No.137928

『舞い踊る季節の中で』 第30話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

とうとう動き出した、反董卓連合編。
そして自ら踏み込む事を覚悟した一刀、そんな一刀をどんな運命が待ち受けるのか・・・・・・・・

2010-04-22 12:25:25 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:22633   閲覧ユーザー数:15817

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第30話 ~ 策謀に踊り惑う心 -前編- ~

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

 最近の悩み:最近、二人の様子が、また変わってきた。 時折ボーとするのは相変わらずだが、よく目が

         合うようになった。 これだけなら、特に問題は無いのだが、その瞳に、何か熱いものを

         感じる。ぶっちゃけ、艶を感じるのだ。 以前二人に感じた時は、その何というか、妙な

         雰囲気に陥ったり、明命が無邪気に抱きついてきた時だったのだが、最近は、只、其処に

         いるだけで、感じる事が増えてきた。・・・・・・うん、とりあえず寝る前にしっかりと舞いを

         練習して、雑念を追い払う事にしよう。

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

一刀視点:

 

 

雪蓮に出陣するように言われて、ろくに準備もする暇もなく、出立する事となった。

前回の時のように、時間を窮するなら分かるが、今回のように前もって分かっていた事なんだから、もっと早く言って欲しいものである。 でもまぁ、翡翠が忙しそうだったし、明命も留守にする事が多かったので、なんとなく戦が近い事を予感していた俺は、最低限ながらも準備していたおかげで、俺が居ない間、店を任せる手配を終える事が出来た。

まぁ、彼等には、前回同様良い機会ではあるし、そう心配ない所まで来ているから、心配する必要は無いのだが、やはり、其処はそこ別問題である。

 

「うーん、やっぱり、イマイチだな、贅沢言える時じゃないけど、もう少し何とかならないのかな

 なぁ明命、やっぱ俺が作ったら駄目なのかなぁ?」

 

俺は、つい先程まで考え事をしながら食べていた雑炊を、箸で指しながら、隣に座る明命に、ここ数日繰り返してきた質問を繰り返す。

 

「駄目です、一刀さんは軍師で将の一人なのですから、何時も何時も食事の当番兵のような真似をされては、兵

 達に示しが付きません」

「いや、それにやっぱり手持ち無沙汰だし、毎日やっていた事がやれないと言うのもね・・・・・・」

「時間があるなら、やるべきことは幾らでもあります。 情報の整理、策の検討、周囲への警戒、それにこうい

 う機会を利用して、し・しっ親睦をはかるとか、・・・・・・此の所、忙しくて一刀さんとゆっくりと、話・」

「北郷さ~ん、おはようございます~」

 

明命と食事をしながら話していると、そんな呑気な声が聞こえる。

まぁ、顔を上げなくても、声の主が陸遜である事は分かるが、それでは相手に失礼だし、何より近づいてきたのは、陸遜一人ではなく

 

「孫策達は朝食はもう終えたのか?」

「ええ、食事中悪いわね」

 

俺の言葉に、孫策が少しも悪くなさそうな顔でそう言ったまま、黙って、此方の様子を見ている。

後ろに居る周瑜と陸遜も同様だ。

まぁ、待ってくれるだけありがたいか、俺はそう思いながら、朝食の残りを一気に喉に流し込み終え、そんな俺の様子を確認した明命が、近くの兵に頼んで後片付けをしてもらう。

(・・・・・・やっぱり、後片付けもさせてくれないのね・・・・・・)

 

「で、朝から何の話? 昼には、集結場所に到着するんだろ?」

「なに、到着前にお前に、集まった情報を渡しておこうと思ってな」

「まぁ、情報はあるに越した事はないけど、今此処でという事は、そう言う事でいいのかな?」

「話が早くて助かる。

 と言っても、たいした話ではない、ただの雑談じみた確認だ。何かお前のほうから聞きたい事はあるか?」

 

そう、言って切り出してくる周瑜は、面白げな瞳で此方を覗き込んでくる。

まったく、試すのが好きなのか、それとも、単純に楽しんでいるのか、分からないけど、今は付き合う気は無い。

「とりあえず、反董卓連合に参加している諸侯について、分かっている事を教えて欲しいかな」

「あらら~、わりかしまともな事ですね。いまなら、冥琳様のスリーサイズだって、教えてくれるかもしれない

 んですよ~」

「その程度であれば、教えてやっても構わぬが、その後の事は知らんぞ」

「い・今は遠慮とくよ」

 

陸遜の冗談に、何故か周瑜も乗ってくるが、俺はそれを丁重にお断りする。

だいたい、スリーサイズって英語だろっ、何でそんな所だけ横文字が伝わっているんだよっ まぁ訳の分からない言語の法則性はともかくとして、正直興味がないと言ったら嘘になるが、後々からかわれると分かっていて、正直に言う程、俺は命知らずではない。 それに、本気で知ろうと思えば、目測で測れるしね・・・・・・

・・・・・・あの明命、何で冷たい視線を送られなければいけないの? 俺断ったはずのになんで?

