

 

 

 

 

 

“消えた”

 

 

 

 

 

 

外史への扉は一度は閉ざされた

 

 

 

 

しかし、彼女たちの”想い”が”鍵”となる・・・

 

 

 

 

彼の”心”次第で・・・・・・

 

・・・夢を見ていた

 

 

・・・“あの娘”がいる夢・・・

 

・・・“みんな”がいる夢・・・

 

自分を中心に”みんな”が笑っている夢を・・・

 

 

 

「・・・ま・・ん」

 

・・・んっ?

 

「すい・・せ・・」

 

なんだいったい?

 

「すいません!」

 

!!!!

 

ガタッ

 

「あっ、は、はい!」

 

「すいませんが、閉館のお時間になりますので・・・・・・」

 

「・・えっ?・・・あっ!?す、すいません。ご迷惑おかけして・・」

 

「いえ、それでは後はお願いします。」

 

そういって、受付の女性は奥の部屋に行ってしまった

 

「・・・・・・帰るか」

 

そういってオレ”北郷一刀”は荷物をまとめ、その場を後にした

 

 

 

 

 

「・・・懐かしかったなぁ~」

 

家に帰りながら、さっきまで見ていた夢のことを思い出す

 

「・・・華琳が・・・みんながいた・・・」

思い出すと胸も痛むがそれ以上に温かい気持ちになれた

 

「元気にしてるかなぁ」

 

少し俯きながらも薄く笑う

 

 

 

3年前、”彼女たち”の世界から消えた俺は普通に家のベッドで起きた

 

時間もいなくなった日から一日も経っていなかった

 

 

・・・まるで何もなかったかのように・・・

 

 

------夢だったのだろうか?------

 

 

「!?・・違うッ!!違うッ!!」

 

 

涙を流しながら、そう思った自分を否定する

 

そして、思い出す・・・”彼女たち”との日々を・・・

 

“彼女たち”の声を・・・

 

“彼女たち”の笑顔を・・・

 

“彼女たち”のぬくもりを・・・

 

戦乱の世にいながらも幸せを感じたことを・・・

 

 

------彼女たちは確かに”そこ”にいた------

 

 

「くっ・・うぅ・・ううわぁ・・うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

声をあげて泣いた

 

認めたくなかった

 

自分が本当に”そこ”から消えてしまったことを・・・

 

彼女との・・・華琳との約束を守れなかったことを・・・

 

 

「くぅっ!う・・うう・・・華琳」

 

ひとしきり泣いた後思い出す

 

彼がもっとも愛する少女のことを、”覇王”曹孟徳のことを・・・

 

「!?」

 

そして気づく

 

自分の今の姿に

 

・・・あの娘は今の俺の姿を見て好きだと言ってくれるだろうか?

 

・・・愛してると言ってくれるだろうか?

 

 

------いや、そんなことは絶対無い!!------

 

 

彼女のことはずっと近くで見てきた

 

彼女は”覇王”なのだ

 

常に”前”を見続けてきた”大陸の覇王”なのだ

 

 

 

------そんな彼女が”後ろ”しか見ていない今の”俺”を好きになるわけがない!!------

 

 

 

 

 

 

 

涙を拭う・・・その瞳に強い決意を宿して・・・

 

 

彼女たちとまた会えるかは分からない

 

 

それでも俺は”前”を見るしかない

 

 

彼女に好きでいてほしいから・・・

もし、また会えたら胸を張って会いたいから・・・

 

「・・・頑張ろう」

 

 

それは深い決意を込めた静かな言葉

 

 

 

 

 

 

それからの一刀は全てに一生懸命な姿を見せた

 

学校の勉強の他にも、農業、経済、工学、医学、服飾などの様々な分野を学んだ

 

 

大学は祖父の家がある鹿児島の大学に通うことにした。大学では「教育」について学び、祖父からは剣術を学ぶようにした。

そして、暇をみつけては”歴史資料博物館”に足を運び、”向こう”へ帰るための手がかりを探した

 

 

そうして、帰ってきてからの3年を過ごしてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「3年かぁ~長いようでなんか短かったなぁ」

 

今までのことを思い返したり、華琳たちのことを考えるとすぐに家についた

 

「ただいま」

 

「・・・帰ったか、一刀」

 

「おう、ただいま。って、どうかしたか祖父ちゃん?」

 

「・・・・・・少し話がある。道場で待っていろ」

 

「??あ、あぁ分かった」

 

そういって祖父は自分の部屋に帰っていった

 

「なんだってんだ?」

 

祖父の妙な態度が気になったが、とりあえず道場で待つことにした

 

