No.128694

恋姫異聞録28

絶影さん

武王編②
青洲攻略です

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2010-03-07 18:19:45 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:19483   閲覧ユーザー数:15326

 

 

 

袁家に対し二面作戦を取ることになった俺たちは軍を二つに分け

民の少なくなった青洲に俺を総大将とする軍が徐州から攻めあがった

先に開戦の使者を送った事もあり、国境では兵が集まっていた

どうやらここを決戦の地とするらしい、斥候の話からは袁仁達が出てきている

 

「どうやら敵はあせっているようね大将がここに来るなんて、それに兵が多い割には援軍の気配が無い」

 

「二面作戦で冀州を攻めたのが功を奏したな」

 

「そうですねー、敵は魚燐の陣を敷いているようです。ならば基本にのっとって鶴翼の陣で行きましょうか」

 

敵はどうやら同時に攻めあがる俺たちに連携が取れていないようだった

無理も無い覇権争いなどやっているんだ、互いが互いを潰そうと考えている

そんな中で連携をとってどうにかしようなど出来るわけも無いか

 

「おそらく兵数の少ない僕達を破ったあと、徐州を取って逃げるつもりね。冀州はもう無理だと悟ったのかしら」

 

「かもしれませんねー、元々半分しかもっていなかったのですから冀州を失っても大して痛くはないのかと」

 

それならば冀州の攻略は容易い、下手をすれば曹操様が援護に現れるかもしれない

だがそれを期待してはだめだ、いまの戦力で勝利することを考えなければ

 

「一馬は?」

 

「先ほど合流をしました。袁術さんも許昌にきちんと届けたそうですよ」

 

「なら全員そろったのね?昭、試してみたいことがあるんだけどいい?」

 

「試したいこと?」

 

詠が言うには今回の戦の為に考えてきた戦法があるようで、これは俺たちにしか出来ない戦い方のようだ

俺達の強みは多種多様な兵科と信頼で結ばれた将と兵達、これが揃ったときに詠の策はなるらしい

 

「そしてアンタの眼があればこれは可能よ。本来は戦慣れした指揮官じゃないと駄目なんだけど

アンタの眼はそれを可能にしたわ」

 

「風も詠ちゃんの策に賛成します。この策は必ず成功するでしょう」

 

「解った、それならばまずは鶴翼の陣を敷く」

 

中央前曲に凪を、左翼に真桜、右翼に沙和、中軍に秋蘭を置き鶴翼の陣を敷く

 

「一馬は僕の指示に従って、風、後は頼んだわよ」

 

そういい残すと詠は一馬と共にその場を後にする

 

「お兄さんどうやら敵は舌戦をしてこないようですね」

 

「ああ、俺達のような者と交わす言葉は無いと目が語っている」

 

望遠鏡で相手の顔を確認すると、いかにも傲慢そうな顔をした男が馬に乗っている

あれが袁仁達で間違いないだろう、牙門旗もある

 

「進軍してきたな、行くぞ風」

 

「はいはいー、それでは全軍前進。皆さん陣形を崩さないように」

 

仕掛けてきたのは袁仁達からだ、総数で勝っているのをいいことに

俺たちを数の力で砕こうとしているのが丸わかりだ、袁家は皆こんな奴ばかりなのか?

 

「それでは真桜ちゃんと沙和ちゃんに伝令を、なるべく敵を囲むように、そして敵を引き付けないように

弓でつつくようにと」

 

左右の羽は弓を撃ちながらゆっくりと翼を広げていく、中央は前衛の凪がしっかりと敵前衛を受け止める

そして少し後退しては受け止め、少し後退しては受け止める、秋蘭が指示を飛ばし何とか前衛を持たせているが

今にも隊は崩れだしそうになってきた

 

「まだですか?」

 

「まだだ・・・・・・よしっ食いついたっ!」

 

「凪ちゃんに後退の伝令を、秋蘭ちゃんにもそれを援護しつつ退くようにと」

 

 