 

「まぁ、穏の冗談はさておき、まずは、発起人である袁紹と、雪蓮の口車に乗せられた袁術」

「そっ、最初は袁術本人が渋ったけど、此処で袁紹に功名を揚げられたら、袁家を袁紹に乗っ取られちゃうわ

 よ、って言ったら、袁術の家臣達が焦り出しちゃって、簡単だったわ」

 

周瑜の言葉に、孫策がそう補足する。

 

「他に漢の忠臣を謳う涼州連合を率いる馬騰。 北方の雄、公孫賛。中央より距離を置きながら着々と勢力を伸

 ばした曹操。 前の乱で頭角を顕し、平原の相となった劉備。 そして我等が主な軍勢となるだろうな」

「他にも、喬瑁さんに張貎さんといった太守達が参加してきますね」

「大なり小なり、野心を持つ人間が集まってきている・・・・・・と言ったとこか」

「さもありなん。・・・・・・お前も言ったが、すでに後漢王朝が死に瀕している今こそが、飛躍にはもってこいの

 時期だ」

「ただし、全員が飛躍出来るとは限らないけどね。

 ・・・・・・さてさて、数年後までに生き残っていられるのは、どの諸侯かしら」

 

物騒な事を言う孫策

・・・・・・・・でも、そういう時代だってことなんだよな、頭では理解しているつもりだけど、こう言葉にして言われると、あらためて実感させられる。 そして俺のそんな思いとは裏腹に、話は勝手に進み。

 

「有能な人も居れば、無能な人も居る。・・・・・・なかなか予測はつきませんねぇ~」

「まぁねぇ。 冥琳はどう見る?」

「ふむ。・・・・・・まず一人、人材、資金、兵力・・・・・・全てを潤沢に用意している曹操だろう。

 次に我ら孫呉だ。資金も兵力も充実の兆しを見せているし、人材も揃い始めている

 他は力はあっても、覇者となるだけの器がないと感じる。

 残る袁紹は、おそらく曹操が、そして、袁術は・・・・・・我らが倒すだろう?」

「もちろん」

「なら、我等の最大の脅威となりうるのは、曹操のみと言う事になるな、北郷はどう思う」

 

そう、俺を置いてけぼりに話をしていた周瑜が、突然話を振ってくる。

 

「俺の持っている情報は少ないから、なんとも言えないけど、翡翠が話してくれる程度の事や、流れてくる噂か

 らして、周瑜の言っている通り、曹操が脅威になるのは間違いないと思う。 でも、もう一つ気になる勢力が

 ある」

「ほう、それは劉備か?」

「うん、頭角を顕したと言うのも気になるけど、義・勇・名、共に揃っている。 何より、勢いがある」

「確かに劉備は、天の時を得ていると言える。だが、奴には地の理が無い。東には公孫賛や袁紹、南には董卓と

 曹操、これでは、大きくなるどころか、潰されるのが目に見えている」

「そうだね、でも別に、平原にこだわる必要は無い。 いざとなったら、領土を移せばいい、あれだけの噂が広

 がっているなら、受け入れてくれる所もあるだろうしね」

 

俺の言葉に、周瑜は呆れた顔を一瞬するが、すぐに顔を引き締め

 

「領土を移すと言えば聞こえはいいが、それは捨てると言っているのと同じ事だ。・・・・・・まったく信じられない

 発想をする。 だが、受け入れられると思う根拠は何だ」

「名が売れていれば利用したいと思う、力の無い領主だって居るし、こんな世の中だ、劉備のような人物を望む

 民だって少なくは無いはず。 徳を売りとする劉備、それを支える勇将・知将、夢をみたくなる人達だってい

 ると思うからさ、少なくとも弱小勢力や、そういった勢力の連合は、御輿にしたがると思うよ。

 ・・・・・・もっとも実際に話してみないと、どんな人物かは分からないけどね。 周瑜だって、多少なりとも気に

 なるところがあるから、名前を挙げたんだろ?」

「ふふっ」

 

俺の出した答え気に入ったのか、周瑜は楽しげに瞳を揺らすと、

 

「私が目をつけた理由は、別にあるのだが・・・・・・お前は穏とは別の変った視点を持っているな、しかも成る程

 と納得させられる。

 劉備の持つ勢力に対して言及していないのは残念だが、今のお前の立場で得れる情報では、 それも仕方ない

 と言うもの」

「一刀も、こう言っている事だし決まりね」

「ああ、ついてから、会えるよう手配しておこう。

 だが、言わなくても分かっていると思うが、決めるのは劉備の人となりを確かめてからだぞ」

「分かっているわよそんな事」

 