少し待っていると祖父が何かをもってきた

 

「・・・これをお前にやる」

 

「あ、あぁ・・ありがとう・・・!?ってこれッ!!」

 

一刀が目の前に置かれた長い箱を開けると、そこには祖父の愛刀”天華”が入っていた

 

「・・・じいちゃん、どうして・・・これを俺に?」

 

一刀が尋ねると、祖父は重い口を開いた

 

「最近・・・よく夢を見る・・・お前の夢をな」

 

「!?そ、それがどうかしたのか?」

 

「・・・お前がわしの手の届かない所に行ってしまう夢じゃ」

 

「・・・・・・」

 

祖父は続ける

 

「そこでお前は苦しみながらも前に進んでいるのだ。・・・何がそうさせているかは分からんがな」

 

一刀は驚いていた。いつも厳しい表情の祖父が優しい笑みを浮かべながら話しかけてくるのだ。

 

・・・そして、その夢はまるで・・・・・・

「思えば、お前がここに来たときから驚かされてばかりじゃ。何をやっても中途半端だったお前が、成績トップで卒業したばかりか、剣術を教えてくれと頼み込んできたのだからのぉ」

 

ふぉ、ふぉ、ふぉと祖父は愉快そうに笑う

 

「その剣術でも、今やわしから一本とる程に成長した。・・・だからこそ、お前に受け取ってほしい。

・・・お前が手の届かなくなる遠くに行く前に・・・」

 

「・・・・・・遠くへって・・・」

 

一刀は戸惑ったが、祖父はすぐに答える

 

「・・・・・・気づいておったか?一刀。・・・お前の目は”ここ”を見ていないということを」

 

「!?」

 

「わしではどこを見ているかは分からぬ。だからこそ、わしのかわりに・・・”天華”を授ける」

 

祖父の強い眼差しを受け、一刀は答えた

 

「あぁ、分かったよ。でも、まだ”そこ”に行けるか分からないんだ。もちろん諦めるつもりなんてないけどね」

 

そういって、二カッっと笑った

 

「それでよい。お前が後悔のない選択をすることを祈っとるよ」

 

祖父も満足そうに笑った

 

 

 

 

部屋に戻る途中、一刀は思った

 

「(俺、祖父ちゃんの孫で本当に良かった)」

 

・・・と

 

 

部屋の前につきドアノブを回す

 

・・・ガチャ

 

開けた

 

・・・キィー

 

------部屋いっぱいの白い光が一刀を包んだ------

 

 

 

「な、ななななんだここは!!!!!」

 

一刀は戸惑った。それはそうだろう。自分の部屋に入ったつもりが辺り一面真っ白な空間にいるのだから

 

「・・・あなたに・・・」

 

「!?」

 

突然声が聞こえた

 

「・・・あなたに・・・伝えたいことが・・・あります・・・」

 

「・・・俺に?」

 

伝えたいこと?誰からだろう?

 

「・・・あの娘たちの・・・”想い”を・・・あなたに・・・」

 

そう言って、声が消えた後、頭の中に何かが流れ込んでくる

 

 

 

 

 

 

------待とうではないか。あやつが約束を果たしにくるまで------

 

------そうだな姉者。だが、待たせた分は相応に償ってもらわねばな?------

 

ッ!!!春蘭ッ!!秋蘭ッ!!

 

------前よりも良い国になったら、風のこと褒めにきてほしいのです。風はそのためなら頑張れるのです------

 

------あなたが・・・あなたなら・・・いえ、あなた”だけ”が答えを知っているのだから------

 

------もし帰ってきたら、覚悟をしておくことね。尋常じゃない程の苦しみにあわしてやるんだから------

 

風ッ!!稟ッ!!桂花ッ!!

 

 

 

------信じられる。だって兄ちゃんはボクと流琉のたった1人の”兄”ちゃんなんだから------

 

------私たちは兄様が好きだと言ってくれた笑顔で過ごしていきます。兄様がきっと帰ってくるその日まで!------

 

季衣ッ!!流琉ッ!!

 

------ しっかし隊長も遅すぎやろ------

 

------本当なの!このままじゃ沙和たち、おばあちゃんになっちゃうの!------

 

------ でも信じることにしたんだ。隊長はいつか帰ってきてくれると------

 

真桜ッ!!沙和ッ!!凪ッ!!

 

------一刀に会いたいなぁ~------

 

------まったく、あいつちぃたちの”まねーじゃー”のくせにいつまで天に引きこもってんのよ!!------

 

------ まだまだ歌い続けよう?私たちの歌が一刀さんに届くまで------

 

天和ッ!!地和ッ!!人和ッ!!

