No.128882

GSと狐が幻想入り 04

白亜さん

…目の錯覚でなければ閲覧数が総じて1000オーバーなのですね…
私程度の小説をこんな色々な人に読んでもらえるとは恐縮です(汗
これからも頑張らないといけませんね。

今回は妖怪録を書いている子もちょっと出てきます。

続きを表示

2010-03-08 19:24:15 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:11945   閲覧ユーザー数:10544

トンテンカンテン……

トンテンカンテン……

 

トンテンカンテン……

トンテンカンテン……

 

「やっぱ金槌で釘を打つ音と言えばこれだろ」

 

「玄翁とか言ったら蹴っ飛ばしてやるのに」

 

二人が住む場所を得てから早一週間が立っている。

懸念されていたタマモの件だが、3日もしないうちに一人で出ても問題なくなった。

偏にタマモの信頼のなせる業とも言えよう。

寧ろ問題がありそうなのは横島のほうだと慧音は思っていたそうだ。

あながち間違いで無いところが横島と言えば横島か。

ちなみに今は寺小屋の修理を行っている所だ。

働かざるもの食うべからず、と言うように勿論二人にも仕事はある。

横島はその体力と器用さも相まって、物の修理や力作業をメインに

タマモはその知性と外界の知識を生かし、寺小屋で物を教えたり、

簡単な小道具を作成したりしている(実際に作るのは横島である)

今回タマモは手ぶらなので横島の監視という名の暇つぶし中である。

 

「ってか、慧音さんに頼まれた仕事だからなサボる訳にもいかんだろ?」

 

「どうだか、あんたの事だから女性を見かけたらすぐ忘れそうだしね」

 

彼の性格を考えればありうる事である。

 

「俺は其処までがっついとらんわー!」

 

「いや、それギャグよね?」

 

なんだかんだいいながら修理を行う横島。

タマモととり止めの無い話をしながらもその手は止まらない、

流石は一流の丁稚と言われるだけある、とタマモは密かに感心している。

 

「精が出ているな、まだ2刻しか経っていないと言うのにここまでとは」

 

タマモが声がした方を向くと慧音が居た。

彼女は横島の仕事ぶりを見ながら感心している。

 

「あら、慧音じゃないどうしたのよ?」

 

「何、今日は休みだからな私も手持ち無沙汰なのだ」

 

この数日ですっかり打ち解けている二人。初めの内は慧音も警戒していたものだが、

タマモの賑やかで穏やかな雰囲気に警戒を解き今では軽口を叩き合う仲になっている。

 

「慧音さん!頼まれていた仕事ほぼ終了っス!」

 

無駄に爽やかな笑顔で自己アピールを忘れない横島。

だが、非常に胡散臭い感じがするのが彼のクオリティか。

 

「あぁ、今日は其れが終われば上がっていい、しかし本当に大したものだ。

アレだけの仕事をこんな簡単に終らせるとはな。早くても夕刻まで掛かると踏んでいたんだが」

 

普通の成人男性ならそれくらいか一日では終らない仕事量なのだが、

横島はそんな仕事をやすやすと終らせてしまう。

彼にしてみればこの程度の仕事など何時もやっている仕事に比べれば

仕事の合間の暇つぶし程度でしかない。

無駄にハイスペックである。

 

「ふっ。俺は美人の為にならなんでもできる男なのです!