またもや俺をそっちのけで話し出す孫策の周瑜、

でも、話の断片から、大体の予想はつく、

 

「なぁ、陸遜、もしかして劉備と同盟を?」

「はい~、劉備の処は規模も、うちとそう変りませんし、此度の戦を期に確実に勢力を伸ばすでしょうね。

 でもまぁ、実際に同盟を組むかどうかは、劉備の人となり次第ですねぇ~、間違っても袁術に付く様な人とか

 だと困っちゃいますし~」

 

成る程、たしか俺の世界だと、劉備は袁術を討っているが、結託していた時期もあるから、そういう心配も当然か・・・・・・、やっぱり、俺の知っている三国志とは、だいぶ掛け離れているな、不確かな歴史は未来にはなりえないと言う事か、まぁ、元々当てにならない歴史に、運命を任せる気はないから、これはこれで、見切りが付いて逆に助かると考えられるか、

 

「ん?どうしたの一刀」

 

どうやら、俺に話したい事も終えた様なので、席を立つと、孫策が声をかけてくる。

 

「ん、明命に、時間があるなら親睦を図るのも大切と言われた事だしね、折角だから、今日まだ顔を合わせてい

 ない、孫権と思春に会って来ようと思ってね」

「はあぅっ」

「そっ、ならいいけど、・・・・・・明命良いの?」

「・・・・・・はい、親睦を図るのも大切ですから・・・・・・ぁぅ・・・・・・」

 

等と、何故か、明命に聞く孫策。

そして、これもまた何故か、少し気落ちしている明命がいた。 あれ?

 

「どうかしたの明命?」

「あっ、いえ、なんでもないです。

 普段交流の無い蓮華様と、親睦を深められるのも、よい機会だと思います」

「なんか、まだ嫌われているみたいだけどね。 とりあえず、少しでも改善を図りたいとは思うから、行って来

 るよ」

 

明命の言葉に押されるように、その場を一人離れる俺の背中に、

 

「あらら、明命ちゃん健気ですねぇ~」

「・・・・・・あぅぅっ」

 

なんて、話し声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

「ほ~っ、ほっほっほっほっ、知らない人はいないと思いますけど、私が、袁本初ですわ」

 

広い天幕の中、そんな高周波攻撃じみた高笑いが、響き渡る。

(いや、しらねえしっ)

と思わず突っ込みたい気持ちを抑え、隣に座る孫策を少し恨めしげに見る。

 

事の起こりは、反董卓連合が集結している場所に着き、案内された所に陣を張っている時だ。

 

 

 

 

 

「一刀ー、連合の軍議に行くから、貴方も付き合いなさい」

「はっ? 俺が行ってなんになるんだよ。

 それに、俺が行って天の御遣いと紹介するのは、不味いんじゃなかったっけ?」

 

孫策の何時もの突発的な発言に、俺が反射的に答えると、

 

「珍しいな雪蓮、お前がああいう腹の探りあいに出たがるとは、てっきり、私に押し付けるものとばかり思って

 いたぞ」

「そりゃー、私だっていやよ、あんな腹黒い集まり、でもこの際一刀には良い勉強かなって思って、・・・それに、

 別に天の御遣いじゃなく、軍師見習いの勉強と言えば、そう怪しまれやしないわよ。 逆に袁術に前もって顔

 合わせておく事で、警戒心を解いておくこともできるわ、・・・・・・すくなくても、一刀の能力を見た目で判断で

 きる娘じゃないし。 良いわよね? 一刀」

 

いや、孫策の考えも分からないでもないが、周瑜の説明を聞いて、行きたがると思うか普通?

だけど、本来周瑜に押し付けるところを、俺のためと言う心遣いもあるし、

 

「では北郷、雪蓮の手綱任せたぞ」

 

と、周瑜から、ありがた迷惑な言葉もあっては、俺に断る事なんてできるわけも無く。

 

「ぶーぶー、冥琳なによそれっ」

 

と、頬を膨らます孫策に、引きずられるように、諸侯の集まる大天幕に来たわけだ。

 

 

 

 

 

 

「袁公路じゃ、皆の頑張りを期待するぞえ」

 

あれが袁術か・・・・・・、翡翠に聞いていたとおり、我侭そうな小さな女の娘だな、

其の後にいるのは、察するに張勲か、しかし、なんなんだ、あのバスガイドみたいな服は・・・・・・いったいこの世界ってどうなっているんだ。

 

「袁術の客将の、孫伯符よ、この子は軍師見習いの北郷、勉強のため今日は同席させてもらうわ」

 

孫策の挨拶に、俺も立って、周りに軽く顔を見せるように、視線を送る。

肝心の袁術は、さっきの尊大な笑顔を此方に向け、すぐに興味をなくしたように、視線を逸らす。

(今、一瞬だけど、眼に浮かぶ感情が変わった気が・・・・・・)

そして、それに反して張勲は、作り物の笑顔を貼り付けたまま、その瞳は、しっかりと俺を見定めるように、見詰めていたが、俺と視線が合った時、俺は観察していた事を誤魔化すために、笑顔を向けると、張勲は慌てて他の諸侯に、その観察する対象を移した。

はて、いま少しだけ顔が赤かったけど、俺何か怒らせるような失敗したかな? よく、見渡せば、周りの空気も少し穏かな物に変ったようだし・・・・・・・・はて?

