No.140415

恋姫異聞録58

絶影さん

ついに此処まで来ました

多くは語りません、読んでいただければそれだけで満足です

副題が次回から付くと思います

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2010-05-02 20:43:23 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:13704   閲覧ユーザー数:10657

 

 

今日も疲れたけど楽しかった。

 

 

 

夢が叶ったんだ、小さい時からの夢・・・

 

 

 

だから疲れも心地よい、早く帰ろう

 

 

 

御祖父さんと御祖母さんは元気にしているだろうか、次の休みには帰ろう

 

 

 

もう随分と歳だから、こちらに来てもらおうか?

 

 

 

いや、きっと生まれ育った土地から離れたくないと言うだろうな

 

 

 

やっと恩返しが出来る、ここまで育ててくれた、夢を叶えさせてくれた

 

 

 

どれだけのことを俺にしてくれたのだろう、これからその全てが返せるとは思わない

 

 

 

だけど生きている間、俺に注いでくれた愛情を少しでも多く返したい

 

 

 

連休に温泉にでも連れて行ってあげようかな?

 

 

二人とも温泉が大好きだしそうしよう、明日は旅行雑誌でも買って・・・

 

 

 

あれは・・・女の子・・・下を向いて信号が赤なのを気が付いていないっ!

 

 

 

車がっ!あぶないっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・夜空に星が沢山・・・こっちでも空に沢山星が見えるんだな

 

体が痛い・・・動かないな・・・・・・

 

さっきの女の子・・・俺を見て泣いてる・・・・・・無事だったんだ、良かった・・・

 

せっかく夢が叶ったのに、死んじゃうのか俺・・・やっと二人に恩返しが出来ると思ったのに・・・・・・

 

 

 

ごめんなさい・・・御祖父さん、御祖母さん・・・・・・赦してくれないかな、女の子が無事だったんだ

 

御祖父さんが教えてくれたこと・・・女の子を守れたよ・・・

 

 

目の前が真っ白になる、大きい光・・・俺は・・・死ぬのか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「お・・・・・・きろっ・・・起きろっ!昭、昭っ!!」

 

目の前には春蘭が心配そうに俺を覗き込む、今のは夢か・・・

 

「良かった、うなされて目から涙を流していたから驚いたよ」

 

「すまん、有り難う」

 

いつの間にか春蘭に膝枕をされていたようだ、頬から流れた涙を優しく手で拭ってくれる

俺はゆっくり身体を起こそうとすると、腹に重さを感じそこには俺を枕にして風が気持ちよさそうに寝ていた

起こさないように風の頭を俺の膝にずらして頭を一撫で、相変わらず柔らかい髪の毛だな猫みたいだ

 

「どうした?天の記憶で何かあったのか?」

 

「・・・うん・・・・・・俺、死んだよ。此処に来たのは車に撥ねられて、それで」

 

そこまで言うと春蘭は急に抱きしめ、俺の頭を自分の胸に押し込み俺の口を塞いでしまう

 

「お前は私の大切な義弟だ、お前が何者だろうと天で何かあろうと、私の義弟であることには変わらない」

 

「・・・・・・有り難う、姉者」

 

滅多に姉者など呼ばないからきっと顔を赤くしているだろう、俺を抱きしめる腕に力がこもってるのが解る

俺は春蘭にも支えられている。支えるばかりではない、気が付けば俺が望まなくとも皆側にいてくれる

華琳も同じように感じてくれているだろうか?皆から支えられていると、自分は一人ではないと・・・

 

「ふぁ・・・お兄さんお早うございます。おやおや、随分と仲がよろしいようで」

 

「なっ!うあああっ!・・・お、起きたのか風よっ!」

 

ムクリと起き出した風はニヤニヤと春蘭を見ている。春蘭はというと俺を直ぐに放し顔を真っ赤にして後ろを向いてしまう

俺はあまり春蘭をいじめないでくれと、優しく風の頭を撫でるとまた眠たそうに瞼が落ちてくる

 

「おはよう、寝る前に俺がどのくらい寝ていたか教えてくれるか?」

 

「はいはい、青洲に着いてから美羽ちゃん達の到着を待つ間にお兄さんが寝てしまってですね・・・」

 

土地が荒れているとの報告を受け青洲に来た後、どうやら美羽を待っている間に寝てしまい、寝ている間に

美羽が甘藷(サツマイモ)のツルを持ってきて、凪たち三人と一馬が協力し青洲の民と一緒になって畑を

耕しているらしい、トマトが流れてきてからというもの原産地の近い甘藷まで流れてくるとはやはり時間の流れが速い

というか狂っているのか?