 

------それまでは待ったる!!何があろうと一刀が帰ってくるって信じて待っとるからな!!------

 

霞ッ!!

 

 

最後の”想い”が流れ込む

 

 

------早く帰ってきてよ、一刀------

 

ッッッ!!!!華琳ッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけば涙を流していた

 

みんなの”想い”が嬉しくて・・・

 

みんなの”声”が懐かしくて・・・

 

「うぅ・・うううぅ・・・みんな」

 

会いたい・・・やっぱり会いたい!!

 

彼女たちに!!

 

愛した人たちに!!

 

 

 

「くぅ・・・俺は・・・・俺は!!」

 

 

 

“みんな”がいる愛したあの”大陸”に

 

 

 

 

 

 

 

戻りたいッ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星は光を放つ

 

彼の”想い”に応えるように・・・・・・

 

 

彼は光に包まれ・・・・・・消えた・・・

 

 

 

 

閉ざされた外史への扉は再び開く

 

 

 

 

 

 

彼女たちの”想い”・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の”想い”・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鍵はそろった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれが一刀への想いを馳せた満月の日から1ヶ月後、洛陽では3国による平和記念祭が行われていた

 

この平和記念祭は1年に一回、洛陽で行われている祭りで、10日間という長い間、3国の重鎮たちを交えて行われている。町では蜀や呉からでも、手続きさえすれば露店を開けるとあって、かなりの賑わいを見せる。

 

ちなみに平和記念祭とは別に3カ国会議なるものが存在する

これは3国の均衡を保ったり、五胡などの外敵の情報交換をする場として設けられている

3ヶ月に一回の割合で開催されており、開催場所は3国で持ち回りとなっている

 

そして今は夜。3国の重鎮たちによる立食ぱーてぃーの最中である

 

「か~りぃ~んさぁ~ん♪」

 

「ちょッ!桃香!!いい加減離れなさいよッ!!」

 

「あははははは♪いいわよ桃香♪もっと、やれやれ~」

 

それぞれ将達は他国の将たちと語らっているが、ひときわ目立つ3人がいた

 

酔っ払いながら華琳に抱きついているのは、蜀王”劉玄徳”、真名は桃香である

 

そして、それを見て大笑いしているのは、呉王”孫伯符”、真名は雪蓮である

 

「もう~いいじゃないですかぁ~久しぶりなんですからぁ~」

 

「よくないわよッ!!しかも3ヶ月前に会議で会ったばかりじゃないの!!」

 

「えぇ~3ヶ月も経ったんですよ~。かりんさんぶんが足りないですよ~」

 

「わけのわからないことを言わないでッ!!雪蓮ッ!!あなたも笑ってないでどうにかしてよ!!」

 

「はいはい、分かったわよ~♪もう少し見たかったんだけど・・・ほら桃香、離れなさい」

 

どうにか雪蓮の助けを借りて、桃香から逃げ出した華琳は城壁の上まで逃げてきた

 

「まったく桃香ったら!!・・・いつまで経っても・・・って、あら?」

 

「華琳様」

 

「ふにゃ~かりんしゃま~」

 

城壁の上には先客がいた。華琳を支えてきた夏侯姉妹である。

ただし、1人は酔いつぶれてネコになってはいるが・・・・・・

 

 

 

 

「どうかされたのですか、華琳さま?」

 

秋蘭は尋ねた

 

「いえ、何でもないわ。あなたたちこそ、こんな所でどうしたの?」

 

「いえ、姉者が・・・」

 

答えにくそうに秋蘭が続けた

 

「・・・一刀とも呑んでやらねば・・と」

 

なるほど、と華琳は思った。確かに城壁の上なら彼の国である”天”を一番近くに感じられる

 

「・・・そういうことなら今度から私も誘いなさい」

 

「御意」

 

「・・・わかりましゅた~」

 

「・・・一刀は何をしていr・・・・」

 

華琳はそれ以上言えなくなった

 

 

見上げた空には一筋の流星

 

 

「ッ!?あれはッ!!華琳様ッ!!」

 

秋蘭も気づいた

 

「姉者ッ、起きろ!!流星だ!!」

 

「ながれぼしぃ~?・・ながれ・・ぼし・・?流星?ッ!?一刀ッ!!」

 

そうそれは3人にとって見覚えのあるもの

 

 

似ているのだ

 

 

彼と出会ったときと・・・・・・

「!!春蘭ッ!!秋蘭ッ!!」

 

「「はっ!!」」

 

 

3人は駆け出した

 

流星は洛陽郊外の森の方に落ちたのは確認できた

 

「(一刀ッ?一刀なのよねッ!?)」

 

