No.127324

恋姫異聞録24

絶影さん

拠点話です
次回は潜入青洲酒家です

今回は踊りました
ようやく真名襲名の舞です

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2010-02-28 22:35:10 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:21632   閲覧ユーザー数:16561

「もう大丈夫だ、手加減をしてくれたのだろう。鞭を百も受けては普通は死んでいる」

 

「ああ、すまないな華佗。ところで邑の方はもういいのか?」

 

「月と詠も手伝ってくれているし、弟子の育成も進んでいるようだから問題はない!」

 

俺はこちらにわざわざ脚を運んでくれた華佗に地下牢に居たときから診療を受けていた

さすがは華佗と言ったところか、わずか数日で鞭の後が微かに残る程度まで回復していた

そしてついこの間牢を出され許昌へと戻り、ようやく我が家にたどり着いたというわけだ

 

「あまり無茶をしないでくれ。私はお前が死んだら・・・・・・」

 

「ごめんよ、心配させてしまったな。」

 

秋蘭は悲しい顔をして俺の隣に座り腕を絡めてきた

本当に悪いことをした。悲しい思いをさせてしまった。俺は秋蘭の手を優しく握った

 

「それでこの間の軍議で、北の四州についてだがしばらく静観をすることに決まった」

 

「身内に争わせるんだな?」

 

「ああ、衰退をしてきた所を青洲から冀州を突き抜け上り、幽州を攻める。」

 

「ふむ、塩とそれと青洲か?」

 

「そうだ、青洲を元黄巾党の者達に与えるそうだ。黄巾の者達は青洲の出身が多いからな」

 

出身者なら土地に詳しいから開墾や内政をするにも都合が良い

それに黄巾の者達が故郷を持ち、張三姉妹の活動拠点とすることが出来る。

海側を取るのは袁家の海の流通を無くし物資を衰えさせるためだな?

 

「さて、それでは俺は診療所に戻るぞ。また怪我でもしたら来てくれ」

 

「わざわざ来てもらってすまない、今夜は我が家で食事でもどうだ?」

 

「おお!良いのか?大陸中を歩いてきたがお前の嫁さんの料理に適うものは無かった。喜んで御邪魔させてもらおう」

 

華佗はそういうとその場を後にした。しかし秋蘭の料理を褒められるというのは嬉しくて仕方が無いな

顔がついついにやけてしまう

 

「兄者、御加減はいかがですか?」

 

「ああ、大分良くなった。俺のところに来たという事はこの間の報告か?」

 

俺の言葉に顔を真っ赤にして上を向いてしまっている。俺も人のことを言えたものではないが

面白いものだ。曹操様達に俺はこのように映っているのか?

 

「はい、花朗のことですが、その、なんと申しましょうか御互いにですね」

 

「御互いに好きなら問題はないだろう」

 

そういって秋蘭の方を見ると体を寄せてニコニコと笑っている。俺達のようなら問題は無いといっているんだろうな

 

「はいっ!あ、あ、愛しておりますっ!」

 

「フフフッ、そこまでは聞いていない。でどうするんだ?」

 

「はい、一緒になりたいと思っておりますが、それは戦が終わってからにしようかと」

 

「そうか、我らのように子が出来れば苦労をさせてしまうから良い判断だと思う」

 

「そ、そんなことではありませんっ!姉者は御忙しいのに涼風ちゃんをちゃんと見てあげているではないですかっ!」

 

確かに秋蘭の言うとおりだ、俺達二人は我が子に苦労をさせてしまっている

忙しいなどは親の勝手な都合、子にしてみればいつも居て欲しいに決まっているのだ

 

「それに兄者は仕事中も涼風ちゃんと一緒に居られます。決してそんな事は・・・・・・あっ!」

 

俺は一馬の言葉で固まった。秋蘭の腕の力が強くなり俺を捕らえて逃がさない

ニコニコと笑ってはいるが怖いっ!その顔は怖いっ!!そしてギリギリと俺の頬をつねって・・・・・・

いたっ!いたたたたたたたたっ!!!!