 

「春蘭、川の土嚢は積み終わったのか?」

 

「お前の枕になっていたのだ、まだに決まってる」

 

相変わらず後ろを向いたままで少し怒ったように答えてくる。そうか、俺が寝てしまった後、気が付いて

起こさないように枕になっていてくれたんだな

 

「フェイは?」

 

「相変わらず木管に見たこと全て書き記していますよー」

 

指差す方向を見ると、凪達が美羽の指示でツルを植える作業を凄まじい速さで木管に書き記していく

華琳はフェイの能力を見て今の技術を後世に残す為、史官の役割もあたえていたのだ。

この間は華佗の医術を全て事細かに書き記していた。華佗にとっては自分の医術を書き記す時間など

中々取れないので喜んでいた「これで弟子達に医術を教えることが楽になる」と

 

「フェイちゃんは細かい注釈や絵まで付け足すので今後大きな力になりますよ」

 

「凄いな、俺も負けられない、さっさと着替えて仕事をしないと」

 

「だれだっ!」

 

俺がツナギに着替えようとした所で春蘭の緊張のある声が響き渡る。ゆっくりと大剣を手に取り立ち上がって

近くに生える木に構えた。すると木の影が大きくなり春蘭の剣の目の前で影が盛り上がり人の形を成していく

 

「化け物め、私が切り捨ててくれる」

 

「待て春蘭、知り合いだ」

 

俺の声を聞いて驚き俺のほうを振り向く、驚くのも無理は無いがこんな趣味の悪いことをするのはあいつしか居ない

どうせ今までのことも全て見ていたのだろう

 

「こうやって顔を合わせるのも、真名の儀式以来だな」

 

「クックック、そのようだな。解っていたか、事あるごとに私が見ていたことを」

 

そりゃそうだ、初めて会ったときに俺の行く末を見ているといったのはアンタだし、そんな怪しいヤツを忘れたりするものか

春蘭も気が付いたようだ、風は相変わらず読めないが警戒はしている

 

「それで何のようだ?飯でも食べに着たのか?」

 

「クククククッ、私にまで食事を取らせてくれるとはありがたい。だがのんびりしていて良いのか?」

 

のんびり?何のことだ?何を言っている?今まで遠巻きに見ているだけだったのに急に俺の前に

出てきて何を?

 

「定軍山」

 

その言葉で男の顔がビシリと固まる。そして顔は真っ青になり、握る拳がわなわなと震え始め

男の豹変振りに春蘭と風は驚き近寄って震える手を握り締めた

 

「クックックックックッ、ここが運命の分かれ道だ。貴様の生き様を見せてみろ」

 

占い師の口元を覆う布が微かに揺れ、表情は解らないが口ぶりから楽しそうに笑いながらと判断できる

その言葉で男は急に春蘭の肩を掴んだ、掴まれた春蘭は驚くが男の顔が焦燥で染まっており余計に心配になってしまう

 

「お、おい」

 

「春蘭、秋蘭は今どこだっ!?西涼に行っているはずではないのかっ!?」

 

「私は西涼に華琳様と向かうと聞いているが」

 

「お兄さん、先ほど早馬で予定が変更になったと、秋蘭ちゃんは劉備さんたちが国境をうろついている

との報告があり、急遽定軍山へ見回りに」

 

風の言葉で男は飛び出すように走り出し、近くにつながれていた愛馬、爪黄飛電に飛び乗り

馬を走らせた。男の異変に気がついた一馬は近くの馬に飛び乗り、春蘭のほうに走らせ後ろに

載せると男を追いかける

 

「兄者っ!兄者ー!!お待ちくださいっ!何があったのですか!?」

 

「秋蘭が危ないっ!定軍山は罠だ秋蘭が殺される!!」

 

男は必死に馬を追う、少しでも早く許昌につくようにと。春蘭は一馬を見て頭をガシガシと撫でると馬から飛び降りた

 

「行け一馬、昭を頼む。私は皆を連れて直ぐに出るっ!」

 

「はい!姉様、お任せください!」

 

定軍山だとっ!早すぎる、許昌に着くまで三日は掛かかってしまう、頼むまだ許昌を出ないでくれ

このままでは秋蘭が危ないっ!

 

手綱を握る手に力がこもり、顔は必死の形相

 

「一馬、先に行け!華琳に知らせろ、俺は大丈夫だ」

 

「解りました、兵を用意します。兄者はそのまま定軍山へ、身を低くして馬と一体に、私の動きを後ろから見て覚えてください」

 

一馬は何時ものように人馬一体の凄まじい馬術で走り出す。その動きを後ろから男は目に焼き付けた

 

解った、一馬のようにとまでは行かないが爪黄飛電を更に加速させる事は出来る。

馬の差だこれなら一馬にもおとらない、感謝するぞ華琳っ!この速さなら一日半でいけるはずだ

頼む、間に合ってくれ時間の狂いなどで俺の妻を殺させなどするものかっ!

 

二頭は凄まじい速さで地を駆ける、大切なものを守る為に

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

「どうしました秋蘭様?」

 

「いや、なんでもない、行こうか」

 

「はい」

 

たかが見回りに行くくらいで昭の顔が浮かぶとは、まったく自分に呆れてしまう

しっかり職務をこなしてこなければ、昭も早く帰ってくると言っていた

 

昭の自慢できる妻で居たい・・・フフッ、頭にあるのはあやつのことだけだな、自分に笑ってしまう

華琳様に対する敬愛とは違うな、昭に対してあるのは愛、そして今も恋をしているとはまったく面白いものだ

 

秋蘭と流琉は兵を引き連れて定軍山へと向かう、その先に罠が待ち受けるとも知らずに

 


 
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