「「(一刀ッ!!)」」

 

 

 

 

 

 

 

3人が慌しく出て行こうとするのをぱーてぃーの参加者は唖然として見ていた

 

慌しく出て行こうとする3人に一番近くにいた霞が声を掛ける

 

「ちょッ!?ちょいまちぃッ!!一体何があったんや!?」

 

最後に出て行こうとした秋蘭は笑顔で答えた

 

「流星が落ちたッ!!」

 

そう言って、秋蘭も出て行った

 

「流星って・・・・・・ッ!?まさか!?」

 

「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」

 

霞が結論に思い立った瞬間、魏の将たちは駆け出していた

 

 

 

 

きっと、あの人なんだ、と・・・

 

あの人が帰ってきてくれたのだ、と・・・

 

そう、

 

 

------北郷一刀が帰ってきたのだ!!------

 

・・・と

「いったい、流星がなんだというんだ」

 

長い黒髪をポニーテールにした少女(名を関雲長、真名を愛紗)が不思議がる

 

「流星か・・・・・・魏で流星といえば”天の御遣い”殿ではないか?」

 

長い黒髪を後ろで束ね、赤縁の眼鏡をかけた少女(名を周喩、真名を冥琳)がある結論を出す

 

「しかし、御遣い殿は役目を終え、天へ帰ったのであろう?」

 

艶やかな着物のようなものを着た少女(名を趙子龍、真名を星)が続く

 

「ならぁ~帰ってきたんじゃないですかぁ~?」

 

のんびりとした口調で答えたのは少女は、名を陸伯言、真名を穏という

 

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

 

確かに、と納得はできた。戦乱が終わってからの魏の将はひどいものだった・・・とても戦勝国の将とは思えない程・・・

聞けば”天の御遣い”なる人物が天に帰ってしまったからだったそうだ

 

それほど影響を与える人物なら先ほどの魏将たちの反応も説明がつく

 

 

彼が帰ってきたかもしれない、と聞かされればじっとなんてしていられないだろう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

蜀と呉の王は思った

 

「「ついていった方が面白そう♪」」

 

 

・・・と

 

 

 

 

 

先行して森に入った3人はそれらしい人影を探した

 

 

 

 

・・・・・・いや、そもそも人影とは限らない

 

 

 

 

だからこれは3人の願い

 

 

------人であってほしい・・・”北郷一刀”であってほしい------

 

 

という

 

 

 

 

 

 

川の流れる音が聞こえてきた

 

 

華琳は思った

 

 

「(成都で別れた時もこんな風景だったわね)」・・・と

 

 

そして、今日もあの日と同じ満月である

 

 

月の光が川辺を照らす

 

 

そして・・・・・・

 

 

 

3人とも立ち止まる

 

 

 

 

 

 

 

春蘭は見た・・・・・・

 

------月の光を反射して輝く姿を------

 

秋蘭は見た・・・・・・

 

------前より凛々しくなった顔つきを------

 

華琳は見た・・・・・・

 

------自分の存在を確かめるように手のひらをみつめる姿を------

 

 

 

そう

 

 

 

--------北郷一刀が”ここ”に存在していることを見た------

 

 

 

 

 

「一刀ッ!!!!」

 

弾けるように走り出す

 

愛しいぬくもりを感じたいから

 

 

「一刀ッ!!!!」

 

彼も声に反応して顔を上げた

 

彼の顔も歪む

 

「!!華琳ッ!!」

 

少女は飛び込む、愛しい人へ

 

少年は受け止める姿勢をとる

 

 

そして今・・・・・・

 

 

 

------少女は少年に触れた------

 

 

 

「かずとぉ・・かずとぉぉ」

 

「かりん・・かりん・・ごめんな」

 

「ばかぁ・・・・ばかかずとぉ・・・ゆるさないんだからぁ・・・」

 

少女はただ泣く

 

 

3年分の想いを込めて・・・・・・

 

 

再会できた喜びを込めて・・・・・・

 

 

 

「か・・・ず・・と」

「かずと・・・なの・・か」

 

 

 

夏侯姉妹は確かめるように近づく・・・・・・

 

不安はある・・・

 

しかし確かめずにはいられない・・・・・・

 

 

だから、一刀も涙を拭い答える

 

 

「・・・あぁ、そうだよ。春蘭、秋蘭。俺は”ここ”にいる・・・」

 

「「!?」」

 

・・・3年ぶりに真名を呼ばれた

 

 

心が震えた

 

 

 

「かずとぉ・・うう・・・かじゅとぉ~」

 

「かず・・と・・くぅぅ・・うぁ」

 