だからそのお礼はその麗しいカラダでー!!」

 

そして、お約束どおりに飛び掛るのも横島と言えば横島らしい。

 

「ふんっ!」

 

「あびっちゅ!?」

 

飛び掛る寸前に慧音の頭突きが命中。

其れはもう素敵に吹っ飛んでいく横島、放物線を描きながら飛んでいく姿は

ある意味芸術である、なんとも嫌な芸術だが。

しかし、飛びかかる相手に頭突きをかける技量は侮りがたい。

ナイスなタイミングが分かる女性、慧音。

 

「まったく褒めるとすぐこれなんだから、ほらおきなさい横島」

 

額に手を当てやれやれと言った感じで横島を起こすタマモ。

 

「お…俺はもうダメみたいだ…お前がアダルトヴァージョンになって膝枕してくれたら

復活できるかもしれな「燃えてみる?」イヤダナァたまもサンジョウダンデスヨ」

 

ゆらゆらと狐火を指の上に発生させ弄ぶタマモ、その眼は素敵に絶対零度だった。

ちなみにアダルトヴァージョンとは、復活して結構立つタマモはある程度の妖力が

回復しているらしく(それでも全盛期に比べれば非常に弱く中級妖怪程度でしかないが)

それにより変化の術のバリエーションが増えた為、人間の姿に変身した時の

デフォルトの姿に現在ヴァージョン(中学生くらいの姿)に加え、

横島命名のアダルトヴァージョン(20前後の美しい女性)が追加されている。

但し、この状態は通常より妖力を消費するので基本は変身しない。

まぁ、彼に強く要求されたら変身するのも吝かではないと考えてはいるようだが。

更に言うと妖力が増えたとはいえ攻撃力が増えたとか言う特典は無く、

単純にちょっと成長しただけというのが悲しい所ではある。

 

 

「やれやれ、仲がいいのはよく分かったが騒ぐのは程々にな。

其れと横島?今度飛びかかろうものなら死よりも恐ろしい頭突き地獄が待っている

のを忘れるなよ?」

 

「イエスマムッ!」

 

即座に起き上がり軍人より綺麗な敬礼を見せる横島。

 

「ふふっ、相変わらず賑やかですね。横島さんは」

 

そんな所に声がかけられる。

その声に横島が振り向くと赤み掛かった髪の毛の少女が居た。

最近、というかここに来て2日目で出会った子だった。

 

「お?、阿求やないか。散歩か?」

 

「はい、そんな所です。こんにちは横島さん、慧音さん、タマモさん」

 

ゆっくりとした態度で一礼する少女、稗田阿求(ひえだのあきゅう)

一度見た物を忘れない程度の能力という希少な力を持つ少女。

出合った詳細などは、その内に詳しく説明しよう。

 

「阿求殿か、ここに来るのは珍しいな」

 

「そうですね。普段は色々と忙しいものですから」

 

「へぇ、忙しいとは聞いてたけど大変なのねアンタ」

 

「慣れれば大した事ではないですよ」

 

「うへぇ。俺がそんくらいの時は遊びまくってた記憶しか無いぞ、阿求は大したもんだな」

 

「ふふ、有難うございます」

 

嬉しいのか少しはにかんだ様に微笑む阿求。

 

「そうそう、皆さんお昼はまだですよね?実は稲荷寿司など作ってきたのですが」

 

そう言うと、先程から持っていた重箱らしき物をタマモ達の前に置く。

3段重ねの箱をを開けると横島から見ても美味しそうに見える稲荷寿司が

綺麗に並べられていた。

 

「おーけぃ阿求。アンタは世の中ってのをよく分かってるわ」

 

「おーい、目が稲荷になってるぞタマモ」

 

現在タマモンアイには稲荷寿司しか映っておらず、タマモンイヤーもタマモンノーズも

全部稲荷寿司に全力で向っている為聞こえていない。

気に恐ろしきは稲荷寿司への執念、いやきつねうどんなども対象なのだが。

 

「横島さんも慧音さんも良ければどうぞ、少々興が乗って作りすぎてしまったものですから」

 

「お、サンキューな」

 

「うむ、頂こう」

 

「ちょっと待ちなさい!この稲荷寿司は私が仕切るわ!答えは聞いてないから!」

 

「目が爛々と輝いてて少し怖いぞタマモ」

 

「タマモさんは本当に稲荷寿司が好きなのですね」

 