 

「どういうことだ?涼風をつれて警邏にでも出ているのか?あれ程仕事場には連れて行くなと言っているだろう?」

 

「ひゃ、ひゃい、いひゃい・・・ごめんなひゃい・・・」

 

「ははははは・・・すみません兄者」

 

「まったく、それで一馬、私が言った理由が違うと言うことか?」

 

「はい、我らが一緒になるのは全てが終わってからでも遅くは無いと、きっと私は一緒になったら花朗しか見えなくなりそうなので」

 

一馬は顔を赤くして下を向いてしまっている。よほど好きになってしまったのだな

素晴らしいことだ、愛するものが居れば自分には戦いばかりの日々ではないと気づかせてくれる

疲れきった心を御互いが癒すことが出来る。それにまた家族が増えるのだ

 

「そうか、そこのところは我らがとやかく言う問題ではないからな。おめでとうとだけ言わせてもらおう」

 

「はい、姉者!ありがとうございます!・・・ところでそろそろ兄者を放してあげては?」

 

「良いのだ、心配もさせた罰だ。しばらくは逃がさん」

 

そういって俺に微笑み顔を少し赤らめている。嬉しいのか、一馬のこと、そして俺が戻ってきたこと

二つ嬉しいことがあったからだろう。とても良い笑顔をしている、俺も嬉しくなってしまう

 

 

「その状態で笑うと気持ち悪いわよ」

 

「詠、どうひた?」

 

「いい加減放しなさいよ、何言ってるか解らないわよ」

 

「フフッ、解った」

 

「うう~、いつつつつっ!で、どうしたんだ?」

 

「秋蘭から話は聞いていると思うけどしばらく静観することになったわ。それでただ静観するわけじゃなくて、流言を流して

内部争いを活性化させるらしいわよ」

 

「そうか、なら俺の出番か?」

 

「らしいわよ、私には解らないけど得意なんでしょ?潜入して酒家で流言を流す。それで流言を耳にした

袁家の親族は争いをより激化させるといった流れね。早めに出て欲しいらしいわ」

 

ただ見ているだけなら時間がかかるからな。早く決着を着けるには流言を流した方がうまく行くだろう

そう思っていると隣の秋蘭の顔が曇ってしまう

 

「心配するな、戦うわけじゃない。それに一馬も一緒に連れて行くさ」

 

「ああ、そうだが・・・・・・」

 

そうか、寂しいんだな。さっき帰ってきたばかりだから、俺もその気持ちは解る

仕方ないな、ちょっとだけなら出発を遅らせてもいいだろう

 

「詠、曹操様に伝えてくれないか?まずは俺の真名襲名の宴と舞を舞いたいんだ」

 

「昭・・・・・・」

 

「え?ええ、そのくらいなら大丈夫だと思うけど。どのくらいかかるの?」

 

「そうだな、5日は欲しいな。練習もしたいし、三日目で酒宴をする。その後二日で出発の準備をするよ」

 

「そのくらいなら大丈夫よ。それに僕も二人の舞が見たいし、凪たちがいつも自慢するのよ?僕が見たこと無いからって」

 

あいつらそんなことを自慢していたのか、なにをやってるんだか、そんな自慢などしたらプレッシャーがかかる

だけじゃないか、なぁ?そう思って秋蘭に顔を向けると涙を滲ませて腕にしがみついている。

 

「ありがとう、嬉しいよ昭」

 

「まったく、見てられないわ。一馬!行くわよっ!」

 

「ええ、それでは失礼します。そのうち花朗を連れてきます。」

 

二人は気をつかわせてしまったな。だがたまには二人でこうしているのもいい、愛するものとは一緒にいたいものだ

俺は秋蘭の髪に顔を埋める、やわらかい香りが鼻孔をくすぐる。いつもの安心できる匂いだ

 

「おとーさーん!ただいまー!」

 

「あっ!待って涼風ちゃん!」

 