 

『一刀、時と場合考えなさいよ』

『俺、やっぱなんか失敗した?』

『まったく、この無自覚は・・・・・・・・いいから大人しく座ってなさい。 笑みを浮かべるのも禁止、いいわね』

 

俺が戸惑っていると、孫策が、他の人間には聞こえない程度の小さな声で、俺を叱責してくる

まぁ、とにかく、俺は言われるまま、大人しく座ると、

 

何人かが、俺を興味深げに視線を送っていた事に気が付く、

 

「幽州の公孫伯珪だ」

「平原の相、劉備です」

 

ふわふわ桃色の髪(と、かなり立派な胸)の女性が立つと、何人かの諸侯が視線を送る。

あれが劉備か、穏やかな性格と聞いていたが・・・・穏やか過ぎる気がする。 だけど、黄巾の乱で活躍したわけだし、只の人の訳ないよな。

後にいる小さな娘は、軍師かな? 蒼い髪を左右に纏め、背の高い所謂魔女帽と呼ばれる帽子を、天幕の中だというのに、深く被って、周りと視線を合わさないように小さく震えながら、それでも各諸侯に眼を配っている。

なんとなくその姿に、小動物を連想させ、頬が緩む。

俺はそんな彼女、と視線が一瞬あった瞬間を見計らって、落ち着けるように優しく微笑んでみる。

すると、何故か、劉備の背中に隠れられ、

 

ふみ゛っ

 

『い゛っ』

 

俺の脚を襲う痛みに、声を出しそうになるのを何とか抑え、その原因となった孫策を睨むと

 

『さっき言った事忘れたの? 今度は踏み抜くわよ』

 

そう、警告してきた。

いや、気が付いて、態々避けなかったんだから、あそこまで強く踏まなくてもいいだろうに、と思いつつ、視線を戻すと、何故か、劉備も顔を赤くしていた・・・・・・あれ、もしかして怒っている? 怖がらせるつもりじゃなかったんだけど、怯えられちゃったかな・・・・・・・・と少しショックを受ける。 これでも子供受けは良いと思ってたんだけどな・・・・・・

しかし、その前で挨拶をした公孫賛はなんか、かわいそうだよな、有力な太守なはずなのに、殆ど見向きもされていなかったし。

 

「涼州の馬超だ。 母、馬騰の名代として参戦させてもらう」

 

今度は、茶色い髪をポニーテールで括った背の高い女性が、挨拶する。

この世界では、話を聞いた事はないが、俺の世界では、五虎将と云われる程の勇将だ。

・・・・・・・・確かに強いな、思春じゃ、まだ敵わないかな。 それに、彼女は涼州の部族だ。 なら馬上では、もっと強いと考えるべきだろう。

そして、何人かの諸侯の代表が、挨拶をし、最後に

 

「西園八校尉の曹孟徳よ」

 

袁術を除けば代表者の中で、一際小さい人物、

金髪のクルクル髪をした少女が、不遜な態度で名を告げる。

そして、名を告げると共に、隠す気などない、と言わんばかりに覇気を各諸侯にぶつける。

それと共に、天幕の中は、灼熱に煽られたかのような熱気に包まれる錯覚を、感じた・・・・・・・・のだろうなたぶん、孫策も、反射的に、身構えそうになるのを無理やり我慢した様子だし、中には、自制出来ずに、警戒心を顕にする者もいた。

袁術なんかは、張勲の背中にとっさに隠れ、張勲自身は、笑顔を浮かべながら、袁術の前に立っているが、その顔には緊張のためか、汗が流れているのが分かる。

袁紹は、面白くなさそうな顔をして見ている所を見ると、只の、目立ちやがりの姉ちゃんって訳じゃなさそうだな。

しかし、あの覇気、そして、自信に溢れた態度、まさに覇王曹操の名に相応しい人物のようだ。

 

「金髪と醜男は、私に話しかけない事」

 

等と、感心したところに、そんな言葉と共に、軽く俺に視線を投げかけてきた。

 

『誰の事かわかっているわね?』

 

と言わんばかりに、

カチンッと来た、何せ此処には、男は俺一人しかいないため、他人事と気を紛らす事も出来ない。

正直、言葉そのものより、その態度に、むかつくものがあった。

だけど、ここで、諸侯の集まる軍議の場で怒る訳にはいかない。 そんな事をすれば、孫策の顔に泥を塗る事になるし、挑発に乗るのはなんだか負けたような気がするので、俺は、せめてもの反撃として、笑顔を返してやると。