凪と秋蘭は敵の猛攻を受けきれず敵から敗走する。俺も風と共に更に後ろへと引く、完全な敗走だ

 

「銅鑼を鳴らしてください、退却だと」

 

戦場に銅鑼の音が響き渡る、撤退との声が響き渡り一斉に中央が後方へと退いて行く

望遠鏡で確認すれば袁仁達がニヤニヤと笑い、追撃をかけようとしている、慢心と狂喜の表情

 

「ここだっ!風っ!」

 

「銅鑼を止めてください、全軍反転!敵を押さえ込みます!」

 

反転した凪と秋蘭の部隊は敵を押さえ込む、そして

 

「行くわよ一馬っ!伏兵部隊左右より挟撃開始っ!」

 

突出してきた敵前衛と中軍を飲み込む、挟撃で三方向を囲まれ、後方には仲間の部隊

逃げる場所を無くした敵は混乱し俺達の一方的な攻撃が始まった

 

「真桜と沙和に伝令っ!策は成った、鶴の翼を折畳めっ!」

 

敵を飲み込んだあと詠の伝令により左右に広がった羽がゆっくりと敵を包み込むように閉じていく

後方からの攻撃に弱い魚燐の陣は瞬く間に鶴の羽に食い荒らされていく

 

「おのれぇぇぇっ!この袁仁達が曹操の兵などにっ!」

 

「貴様が袁仁達か、隊長の命によりその頸貰い受ける」

 

「ぬぅっ!貴様のような下賎なものに栄誉ある袁家の者が討ち取られるものかっ!」

 

混戦の中、二人は対峙し馬を走らせ袁仁達が凪の胸を狙い槍で刺し貫こうとした瞬間

凪の体は消え、宙を舞い音も無く地に両足を着ける

 

ぼとっ

 

地面に袁仁達の頸が落ち、首を無くした体は馬に運ばれ数歩進むとくずれ落ちる

凪は手刀に着く血を振りはらうと頸を持ち上げ

 

「曹操孟徳の将、楽進!袁仁達を討ち取ったり!」

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」

 

凪の声と共に周りの兵達が声を上げた、凪が袁仁達を討ち取ったか

ならば次は掃討戦、そして包囲を抜けた兵の追撃

 

「勝鬨をあげよっ、これより掃討戦を開始する!抵抗するものには容赦をするな、降伏するものは

受け入れよ」

 

「昭っ!追撃の指揮は私でよいなっ!」

 

「頼む秋蘭、降伏せよっ!我等は牙を剥く者に容赦はしない!」

 

完全に包囲をされた敵兵は将を失い、負けを悟ったのか武器を棄て降伏をしてくる

無駄な抵抗をしてくれば俺たちは全てを葬らなければならない

良かった、そう思い俺は胸をなでおろした

 

「うまくいったわね、敵が決戦を仕掛けてきてよかったわ。篭城されたら時間ばかりかかってしまうもの」

 

「そうだな、しかしさっきの策は」

 

「どう?完全に統率の取れた兵と指揮官の連携、それを利用して完全な敗走を演じきる」

 

「敗走と信じきった敵を伏兵で囲み後方を両翼で追撃、素晴らしい策ですね」

 

この戦い方、前に歴史小説で読んだ釣り野伏せに似ている

どうやら詠は凪たちとの交流で自ら編み出したようだ、つまりそれだけ仲間に信頼を

置いているということ、なんて成長をするんだ俺の軍師は、仲間の力を信じきっている

 

「すごいな、詠」

 

「えっ!ほ、褒めたって何にもでないわよっ!それより早く追撃の指揮をっ」

 

「もう秋蘭ちゃんが行ってますよー」

 

「えっ!」と驚いた詠はきょろきょろと秋蘭を探し、居ないとわかると顔を赤くして向こうを向いてしまった

相変わらずだな、しかし詠のお陰で敵を逃がす事無く一回の戦で決着をつけることが出来た

 

「これほど降伏をしてくる兵が多いなら、この兵を我が軍に入れて華琳様の元へ向かいましょうか」

 

「統率の方は大丈夫なのか?」

 