詠たちが出て行った方から涼風が飛び込んできた。それを追いかける月、孤児院から戻ってきたのか

涼風を見た俺は笑顔になり手招きをすると喜んで俺の膝の上に乗って来る

 

「おかえり、ありがとう月。涼風を見ていてくれて」

 

「いいえ、おかえりなさい昭さん。涼風ちゃんはとても良い子でしたよ」

 

「そうか、偉かったな涼風」

 

「うん!おとうさんもおかあさんもうれしそう、すずかもうれしい」

 

嬉しそうな我が子を俺は抱きしめた。きっと涼風も心配をしていたのだろうな、かわいそうなことをした

 

「今日は一緒に御風呂に入ろうな」

 

「月、三日後に真名襲名の酒宴をする。皆で来て欲しいのだが」

 

「はい、もちろんです。伺わせていただきます」

 

皆の前で舞うのは久しぶりだな、新しく舞を考えるか

真名を表す舞の方が良いだろう、雷に雨、晴雲か、さてどうするか曹操様もお呼びするのだ、気はぬけないな

背中の傷も大分良いしこれなら今日からでも練習が出来る

 

その日から俺と秋蘭は仕事が終わると舞の創作に入った。

秋蘭は曲の選別と組み合わせを考え、俺は真名から舞の型を考える

涼風を秋蘭に見立て抱きかかえながら共にクルクルと回る、涼風は俺にしがみつき笑っている

 

「あはははははははっ!おとうさん!もっとはやくはやくー!」

 

「おう!こうかー?」

 

「フフッ眼を回して転ぶなよ昭」

 

「わかってるよー」とクルクルと回り続けた、久しぶりに三人でゆったりとした日々

俺達は心のそこから笑った、そして願った。いつかこの日々が永遠となりますようにと

 

 

 

そして日はたち御披露目の日となった、場所は曹操様の計らいで玉座の間

秋蘭は純白の旗袍、裾にはさりげなく桜の花があしらってある、

俺はそれを引き立てるような黒い長袍、二人の手には刃引きした剣

 

舞台は玉座を背にし背後には楽団が楽器を用意し、音合わせをしている

 

 

「今夜は久しぶりに秋蘭と昭の舞を堪能させてもらうわ」

 

「はい、存分にお楽しみください」

 

「隊長!うちら今日が楽しみで三人とも仕事が手につかんかったんやで!!」

 

「風と稟ちゃんは見たことが無かったのでとてもとても楽しみにしていたのですよー!ね?稟ちゃん」

 

「そうだったな、今日は楽しんで行ってくれ・・・・・・どうした稟?」

 

稟の方を見ると風の背中に隠れてぷるぷると小動物のように震えている

う~ん、この間叱ったのをまだ引きずってるのか、まいったな

舞い終わった後にでも話をするか、待っている人達も居るし、さてそろそろ時間だ。

 

「皆さん、今夜は私の真名襲名の宴にお越しくださいましてありがとうございます」

 

「我が夫の真名襲名祝いとして我ら夫婦の舞をご堪能ください」

 

秋蘭と共に舞台中央に立ち、顔を見合わせて頷く。

両手に構えた剣をゆっくりとゆっくりと地面をなめるように振りあげ秋蘭と共に剣を交えさせる。

音楽は物悲しく、ゆっくりとした音調を奏で地にしみ込む雨を演出する

 

振りあげた剣を回し、交差させ、背後の曲調は次第に早く、早く、激しくなる

それに合わせ秋蘭は剣を俺に向け俺は受け流すように秋蘭に近づき腰に手を回し

二人は剣を地面に刺すと、手をとり俺と秋蘭は曲に合わせ激しく舞う、回転し、時には秋蘭を宙に舞わせ

受け止め、楽団は必死の形相で、激しく耳を劈くような音を奏で付いて来る、それは正に雷

 

そして楽団の音がもう限界だと言う所までで響きわたると一瞬のうちに動きと音楽がが止まる

俺は片膝を着き、手を繋ぎ肩の上に座る純白の秋蘭が地面にさした剣を抜き取り掲げ

最後に晴れ渡る空に浮かぶ一つの雲を表した

 