 

「ふーん」

 

と小さく面白げに笑みを浮かべながら座る。

まったく、この場で許される程度の軽口と状況で、俺を効果的に試すとはね・・・・・・乱世の奸雄と言われるだけ在って、頭が回るようだ。 それに、あの態度、あれは確たる自信があってのもの。 そして瞳に秘めた強い意志、・・・・・・・・なるほど、ただ誇り高いのではなく、清濁を呑み込んだ上での誇りと言うわけか、かなりの曲者だな。

 

しかし、孫策に思いっきり足を踏まれるのを覚悟していたのに、それもない。

孫策の顔を横目で確認すると、にこにこと仮面を被ったまま、どうやら今回は黙認という事らしい。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・疲れた」

「口にして言わないでよ、こっちまで気が滅入るじゃない」

「孫策は、慣れているから、まだいいだろ。

 只の腹の探りあいならともかく、道化のおまけ付きなんて聞いてないぞ。 余りの馬鹿馬鹿しさに余計疲労感

 が増したよ」

 

軍議とは名ばかりの集まりを終え、陣に戻りながら愚痴る俺に、

 

「あんなのに慣れるわけないでしょ。 というか、慣れたら人間終わりよ」

 

等と、俺以上に酷評を述べた。

・・・・・・まぁ気持ちは分かる。

袁紹、あれはあれで、大したものだと思うけど、いかんせん、俺から見ても飛んでいる。

家の関係上、色んな人物とは知り合ったが、さすがに、ああいった人間はいなかった。

まぁそれでも、疲れたなりの収穫はあった。

主だった諸侯や、その従者の人となりを、この眼で確認できた事だ。・・・・・・もっとも、それは、各諸侯達にとっても同じ事だけどね。

やがて、陣の中心に戻り、そこで兵達に指示を次々と飛ばしている周瑜が、此方に気が付き、

 

「おかえり、雪蓮」

「ただいま」

「どうしたのだ、そんな疲れた顔をして」

「疲れもするわよ」

「腹の探りあいが、疲れることなのは承知の上だろう」

 

周瑜の言葉に、孫策は大げさに手を振りながら、

 

「一刀がね、やってくれたのよ」

「おいっ!」

「何をだ? まさか袁術に気付かれたとかか?」

「そっちは大丈夫よ。 だけど別の意味で、袁術ちゃんと張勲に目をつけられたわ」

「成る程、例のやつをやったのか」

「そう、例のやつを、しかも三回もっ、その上相変わらずよ」

「袁術達の目を逸らす事が出来たなら上々と言えよう。 それに、注意して何とかなるものではないだろうし、

 無くしてしまうには惜しい気もする。 違うか?」

「それも、そうなんだけどね・・・・・・」

 

俺の突っ込みも無視して進める二人に、俺は自分でも情けない気持ちになる。

何時もなら気にせずに、見守っているのだが、今回はどうやら、俺が何かやったらしく、その事で孫策に迷惑を掛ける事になるかもしれないらしい、

俺としては、それで気にしないわけにはいかないため、もう一度声を掛けたが、今度は、

 

「いいの、いいの、もう済んじゃった事だし、今思えば、逆にあれはあれで良かったと思えるし、一刀は気にし

 なくてもいいわよ」

「・・・・・・・あの、そういう言い方されると、余計気になるんだけど・・・・・・・・」

 

等と、さっきの言をあっさり否定するような事を言う。

まぁこの様子では、これ以上聞いても教えてくれないだろうな、それに今はそんな事より、気にすべきことが沢山あるわけだし・・・・・・、なんか踏まれ損だよな

 

「で、総大将はやはり袁紹か?」

「ええ、そうよ、劉備が腹の探りあいに我慢できなくなって、やりたそうにしていた、袁紹を推挙した形でね。 おかげで、あの娘、先鋒を押し付けられたわ。 一緒にいた軍師の娘の慌てっぷりから予想外の出来事だった

 みたいだし、大変な事になるかもしれないわね」

「で、どうするのだ?」

「予定通り、劉備と直接会ってみるわ、決めるのはそれからでも遅くないし、恩を売るには絶好の機会だし、

 手配はしてあるんでしょ?」

「ああ、来てすぐに使者を送った。 それと明命と明命の直属の部隊には、汜水関と虎牢関、そして諸侯達を探

 らせている」

「大体分かればいいんだから、あまり深入りさせちゃ駄目よ」

「その辺りは、十分言い含めてあるさ」

 

そっか、明命は偵察にでているのか、無理しなければいいけど・・・・・・・・、だめだな、明命は俺なんかと違って、経験豊富な立派な将と言う事を、つい忘れて心配してしまう。

 