「稲荷寿司っていうか揚げだな。給料日に小遣いのほぼ総てを使いはたして

揚げを買い集めてきたくらいだからなぁ」

 

勿論賞味期限が切れる前に全部食べたらしい。

あの体の何処にあれだけ入るのだろうと真剣に悩んだ事がある横島だが

他の人たちからしてみると横島もそう大差なかったりする。

 

…………

………

……

 

 

天気も良く暖かいので全員外で食べる事にした。

横島常備のビニールシートを敷き、慧音が用意してきたお茶と共に昼食を楽しむ。

外来の事に興味のある阿求が横島に質問し、それに身振り手振りを使い賑やかに説明していく。

傍らでは幸せそうに稲荷を摘んでいるタマモ。其れを見て苦笑しながら稲荷を食べている慧音。

それは何処にでもありそうな平和な一時だった。

 

「あ~、このお稲荷さんの匂いといい味といい…一級品だわっ!

阿求、アンタ今からでもお揚げ屋に転職しない?私が毎日買いに行くわ!

横島のお金を使って!」

 

「ちょって待てやこら、何故俺の金やねん」

 

「其れくらいの甲斐性見せなさいよ、男なんだから」

 

「其れとこれとは話が別じゃっ!ってか、なんやねん甲斐性って!」

 

「そういう訳で、私が買いに行く時は2割引きで宜しくね」

 

「ははは…決定済みですか」

 

「人の話をきけー!!」

 

「だが断るわ!」

 

お挙げの魅力に暴走するタマモと必死に自分のお小遣いを死守しようとする横島。

傍から見てコントにしか見えないが、多分冗談でやってるんだろう、本気かもしれないが。

 

「ほらお前達、騒がないで食べろ。折角の阿求殿の稲荷なのだからな」

 

「はっ!余りにも美味しすぎてメインを疎かにするところだったわ!」

 

「本末転倒ですね…まぁ、其処まで喜んでもらえて嬉しいですが。

横島さんはどうです?美味しかったですか?」

 

「ん?あぁ、俺はあんまり稲荷は食わんけど、つーか稲荷食う場合は

ほとんどタマモに取られるんだけどな、美味いよ。おキヌちゃんや魔鈴さん並だと思うぞ」

 

横島の頭の中では、

魔鈴さん>おキヌちゃん>>>>>>越えられない壁>>>>>>普通の店>コンビニとなっている。

つまり物凄く美味しいと言うことである。

こういうボキャブラリーはあまりないので横島なりに精一杯褒めてるつもりである。

ちなみに美神も料理は得意なのだが、あえて除外、今思い出すと多分恐怖で眠れない。

 

「…そうですか、有難うございます(また聞いた事の無い名前が出てきました、むぅぅ…)」

 

「??どした阿求?」

 

「いえいえ、何でもありません。えぇ、何でも」

 

ちょっと不満そうな表情を見せたが、

直ぐに何時もの笑顔に戻り、稲荷を横島に勧めていく。

とりあえず、幻想郷縁起には妖怪の部類として書いてやろうなんて

少し黒いことを考えてたりするが其処はあえて置いておこう。

隣ではタマモが「こっ、この稲荷は伝説のっ!!」とかやっているが限りなくスルー。

この3人、空気が読めるのである。

 

「ふぅ、ご馳走さんっと」

 

「お粗末様です」

 

「うぅ、お稲荷さん、また会いましょうね…きっとよ…絶対よ…」

 

「とりあえずタマモ?そろそろ現実に帰ってきてくれないか」

 

ちょっと危ない目つきで空になった箱に向って

一人ドラマを展開するタマモを戻そうとする慧音。

彼女の頭の後ろにおっきい汗が見えるのは多分幻覚だろう。

横島と阿求はスルーしている。

決して違う世界に逝っているタマモが怖かったからではないと思う。

普段は冷静沈着なのに、揚げが出るとここまで可笑しくなるタマモは

まだまだ子供なのだろう。

 