玉座の間は沈黙し、次第にパチパチと拍手が聞こえそれが一斉に大きいものへと替わる

 

「さすがね二人とも、とても素晴らしかったわ!演出も真名を表すもので襲名の演目としては文句の付けようも無いわ」

 

「ありがとうございます。曹操様」

 

「隊長!隊長!だめやっ!鳥肌がっ!鳥肌がっ!」

 

「凪ちゃんがさっきっから震えて動かないのーっ!」

 

「・・・・・・」

 

おいおい、大丈夫か凪は?顔を紅潮させて固まってるな

 

「凄いわね!驚いちゃったわ!アンタも特技と言えるものがあったのね」

 

「詠ちゃん!でもホント凄かったね!」

 

皆それぞれ喜んでくれたようだ、良かった。これも秋蘭と涼風のおかげだ、俺も楽しむことが出来た

 

「昭殿ー!!!!」

 

「ぐはっ!」

 

俺は突然横腹に衝撃が走り地面に転がった、なんだ?なんだ?

眼を開けると目の前には俺に馬乗りになった稟が眼をウルウルさせながら見つめている

 

「か、感動いたしましたっ!まさか貴方があのような美しい舞をっ!先ほどから鳥肌と

涙が止まりませんっ!!そして・・・・・・・ブハッ」

 

「ぎやああああああああああっ!!!!」

 

興奮してしまったのか俺に馬乗りになりながら鼻血をドバドバと流し続け俺はまるで

稟に撲殺?刺殺?されたかのような惨状になり、気を失った稟はそのまま倒れこんできた

 

「昭っ!貴様何をしているっ!稟に何をしたっ!」

 

「誤解だ秋蘭っ!稟が勝手にっ!」

 

「勝手に馬乗りになって興奮したのかっ!?それはどういうことだ!!」

 

「俺は何もしてしていないっ!」

 

俺はずるずると秋蘭に首根を掴まれ引きずられて行き、奥の部屋で何故か説教を喰らった

確かに秋蘭の見たとおり、馬乗りで興奮てのは完全に俺が浮気しているようにしか見えないな

 

その後、風に気付けをしてもらった稟が秋蘭に謝り事なきを得た

よくよく聞いてみれば秋蘭は俺のことを信じている、だがあのときの光景を見ただけで嫉妬してしまったとのことだ

前も劉備たちを送ったとき帰りに嫉妬したとがあったので、それも仕方が無いかと納得してしまった

 

「お説教は終わり?」

 

「曹操様、申し訳ありません。締まらなくて」

 

「フフフッ、貴方らしくて良いじゃない」

 

「そういっていただけると救われます」

 

「二日後の事、任せるわね」

 

「ええ、解っております。必ずや成功させて見せます」

 

「正直あまり気が進まないわ」

 

「情報操作ですが戦ならば当たり前です。覇道に背くものではないと」

 

「そうね、知略と武をもって進むのが覇道ならばそれもまた覇道」

 

「私には曹操様は覇道よりも王者、王道としての風格があると思います」

 

「フフッ、己の手を血で染めて何が王者か、私には覇道が相応しいわ」

 

「・・・・・・」

 

「いいのよ、相変わらずやさしいわね。そんな顔しないで、私は覇道を誇りに思っている」

 

優しいのは貴方です。

 

俺はそう言いたかった。しかし曹操様は首を横に振るだけだろう、平穏を手に入れるには

王者では乱世を生き残れない、それどころか統治することすら難しいと理解されている

だから劉備に期待をしていたのだ、王者としての王道としての生き方に

それが出来るならば自分は必要が無いと、だが期待は裏切られた

 

しかし俺は裏切られたと思っていない、なぜならば

曹操様こそがこの大陸に平穏をもたらす方だと誰よりも信じている

曹操様こそが覇道と王道その二つを併せ持つかただと信じているからだ

 

 

 


 
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