『密偵において、一番重要な事は、生きて戻ることなんです。

 例え手かがりを残したとしても、それを後の者が見つけるとは限りませんし、本物とは限りません。

 捕殺されるならまだしも、捕らえられれば、本国に迷惑を掛けてしまいますし、逆に情報を漏らさせられるか

 もしれません。

 だから、何の情報が手に入らなくても、それが得た情報なのです。 とにかく、生きて戻り、得た事を伝える

 事が何より重要なのです。 だから、一刀さん、心配しないでください』

 

いつかの明命のそんな言葉が、俺の頭を過ぎる。

そうだよな、必要以上の心配は、明命の力を信じていないって事だもんな。

でも、幾ら歴戦の将でも、俺にとって明命と翡翠は、ただの女の娘だ。 守るべき家族で恩人だ。

どうしても、必要以上に心配してしまう。

そう、心の中で自問自答していると、孫策と周瑜は、軍議での話を終え、

 

「で、まさか一人で行くのか?」

「それこそまさかよ、軽んじられても困るけど、あまり警戒されても話し合いにならないから、護衛は一人で

 十分でしょ」

「なら、思春を呼んでくるよ」

 

二人の会話から、思春を呼びに行こうとした俺を

 

「一刀、何寝ぼけた事を言っているのよ」

「王の護衛と言えば、最強の者が付くのが当然であろう。

 ましてや、新人で仕事の少ないどこかの軍師なら尚更の事」

「う゛っ・・・・でも、軽んじられても困るんだろ?」

「あまり警戒されても、話し合いにならないとも言ったわよ。 あの娘じゃ無用に刺激を与えかねないわ」

「そもそも、それが分かっていたから、思春に押し付けて、逃げようとしたのであろう」

「そうそう、ばれたなら諦めて大人しく付いてらっしゃい」

「・・・・・・・・わかったよ」

 

二人に畳み掛けるように言われては、抵抗する気力も無くなり、俺はしぶしぶ了承した。

・・・・・・俺も調べたい事があったんだけど、まぁいいか、こっちはこっちで気になる事があったし、

 

 

 

 

 

「待て! お前達は何者だ? 何故我らの陣に入ってくる?」

 

劉備軍の陣に入ってしばらくして、硬く澄んだ声が響き渡る。

目を其処へやると、黒く美しい髪を高い位置で結わえ、決め細やかな髪を、極上の絹のような輝きを煌かせながら、地へとまっすぐ伸ばした女性が、俺達の前に立ちふさがり、ややきつそうな目に、警戒の色を浮かべて此方を睨んできていた。

 

「あら、先触の使者から伝わっているはずだけど、まあいいわ、劉備に伝えて頂戴、孫策が会いに来たって」

「ああ、貴女が江東の麒麟児と呼ばれる・・・・・・」

「なにそれ?」

「孫策の事を、最近ではそう呼んでいるらしい・・・・・・・・知らなかったのか?」

「全然、私が他人の風評を気にすると思う?」

「それもそうだな、と言いたいけど少しは気にしてくれ・・・・・・」

「でも、そんな風に呼ばれているんだ。 悪い気はしないわね」

 

孫策は、女性の不躾な言葉に、怒ることなく、俺と軽口を叩く

 

「貴女の勇名は、大陸中に響いていますからね」

「お姉ちゃん、かっくいいのだー」

 

女性の言葉に続いて、無邪気な言葉と声が響く、

短い赤い髪の少女が、女性の向こうから歩きながら近づいてくる。

何故、こんな子供がとは、思わない。

一見普通に見える隙の無い歩き方、少女から滲み出る強さ、それもあるけど、此処にいる以上は、こんな子供でも、その覚悟があると言う事だからだ。 ・・・・・・・・ただ、その事実が、悲しいと感じる。

 

「あははっ、ありがと。 ・・・・・・・・でも、そういうあなた達二人の名は?」

「わが名は関羽。 字は雲長」

「鈴々は張飛なのだ♪」

「貴方達が関羽ちゃんに、張飛ちゃんなのね」

 

二人の、名乗りに俺は驚愕した。

関羽はともかく、こんな小さな子が、あの燕人張飛とはっ! 強いとは感じたけど、正直想像の枠を大きく飛び越えていた。・・・・・・まったく、なんて出鱈目な世界なんだと、改めて思い知らされる・・・・・・

そして、俺の内心の驚きを余所に

 

「で、その孫策殿が、我らが陣営に足を運ばれて、我が主に一体どのようなご用でしょう?」

 

にこやかな笑顔と、丁寧な言葉遣いとは裏腹に、先程より濃度の高い警戒を浮かべ、関羽と名乗った女性が、孫策の顔を覗き込む。

 

あちゃー、試すならともかく、こんな風に嫌らしく、本音を隠して動くって、孫策が一番嫌いなパターンなんだよなぁ。 俺も何度か、本音を隠して動いた事はあるけど、それは、お互いの気心が知れているからだし、なにより、本気で相手を不快にさせるような真似はしない。 そして、今回のような場合だと・・・・・・

 

「・・・・・・下がれ下郎」

 

ああ・・・・・・案の定かぁ

孫策は、冷たい目をし、キツイ目を関羽に向け

(孫策は綺麗な顔立ちをしているだけに、怒ると凄みが増すんだよなぁ・・・・・・まぁ、それは相手も一緒だけど)

 

「我は、江東の虎が建国した孫呉の王! 王が貴様の主に面会を求めているのだ。 家臣である貴様はただ取り

 次げばよい」

「なんだとっ!