「統率はある程度取れるでしょう、なにせ秋蘭ちゃんと慧眼の御使い様が居られるのですから

天兵だと言えば統率どころか士気もあがりますよー」

 

「この間、張勲に腹黒いと言われたが風には負けるよ」

 

風は軽く笑う、相変わらず読みきれないがきっとこの子も常に俺たちを気遣い

兵達の命を思っていてくれている。敵兵を入れることにも何処か負い目を感じているのだろうな

 

「そんなことはありませんよ、風は雲を導く風ですから。それ以外の事に心動かされるものではありません」

 

「まいったな、俺の心が読めるのか?」

 

「お兄さんは顔に出やすいですから、風でもなんとなく解りますよ」

 

確かに、俺は顔に出やすいと皆に言われているがそれほど読まれるものか、少し改善せねばな

 

 

「では投降してきた兵をそのまま我が軍に組み込む、編成は任せた詠、風」

 

「了解しましたー」

 

「解ったわ、じゃあ向こうで軍議を、そこの伝令一馬を呼んできて」

 

「どうした、別にここでもかまわないだろう?」

 

そういう俺に詠は後ろを指差す。振り向けばそこには秋蘭が居た、なるほど気をきかせたのか

 

「早かったな、御帰り」

 

「ああ、追撃をしようとしたら反転して降伏をしてきた。冀州にも逃げ場は無いと途中で悟ったようだ」

 

「そうか良かった、無理に反撃をしてきて怪我でもしたら困る」

 

「心配しすぎだ、まあ私も昭の事は言えんがな」

 

そういうと俺の手を握ってきた、少し震えてるな。俺のことを心配していたのだな

考える事は同じということか、秋蘭は俺の頭に視線を移し髪の毛を見ている

 

「どうした?」

 

「いや、もうその髪型はいいだろう、華琳様は武による戦いをされると仰られた。もうあのような諜報活動も無い」

 

秋蘭は俺の頭を下げさせると後ろに纏めた髪を下ろし、手櫛でゆっくりと梳く

この髪型も随分と長くしていたものだ、思えば旗揚げ前から盗賊団を狩ったりするのに

使っていた、敵を騙しては四人で笑っていたものだ

 

「フフフッ、やはり下ろしていた方が優しく感じる」

 

「そうか、ありがとう」

 

「ああー!隊長が、隊長が?」

 

「なんや隊長、その髪型の方がええやん」

 

凪たち三人が戻ってきたか、という事はあらかた敵兵を纏め上げたと言うところだろう

 

「凪、良くやったな。今回、戦闘で一番の功績はお前だ」

 

「は、はいっ!ありがとうございます」

 

俺は凪の頭をゆっくり撫でる。本当に良くやってくれた、これで無駄な戦いをせずに済む

しばらく撫でているといつもより顔が赤く、固まってしまった

 

「お前達も良くやってくれたな、無事でよかった三人とも」

 

「えへへー、沙和達たくさん頑張ったのー!」

 

「凪、凪、駄目や凪がいつもと違う隊長にやられとる。」

 

髪型なんかでそんなに変わるものか?俺は秋蘭に眼を向けるとゆっくり頷く

そうか、いつもと違う雰囲気で緊張してしまったんだな、悪いことをした

 

「すまんな凪、これから俺たちは敵兵を組み込みすぐに冀州と向かう」

 

「「了解っ!」」

 

「編成を詠たちに任せてある、それにしたがって隊を纏めろ」

 

俺の言葉に三人は軍議の行われている方へと向かった

 

「本当は兵士達の亡骸をどうにかしたいのだろう?」

 

「ああ、だがそんな時間は無い。後からでも遺族に何か持っていくよ」

 

「組み込んだ敵兵を少し置いていく、そう進言しておくよ」

 

だからそんな顔しないでくれと、秋蘭は俺の手を握って来た

俺は顔に出てしまう、しかしそれが良いと秋蘭は言ってくれた

本当に戦には向いていないのだな俺は・・・・・・

 

 

 


 
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