「はっ!?いけないいけない、お揚げ最終章まで逝ってしまう所だったわ」

 

何が最終章なのか突っ込んではいけない。

多分タマモにしか分からないだろうから。

 

「さて、私はそろそろおいとまします。横島さん、タマモさん。

今度お暇があれば遊びに来てくださいね」

 

「ん、おぅ。じゃあ近いうちに行くわ」

 

「お稲荷さん宜しくね」

 

「慧音さんも、何かあれば」

 

「そうだな、その時は世話になるかもしれない」

 

「それでは、失礼します」

 

軽くなった重箱を持ち自宅に帰っていく阿求を見送る3人。

彼女の姿が見えなくなるまで見守っていた。

 

「うっし。じゃあ残りの仕事をパパっと終らせますか!」

 

「頼んだぞ、では私は見回りに出てくる。タマモ確りと見張っておいてくれ」

 

「大丈夫よ、へんな真似したら燃やすし」

 

「俺の信頼度底辺っスね…」

 

「ある意味信頼されてるけどね。まぁ、頑張りなさい」

 

「へいへい。美人の為ならエンヤコラってな」

 

暫くして釘を打つ音が再開される。

慧音も二人の様子を見ながら頷いて、そのまま見回りに出かけていった。

 

…………

………

……

 

 

「ねぇ、所でストック溜まったの?」

 

「ん?あぁ、漸く2個って所だな」

 

あれから1時間もしないうちに総ての仕事を終えた二人は住処に戻ってきていた。

二人でお茶を飲みながらごろごろしている。

 

「ようやっと2個なの?ほんと作るの大変なのねそれ。私の妖力かしたげようか?」

 

「うんにゃ、これは作るサイクルってのがあるからな、霊力や妖力を借りても意味無いんだよ

それでも縮まったんだぜ?昔なんて2週間で漸く1個出来たかどうかって所だからな

3日で1個作れるようになっただけでも俺は頑張った気がする」

 

「で、3日に1個~2個使うから残らないと。

最強なんだか良い所で役に立たないとか、なんとも素敵な能力よね」

 

「やかましっ。ほれっ」

 

タマモに投げ渡したのは小さな碧色の珠。

少し大きめのビー玉といった感じのこの珠がまさか究極の霊具だと信じるものが幾ら居るだろうか。

少なくても、こんな気安く渡したり投げ渡すものでは無いだろう。

 

「サンキュっ。っていいの?」

 

貰っておいてなんだが、このアイテムは非常に希少かつ有効な霊具だ。

更に言うと彼自身が使ったほうが本来の特性も相まって凄まじい能力を発揮するのだが。

 

「ここは慧音さんも言ってたくらい物騒らしいからな。

狐火と幻術だけじゃ危険だろうが。気にせず持っとけ」

 

軽くいっている風に見えるが、実は少し赤みが差して

そっぽ向いている所を見ると心配しているらしい。タマモはくすりと笑いながら

大事そうにその珠をしまいこむ。

 

「そっ、じゃありがたく貰っておくわ」

 

彼は信頼した人にしかこの珠を渡さない。

彼は私を信頼してくれている。それがなんとも嬉しい、そうタマモは思う。

 

「じゃあ、是非アダルトヴァージョンで添い寝してくれ」

 

「とりあえず蹴ろうかしら…私の感動返しなさい!」

 

「ぎゃーー!?冗談!?冗談だって!そこはやばい!やばいっつーの!ッアー!?」

 

まったく、こんな所がなければ非の打ち所が無い男なのに…とタマモは思い。

そんな横島は横島じゃないわねと、納得し完結する。

とりあえずはこのストンピングの嵐に耐え切ってもらおうか、と

笑いながら踏みまくるタマモだった。

まぁ、数分もしないうちにお隣から怒られて二人してジャンピング土下座をしたのは

お約束だろう。なんだかタマモも手馴れてきたものである。

 

――続く

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
31
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択