 我らには、主を守る義務が、責務がある! 例え王と言えども、不信の者を桃香様に合わせられるか!

 それでもまかり通ると言うなら、この関羽が相手となろう!」

 

そう言って、手に持っていた偃月刀を構える。

 

「ほお、・・・・・・大言壮語だな、関羽。 ならば相手になってやろう」

 

関羽に刺激されてか、孫策まで剣を抜き放ち、一触即発の雰囲気をかもし出す。

まったく、孫策は、こういう所は、相変わらず悪趣味だよな

俺は、わざとらしく大きく溜息をつきながら、二人の間、孫策の前に体をゆったりと割り込ませ、

 

「孫策、真面目な人間をからかって遊ぶのは、うちの人間だけにしてくれ」

「ぶーー、いいとこなのに」

「それと、関羽さんも本気ではないとは言え、主の許可なしに、他国の王に矛を向けて門前払いをしたと知れ渡

 ったら、そちらにとって都合が悪くなるんじゃないのかな」

「う゛っ・・・・・・・・たしかに、その通りですが、貴殿は?」

「俺は北郷一刀、孫策のところで、軍師みたいな事をしている」

 

俺の言葉に、孫策は楽しみを奪われた子供のような顔をし、関羽も多少なりとも自覚があったのか、矛を素直に収める。

 

「愛紗ちゃん! どうしたのっ!?」

「と、桃香様・・・・・・」

 

そこへ、先程天幕であった女性と少女、そして金髪の少女が、駆けてくる。

 

「愛紗と孫策お姉ちゃんが、ちょっと喧嘩したのだ。 でも二人とも本気じゃなかったし、其処のお兄ちゃんが

 上手く止めたのだ」

 

そして、先程の騒ぎを、のんびり眺めていた張飛が、三人に説明する。

本気じゃないか・・・・・・やはり、幼い容姿とは裏腹に、かなりの実力があると見ていいな。 おそらく、明命や思春じゃ、二人掛かりでも相手になりそうも無い。

 

「あっ、さっきの笑顔のお兄さんだ」

「あわわ」

 

二人は俺に気がつくと、劉備はそう言葉を漏らし、魔女帽の少女は、何故かまた顔を赤くして、劉備の後ろに隠れる。・・・・・・えーと、俺、そんな怖い顔しているかなぁ、一度ならず二度までもそう背中に隠れられると、本気で凹むんですけど・・・・・・

そして、もう一人、魔女帽の少女と似たような服装の少女(ただし、こちらはベレー帽)は、此方を黙って観察している・・・・・・深く静かな目だな、それにあの容姿、どこかで見たような・・・・・・

 

 

 

 

「ちょっと、私は無視なの?」

「あっ、そんなわけじゃないです。 孫策さん、態々来られるなんて、一体、どのようなご用で?」

 

孫策の、むくれた声に、劉備は、慌ててたものの、すぐに落ち着き、孫策と対面する。

俺は、邪魔にならぬよう、斜め後ろに下がり、周囲を警戒しながら経緯を見守る。

・・・・・・うーん、やっぱりどこかで見たような・・・・・・

 

「・・・・・・綺麗な目をしているわね」

「え?」

「此方の事よ。 とりあえず、ちょっとした提案をしにきたのよ」

「提案、ですか?」

「そ、貴女達、勝てる見込み、あるかしら?」

「・・・・・・正直言うと、分かりません。

 愛紗ちゃんや鈴々ちゃんが居たとしても、兵が絶対的に足りませんから・・・・・・、董卓さんの軍勢とまともに

 ぶつかれば、きっと負けちゃうと思います」

「そうねぇ、だったら、手を組まない?」

「へっ!?」

「劉備軍と私達孫呉軍が先鋒を取れば、兵の数も倍以上になる。 それでも相手の方が多いけど、勝てる見込

 みも出てくるんじゃないかしら?」

 

孫策の提案に、劉備は少し戸惑い、関羽は警戒の色を示し、張飛は、・・・・・・どうやらわかっていないようだ。

只、此方と周囲を、単純に警戒しているだけのようだ。

そして、そんな三人とは違い、後ろの二人の少女は、静かに経緯を見守っている。・・・・・・なるほど、どうやら最初から、此方の意図が分かっていたようだ。 となると、やはり軍師か、・・・・・・劉備で軍師と言うと、伏竜・凰雛が有名だが、二人が劉備の味方になるのは、だいぶ後のはず・・・・・・ん?