もう限界だった・・・・・・

 

2人も一刀に飛び込む

 

 

-----一刀はしっかりと受け止めた-----

 

 

 

 

 

 

・・・魏将についてきた蜀将や呉将は目の前の光景が信じられなかった・・・

 

 

“大陸の覇王”曹孟徳が、”魏武の大剣”夏侯元譲が、いつも冷静な夏侯妙才が

男の胸で子供のように泣いていた

 

 

遅れてきた魏将も涙を流す

 

目の前に会いたかった人がいる・・・・・・

 

3年間”想い”続けた人がいる・・・・・・

 

 

それは

 

 

------どんな願いよりも望んだこと------

 

 

 

魏将は一勢に動いた

 

「か~~ずとぉ~!!!!!」

「ほんごぉぉ~~!!!」(怒)

「一刀殿ッ!!!!」

「おに~さ~ん!!!」

「にいちゃ~ん~!!!」

「にいさまぁ~!!!」

「「「隊長ッ!!!!」」」

 

 

 

 

 

あろうことか、華琳たち3人を抱えたままの一刀にだ

 

「えっ?・・・と、うわぁぁ!!」

「えっ・・・ちょッ!?あなたたち!!」

「ば・・・ばかものぉ!!」

「華琳様ッ!!」

 

 

当然・・・・

 

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「うわあぁああぁぁぁぁ」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

ドカッ、ドシャ、ドシャ、ドシャ

 

 

 

 

支えきれずに倒れた

 

 

 

「いててて」

「いたたたっ!さすがに無理やったか」

 

「いいからさっさとどきなさい!!」

 

 

あまりの事態にさすがの華琳も王の顔に戻ってしまった

 

「まったくもう・・・あなたたちは!!」

 

 

ちなみにこの間、蜀将は今だ唖然

 

呉将は1人爆笑

 

 

華琳が毒づきながらも一刀の方を振り返ると・・・

 

 

「!?一刀ッ!!どこか痛めたのッ!?」

 

一刀は仰向けになり、目元を袖で隠していた

「ち・・がう・・ちがう・・・んだよ、かりん」

 

「えっ?」

 

泣き声交じりで一刀は気持ちを語る

 

「うれ・・しいん・・だ・・・・・・”ここ”に・・かえって・・これ・・・て」

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

いつのまにか笑い声もやみ、その場にいる全員が一刀の言葉に耳を傾けていた

 

「本当・・は・・・天になんて・・・・帰りたくなんて・・なかった。」

 

一刀の声にも力がこもってきた

 

「みんなと一緒に・・・いたかった。華琳や春蘭、秋蘭、桂花、風、稟、季衣、流琉、凪、真桜、沙和、霞、天和、地和、人和・・みんなのいる”魏”と、孫策さん、周喩さん、孫権さんたちが治める”呉”と、劉備さん、関羽さん、張飛ちゃんたちが治める”蜀”の3国が・・・手を取り合ったこの世界で・・・生きたいって思ってた」

 

 

 

 

それは初めて自分の口から語られた一刀の本音

 

 

 

「”向こう”に帰ってから怖かった・・・1人になっても華琳たちに恥じないように生きようって思った・・・。でもやっぱり・・・みんなにいてほしかった・・・」

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

魏の将は気づく・・・

 

 

・・・彼はずっと”一人”だったのだと・・・

 

・・・自分たちのように支えあうことなど出来なかったのだと・・・

 

 

それはどのぐらい辛い事なのだろう・・・

 

 

はかり知れない恐怖にみんな俯いてしまう

 

「・・・・・・でもさ」

 

さっきよりも少し明るい調子で一刀は続ける

 

「今、目の前に望んでた光景があるんだよ」

 

目元に置いてあった腕をどかし、周りを見渡す

 

 

 

 

 

--------「こんなに嬉しいことはないよ」--------

 

 

 

 

 

そういっって、3年前と変わらない優しい笑みを浮かべた

 

 

 

 

 

 

「一刀」

 

華琳は一刀の頭を胸に抱き寄せた

 

 

「もう絶対に・・・一人になんて・・・させないから」

 

 

その言葉に魏将は力強く頷く

 

 

「帰ってきてくれて・・・・ありがとう・・一刀」

 

涙を流しながらも笑みを浮かべて華琳は言う

 

「こっちこそ、遅れてごめん・・・華琳。それと・・・・・・ただいま」

 

「えぇ、おかえりなさい・・・一刀」

 

 

 

 

 

空には3年前と同じように満月が照らしている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------3年間止まっていた恋姫たちの”物語”は再び動き始める------

 

 

 

 

 

 

 


 
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