 

そうか、どこかで見た事があると思ったら、翡翠に似ているんだ。

翡翠を少しだけ幼くして、髪を短くしたら、あんな感じかもしれない。

ただ、今まで気がつかなかったのは、体から発する雰囲気が、大きく違うからだ。

翡翠は、あんななりでも、大人と思える雰囲気を出しているが、目の前の少女は、理知的な目をしていても、それが無い。 それに、なんというか上手く説明できないけど、何処か放っておけない危うげな感じがする。

 

とにかく、あれが翡翠の妹だとすると、諸葛亮に間違いないだろう。 そうなると、隣に居るのはおそらく鳳統だろう。・・・・・・やっぱり、俺の世界の三国志の知識は役に立たないな、名前を当てる程度には役にたっても、この時期に、この二人が劉備と共にいるなら、他の勢力も、その辺りは出鱈目だろう。

 

「でも・・・・・・そんな事して、孫策さんには何の得があるんですか?」

「あら、意外としっかりさんなのね」

「今まで鍛えられてきましたから。えへへ・・・・・・」

「ふむ・・・・・・・・・・・・・・・・良いわ。 貴女を信じて、胸元を開いて見せましょうか」

 

劉備の言葉に、しばらく考えていた孫策が、劉備の顔を見つめながら言葉を続けた。

 

「知っているかどうか分からないけど、今私達は呉の土地を奪われ、袁術の客将という身分に甘んじているわ。

 だけど、このまま終わらすつもりは無い。 必ずや、孫呉の領土全てを回復して見せる。

 でも、そのためには、外の味方が必要なの、・・・・・・でも、外に味方が欲しいのは貴女達も同じでしょう?」

「・・・・・・はい、孫策さんの仰るとおりだと思います。 だけど」

「だけど?」

「どうして、私なんですか?」

「そうね、貴女が、義理堅そうだから・・・・・・信用できそうってのが一番大きな理由。 ついで二つ目の理由は、

 貴女と私達の勢力が、今は五分五分だからよ」

 

孫策の言葉に、今度は劉備が少し考え込み

 

「・・・・・・分かりました。 でも私には、貴女が信用できる人か、まだ判断ができません」

「信義を見せて見ろと?」

「そうです。・・・・・・」

「良いでしょう。 なら見せてあげましょう。 孫呉の戦い振りを、その目で焼き付けておきなさい。

 もし私が信頼するに足らないと判断したならば、別にそれはそれで構わないわ・・・・・・いつか戦場で矛を交える

 だけの事よ」

「・・・・・・分かりました。 では孫策さんの信義、しっかり見させて頂きます」

「そう、では、一刻後に出発ってことで良いわね?」

「はい」

 

それで、劉備との対面は終わりとばかりに、孫策は、劉備に背を向ける。

でも、孫策には悪いけど、俺はそれだけで帰るつもりは無い。

俺は、劉備を見つめ

 

「劉備さん、一つだけ教えて欲しいんだけど」

「一刀っ!」

 

俺の言葉に、孫策は俺を叱責するが、俺は構わず

 

「劉備さんは、何でこの連合に参加したのかな?」

 

 

「もちろん、董卓さんの圧政に、苦しまされている人達を助けるためだよ」

 

 

俺の当たり前のような質問に、

 

劉備は澄んだ瞳で、

 

真っ直ぐと、

 

当たり前のように、

 

そう答えた。

 

 

そして、その劉備とは反対に、

 

表情には、隠してはいるものの、

 

その目に、小さく動揺を映す者と、

 

その瞳に、更に警戒の色を強める者がいた。

 

 

俺はその事を確認すると、劉備に礼を述べて、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

こんにちは、うたまるです。

 

 

  第30話 ~ 策謀に踊り惑う心 -前編- ~ を此処にお送りしました。

 

今回は、またまた原作を元に(台詞もぱくって)製作しました。

所々、原作と違う流れを取り入れていますが、それは今後の展開に向けての種まきという事で、・・・・・・

さて、一刀、本人は目だっているつもりは無いのですが、しっかりと各諸侯に覚えられてしまいました。

まぁ、受けた印象は、各諸侯それぞれですが・・・・・・

さて、明命の猛烈アタックを期待していた方には申し訳ありませんが、こうして、反董卓連合編 汜水関の部が始まりました。

一刀は一刀で、自分の役割をこなそうと一生懸命ですが、今後どうなっていくのか・・・・・・

そして、各諸侯はどう考え、動いてくるのか・・・・・・・・次回をお待ち下さい。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
179
17

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択